チーズ
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チーズ(英:cheese)とは、牛・水牛・羊・山羊・ヤクなどからとれる乳を原料とし、凝固や発酵などの加工をしてつくられる食品(乳製品)の一種。日本語での漢字表記は乾酪。
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[編集] 概要
家畜の乳は古くから栄養価の高い食品として世界中のさまざまな民族に利用されてきたが、そのままでは保存性に欠ける上、液体のため運搬にも不便である。これらの欠点を補うために水分を抜いて保存性と運搬性を高めたのがチーズの始まりである。その起源は定かではないが、紀元前4000年ころには作られていたと考えられている。日本には、かつて蘇と呼ばれるチーズと同様の食品が存在した。
乳にレンネット(凝乳酵素)または酸(食酢、レモン汁など)を加え、静置するとふわふわの白い塊と上澄みの水分(乳清、ホエー)に分離する。この白い塊はカード(凝乳)と呼ばれ、これを絞るなどしてさらに水分を除いたものがフレッシュチーズと呼ばれるチーズの原型である。多くの場合はこれに熟成・加工の過程を加えてさまざまな味わいのチーズを作り出す。加工の過程では乳酸菌やカビなどを用いて発酵させたり、加温・加圧などの工程を加えて保存性を高めるなどの工夫が凝らされている。
[編集] 歴史
チーズがどのようにして発見されたのかは正確には定かではないが、「アラブの商人が羊の胃袋を干して作った皮の水筒に山羊のミルクを入れて砂漠を旅の途中に、砂漠の疲れとのどの渇きを癒そうと水筒をあけたところ、中からミルクではなく澄んだ水(乳清)と柔らかい白い塊(カード)がでてきた」というのが最初のチーズの発見であるという説が有力だとされている[1][2]。
[編集] チーズと人の関わり
比較的保存がきく食品であることなどから、人類とチーズのつきあいは長い。
ホメロスのオデッセイアにはフェタチーズへの言及があり、古代インドの叙事詩「リグ・ヴェーダ」にはチーズを勧める歌が、ほかにプリニウスの「博物誌」やアリストテレスの著作にもチーズについての記述がある。 日本では飛鳥時代頃から乳牛の伝来と飼育が始まり、酪(らく)、酥(そ)、醍醐(だいご)と言った乳製品が作られるが、この「醍醐」がチーズのことを指すと言われ、「醍醐味」という言葉の起源にもなっている。また、推古天皇の時代には、地方ごとに作られたこの醍醐の品評会が行われたという話も残っている。
イタリア料理(パルミジャーノ・レッジャーノチーズやモッツァレラチーズ)やテクス・メクス料理(チェダーチーズ、モンテレージャックチーズ)など、チーズが欠かせない料理もある。
インドでは、ヴェジタリアンの割合が多く、一般的にインドのヴェジタリアンは動物の殺生の回避を目的としているため鶏卵も食べない。そのため多くの人が乳製品からタンパク質を補給し、フレッシュチーズのパニールを使った料理が豊富である。インド料理の菜食のメニューの半数程はパニールかダヒ(ヨーグルト)を使っている。地域によっては半数以上のレストランがヴェジタリアン専用で、ヴェジタリアン専用ではないレストランもメニューの半分以上は肉や魚介類を使用していないメニューである。
中国にも、チベットのヤクのチーズや、料理に用いられるルーシャンや大良牛乳などの特殊なチーズがある。
[編集] 種類
加工の仕方や材料によってチーズは数種類に分類される。
- プロセスチーズ
- 加熱・溶解させることで発酵を止め、長期保存に適した状態にしたもの。
- ナチュラルチーズ
- 加熱処理されていないもの。原料、熟成の手段、仕上がりの状態などによってさらに以下のように細分類される。
- フレッシュチーズ
- 熟成させないチーズ。常温での保存はできない。
- スモークチーズ
- プロセスチーズを、燻製の製法と同じように燻したもの。
[編集] おもなチーズ
以下は日本で比較的よく消費されているチーズの主要産地別一覧である。さらに詳細なリストはチーズの一覧を参照のこと。
- スイス
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- エメンタールチーズ(セミハード)
- グリュイエールチーズ(セミハード)
- デンマーク
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- ダナブルー
- アメリカ合衆国
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- カッテージチーズ(フレッシュ)
- チーズカード(フレッシュ)
- クリームチーズ(ソフト)
- コルビーチーズ(セミハード)
- チェダーチーズ(セミハード)
- モンテレージャックチーズ(セミハード)
- アメリカンチーズ(プロセス)
- その他
[編集] 用途
直接食用とするほか、料理の素材、調味、製菓材料として広く使用される。よく用いられるものには下記がある。
- 料理
[編集] ギネス
世界最大のチーズは28.5tで1995年カナダ・ケベック州のアグローバ酪農組合がスーパーマーケットチェーンの注文で制作したもの。大人のカナダ人が一年で消費するチーズの2500人分の量に匹敵する。
[編集] 脚注
- ^ No,001- チーズの歴史 - 勝沼醸造株式会社::チーズの話し
- ^ チーズの歴史って? - ナチュラルチーズ専門店 オーダーチーズ・ドットコム
[編集] 写真を撮る際の「チーズ」
英語でcheeseと発音すると、/i:/音の部分で口元が笑って見えるため笑顔の写真が撮れる。それを真似て日本でも、撮影の際に「チーズ」と言うことが広まった。だが実際に日本語で「チーズ (chiizu)」と言うと、最後に足された/u/の音で口がすぼまって、おかしな顔になってしまう。そのため撮る側が「はい、チーズ」と言っても、被写体となる側の人がしっかり復唱することは少なくなってきた。近年では「一足す一は?」「二 (ni)」と言うのがよく見られたが、これも流行が過ぎて廃れつつある。
また同様に写真を撮る際、中国では「茄子(qiéz)」、韓国では「キムチ」と言うなど、いずれの言語でも最後の母音が/i/もしくは、それに近い音になっている(なお前者はおそらく英語のcheeseと似た音の単語を選んだものと考えられる)。
[編集] 関連項目