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マ・クベ - Wikipedia

マ・クベ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

マ・クベ(U.C.?~0079年12月)はアニメ、『機動戦士ガンダム』に登場する、架空の人物。声優塩沢兼人、ただし特別版は田中正彦


注意以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。


目次

[編集] 概要

キシリア・ザビ配下のジオン公国突撃機動軍大佐。副官はウラガン、部下にはクリンクバイスラングヘイブなど。

ジオン軍の地球侵攻作戦では資源採掘地帯オデッサの基地司令となり、資源採掘・輸送、基地防衛などを統轄していた。また占領地では、任務の傍ら骨董品蒐集に努めており、特に北宋期と推定される白磁の壺は彼の寵愛を集め執務室に多く並んでいる。また基地の防衛に努める一方、地球連邦軍の副将エルランに内通を促すなど優れた策謀家としても活躍した。このように軍人としての功績はあるが、計算高い性格の上に情が薄く、官僚的で政治的な駆け引きには長けるものの、任務達成のためなら手段を選ばない狡猾な印象が強い。ただしその策はしばしば詰めが甘く、また失敗した際の備えも疎かであった。

ガルマ・ザビの仇討ちのため地球に降下したランバ・ラル隊にも、一旦は十分な補給を保証するものの、政治的な理由(ランバ・ラルキシリア・ザビと対立するドズル・ザビの部下)からその約束を反故にしたり、ソロモンから脱出して来た兵士たちを見捨てようとするなど、黒い三連星バロム大佐から「前線に立つ兵士たちの気持ちが分かっていない」と批判を受けていた。また、独自の軍服(というより階級章付きの私服に近い服装)を常用していることからも、その気質が武人ではなく(悪い意味で)文人に近いことがうかがわれる。

なお、マ・クベの登場内容については各作品で多少異なっている[1]。声優は2000年に初代の塩沢兼人が死去したため、以後は田中正彦が担当している。

余談だが、彼の名前の由来は虫プロ出身の富野監督にとって馴染み深い手塚治虫キャラの一人「ロック」こと「間久部緑郎(まくべろくろう)」に因むという説(手塚は間久部の名をマクベスからとっている)、他のキャラクター同様に太平洋戦争に関連する語句「馬来部隊[2]」からの引用説、目的のためには手段を選ばない、目的は手段を正当化するといった権謀術数の意味で使われる英語「マキャヴェリズム」由来説など、マニアの間でも様々な説がある。

[編集] テレビアニメ版

登場話数は第16話・18話・20話・22話~25話・36話・37話。第16話の初登場シーンで壺を指で弾き音色を楽しむ姿が描かれ、早くも骨董マニアぶりを見せつける。

第18話では鉱山基地の一つを督励に訪れたキシリアと共に試作型モビルアーマーアッザムを操縦してガンダムとの交戦を経験。特殊兵器アッザム・リーダーで高周波攻撃をかける。一旦はガンダムを出力低下に追い込むも、リーダーが破壊されるとあっさり敗退、キシリアの命で基地を将兵ごと爆破処分し(この時は基地の将兵を心配こそするものの、やむなく命令に応じていた様に見える)、その隙に辛うじて逃走に成功した。

第22話では、特殊部隊による「故意にレーダーだけを残した」破壊工作、ついでグフドップの時間差攻撃でガンダムガンキャノンホワイトベースを分断しての各個撃破作戦、さらにホワイトベースに「わざと無傷にしていたレーダー索敵によるドップからの避退」を許してメガ粒子砲陣地の射線上に誘い込み砲撃を浴びせる、という三段構えの周到かつ執拗な策で、ホワイトベースを大破着底させる鮮やかな知略を見せた。しかし、ホワイトベース隊の苦し紛れの偽装工作に引っかかり、止めを刺すのを怠っている。

続く第23話ではグフ+ドダイYS・ドップで編成されたクリンク隊に命じてマチルダ・アジャン中尉のミデア隊によるホワイトベースの救援阻止を謀り、空中からの猛攻でミデア隊だけでなくガンダムまで窮地に立たせる。しかし、ミデア隊が運んできたGファイター+ガンダム・ガンキャノンの反撃でクリンク隊は全滅、結局ホワイトベース隊は救援を受けて立ち直ってしまった。さらに、ドズル・ザビ配下のランバ・ラル隊には鉱山採掘の実態を知られないよう非協力的な態度で通し、第24話でキシリアが派遣してきた黒い三連星とも全く反りが合わず、結局彼らは独走の果てに撃破され、あたら優秀な人材と貴重なMS戦力を浪費してしまった。

