遺伝子組み換え作物
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遺伝子組換作物とは、遺伝子組み換え技術を用いた遺伝的性質の改変によって品種改良等が行われた作物のこと。
日本語ではいくつかの表記が混在使用されている状況である。「遺伝子組換作物反対派」は遺伝子組み換え作物、厚生労働省などが遺伝子組換え作物、食品衛生法では組換えDNA技術応用作物、農林水産省では遺伝子組換え農産物などの表記を使うことが多い。
英Genetically modified organismからGM作物、GMOとも呼ばれることがある。ただし、GMOは一般にはトランスジェニック動物なども含む遺伝子組換生物を指し、作物に限らない。
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[編集] 遺伝子組み換え作物の起源
従来の育種学の延長で導入された1973年以降の遺伝子組換えの手法としては放射線照射・重イオン粒子線照射・変異原性薬品などの処理で胚の染色体に変異を導入した母本を多数作成し、そこから有用な形質を持つ個体を選抜する作業を重ねるという手順で行われた。最初のGMOが作成された後に科学者は自発的なモラトリアムをその組み換えDNA実験に求めて観測した。モラトリアムの1つの目標は新技術の状態、及び危険性を評価する会議のための時間を提供することだった。生化学者の参入と新たなバイオテクノロジーの開発、遺伝子地図の作成などにより、作物となる植物に対して、「目的とする」形質をコードする遺伝子を導入したり、「問題がある」形質の遺伝子をノックアウトしたりすることができるようになった。米国では研究の進展とともに厳しいガイドラインが設けられた。そのようなガイドラインは後に米国国立衛生研究所や他国でも相当する機関により公表された。これらのガイドラインはGMOが今日まで規制される基礎を成している。
初めて市場に登場した遺伝子組み換え作物と言われるのは、アンチセンスRNA法(mRNAと相補的なRNAを作らせることで、標的となる酵素の産生を抑える手法)を用いて、ペクチンを分解する酵素ポリガラクツロナーゼの産生を抑制したトマトFlavr Savrである。他のトマトと比較して、熟しても皮が柔らかくなりにくいという特徴を持つ。
[編集] 遺伝子組み換えのアプローチ
[編集] 非食用遺伝子組換え作物
非食用の遺伝子組換え作物としては、園芸作物と林木が主である。園芸作物としては花卉が主体である。例えば、青いカーネーション「ムーンダスト」は、一般の消費者に花屋で売られている遺伝子組換え作物である。また、2009年に市販が予定されている青いバラ (サントリーフラワーズ)も遺伝子組換え作物である。その他、菊のカロテノイド含量を変化させたり、トレニアのアントシアニン生合成系をオーロン生合成系へ変化させて黄色いトレニアの花を作ったりする試みがある。林木の例としては製紙用にリグニンの構造や含量を改変されたポプラやヤマナラシやユーカリやテーダマツが多い。
[編集] 遺伝子組換え食品の分類
現在、遺伝子組換え食品の分類としては、第一, 二世代までに関して、ほぼ以下のように受け取られている。しかし、第三世代に関してはまだ確たる定説はない。
- 第一世代・・除草剤耐性、病害虫耐性、貯蔵性増大、など
- 第二世代・・成分改変食品で消費者の利益が強調されたもの。
- 第三世代・・過酷な環境でも成育できたり、収量が高かったりするような作物か?
