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ドラえもん のび太と鉄人兵団 - Wikipedia

ドラえもん のび太と鉄人兵団

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ドラえもん のび太と鉄人兵団』(ドラえもん のびたと てつじんへいだん)は、月刊コロコロコミック1985年8月号から1986年1月号に掲載された「大長編ドラえもんシリーズ」の漫画作品、及びこの原作を元に1986年3月15日に公開された映画作品。大長編・映画ともにシリーズ第7作。

映画監督は芝山努配給収入12億5000万円、観客動員数260万人。同時上映は『オバケのQ太郎 とびだせ! バケバケ大作戦』『プロゴルファー猿 スーパーGOLFワールドへの挑戦!!』。


注意以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。


目次

[編集] 概略

ドラえもん映画化7周年記念作品として製作され、タイトルもこれまでは「のび太『の』――」であったものから「のび太『と』――」というタイプが初めて採用されたものでもある。予告では、「今度の映画は、何が何だかとにかくすごいぞ」というセリフが流れる。

ドラえもん作品では唯一「世界を自分たちだけの手で救った」作品。なお、作者である藤子・F・不二雄が「ドラえもんの映画史上最強」と語る[1]、メカトピア帝国鉄人兵団による大規模な地球侵攻作戦は、圧倒的な軍事力を誇る鉄人兵団がまず先遣隊を派遣して極秘に侵攻拠点となる要塞を地球上に建設、その後本軍が大侵攻を開始し、先の要塞を拠点に地球上の主要都市を破壊しつくして地球人を総奴隷化しようとするドラえもん作品中でも他に類をみないほど熾烈極まりないものである。そのため、今作品では「鏡面世界」という異世界を舞台にするものの、世界を救うことに重きが置かれ、ドラえもん映画作品の重要な要素である「冒険」の要素はほとんど描かれていない。

作中に現れる、「ロボットたちの社会でロボットは平等と言う考え方が広まり、奴隷制度は廃止され、代わりの労働力として人間を奴隷にしようとしている」という鉄人兵団側の思想は、SFで頻出のロボットによる人間への逆支配というテーマだけでなく、宗教への盲信、人間の奴隷制の歴史への暗な批判が込められている。実際、しずかがリルルからメカトピアの歴史を聞かされた際「まるで人間の歴史と一緒」と揶揄するシーンがあった。

[編集] 物語のあらすじ

のび太は偶然北極で巨大なロボットの足を拾い、自宅に持ち帰った。それ以来、家の庭に次々と降ってくるロボットの部品を、ドラえもんと協力して鏡面世界で組み立て、しずかも呼んで遊んでいた。

だがその最中、そのロボット(ザンダクロス)に恐るべきミサイル兵器が組み込まれていたことが判明。(作中ではビームだが)安全のため、ロボットを3人の秘密にすることを誓った3人だが、のび太のもとにロボットの持ち主と名乗る少女リルルが現れ、のび太はうっかり口を滑らせてしまう。のび太はロボットを返すことを断れず、更に鏡面世界へ入り込むために必要なひみつ道具「おざしきつり掘」まで貸してしまうのであった。

ロボット惑星メカトピアのスパイであったリルルは、メカトピアの地球侵略作戦の足がかりとして、尖兵である他のロボットとともに鏡面世界で前線基地を建設し始めた。リルルたちが鏡面世界の入り口を無理やり広げようとした結果、時元震による爆発が発生し、入り口は塞がれた。

危機は免れたかに見えたが、それも束の間、メカトピアから鉄人兵団が地球へ送り込まれてくるという。のび太たちはジャイアンやスネ夫と協力し、取り返した巨大ロボを改造して味方につけ、鏡面世界を舞台に鉄人兵団を迎え撃つ。

