ヨーグルト
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ヨーグルト(トルコ語:yoğurt、英:yoghurt, yogurt, yogourt)は乳に乳酸菌や酵母を混ぜて発酵させて作る発酵食品。使われる乳には牛乳のほか、水牛の乳、羊の乳、山羊の乳などがある。乳等省令では「発酵乳」のことである。
気温の高い地方では、生乳のままだと腐りやすいため、乳酸菌で乳を発酵させると保存性がよくなる。乳を醗酵させた後で乳脂肪分を分離し、バターを得ることもイランなどでは行われていた。
欧米や日本でこの乳製品を指すのに用いられるヨーグルトという言葉は、トルコ語でヨーグルトを意味する「ヨウルト(yoğurt)」に由来する。ヨウルトは「攪拌すること」を意味する動詞yoğurtmakの派生語で、トルコにおけるヨーグルトの製法を反映している。
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[編集] 効果
乳酸菌は通常腸内細菌として棲息しているが、ヨーグルトの乳酸菌は、腸内定着することはできない。ただし、その代謝物などが腸内のウェルシュ菌などを減少させ在来乳酸菌を増殖させるという整腸作用をもつ。またウェルシュ菌減少によりその抗体を減少させ、アレルギーの発症を抑えるという効果が期待されている。
日本では、科学的根拠がある特定保健用食品(トクホ)には食品の機能の表示が認可されている。認可された食品はヨーグルトとして乳酸菌を含んでおり、食品の摂取によって便秘や下痢の改善、善玉菌に分類される菌が増殖し有機酸が増え、悪玉菌が減少しアンモニアが減ったため腸内環境が改善されたことを示す研究結果が多い[1]。
ただし、脂肪が含まれるものは共通して、過度の摂取によってアレルギーを悪化させたり、大腸癌などの危険性を高める[要出典]。
ヨーグルトなどの乳酸菌食品は、摂取することで花粉症に効果があると言われ、免疫力を高める働きがあるとも言われる。
また、肉の繊維を分解する効果があり、一晩程漬け込む事によって肉が非常に柔らかくなる。
[編集] 基本的な作り方
単体で菌を入手し、牛乳から作ることもできるが、単体で菌を入手する必要はなく、残ったヨーグルトに含まれる菌を使って作ることもできる。したがって、おいしいヨーグルトを種として取っておき、それを使える。いつでも少しを種として残しておくとよい。ただし、菌も繰り返し使うと性質が変わってくる場合もあり、また衛生上からも3~4回ほどにしておいた方がいい。
基本的な作り方は、
- 乳を沸騰させ、30度から45度程度(菌種によって異なる)に冷えるのを待つ。
- 古いヨーグルトを小量混ぜる。
- 古いヨーグルト(出来合いのヨーグルト)を種と呼び、乳酸菌などの菌の母体にする。市販のヨーグルトを使うことも出来るが、殺菌してあるものは使えない。
- 30度から45度程度(菌種によって異なる)で一晩置く(暖かい地方では単に放置する)。
ヨーグルトメーカーを使うと作りやすい。
[編集] 世界のヨーグルト
地方やヨーグルトの歴史が違うと、種として使われるヨーグルトに含まれる菌の種類が違うので、出来上がりも違って来る。また、使う乳のタイプにより成分が異なるため出来上がりも違う。たとえば、水牛乳は牛乳に比べて乳脂肪の割合が多いのでより濃厚なヨーグルトになる。また、表面にクリームの層が出来、その部分がまた好まれたりする。
素焼きの入れ物に入れて作り、そのまま素焼きの器ごと販売する場所が多いのは、菌がバランスを崩さすに生きるのを助けるためだと思われる。この場合常温のまま販売される。また、素焼きの器は多孔質なので、水分が適度に抜けてヨーグルトがほどよく濃縮されるという効果がある。
イランの「カシュク(Kashk)」、アフガニスタンの「クルート(Qurūt)」、アラブ人の「ラバナ(Labanah)」など、ヨーグルトを加工した保存食品も各地にある。
凡例
- 地域名:ヨーグルトの名前 - 使われる乳のタイプ
- 特徴など。
- 地方によっては、素焼きの器にいれて作られそのまま売られている。また、地方により味が違う。工業的に作られる物よりも、地方で自家製のものが多く販売されている。
- 硬く濃厚な味。素焼きの器に入れて作られて売られる。地方で自家製のものが多く販売されている。
- モンゴル:アイラグ - 馬乳
- 中央アジア:クーミス - 馬乳、ラクダ乳
- アフガニスタン:マースト (māst、ダリー語)
- イラン:レーベン/マースト (māst、ペルシア語) - 牛乳、山羊乳
- イラク:リバン(liban、لبن アラビア語)
- シリア、レバノン、パレスチナ:ラバン(laban、لبن アラビア語)
- エジプト:ザバディ(zabadi、アラビア語) - 牛乳、山羊乳、水牛乳
- グルジア:マツオーニ(matsoni、グルジア語) - 牛乳、山羊乳、羊乳
- アルメニア:マズーン(madzūn、アルメニア語)
- ギリシャ:ヤウルティ(giaurti、ギリシャ語)
- トルコ:ヨウルト(yoǧurt、トルコ語) - 牛乳、ヤギ乳、羊乳
- ブルガリア:キセロ・ムリャコ(Кисело мляко、kiselo mljako、ブルガリア語) - 牛乳、羊乳
- ロシア:ケフィール(kefir)- スメタナ(Smetana-ロシア語) - 牛乳
- 日本でいうカスピ海ヨーグルトであるとされる。
- より濃厚なヨーグルト。素焼きの器に作られ売られる。普通のヨーグルトとは区別されて売られている。
[編集] カルグルト
カルグルトは、天皇家で食されるヨーグルトで、発酵には皇室専用の菌を使い、牛乳はジャージー種とホルスタイン種の低温殺菌牛乳をミックスさせて作られ、水で割って飲まれている[2]。
[編集] ヨーグルトの普及
19世紀末、ロシアの医学者イリヤ・メチニコフがブルガリアを旅行した際、特定の地域に高齢者が多いことに注目。伝統食であるヨーグルトが長寿の秘訣と紹介したことから、欧州を中心に世界中に広まった。なお、日本の明治乳業は、メチニコフの誕生日5月15日を「ヨーグルトの日」として宣伝している。
日本国内でも1915年、広島市のチチヤス乳業が日本初のヨーグルトを発売。しかし一般に普及したのは戦後であり、1950年に明治乳業から発売されたハネーヨーグルトの発売によるものである。
[編集] 脚注
- ^ 「健康食品」の安全性・有効性情報 (独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
- ^ 横田哲治 『天皇家の健康食』 新潮社、2001年12月。ISBN 4104502014。18-21頁。