ドラえもん のび太の宇宙開拓史
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『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』(どらえもんのびたのうちゅうかいたくし)は、藤子・F・不二雄によって執筆され、月刊コロコロコミック1980年9月号から1981年2月号に掲載された「大長編ドラえもんシリーズ」の作品。および、この作品を元に1981年に公開された映画作品。大長編、映画ともに第2作。
映画監督は西牧秀夫。配給収入17億4000万円、観客動員数360万人。併映作は、『怪物くん・怪物ランドへの招待』。
この作品から絵柄が変更された(この作画は1985年度「ドラえもん のび太の宇宙小戦争」まで)。
2008年3月公開ののび太と緑の巨人伝スタッフロール後のおまけ映像(来年の映画予告を兼ねている)に、チャミーが登場しており、2009年にリメイクが示唆されている。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
目次 |
[編集] 物語のあらすじ
超空間の事故により、のび太の部屋の畳とロップルの宇宙船の倉庫とがつながった。宇宙の惑星、コーヤコーヤ星を第2の遊び場としたのび太は、ロップルやチャミーと共に楽しい日々を過ごす。
しかし、コーヤコーヤを含めた小宇宙にある鉱脈であるガルタイトの独占を企むガルタイト鉱業が、コーヤコーヤ星に開拓者が移り始めたことで住民を攻撃し、ロップルらは攻撃の標的となって生活していた。
そのことを知ったのび太らは、ロップルたちの生活を守るため、ガルタイト鉱業に闘いを挑む。
[編集] 物語の舞台
- 宇宙(コーヤコーヤ星)
- 地球(銀河系)から遠く離れた小宇宙に存在する「コーヤコーヤ星」と「トカイトカイ星」が舞台。コーヤコーヤ星は、トカイトカイ星の人類の移住した開拓星。どちらの星も重力が地球よりも格段に小さいため、住人の体力や建材も地球に比べて非常に弱く、逆に地球人は(たとえのび太でも)スーパーマンの如き力を発揮できる。コーヤコーヤ星は反重力エネルギーを発生させるガルタイトという鉱石でできている。彼らの文明は石器時代からこの鉱石を動力として使っていたため、プロペラなどの地球にある一部の機械は発明されていない。また、冬には猛吹雪、春先には大洪水が起きるという環境のため、冬の間は家を地下に埋めて冬ごもりをしている。尚、雪は白くなく、赤と青の2色で混ざり合って紫になる。月も赤い月と青い月がある。
[編集] ゲストキャラクター
- ロップル(声:菅谷政子)
- 開拓星・コーヤコーヤ星開拓民の少年。異次元空間によって自分の宇宙船とのび太の部屋が接続したことからドラえもん達とのび太と友情を育み。冒険を繰り広げる。射撃はあまり上手ではない模様。
- チャミー(声:杉山佳寿子)
- ロップルと共に行動する、全体がピンクの毛で覆われたぬいぐるみのような雌動物。人語を、文末に「だわさ」とつけて話す。ドラえもんに貰ったどら焼きを気に入る。原作と劇場版では見た目が大分異なる。
- クレム(声:小山茉美)
- ロップルの妹。のび太にあやとりを教えてもらう。
- 母(声:塚田恵美子)
- ロップルとクレムの母。夫とは死別。
- カモラン(声:二見忠男)
- ロップル一家の隣人。
- ブブ(声:山田栄子)
- カモランの息子。クレムに密かに好意を抱いている。
- ボーガント(声:内海賢二)
- ガルタイト鉱業の主任。
- ゴス(声:今西正男)
- ガルタイト鉱業の社員。二人組のうち、太っている方。ロップル達をコーヤコーヤ星から追い出そうとあの手この手で住民に嫌がらせをするが、のび太達の活躍により散々な目に遭う。
- メス(声:北村弘一)
- ガルタイト鉱業の社員。二人組のうち、背が高い方。ゴスと共にコーヤコーヤ星の住民に嫌がらせをしている。
- ギラーミン(声:柴田秀勝)
- ガルタイト鉱業に雇われた腕利きの用心棒。コーヤコーヤ星の独占を邪魔するドラえもんらを殺そうとする。更には、「コア破壊装置」を星に取り付け、強制的に住民を追い出そうとする。人を殺す事も厭わない人間ながら、ギラーミンのポリシーとして「どんなに相手が強くても恐れず、どんなに相手が弱くても見くびらず」を持ち、強者との闘いを望む一面も覗かせる。初対面でのび太の実力を見抜き「このガキ只者ではないな」と心の中で思うほど(のび太の方も「恐ろしい相手」とギラーミンの力を見ぬいた)。のび太との一対一の早撃ち勝負を行うも敗北。アニメ版ではロップルに額を撃たれ敗北。
- キャプテン(声:桜本昌弘)
- のび太達のいつもの空き地を占領した中学生の野球団体(野球部ではない)のキャプテン。野球部には、野球が下手なため入れてくれないらしい。
- 中学生(声:龍田直樹、二又一成)
- 野球団体の一員。
[編集] コーヤコーヤ星の動物
- ウオガエル
- 魚とカエルの合成生物。冬にはカエルのように冬眠する。
- デンデンワニ
- 人の背丈ほどあるカタツムリとワニの合成生物。
- タマゴ鳥
- タマゴから羽が生えてる鳥。劇場版ではジャイアンとスネ夫が殻を割るがいくら割ってもタマゴのまま。
- オトト鳥
- 魚と鳥の合成生物。ガルタイト鉱石を使って冬にはトカイトカイ星に飛び立つ。
- パオパオ