[編集] 舞台

鏡面世界
ドラえもんのひみつ道具「入りこみ鏡」、または「逆世界入りこみオイル」を塗った鏡面から入り込むことのできる異世界。鏡の中のように左右があべこべで、人間や動物は一切いない世界。
メカトピア
鉄人兵団の母星。3万年前、遠い惑星の人間に嫌気が射した科学者が、知性を持つロボットを作って建国した。地球の人間社会と同じような歴史を辿って、現在に至った。労働力を確保するため、地球の人間を奴隷にしようと目論んでいる。

[編集] 鉄人兵団

リルル (山本百合子
ロボット惑星メカトピアが、前線基地建設と地球の調査のために地球に送り込んだアンドロイド。地球人の少女そっくりに作られている。祖国であるメカトピアに忠誠を誓っており、地球侵攻計画の先導を行ない、地球人狩りを遂行するため、鏡面世界の町に前線兵站基地を建設していたが、のび太しずかとの触れ合いの中で、メカトピアの地球侵略に疑問を抱き始める。
女性ゲストは友達として登場することの多い『ドラえもん』作品の中では珍しく敵役として登場したキャラクターでもある。劇場版の女性ゲストの中でも人気が高い。視聴者向けアンケート「ドラデミー大賞」でゲストキャラクター賞に選ばれている。
ザンダクロス/ジュド(声:(コンピュータの声)加藤治
メカトピアから地球に送り込まれた組み立て式の土木工事用巨大ロボット。本来は内蔵された頭脳回路により無人で行動できるが、組み立て時に頭脳を紛失したため、ドラえもんのひみつ道具「サイコントローラー」による脳波操縦方式として完成。後に発見された頭脳回路をドラえもんが改造を加えた上で搭載し、のび太たちの力強い味方となった。本来の名は「ジュド」だが、ドラえもんは北極で発見したことからサンタクロースをもじって「ザンダクロス」と名づけた(原作でしずかは「ラッコちゃん」、のび太は「『マジンガー』や『ガンダム』みたいなかっこいい名前」がいいと言ったが、アニメ版ではガンダムやマジンガーなどの固有名詞は変えられた)。
一部書籍においてデザイン担当は大河原邦男と記述されているがこれは誤認であり、実際のデザインは当時藤子プロでアシスタントをしていたたかや健二によるものである。
作品発表当時から意匠が『機動戦士Ζガンダム』の百式に似ていると、一部のファンの間で囁かれていた。これに関し、デザインしたたかやは「Neo Utopia」40号のインタビューで百式を元にデザインしたことを語っている。
ロボット隊長(声:田中康郎
メカトピアの鉄人兵団を総括する隊長。
ロボット兵士(声:広瀬正志橋本晃一
ロボット隊長に従事するロボット。工事・工作用ロボットと違い互いに会話をし熱線を放つ武器を携帯している。飛行能力もあり、また兵士の中にはマントを付けた者など階級が区分されている。奴隷として人間を捕獲するのが主な任務であり作戦の中心的な役割を担った。
工事・工作用ロボット
リルルと共に尖兵として前線基地の建設用に送り込まれたロボット達。様々なタイプが存在する。

[編集] ゲストキャラクター

ミクロス (声:三ツ矢雄二
ラジコンマニアであるスネ夫の従兄弟であるスネ吉が作ったラジコンロボット。ドラえもんの改造により、人間並みの知能を持ち、言語も話せるようになった。難しいことを考えると頭がショートを起こす。アカンベー機能も加わり、舌を出せる。比較的重いテーマの本作ではコメディリリーフとして活躍し、彼の一言が地球を救うきっかけになる。
博士(声:熊倉一雄
3万年前、人間社会に嫌気が差し、機械によるユートピア(理想郷)・メカトピアを建国した科学者。現在のメカトピアでは神と呼ばれている。ロボットによる天国のような理想の社会ができることを目標としていたが、「競争本能」(他人よりも少しでも優れた者になろうとする本能)を頭脳に植えつけたため、ロボット達は自分の為なら他者を犠牲にするのも厭わない部分を持ってしまい、彼の想いとは違った形でメカトピアは発展していくことになった。