[編集] 第一世代組換え食品
第一世代組換え食品に関しては、生産者や流通業者の利点ばかり強調されているきらいがあり、消費者にとって安価で安全な食品が安定供給される一助になるという最大のメリットが無視される傾向がある。農薬使用量の減少や不耕起栽培に利用できるなど環境面での負荷を減少させていることは、もっと強調されるべきことであろう。
[編集] 除草剤耐性作物
第一世代組換え作物としては、ラウンドアップやビアラホス(bialaphos)など特定の除草剤に耐性を持つ品種を作成し、その除草剤による雑草防除を利用するような作物も開発されている。これは農作業の効率化だけではなく、土壌流出による環境破壊を防ぐ不耕起栽培を適用できる。ダイズの主要生産国である北米や南米諸国では表土流出が大問題となっている。前作の植物残渣を放置できるため、植物残渣がマルチとなって風雨から土壌流出を防ぎ、土壌を耕すことによって土壌が流亡しやすくなることを不耕起栽培によって防ぐことができる。その他、有毒雑草の収穫物への混入を減らせるとの主張もある。
ラウンドアップ耐性作物に関しては、ラウンドアップの項を参照。ビアラホス耐性作物に関しては以下に記す。ビアラホスはIgnite/Basta、 Glufosinate、Herbiace等の名称で販売されている。放線菌 Streptomyces hygroscopicus, S. viridochromogenesなどが生産する抗生物質であり、窒素代謝においてアンモニウム・イオンの同化に関与するグルタミン合成酵素(グルタミン・シンテターゼ: glutamine synthetase)の阻害剤として作用する。グルタミン合成酵素の阻害剤として実際に作用するのは、ビアラホスから2分子のアラニン残基が遊離したホスフィノスリシン(phosphinothricin)である。グルタミン合成酵素が阻害されると毒性の高いアンモニウム・イオンが植物体内に蓄積して、植物体を枯死させると考えられている。ビアラホス生産菌は、自己防御のためにビアラホスを無毒化する酵素phosphinothricin N-acetyltransferase (PAT)の遺伝子barを持っている。そこでbarを植物内で発現できるように改変して植物に導入されている。
[編集] 害虫抵抗性作物
更に、害虫に対して毒性を有するタンパク質を生産させることで、害虫の発生を抑える害虫耐性のものも存在する。その機構としては、
- Bacillus thuringiensisの結晶性タンパク質の遺伝子導入
- トリプシン阻害剤(マメ科植物由来)の 遺伝子導入
- インゲン豆由来のα-アミラーゼ阻害剤の遺伝子導入
- キチナーゼの遺伝子導入
が挙げられるが、特にBacillus thuringiensisの結晶性タンパク質(Bt toxin)遺伝子導入による害虫抵抗性作物が成功している。Bt toxinのBはBacillusの頭文字に、tはthuringiensisの頭文字に由来する。B. thuringiensisの性質として、
- 土壌細菌で芽胞を形成するときに結晶性タンパク質を蓄積する。
- 結晶性タンパク質が昆虫の腸に達すると部分消化され、殺虫性毒素ペプチドが遊離する。
- 哺乳類には殺虫性毒素ペプチドと親和性がないため、毒性を発揮できない。
- 菌株によって生産する結晶性タンパク質が作用する昆虫の種類が異なる。
というものがある。Bt toxinは哺乳類には毒性を持たないため、Bt toxinを生産する植物を人間が食べても害はない。そこでBt toxinを生産する害虫耐性組換え作物の開発に繋がった。生産株の違いによりBt toxinには様々な種類がある。その種類により、殺虫スペクトルが異なってくる。そのため、作物に導入されたBt toxin遺伝子の種類により、殺虫活性を示す昆虫が異なる。Bt作物の導入により、
- 殺虫剤使用量の大幅削減
- 組織内へ侵入済みの害虫にも作用
- 害虫以外への殺虫剤による影響の大幅低下
- 虫害による傷口からの糸状菌感染症が著しく低下し、また収量増加の効用。
- その結果としてカビ毒(mycotoxin)の含量(フモニシン:fumonisin、アフラトキシン:aflatoxin等の総量)の低下。
という結果が得られている。なお、他の殺虫剤と同様にBt toxin抵抗性害虫の発生も報告されている。
[編集] 耐病性作物
第一世代組換え作物として耐病性を有するものも作られている。病害抵抗性遺伝子やキチナーゼ遺伝子やディフェンシン遺伝子の導入によるものであるが、その中でも植物ウイルス耐性のものが特に成功している。植物ウイルスによる被害の大きい、ジャガイモなどの栄養繁殖性作物や果樹などの永年性作物に植物ウイルス耐性を付与することは農業上重要である。植物ウイルス耐性を与える手法としては様々な機構が用いられているが、その手法は少なくとも3種類挙げられる。