地球連邦軍がオデッサ作戦を決行した第25話では、事前に内通していた連邦軍のエルラン将軍を裏切らせようとしたが、直前に内通は露呈、エルランの造反を頼って兵力を割いていなかった方面から防衛線を突破されてしまった。最後の切り札として、南極条約で禁止されたによる攻撃を示唆し連邦軍を恫喝。レビル将軍が脅しに乗らないと見るや迷わず水爆ミサイルを発射したが、これはガンダムによって空中で弾頭部分を斬り落とされ、失敗に終わった。マ・クベ本人は(将兵の大半を置き去りにして)マダカスカルで宇宙へと脱出。その際に本国に送った十分な鉱物資源で「ジオンはあと10年は戦える」と豪語している。しかしこの後半年足らずでジオンは敗北し、彼の言葉はただの負け惜しみとなってしまった。ただ異説もあり、本国に送った鉱物資源はわずかな数量であり、残りはキシリアの突撃機動軍の拠点グラナダに隠蔽していたとも、彼が送った鉱物資源はデラーズ・フリートアクシズひいてはネオジオンが抗争を行うときに用いた(この間13年)とも言われている。

その後、地球連邦軍によるチェンバロ作戦(ソロモン攻略戦)によって陥落の危機に陥ったソロモンに対する救援艦隊の司令となり、グラナダを発する。救援の途上、脱出してきたゼナ夫人(ソロモン基地司令ドズル・ザビの正妻)、ミネバ・ラオ・ザビ(同長女)の脱出ポッドを見捨てようとして、同乗していたバロムの諫言で渋々救出するも、ソロモンの救援という本来の目的はタイミングを逸して果たせずに終わる。しかしこの時既にホワイトベースが掃討作戦に参加することを見越していたのか、バロムをグラナダへ戻るグワジンに残して自らはチベに移り、ソロモン撤退兵力の吸収任務に就く。そこには後述されるシャア・アズナブルへの対抗意識と、中央アジア以来のガンダムとの因縁にケリをつけんとする彼なりの意地もあった。

そして第37話にて、テキサスコロニー近辺で専用の試作モビルスーツギャンに搭乗。ニュータイプの片鱗を見せ始めていたアムロ・レイの搭乗するガンダムとの一騎打ちをした。この時マ・クベは小惑星を爆破したり、ガンダムを誘い込んだコロニーのエアロックに爆弾を仕掛けたり、コロニー内に浮遊機雷をばらまいたりといつも通り様々な策を弄した。これはガンダムやその武装を確実に消耗させる理にかなう行為であったが、例によって詰めが甘く、かえってアムロを怒らせて闘志を高めてしまった。この時、ゲルググに搭乗したシャアから加勢の申し出もあったが、キシリアに重用され始めていた彼を快く思っていなかったことから、これを断っている。

マ・クベはギャンで善戦したが徐々にガンダムにパワー負けし始め、ついにビームサーベル二刀流で左右から機体を切り裂かれ、戦死した。その際、「いいもの」と評するほど寵愛していた白磁の壷をキシリアへ献上するようウラガンに託す有名な最期の言葉を残している。しかし、その後行われた周辺宙域での戦闘によってウラガンがデラミン艦隊の全滅に伴い戦死したため、この望みすらも果たされなかった。

シャアはマ・クベの戦死を「付け焼き刃(のパイロット)に何ができると言うのだ」と嘲笑し、またキシリアもかつては重用した彼の死を少しでも気に掛けたような描写は一切無く、彼のテキサスコロニーでの死闘ばかりか、彼の人生そのものさえ全て無駄に終わってしまったと言えるだろう。

[編集] アニメ映画版

アニメ映画版『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』ではオデッサの司令として登場したが、ランバ・ラル隊へのドム補給を握り潰す程度の描写で、アッザムにも搭乗せず、エルランとの内通も無く、核ミサイルによる恫喝の場面も省かれており、戦況の悪化に伴いザンジバル級マダカスカルで脱出したという描写に留まっている。また、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』では、宇宙要塞ソロモンの救援に向かう途上、ソロモンから脱出してきたゼナ夫人とミネバ・ラオ・ザビを救出したシーンの後、ララァ・スンコンペイトウ襲撃の戦果をシャアがキシリアに報告する際にキシリアの横に随伴していたのが彼の登場する最後の場面となり、ギャンも登場しないし戦死もしていない。つまり映画版におけるマ・クベは、良くも悪くもTV版での己の見せ場を悉くカットされてしまった形となっているが、結果的に悪印象も少なくなっていると言える。 なおニュータイプに関しては完全に否定しており、ガイアの言葉にもまったく耳を貸そうとはしなかった。