[編集] スタッフ

  • 原作・脚本:藤子・F・不二雄
  • レイアウト:本多敏行
  • 作画監督:富永貞義
  • 美術設定:川本征平
  • 美術監督:高野正道
  • 録音監督:浦上靖夫
  • 音楽:菊池俊輔
  • 効果:柏原満
  • 撮影監督:斎藤秋男
  • 特殊撮影:原真悟
  • 監修:楠部大吉郎
  • プロデューサー:別紙壮一、小泉美明、波多野正美
  • 監督:芝山努
  • 演出助手:安藤敏彦原恵一
  • 動画チェック:石井文子、内藤真一
  • 色設計:野中幸子 
  • 仕上監査:代田千秋、片川喜好
  • 特殊効果:土井通明
  • 整音:中戸川次男 
  • 録音スタジオ:APUスタジオ
  • 原画:大塚正実、徳田悦郎、池ノ谷安夫、名須川充、若松孝思、若山佳治、飯山嘉昌、山本勝也、斉藤文夫、伊藤一男、窪田正史、林一哉、高木みえ子、束田久美子、一川孝久、飯口悦子、原完治、重国勇二、神村幸子
  • 背景:工藤剛一、徳重憲、福田和矢、藤井美千代、茂呂孝志、池田淳、笠原淳二、山崎光枝
  • 撮影:高橋秀子、伊藤修一、伊藤佳樹、桶田一展、長谷川洋一、三浦豊作、木次美則、篠原博子
  • エリ合成:平田隆文、古宮慶多
  • CGタイトル:真山紀美代 
  • リスワーク:阿武千恵
  • 編集:井上和夫、渡瀬祐子
  • タイトル:道川昭
  • 現像:東京現像所
  • 文芸:水出弘一
  • 制作事務:片山幸子、北沢育子
  • 制作進行:伊坂武秀、神田高秀
  • 制作デスク:田中敦
  • 制作担当:山田俊秀
  • 制作協力:藤子スタジオ旭通信社
  • 制作:シンエイ動画小学館テレビ朝日

[編集] その他

  • 一般的にはあまり知られていないが、テレビ朝日版で2回目の絵柄が変わった後の最初の作品である。
  • 今では定番となっている、主題歌が入る直前ののび太の叫び声「ドラえも~ん」が初めて採用された作品。声は比較的小声である。
  • また、原作者が何度も加筆修正した作品であり、連載当初と単行本の終わり方が異なっている。連載当初は鏡面世界から戻ってきたところで終わる。単行本ではドラえもんたちが戻ってきたシーンはカットされ、後日談が加筆された。なお、この後日談のラスト3ページ分は、単行本発刊(1987年2月)前に、本作が再掲載された「別冊コロコロコミックスペシャル9号」(1986年4月発行)の時点で既に加筆されていた。
  • 映画版では、のび太たちが警察などに協力を依頼して相手にされないシーンの後には、「この映画を見ている人以外は、無理だよ」という視聴者にいきなり語りかけるメタフィクショナルな場面がある。
  • ドラえもんのアニメ制作会社であるシンエイ動画にあやかって、「シンエイ物産」という建物も登場する。
  • 鏡面世界内の地球で戦うという設定上、左右が逆で無人の住友ビル新宿三井ビルディング伊勢丹新宿中央公園東京タワー国会議事堂自由の女神ビッグ・ベン凱旋門など、実在の建造物が数多く登場する作品でもある。なお自由の女神は、コロコロ連載時の原稿では誤って元のまま(左右逆になっていないまま)掲載された。

[編集] 主題歌

「わたしが不思議」(作詞:武田鉄矢/作曲:菊池俊輔/唄:大杉久美子

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

[編集] 脚注

  1. ^ 公式サイト内インタビュー
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