デスティニーガンダム
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ZGMF-X42S デスティニーガンダム(Destiny Gundam)は、テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場する架空の兵器(モビルスーツ・MS)。メカニックデザインは大河原邦男。
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[編集] 機体解説
デスティニーガンダム | |
型式番号 | ZGMF-X42S |
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所属 | ザフト |
建造 | プラント |
生産形態 | ワンオフ機 |
全高 | 18.08m |
重量 | 79.44t |
主機関 | ハイパーデュートリオン |
装甲 | ヴァリアブルフェイズシフト装甲 |
OS | MOBILE SUIT NEO OPERATION SYSTEM Ver.1.62 Rev.29 |
武装 | MMI-GAU26 17.5mmCIWS×2 MX2351 ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置×2 RQM60F フラッシュエッジ2ビームブーメラン×2 MMI-714 アロンダイトビームソード M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲 MMI-X340 パルマフィオキーナ掌部ビーム砲×2 MA-BAR73/S 高エネルギービームライフル 対ビームシールド |
特殊装備 | ミラージュコロイド 光の翼(VL近縁種) |
主な搭乗者 | シン・アスカ |
デスティニーは、ZGMF-X666Sレジェンドと共に開発されたザフト軍の最新鋭MSである。デュートリオンビーム送電(DB)システムと核動力の複合機関である「ハイパーデュートリオン(Hyper Deuterion:HD)エンジンを主機関とし、在来機を凌駕する高出力を誇る。[1][2]その大パワーを新OS『Gunnery United Nuclear-Deuterion Advanced Maneuver System(核・デュートリオン統合先進機動砲撃システム)』で制御する。開発はプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの主導により、当時既に形骸化していたユニウス条約を半ば確信犯的に破り(機体型番に核搭載を現すAを記していないなど)、その類稀な機体性能を実現した。実戦投入された機体はザフトのエースパイロットであるシン・アスカの搭乗を前提としたチューンナップが施されており、事実上彼の専用機となっている。
本機の大きな特徴として、「より人間に近い動きを可能とする機体」であることが挙げられる。これは、人を模した形を持つモビルスーツだが、堅い外装を持つがゆえに人と同じように動くことが出来ず、特に戦闘用に置いては、「銃を撃つ」、「剣を振る」などといった限られた基本動作は人間と同じように出来るが、本機に置いてはそうした限られた動作だけでは、充分な性能を引き出すことが出来ないことが設計段階で判明していたからである。
基本装備としてインパルスのフォース・ソード・ブラストの各シルエットの機能を併せ持つ本機では、全身のあらゆる箇所に武装が設置されており、それらを戦闘中にタイムロスなく使いこなす必要があると判断され、場合によっては複数の異なる性質の装備を同時に使うことも想定されたため、より人間に近い動作が可能となるよう、基本構造を細かなパーツに分解し、それぞれを連動させる方式を取っている。また、関節部はフェイズシフト装甲技術を転用した特殊素材となっており、アクティブ状態では鈍い金属光を放つようになっている。