- 人の背丈ほどの二本足の象。胴体はなく、顔から足が生えている。野生動物ではあるが人間を怖がらない。元々は同作者の「ジャングル黒べえ」登場のキャラクターだった。
- ダックスキリン
- 普段はダックスフントのように胴長の体型をしているが、高いところのえさを取るときには胴が短くなり、首が伸びる。劇場版ではジャイアンとスネ夫が胴と首を同時に引っ張って伸ばそうとする。
- パンク
- 体内に空気が詰まってるパンダ。体内の空気を一気に放出して空を飛べる。
[編集] 映画スタッフ
- 原作・脚本:藤子・F・不二雄
- レイアウト:椛島義夫
- 作画監督:富永貞義
- 美術監督:川本征平
- 撮影監督:小池彰、高橋明彦
- 録音監督:浦上靖夫、大熊昭
- 音楽:菊池俊輔
- 監修:楠部大吉郎
- プロデューサー:別紙壮一、菅野哲夫
- 監督:西牧秀夫
- メカニックデザイン:大河原邦男
- 演出助手:高須賀勝巳
- 動画チェック:小林正義、上ノ山順子
- 色設計:若尾博司
- 仕上監査:西牧志づ子
- 特殊効果:岡嶋国敏
- オープニング作画:窪田正史、一川孝久、島田和義
- 美術補:沼井信朗
- 背景:高野正道、矢島みよ子、藤井美千代、浜名お孝、関口和博、坪田秀子、佐藤正行、河内操
- 撮影:鈴木明子、坂田美保、角原幸枝、小林初江、熊谷正弘、金子仁、小山信夫
- 編集:井上和夫、森田清次
- 効果:柏原満
- 整音:中戸川次男
- スタジオ:東宝録音スタジオ
- 現像:東京現像所
- 文芸:水出弘一、山本有子
- 制作進行:井上修、生嶋真人、藤沢一夫、田村正司、川口亘、田中敦、小沢一江
- 制作担当:佐久間晴夫
- 制作協力:藤子スタジオ、旭通信社
- 制作:シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
[編集] 原画
- 春貴健司 山崎勝彦 山崎猛 吉川由美子 斉藤かおる
- 小野隆哉 飯口悦子 窪田正史 桜沢裕美 池ノ谷安夫
- 一川孝久 増谷三郎 大塚正実 島田和義 飯山嘉昌
- 木内良子 森下圭介 端名貴勇 川島彰 原完治
- 星野真砂子 大嶋聡 伊藤光男 大滝友子
[編集] 主題歌・挿入歌
[編集] 主題歌
[編集] 挿入歌
- 「ドラえもんのうた」 (作詞:楠部工/補作詞:ばばすすむ/作曲・編曲:菊池俊輔/唄:大杉久美子)
- 「心をゆらして」(作詞:武田鉄矢/作曲・編曲:菊池俊輔/唄:岩渕まこと)
- TVの感動系やスペシャルの話でも、アレンジされてBGMとして使われた。映画のクライマックスで流されるが正確にはエンディングテーマではなくEDは『ドラえもん のび太の恐竜』と同じく「ポケットの中に」。
[編集] その他
コーヤコーヤ星の動物として、「ジャングル黒べえ」のパオパオが登場する。原作のチャミーは猫のような目をもつ白い毛の動物だったが、アニメでは見た目が大きく変更された。
また、原作ではクライマックスはのび太とギラーミンとの決闘が描かれているが、敵役を気絶させただけとは言え、主人公が直接手を降すことは適当でないといった配慮からか、映画版におけるギラーミンのラストシーンは、ロップルによる不意討ちというあっけないものになっている。なお、藤子不二雄Aの『まんが道』で、藤子不二雄両人が手塚治虫と一緒に西部劇映画『ベラクルス』を鑑賞し、本作品と同じシチュエーションによる決闘シーンに感銘を受けたエピソードがあることから、原作の決闘は『ベラクルス』へのオマージュであると考えられる。
また、爆発寸前のコーヤコーヤ星をコア破壊装置にタイムふろしきを被せることで事無きを得るくだりも、原作では風によって偶然タイムふろしきが飛ばされたのに対し、映画版ではロップルの機転でという展開に改編されている。
一方、のび太の二大特技である射撃とあやとりが、物語において重要な役割を果たしており、大長編においては格好良いのび太の図式を、ストレートな形で確立した最初の作品である。
作中ではSF作品では頻出の超光速航行(ワープ航法)について説明をするシーンがある。この作品では離れた二点間での移動を空間を曲げてその二点をくっつけることで一瞬の移動を可能にするという空間歪曲型のワープ方式を採用しており、その原理を一枚の紙に書いた二点を紙を曲げることで接触させるという方法(映画版では宇宙船のベルトを使いのび太の部屋とロップルの宇宙船が偶然空間がねじれてくっついたという風に表現)で視覚的に分かりやすく説明している。
この作品のヒントとなったのは、映画の『シェーン』(ジョージ・スティーブンス監督、1953年)と『ブリガドーン』(ヴィンセント・ミネリ監督、1954年)であると作者が語っている(『キネマ旬報』1990年3月下旬号)。
原作は月刊コロコロコミック1980年9月号から1981年2月号までの6ヶ月間に分けて連載された。前作である『ドラえもん のび太の恐竜』が1980年1月号から3月号までの3ヶ月と短期だったのから大幅に引き伸ばされた。また、この年から大長編ドラえもんの連載が夏に始まり翌年春に終わる形式となる。(そのため大長編作品の出だしは夏休みが多いが、映画公開は春先の為、春休みに変更されているものがある。)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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