ローカル番組
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ローカル番組(ローカルばんぐみ)とは、ローカル局が制作するテレビ番組あるいはラジオ番組のことである。放送局の放送地域(県域放送)のみに限定して放送していることが多いが、ある地方の複数の県域放送を束ねたブロックネット形式のローカル番組もある。また、番組販売形式によって、地方の枠を越えて放送されるローカル番組も存在する。また、これを放送している枠のことは「ローカル枠」と表現する。
逆に、主に基幹局が全国放送向けに制作する番組をネット番組という。
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[編集] 独自編成とローカル番組
民放は提供する企業がないと放送を行うことがほぼ出来ないため、放送圏域における全国企業と地元企業との力関係が番組編成に影響する。東京キー局の番組に地元企業が提供する場合もあるが、広告効果を上げるため、地元企業提供のローカル番組も制作・放送されている。
[編集] テレビ
テレビの場合、基本的にゴールデンタイムは全国展開する企業が提供する時間帯となっているが、有力地元企業が多い大阪・名古屋・福岡・札幌などの大都市圏基幹局では、ゴールデンタイムであっても東京基準の編成とは異なった独自編成を行う場合もあり、地元芸能人を起用したバラエティ番組などを放送している場合がある。
全国企業が提供しないゴールデンタイム以外の時間帯、特に、地元企業が提供する例が多い昼前・夕方・深夜の時間帯では、地元企業の顧客層となるターゲット視聴者層の趣向に合わせた番組が選択され、東京キー局、映画、ドラマの再放送、在阪局・在名局の番組(テレビ東京系列が無い県ではテレビ東京の番組)と並んで、ローカル番組も選択肢となっている(そのため、東京キー局は、ゴールデンタイム以外の視聴率も自社の収益性に直結し、視聴率至上主義に走る傾向がある)。この場合のローカル番組は、各放送地域に密着した形の情報番組やニュース番組が放送される場合が多い。また、関東に隣接する地方(甲信越・静岡県・南東北)では、関東ローカルの情報番組も選択肢の1つとなっている。
[編集] ラジオ
ラジオの場合、テレビ放送が発達する前は現在のテレビのゴールデンタイムがラジオのそれであったが、テレビの興隆とモータリゼーションの発達により、現在は平日のラッシュアワーや土日の昼前から夕方がゴールデンタイムにあたる。また、車社会が浸透している地域では、ラジオの訴求力が強いうえ、テレビに比べて安価にCMをうてるため、地元企業がこれらゴールデンタイムでのローカル番組制作に提供をする例が見られる。しかし、小回りの利く放送が出来るコミュニティFMの登場で、地元企業は顧客の分布に合わせて県域放送FM(JFN系列)やAMからコミュニティFMに提供を鞍替えする例もみられ、ローカル番組はコミュニティFM・FM・AMに分散傾向を見せ、既存のFM・AMは相対的に東京キー局の番組比率が上昇した。
なお、ゴールデンタイム以外の時間帯では、全国企業と地元企業の力関係や地域特性に合わせて、ローカル番組が支配的な局、東京キー局の番組が支配的な局、ジュークボックス化している局など様々である。
[編集] 傾向
[編集] メーカーの全国展開と全国ネット放送
高度経済成長期に、全国に次々とローカル局が設置され放送を開始した。テレビは視覚・聴覚に動画で商品広告が出来るため、従来のラジオ・新聞・雑誌の広告による全国一律の販売促進活動に比べて訴求力が強烈であった。中産階級が拡大して消費経済が興隆した当時では、地場のメーカーが全国に商品を売るためこのメディアを利用し、全国的な大企業へと成長した。そのため、ローカル番組よりも全国放送のネット番組の方に重要度が高かった。