脚部は装甲を複数のパーツに分解し、それぞれをフレキシブルにスライドさせることで、広い関節稼動部分と高い運動性を実現している。装甲を分割し、稼動範囲を広げることは、装甲に隙間を作ることと同意であり、防御力の低下は避けられない。しかしながら、ザフト開発陣は、専属パイロットであるシン・アスカの戦闘データを解析し、パイロットの運用実績にあわせた稼動範囲の設定と装甲分割を行っている。これにより、デスティニーは敵に対する無防備な瞬間を最小限にとどめながら最大の機動性を発揮することが可能となった。なお、この装甲調整はシン・アスカに引き渡された後も、複数回に渡って微調整が行われている。
同様のシステムはストライクフリーダムにも採用されているが、ストライクフリーダムがキラ・ヤマトの技量に大きく依存することで防御力の低下を無視し、運動性を向上させる仕様であるのに対し、デスティニーのそれはより実戦的なものとなっている。
背部のウイングユニットはメインスラスターを中心に左右対称に配置されている。大型パーツの内部に小型ウイングが収納されており、展開すると合計10枚のウイングとなる。
ウイング内のスラスターには、D.S.S.Dで開発されたヴォワチュール・リュミエール(VL)の近似技術が採用されており、出力増大に伴い「光の翼」が発生する。なお、DSSDは非軍事組織であるため、プラントの支援も受けている組織ではあるが、軍事への技術協力を完全拒否しており、同技術がDSSDから直接伝えられたとは考えにくい。また、スターゲイザーでは光の幕で太陽風を受けるソーラーセイルを主推進器としているのに対し、デスティニーでは自機の電源から得られるエネルギーを特殊光圧に変換し、主推力として用いるなど、基本的な構造に大きな差異が見られる。
これらのシステムは膨大な出力を持つ本機でなくては稼動不可能であり、要求通りのスペックで製造した場合、その構造は従来の機体よりも数段複雑なものとなる。その為、生産性及び整備性の点で大きな課題を残している。
名称の「デスティニー」は「運命」の意。
額にはイタリア語で2を指す「DUE」(ドゥーエ)の文字がある。
[編集] 装備
- MMI-GAU26 17.5mmCIWS
- 両側頭部に内蔵された近接防御機関砲。本機唯一の実体弾兵装であり、数少ない固定武装でもある。先行のセカンドシリーズ機に装備された20mmCIWSよりも小径化されている。劇中での使用は確認されていない。
- MX2351 ソリドゥス・フルゴール ビームシールド発生装置
- 両手甲部に設置された光学防御装備。展開中でも内側からの攻撃は素通りし、攻撃と防御を同時に行うことが出来る。その技術はユーラシア連邦が開発した光波防御帯シールドが源流であると言われ、何らかの経緯でプラントに流出したものとされる。展開領域の任意調整が可能であり、シールドの形状を変えるのみならず、ガンダムSEEDシリーズチーフメカ作画監督重田智の発言によればビームガンとしての使用も可能である。X666Sレジェンドの両手甲部やXX09Tドムトルーパーの両腕にも装備されている。デストロイの大出力ビームを完全に無効化するなど、ビーム兵器に対しては従来の対ビームコーティングシールドを凌駕する防御力を発揮する。同じく実体弾にも有効だが、対ビームコーティングされた物体には展開面を透過されてしまう弱点を持つ。ただし、本機は主装甲システムとしてVPS装甲を採用するため、このような心配は無用である。
- RQM60F フラッシュエッジ2ビームブーメラン
- X56S/βソードインパルスに装備されたRQM-60フラッシュエッジの発展型。ただし、連結機能はオミットされている。ビーム刃を延長する事でサーベルとしても使用可能。投擲武装として運用される場合でも、対ビームコーティングシールドを容易に破断する威力を持つ。
- MMI-714 アロンダイトビームソード
- ソードインパルスのMMI-710 エクスカリバーやグフイグナイテッドのMMI-558 テンペストの発展型である大型ビームソード。対MS戦の他、艦船等の装甲や機関部の破壊も鑑みて設計されている為、“対艦刀”とも称される。機体の全高を上回る刀身長を持ち、通常MSの倍以上の機体サイズを持つデストロイを一刀両断する等、斬撃兵装としては破格の威力を有する。先端部分でもデストロイの重装甲を一撃で貫通する威力が有り、実剣としての性能も高い。不使用時は刀身を2つに折り畳み、右背部のウェポンラックに収納する。なお、これだけの長さの剣を扱うには機体の駆動部自体にも高い剛性と柔軟性が求められ、デスティニー以外の機体に使いこなす事は不可能とされる。
