ランバ・ラル
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ランバ・ラル (Ramba Ral) は、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する架空の人物。声優は広瀬正志。TV版登場話数は第12話・16話・17話・19話・20話。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
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[編集] 概要
ジオン軍の士官で、階級は大尉。直属の上官はドズル・ザビ中将。一年戦争以前からゲリラ戦を戦い抜いてきた根っからの職業軍人であるが、父親がザビ家の政敵であったジオン・ズム・ダイクンの遺臣ジンバ・ラルであったこともあり、ザビ家が牛耳るジオン軍では出世コースから外れた日陰者的な存在であった。しかし自身は軍人として祖国の役に立てないことを心苦しく思っており、戦死したザビ家の四男ガルマ・ザビの仇討ちという任務をドズルに命じられて引き受けた。またこれは、成功報酬としての自らの出世(二階級特進)が部下や内縁の妻クラウレ・ハモンの生活向上につながればと思ってのことでもあった。
任務の最中、立ち寄ったソドンの街の食堂でホワイトベースを脱走中のガンダムのパイロットアムロ・レイと出会い、アムロに人間的成長のきっかけを与えることになる。アムロが戦場で対峙した初めての名のある生身の敵でもある[1]。アムロに「あの人に勝ちたい」と言わせたのは、ラルのパイロットとしての技量ばかりでなく、人間的な器量の大きさでもあると言えよう。TV版での登場は僅か5回に過ぎないが、登場当時の新型機グフを駆ってザクとは違うことを強くアピールする台詞を放つなど、印象的な渋い言動などにより、歴代のガンダムキャラクター中でも屈指の存在感と人気を持つ。
開戦当初から自機を青く塗装していたため、青い巨星の異名を持つ[2]。これに関連して、グフの正式機体色は、彼の乗った試作機の色がそのまま採用されたという説がある。
同じくエースパイロット、軍人として卓抜した技量を持つシャア・アズナブルとは、対照的なタイプの上官(上司)として、ファンの間でしばしば比較の対象にされる。自らの力を恃(たの)み、華々しい実績と歴史をも動かす大きな才能を持ったシャアに対し、部下たちとの固い信頼関係を背景に、政治的な要素と一線を画し、与えられた任務を達成するためプロフェッショナルに徹する姿や、それを「妻や部下のため」と言う世俗的な言動が、ランバ・ラルの魅力である。マ・クベの副官ウラガンがラルを揶揄して言った「戦馬鹿(いくさばか)」とは、悪意はあるが正鵠を射た評価であろう。
なお、小説版『ジオニックフロント 機動戦士ガンダム0079』に登場する“闇夜のフェンリル隊”隊長、ゲラート・シュマイザー少佐は、ラルの親友という設定である。
[編集] アニメでの活躍
ドズルの命令により、ガルマ・ザビの仇討ちのため自らの部隊(ランバ・ラル隊)を率いて新型モビルスーツ「グフ」を駆り、幾度となくホワイトベースに奇襲をかける。少ない兵力を率いてのゲリラ戦でホワイトベースを翻弄するが、19話でガンダムにグフを撃破され、またマ・クベの策謀[3]によって戦力の補充要求も握り潰され、部隊は窮する事になる。
そのため、ホワイトベースを拿捕すべくゲリラ屋の本領である白兵戦を挑むが、制圧中の艦内で偶然セイラ・マス(アルテイシア・ソム・ダイクン)に出会う。ラルの父ジンバ・ラルはセイラ(アルテイシア)の育ての親だったこともあり、若き日のラルも幼少時のセイラ(アルテイシア)と面識があった。ラルは自分の仕えたジオン・ダイクンの娘が敵である地球連邦軍にいたことで混乱し、さらにセイラに一喝されてひるんだところをリュウ・ホセイによる銃撃を受け負傷。その後、部下も制圧されて作戦が失敗したことを悟り、ホワイトベースの第2ブリッジから手榴弾を抱いて飛び降りて自決。生粋の職業軍人らしい最期を遂げた。
12話での雷に関する台詞などから、以前にも地球を訪れた経験があると見られる(開戦前か開戦後かは分からない)[4]。
[編集] 小説版での活躍
小説版でのランバ・ラルは、総帥ギレン・ザビのSS(親衛隊)の親衛隊長を務めている。小説版では地球での戦闘が無いので、グフ等のモビルスーツに搭乗することもなく戦死もしていない。ハモンとの絡みも一応は存在するが、TV版でのものとは色々な意味で程遠い。少なくとも小説版においては、アニメで描かれたような印象的なキャラクターではないと言える。