[編集] 地元小売店チェーンとローカル番組
高度経済成長が終わった1970年代頃になると、地方の都市化も格段に進み、県毎に有力な地元小売チェーン店(スーパーマーケットなど)も発展し、競争も激化した。チェーン化の領域はそれぞれ異なるが、県毎であることが多かったため、この時期に県域放送のテレビで小売店の提供によるローカル番組が盛んに作られるようになった。小売店の店内に設置されたサテライトスタジオからの生番組や、ローカルヒーロー系のローカル番組も作られた。
しかし、バブル経済期にかけて、物販・サービスにおいても全国展開するチェーン店が興隆してきたため、地元小売チェーン店提供のローカル番組は下火になっていった。
[編集] 第二次ベビーブーマー向け番組
バブル経済期以降、当時の郵政省の情報格差是正の方針で、全国「テレビ4局化」やBS、CS放送が開始されてチャンネル数が増えた。しかし、都道府県それぞれの人口には格差があるため、4局化で充分な視聴者実数が得られない局が出現した[1]。そのため、テレビやラジオ番組においては様々な試みが行われたが、その一つが第二次ベビーブーマー(団塊ジュニア)向けローカル番組である。
団塊ジュニア向け番組として、彼らが中高生時代には『夕やけニャンニャン』(夕方)、高校大学時代には『ねるとん紅鯨団』(夜)、社会人になる頃には『進め!電波少年』(夜)などが東京から全国放送された。団塊ジュニアは、バブル経済によって大人が新車に買い換えたために大量に安価に出た中古車に乗り、消費の郊外化を推し進めてロードサイドショップや車関連業種の興隆、および旅行業を底上げした。このため、1990年代には、人口の多い団塊ジュニア向けのローカル番組が深夜帯を中心に多数作られた。内容は、提供しているモータリゼーション関連のものの他、団塊ジュニア世代に共通するカウンターカルチャーも含んでいたが、基本的に彼らが馴染んできた東京の番組の焼き直しであることも多く、視聴者には茶番と映ることも多かった。また、1990年代半ばには、夕方の枠で団塊ジュニアの直下の世代に向けて若者向けローカル番組も作られたが、ターゲット視聴者層が減少する中、長続きしなかった。
この頃に開局した地方局の殆どは、開局したばかりで番組制作の歴史的蓄積や人材が不足し、提供企業の信頼を得られず、ローカル番組制作がほとんどが出来なかった。そのため、他のローカル局がキー局の不人気番組枠に挿入する形でつくっていたローカル番組の枠では、地方では系列局がないテレビ東京の番組や、Vシネマなどを主に放送していた。また、番組不足から在阪局や在名局のローカル番組も放送されるようになった。そして、バブル崩壊後、地域経済や既存の放送局の経営状況が悪化すると、人気のあるローカル番組を相次いで打ち切り、追随するようにこれらの番組やキー局の番組を放送するようになった。これらの要因もあり視聴者からキー局のローカル枠番組の同時ネットを望まれるようになり、ローカル番組不要論が叫ばれるようになった。
[編集] 不景気と番販市場
不景気になった1990年代後半以降、特に深夜の視聴者実数の少ない時間帯では、在京キー局制作の高価な番組よりも、もっと安価に購入できる番組が必要とされた。番販市場においては、安価に購入できるローカル番組と海外番組(主に韓国)が注目され、ローカル番組は制作局以外の民放地方局の深夜帯で、韓国の番組はNHKの深夜帯で放送された(また、独立UHF局ではゴールデンタイムなどでも放送され、この時間帯の番組不足を補うことができた)。すると、在京キー局の制作する番組とは異なる内容や雰囲気に熱狂したファンが現れ、ローカル番組ブーム、韓流ブームがそれぞれ起こった。また、近年のアニメブームの到来、並びにキー局によるアニメに対する様々な事情(特に表現規制)から、コアなアニメファン向けにより規制の緩い独立UHF局での放送を前提とした、いわゆる「UHFアニメ」が放送されるようになったのもこの頃からである。