- 名称の由来は、円卓の騎士の長サー・ランスロットの愛剣アロンダイトから。形状は、エクスカリバーやテンペストよりはソードストライカーのシュベルトゲベールに近い。
- M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲
- 背部左ウェポンラックに装備された大型ビームランチャー。アロンダイト同様、不使用時には2つ折り状態でマウントされる。発砲時はマウント部のクランクアームを展開し、マニピュレーターでグリップを保持する。展開時の全長は22mと本機の全高を上回る。HDより供給される膨大な電力により、ガナーウィザードのM1500オルトロスやX56S/γブラストインパルスのM2000ケルベロスを上回る出力を誇る。同時に速射性能にも優れており、迎撃にも充分に対応可能。なお、砲身分割の技術には本体でも採用された基本構造体の細部化と連動が生かされている。
- MMI-X340 パルマフィオキーナ掌部ビーム砲
- 左右の掌底部に内蔵された(パルマフィオキーナとはイタリア語で「掌の槍」の意)小型ビーム砲。砲と言うよりは、むしろ開放型のビームジェネレーターに近いデバイスである。密着状態の敵機を砲撃する等、主にゼロ距離戦闘時にその真価を発揮する。ビームサーベルとしての運用も可能。デスティニー独自の実験的な兵装であり、過去のMSにこれと類似した武装を搭載した例は皆無であり、故に戦術バリエーションも未知数である。パイロットの発想次第では様々な応用が可能であるとされている。一撃で戦艦を破壊する威力を有し、インフィニットジャスティスの高出力ビームサーベルを短時間ながらも受け止めている。[3][4]
- MA-BAR73/S 高エネルギービームライフル
- 先行のセカンドステージMSが装備するビームライフルの改良モデル。HDに対応したエネルギー供給システムを採用し、高い出力・速射性能を有する。不使用時には尻部ラッチにマウントされる。
- 対ビームシールド
- 左腕に装備される対ビームコーティングシールド。インパルスのMMI-RG59V機動防盾と同様、上下に伸縮する事で防御面積を変化させる。本機はビームシールドに加え、VPS装甲の常時展開による物理攻撃に対しての高い防御力を備えており、このシールドは専らフェイルセーフ用の装備としての感が強い。実際、劇中での「盾」としての使用頻度は多くなく、第37話で脱走したアスランにビームライフルを破壊された時、また第43話で片腕を破壊された時に、それらの爆発から自機を守った事がある程度である。
- ミラージュコロイド
- デスティニーのミラージュコロイドは、自機の存在を隠蔽するステルス装備では無く、散布したコロイドに自機の残像を映し出す幻惑機能である。この機能は特に高速機動時に使用され、本機のスピードと相俟って敵を翻弄する。
[編集] 劇中での活躍
注意:以降の記述で劇中での活躍に関する核心部分が明かされています。 →[記述をスキップ]
初登場は第35話ジブラルタル基地で、シン・アスカの乗機としてレジェンドと共に登場。第37話でレイ・ザ・バレル搭乗のレジェンドと共に、アスラン・ザラとメイリン・ホークが脱走に使用したグフイグナイテッド追撃のために出撃、これを撃墜する。
その後、第38話でヘブンズベース守備隊のウィンダム数機、デストロイを単独で2機、レジェンド、インパルスとの連携で1機、合計3機撃破するといった多大な戦果を挙げ、反ロゴス同盟軍の勝利に大きく貢献する。
40話から42話までのオーブ攻防戦では、ムラサメ数機を瞬時に撃破し、カガリ・ユラ・アスハ駆るアカツキを圧倒するが、キラ・ヤマトのストライクフリーダムの介入によって仕留め損なう。そのままストライクフリーダムとの一騎打ちに突入するも、不利と見て一時撤退する。更にその後、レジェンドとの連携でストライクフリーダムを追い詰めるが、インフィニットジャスティスに乗り込んだアスランの参戦により勝機を逃し、再び撤退を余儀無くされる。
第45話では、プラント本国に標的を定めたレクイエムの発射を阻止する為に出撃。レクイエム攻略戦においてデストロイ、ザムザザー、ゲルズゲー、ウィンダムらを次々と撃破しダイダロス基地司令部を制圧、名実ともにプラント本国を救う活躍を見せる。