先ず1つ目は、植物ウイルスが植物細胞内に侵入してゲノムを複製させたりゲノムにコードされているタンパク質を生産させるためには外皮タンパク質(coat protein)を脱ぐこと(decoating)が必要である。もし、侵入した細胞内で外皮タンパク質が大量に存在している場合、decoating してもすぐに外皮タンパク質に覆われて(recoating)、植物ウイルスのゲノムはウイルスのゲノムの複製やタンパク質の翻訳に必要な酵素やリボソームと接触できず、ゲノムの複製や翻訳が阻害される。そこで植物細胞に植物ウイルスの外皮タンパク質の遺伝子を導入して大量に生産させてdecoatingを阻害する手法が用いられている。
二つ目の手法ではPTGS(post-transcriptional gene silencing)という機構を利用する。多くの植物ウイルスのゲノムはRNAであり、二本鎖RNAの形成が必要である。そのウイルスのRNAと相同性のあるRNAが発現されるように改変された形質転換植物は、対応するウイルスに対して、PTGSと同様の機構により、dicerやsiRNA(short interfering RNA)やRISC(RNA-induced silencing complex)などを通じてウイルスの二本鎖RNAの分解が行えるようになり、植物ウイルスに耐性になる。これはRNAiの一例といえる。
3つ目に、植物ウイルスのゲノムの複製に必要なreplicaseの変異型遺伝子の導入による耐性化も利用されることがある。外皮タンパク質過剰発現による植物ウイルス耐性の遺伝子組換え作物の例としてハワイのpapaya ringspot virus (PRSV)耐性遺伝子組換えパパイヤがあげられる。PRSVによってほぼ壊滅したハワイのパパイヤ栽培は遺伝子組換えパパイヤによって復活できた。
[編集] 第二世代組換え食品
第二世代に関しては、ワクチン等の有用タンパク質の工場として利用することができたり、栄養素を多く含ませたり、食品中の有害物質を低減させたり、消費者にとって利益が目に見えるものである。例えば、B型肝炎予防の食べるワクチンとしてB型肝炎ウイルスの表面抗原をバナナで発現させ経口免疫によってB型肝炎感染防除する試みがある(Planta, vol. 222, No. 3, p. 484-493, October 2005)。また、日本においてはインシュリンを分泌誘導して糖尿病になりにくくするコメやスギ花粉症を低減するコメの開発が先行している。
[編集] オレイン酸高含有遺伝子組換えダイズ
現在、いわゆる第2世代の組換え作物として商業栽培されているものの一つにオレイン酸高含有ダイズがある。一般的なダイズ油中の不飽和脂肪酸残基の組成はリノール酸(18:2)(約50%)、オレイン酸(18:1)(約20%)、リノレン酸(18:3)(約10%)である。一方、オレイン酸高含有遺伝子組換えダイズ油(高オレイン酸ダイズ油)には約85%のオレイン酸が含まれ、リノール酸やリノレン酸などの多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acids : PUFAs)残基が少ない。これはオレイン酸からリノール酸への不飽和化に関与している酵素ω6-desaturase (FAD2)の遺伝子(FAD2)の発現を抑制することによってオレイン酸の含量を高めている。オレイン酸のような1価不飽和脂肪酸(monounsaturated fatty acid)を多量に含む油脂は血中の高密度リポ蛋白質(high density lipoprotein : HDL)の比率を増やして、動脈硬化を防止すると考えられている。更に、オレイン酸はPUFAsに比べ酸化に安定である。そのため、高オレイン酸ダイズ油は揚げ油などに適している。
[編集] ゴールデンライス
その他、第二世代の組換え作物として最も有望視されているものがゴールデンライス(golden rice)である。ビタミンA(vitamin A)欠乏は多くの発展途上国において乳幼児の深刻な問題になっている。その解決策としてビタミンAの前駆体であるβ-カロテン(β-carotene)を内胚乳に含有するゴールデンライスが開発された。β-カロテンを含有するため精米された米が黄色を呈するためにゴールデンライスと命名された。ゴールデンライス自体を主食としてもビタミンAの必要量を満たさないと非難する考えが遺伝子組換え食品反対派にあった。しかし、2005年には、新たにゴールデンライス2が発表され、これだけでビタミンAの必要量がまかなえるようになった。これはカロテノイド生合成系遺伝子としてゴールデンライスで用いられていたスイセン由来のフィトエン合成酵素(phytoene synthase)のcDNAの代わりにトウモロコシやイネ由来のcDNAを利用することにより達成された(Nature Biotechnology 2005 Apr;23(4):482-7)。