[編集] 安定購買層と夕方ワイド番組、ブロックネット
若年層向けのローカル番組の流れに対し、不景気が始まる1990年代中盤から最近に至るまで、夕方ワイド番組がローカル番組として地位を得てきた。不景気であれ、毎日のように買物に行く主婦層は、安定購買層として地方では重要視され、この層をターゲットとして販売促進を狙う地元の小売・サービス業が提供し、各地の放送局が次々と夕方ワイド番組制作に参入した。主婦層と言っても、おしゃれな生活を求める若年の主婦層と、お金のある中年以上の主婦層では興味も異なるため、各県でターゲット層の異なる複数の夕方ワイド番組が成立している例が見られる(特に在札、在福の放送局では近年競争が激化している)。
また、主婦層は、近距離(主に隣県)への小旅行を楽しむ傾向があるため、旅行業種の一部提供によって旅行関連のローカル番組も存在している。県毎のローカル旅行番組の他、近畿地方とその周辺地方では番販形式、九州地方ではブロックネット、東北地方では夕方ワイド番組内の隣県同士の相互中継など、地域の実情に合わせて型が異なるが、ローカル番組の1つの手法として旅行番組が定着している。
なお、都心回帰の強い県では、マンション販売促進のローカル番組も存在する。
[編集] 今後の課題
ローカル番組ブームにおいては番組本やDVD、グッズなどのメディア展開、インターネットなどでの口コミによって人気が全国規模に広がっている。
上記のような人気ローカル番組は、制作能力よりもアイディア勝負であり、全国的な有名人よりも枠にはまっていないローカルタレントが人気を博している[2]。そのため、制作局の経済的基盤よりも、枠からはみ出した番組を制作・放送する経営判断が出来るかどうかが重要である。また、安価に番販市場に供給できるか、制作局の地域的な特色が出せるかということも重要である。しかし、アイディアの枯渇やマンネリ化、ローカルタレントの限界などの番組自体の魅力の低下、番販価格の上昇による買い手の減少、地方局が好況期に入って高額な番組購入に経営転換し、安価なローカル番組の需要自体が無くなる、ローカル局の経営破綻、合併などによるチャンネル数の減少、などの時代の変化が起きる可能性もあり、今後も人気ローカル番組が売り手市場でいられるとは限らない。
また、一部の放送局で、キー局で本来放送されている番組がローカル番組に差し替えられ、非ネット又は遅れネットになることに不満を覚える視聴者も少なくない。特に、中京圏・関西圏の放送局では、在京キー局との関係が悪いこともあり(読売テレビ=ytvのように良好な局もある)、特別編成を飛び乗り・飛び降りしてまでローカル番組を放送することも少なくない(これに関してはytvも含む)[3]。。しかしながら、その中にも本来のキー局の番組より視聴率の高い番組があったり、またキー局(特にテレビ東京)の番組で全国向けと謳っておきながら実際の内容は首都圏向けとなっている番組もある。そういった点で放送局は、適切な番組編成が求められると言えよう。
[編集] 代表的なローカル番組
★は他局に番販されているもの
ローカルワイド番組、夕方ワイド番組はそれぞれの項を参照。ブロックネットの項も参照。
[編集] 北海道
- ★1×8いこうよ!、★チビナックスシリーズ、釣~りんぐ北海道、What's New?+Cute(札幌テレビ放送)
- おにぎりあたためますか、★水曜どうでしょうシリーズ、★NO MATTER BOARD、夢チカ18(北海道テレビ放送)