[編集] 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』での活躍
安彦良和の漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、一年戦争以前、ダイクンの遺児キャスバル(シャア)とアルテイシア(セイラ)の地球脱出を画策・実行し、そのことから左遷状態され、ハモンのバーで荒くれな用心棒まがいのことをしていたが、前々から彼に目を付けていたドズルに拾われる形で、モビルスーツ開発計画に黒い三連星らと共にテストパイロットとして関わる姿が描かれている[5]。『THE ORIGIN』でも、内縁の妻ハモンや部下たちとの強い絆や、同じプロフェッショナルな軍人であるドズルから厚い信頼を寄せられている描写がある。
しかし、一年戦争冒頭にドズルからコロニー落とし(ブリティッシュ作戦)の実行を命じられた時は、「それは悪魔の所業だ」と拒絶して軍を離れ、ルウム戦役の際は出陣するコズンやクランプを酒場で見送っている。このことにより再び左遷状態となり、ラルがなぜガルマの仇討ち任務まで干されていたのかが自然にわかる描写である。
『ランバ・ラル編』においてアニメ版と同じくグフを操って登場、2度目のガンダムとの対戦では右足を切断して戦闘不能に追い込み、事実上アムロを完敗させる。その後もほぼアニメ版と同じ展開であり、アムロとの出会いの直後にホワイトベースを強襲した際には、ガンタンク1機、ガンキャノン1機を撃破し、2機を半壊に追い込んでいる。ガンダムとの3度目の対戦でグフを失った後は、白兵戦を挑むがアニメ版と同じ経過をたどって敗北し、ホワイトベースのクルーの目の前で自決している。なおその際に「ガンダムは伝説のモビルスーツになる」「自分が連邦の神話作りに手を貸した」など自嘲めいた台詞が追加されている。
『THE ORIGIN』全編を通してアニメ版からほとんどキャラクターとしての変更はされていないが、やや太り気味であったアニメ版の体型と比較してスマートな体型になっており、キスするときハモンがやや背を屈めたほどの短躯も立派な身長に描き直され、若さも増したキャラとなった。また、ザンジバルの運用に関しては「マ・クベに渡す為に乗ってきた」という設定が追加されている。
[編集] 搭乗した主なモビルスーツ
- MS-04 - 『THE ORIGIN』において、一週間戦争時に搭乗したMS-05のプロトタイプ。MS開発計画時からの愛機である。
ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』では旧ザク、ドム、ゲルググ、ギャンに専用機が存在しており最新鋭のモビルスーツに搭乗すると、以前の搭乗機とは違うといった台詞を言う。いずれもカラーリングは青で統一されている。パーソナルマークは紅白の地に黒十字とRSの文字(後付設定であり、由来は不明)。
[編集] ランバ・ラル隊の面々
なおバンダイのプラモデルシリーズ『U.C.ハードグラフ』の第2弾として「1/35ランバ・ラル独立遊撃隊セット」が製品化され、ラル、ハモン、クランプ、ゼイガン、一般兵2人のフィギュアが付属している。
[編集] 脚注
- ^ 無名のキャラクターとしては18話の若いジオン負傷兵が最初。
- ^ この呼称はアニメ本編には出てこない。もともとは劇場版第二作『哀・戦士』公開前のプロモーション用に作られた後付の設定(当時は『青き巨星』)であった。
- ^ マ・クベはキシリア派であり、戦場付近にある鉱山採掘基地の存在がラルを通してキシリアと対立関係にあるギレン・ザビやドズル・ザビに知られる事を恐れた。
- ^ ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』では、ジオン軍により占領されたニューヤーク市のパレードにハモンと共に参加し敬礼を行っている映像があるが、この映像は公式に認定されていない。ガルマの仇討ち任務以前のラルは、前述のように第一線から外れていたはずである。
- ^ これにより、白兵戦を得意とする軍人である彼がモビルスーツのパイロットとしてもベテランであったことが合理的に説明されている。
[編集] 関連項目
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ガンダムシリーズの映像作品 | ||||||
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ガンダムシリーズの劇中項目 | ||||||
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