[編集] 機動戦士ガンダム THE ORIGIN

機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、与えられた職務に見合うよう階級が中将として設定されている。キャラクターとしての背景もアニメ版における単なる美術品愛好家という設定から、美術歴史等の文化全般に造詣の深いインテリ型の軍人へと拡大解釈されている。そうした背景から、人類の今後の文化活動の中心を地球から宇宙に移動させようという理想を持っており、そのために地球の文化財を獲得するため連邦との戦争継続を願っている。開戦初頭、ジオン軍の中でも地球寄りであったがために連邦との講和を全権委任されており、それを利用しようとするキシリア・ザビなどとの駆け引きも描かれている。

オデッサ作戦終盤では、エルランの内通により判明したレビル乗艦に対し南極条約で使用が禁止されていた戦術核兵器を使用しようとするが、アムロのガンダムによって阻まれ、自らの責任において敗北を認める。ギレン総帥の「敗北時は地球の主要都市を弾道ミサイルで攻撃すべし」との密命を握りつぶし(彼にとっては、地球の文化遺産に比べればジオニズムの理想やザビ家の権威も何ら価値のあるものではなかった)、自らMSギャンを駆ってグフ部隊と共に殿軍を務め、ジムを多数撃破する勇戦振りを見せた(アムロのガンダムとは直接戦っていない)。そして黒海から砲撃を続ける連邦水上艦隊に単機迫り、これを道連れに壮絶な自爆を遂げた。ウラガン等部下達の脱出を見届けた後のテレビ版と同じ「いいもの」発言が最期の言葉となったが、死を強いられた状況での絶叫に近かったテレビ版のものとはかなりニュアンスが異なり、単なるモノへの執着やキシリアへの忠誠心からではなく、むしろ地球文化への賛美とそれに殉じた彼自身の誇りとを思わせる物になっている。

アニメ版では舌先三寸的な印象があったが、オリジン版では黒い三連星のガイアを一睨みで黙らせ、ドム隊の全滅に怯む士官を叱咤するなど、将官たる威厳を持った人物として描かれている。またオリジナルキャラクターであるジャブロー攻撃軍司令ガルシアは彼を激しくライバル視していたが、マ・クベ側には意に介する描写は全く見られなかった。

なおニュータイプに関しては劇場版と同じく完全に否定していたが「敗戦色が濃くなって神がかり的なものを信じたくなったのではないか」とより自分の考えを明確に述べている。

[編集] 機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像

漫画機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』では、地球連邦軍による星一号作戦(ア・バオア・クー攻略戦)の最中、ドズルの未亡人ゼナとその遺児ミネバと共に陥落寸前のア・バオア・クー要塞を脱出。ギャンに搭乗し、シャアと共にゼナらを護ろうとするが、連邦軍戦艦の主砲の直撃を受け、戦死している。テレビアニメ版ではア・バオア・クー攻略戦の前にテキサスコロニーで戦死しているため、死の描写がない映画版の設定を元に描かれているようである。そのため、シャアとの関係もTV版とはやや異なっており、彼に対して多少の対抗心を持っているようだが(当然ではあるが、マ・クベはキシリアがシャアに殺された事には気付いていない)、シャアの提案が正しいことを認めて受け入れていることから、TV版ほどの対立はないようである(シャアもマ・クベのギャンが戦艦の主砲に当たる直前にそれを察知し、警告の意味で名前を叫んでいるので、TV版のように見下しているわけではないようである)。また、自らギャンに乗ってゼナらを護ろうとするなど、TV版のマ・クベに比べてより誠実な人物になっている。

[編集] SDガンダム

SDガンダムシリーズのギャンのキャラクターは、マ・クベのTV版での言動を受け、どの作品でも一貫して「陰険で狡猾な策士で有利なうちは冷徹ぶっているが、不利になると逆ギレして暴れだす小者」として描かれている。

[編集] 小説版

小説版では、テキサスコロニーでペガサス級戦艦と乗艦チベが相討ちになって戦死している。なお、シャアとのライバル関係と敵対心はかなり強調され、「いい尻をしている(上官との男色関係を利用して出世した)」などと陰険な噂を流したという記述がある。

[編集] その他

機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で設定として登場した統合整備計画は、マ・クベが提案したものである。提案時期はU.C.0079年2月で、その当時のマ・クベの階級は中佐であった(アニメ版初登場は同年10月)。

第2次スーパーロボット大戦G』の戦闘デモでは「わたしは うつくしい!」と発言する。

[編集] 搭乗機

専用MSにはシャアらのものとは違った、ゲルマン騎士の兜風の「角」を装備していた。パーソナルエンブレムは「M」の文字。

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ 劇場版『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』のエンディングにおける、声の出演のテロップの「マ」とは、マ・クベのことである。
  2. ^ 小澤治三郎司令長官が率いた第一南遣艦隊の別称。カムラン湾基地に駐留する。マレー沖海戦に於いて英海軍の誇る戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスを撃沈した第二二航空戦隊が所属する。
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