最終話、月面レクイエム攻防戦において、再びアスラン駆るインフィニットジャスティスに挑む。しかし、機体及び殆どの兵装を破壊され月面に墜落、機体は大破する。パイロットのシンは無事であったが、機体は稼動不能の状態であった。寄り添う様に横たわる本機とインパルスの姿がこの回のエンドカードとして使われ物語を締め括る。
[編集] 脚注・余談
- ^ 設定では「従来型DBシステムと核動力のハイブリッド機関」と定義されているのみで、劇中でも何の説明もなされておらず、その詳細は不明である。
- ^ 第42話においては、核動力を搭載しているにも関わらずエネルギー切れを起こした事を示唆する描写がある。(スペシャルエディションIIIではこの描写はカットされている。)これについては後に「電撃ホビーマガジン」誌上や「HGミーティア」取扱説明書で「核動力搭載MSと言えども、短時間に極端に大きなエネルギーを消費すれば、エンジンからの電力供給が消費電力に追いつかずエネルギーダウンを引き起こす」と解説された。しかし『パーフェクト・アーカイブシリーズ 第5弾 機動戦士ガンダムSEED DESTINY』誌上において掲載された森田繁&サンライズ設定制作部Q&A」においては、HDについて「核エンジンとデュートリオン、2つのジェネレーターが相互補完しているので理論上パワーダウンは有り得ない」と解説され、デスティニーの出力低下描写については、設定に矛盾する描写として「デュートリオンのチャージが間に合わなかった…ということしておいてください(笑)」と言葉を濁した返答なされた。また、後に公式サイトの「DESTINY-I.Q.」においても「機関部に取り入れられている「ハイパーデュートリオンエンジン」はインパルスらセカンドシリーズに搭載されていたDBシステムと核エンジンのハイブリッド動力で、双方のジェネレーターが相互補完しあって理論上はパワーダウンする事が無くなっている」「核エンジンも理論上落ちる事は無いが、HDはその出力を桁違いに上回るらしい」と改めて説明されており、しかし同時に、デスティニーがパワーダウンを起こした理由の説の一つとして「ロールアウト間も無い状態だったデスティニーは、いまだ実戦でデータを取って機体の調整を行っている段階であり、尚且つ機体そのもののポテンシャルが高かった為に、デストロイ数機を相手にしても性能の限界にいたる事が無かった。しかしそこで突然、本機と互角に渡り合える性能を持つストライクフリーダムとの戦闘が発生。相手も以前とは違い、戦闘する意思を明確に持ったキラ。この激しい戦闘のせいで、急激に機体性能を引き出して最大ポテンシャルを発揮してしまったデスティニーが機関部に何らかのエラーを起こした為、核とDBのどちらかのチャージが間に合わなくなってしまったというのが、この原因であると思われる」との説も発表されている。しかしそこでも「真相は不明」と、曖昧な表現をされている為、これが真実かどうかは明らかにされていない。
- ^ なお、劇中の他の多くのビーム兵器と異なり、発射されるビームは「青白い光」を放つ。アイデアはキャラクターデザインの平井久司によるもの。
- ^ イザーク・ジュール役の声優・関智一はこの武装を見て「他人の機体の感じがしない」と苦笑いをしていたらしい。これは関が主演の『機動武闘伝Gガンダム』に登場した技「シャイニングフィンガー」もしくは「爆熱ゴッドフィンガー」と酷似していたからである。また『公式ガイドブック3 機動戦士ガンダムSEED DESTINY -誓いの空-』では、監督自ら「かめはめ波を撃つ(両手で使用する)予定があった」とインタビューに答えている。
[編集] 関連項目
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ガンダムシリーズの映像作品 | ||||||
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ガンダムシリーズの劇中項目 | ||||||
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