- どーせヒマでしょ?(北海道文化放送)
[編集] 東北
- 夢・見る・ピノキオ(テレビ岩手)
- ★Break Point!、★ビバビバパラダイス、山・海・漬(岩手めんこいテレビ)
- ローソンPRESENTS 超神ネイガーVSホジナシ怪人(秋田放送)
- ぷぁぷぁ金星(秋田朝日放送)
- ★クボタ民謡お国めぐり、JAみどりの広場(秋田テレビ)
- 裏影(東日本放送)
- 弦哲也のFTVカラオケグランプリ(福島テレビ)
[編集] 関東・甲信越
- ★白黒アンジャッシュ(チバテレビ)
- ★桜塚ヤンキース、関口さん1、★やまがた発!旅の見聞録(山形放送との共同制作)(テレ玉)
- Anime TV、★saku saku、パペットマペットのサイエンスでしょ!?(tvk)
- ラジかるッ(日本テレビ)
- 虎の門(テレビ朝日)
- ★FNS地球特捜隊ダイバスター、ウチくる!?(フジテレビ)
- ★タカラヅカ・カフェブレーク、談志・陳平の言いたい放だい、(TOKYO MX)
[編集] 東海・北陸
- ★ぐっさん家~THE GOODSUN HOUSE~、西川きよしのご縁です!、★ドランキュ!、すくすくぽん!(東海テレビ放送)
- PS、アンデュ、でんじろう先生の日曜実験室 ラブラボ!、ラブリーパブリー(中京テレビ)
- ★ノブナガ、そこが知りたい 特捜!板東リサーチ、★鶴瓶のスジナシ!(中部日本放送)
- ★ウドちゃんの旅してゴメン、★ラブちぇん、★さまぁ~ずげりらっパ、光る!スポーツ研究所(メ~テレ)
- ★ふくい浪漫 い~ざぁええDay(福井テレビ)
[編集] 関西
関西ローカルの項も参照。
- ★ドM時デスョ!(サンテレビ)
- ★水野真紀の魔法のレストラン、★よゐこのワケアリ、★痛快!明石家電視台(毎日放送)
- ★桑原征平のおもしろ京都検定、谷口な夜、らくらぶR(KBS京都)
- ★探偵!ナイトスクープ、★なにわ人情コメディ 横丁へよ~こちょ!(朝日放送)
- ★快傑えみちゃんねる、★たかじん胸いっぱい、★ムハハnoたかじん、★関ジャニ∞のジャニ勉(関西テレビ放送)
- ウラネタ芸能ワイド 週刊えみぃSHOW、★大阪ほんわかテレビ、★たかじんのそこまで言って委員会、★土曜はダメよ!(ytv)
[編集] 中国・四国
- ★TIM神様の宿題、ぶらぴ、ブルマン(中国放送)
- ★中四国レインボーネット、進め!スポーツ元気丸、てっぺん!、もっきんCafe(広島テレビ)
- ★アグレッシブですけど、何か?、ストリートファイターズ@広島、北斗晶の鬼嫁運動記者倶楽部(広島ホームテレビ)
- ★人気もん!、★釣りごろつられごろ、サタ・スポ、夜型人間、(テレビ新広島)
- VOICE21(山陽放送)
- ニョッキン7(岡山放送)
- もぎたてテレビ70(南海放送)
- 公園通りのウィークエンド(高知放送)
[編集] 九州・沖縄
- ★ドォーモ(九州朝日放送)
- ★九州青春銀行、探検!九州(RKB毎日放送)
- ナイトシャッフル(福岡放送)
- ★DRAGON GATE~龍の扉~(テレビ西日本)
- MUSIC PROGRAM AIR(長崎国際テレビ)
- ★週刊山崎くん(熊本放送)
- 若っ人ランド(テレビ熊本)
- AMP(鹿児島讀賣テレビ)
- ★ナマ・イキVOICE(鹿児島テレビ)
[編集] テレビ局
[編集] ラジオ局
[編集] 脚注
- ^ 人口が少ない県の県域放送では、「視聴率」よりも「視聴者実数」の方がビジネスサイズに直結するため重要。
- ^ 但し、本州太平洋側沿岸地域や広島県、福岡県の放送局では、ローカル番組であっても全国区のタレントを使用することが多い。
- ^ 差し替えられるのは大半がローカルセールス枠となっているが、例外も少なくない(中部日本放送や朝日放送など)。