[編集] 新しい選択マーカー遺伝子
現在の遺伝子組換え手法において、多数の細胞を材料としてその中から極少数の形質転換細胞を選択する操作が用いられることが多い。そのため、形質転換細胞を選択するための選択マーカー遺伝子の発現を指標として形質転換体を選択している。この植物の選択マーカー遺伝子は組換え作物においてもカナマイシン(kanamycin)などのアミノグリコシド(aminoglycoside)系抗生物質に耐性を与える遺伝子が用いられることが多かった。そこに、社会政策的な問題が形質転換植物の選択系にも影響をおよぼした。EUは2004年末をもって医療用、家畜用に用いられる抗生物質に対する耐性遺伝子で形質転換植物細胞の選択を禁止した。そして、今後、EUで販売される遺伝子組換え植物や食品は他の選択マーカー遺伝子が用いられているか、選択マーカー遺伝子が除去されていなくてはならないとした(European Parliament 2001)。形質転換植物の選択マーカー遺伝子は基本的には形質転換体の選択という育種の極初期に用いられるに過ぎない。
しかし、遺伝子組換え食品反対派は、組換え作物が持つカナマイシン耐性遺伝子(NPTII: aminoglycoside (neomycin) phosphotransferase遺伝子) やハイグロマイシンB耐性遺伝子(hpt: hygromycin phosphotransferase遺伝子)などの抗生物質耐性遺伝子が腸内細菌に極低い頻度であっても取り込まれる可能性があるとし、これを批判の根拠の一つとしていた。そこで、除草剤として用いられているビアラホス(bialaphos: phosphinothricinとして作用)の様な抗生物質を除いて規制したわけである。
その結果、新たな選択マーカー遺伝子を用いた選択系が用いられるようになった。その中には、植物の利用できない炭素源を資化または解毒できるようにするものがある。
- D-amino acid oxidase (DAAO):DAAOは赤色酵母Rhodotorula gracilis由来のDAO1にコードされているものを利用。多くのD-アミノ酸(D-amino acids)をα-ケト酸(α-keto acids: 2-オキソ酸(2-oxo acids))に変換できる。D-アラニン(D-Ala), D-セリン(D-Ser)は毒性を持ち、DAAOによって解毒されるため、形質転換体をpositive selectionできる。(D-Alaからピルビン酸(pyruvate), D-Serから3-ヒドロキシピルビン酸(3-hydroxy pyruvate)へ解毒、α位の炭素の光学活性が無くなる。)。D-イソロイシン(D-Ile), D-バリン(D-Val)の毒性は低いが、それらのα-ケト酸は毒性を持つ。そのため、部位特異的な組換えによりDAO1が形質転換体から除去された組換え体をnegative selection可能である。
- phosphomannose isomerase (PMI): フルクトース-6-リン酸(fructose-6-phosphate)は解糖系の中間体であり、マンノース-6-リン酸(mannose-6-phosphate)をフルクトース-6-リン酸へ変換できれば唯一の炭素源として資化できることになる。多くの植物はPMIを所持せず、マンノース-6-リン酸をフルクトース-6-リン酸へ変換できない。そのため、選択培地中にマンノース(mannose)を唯一の炭素源とした場合、資化できないが、大腸菌Escherichia coli由来のPMI遺伝子pmiを導入された形質転換体はマンノースを解糖系へ導入できるため、生育可能となる。なお、培地から取り込まれたマンノースは植物のヘキソース・キナーゼ(hexose kinase)(ヘキソキナーゼ: hexokinaseとも記述される)によってマンノース-6-リン酸へ変換される。
- D-arabitol-4-dehydrogenase: 植物にD-arabitol資化能を導入する。
その他、選択マーカー遺伝子を除去する系を利用するものもある。
- co-transformation: 抗生物質耐性などの選択マーカー遺伝子と目的遺伝子を別々のDNA断片として導入して、選択マーカー遺伝子で選択した形質転換体の中から目的遺伝子と選択マーカー遺伝子が植物細胞のゲノムの別々の部位に組み込まれたものを選択して、後代をとり目的遺伝子を持つが選択遺伝子を持たないものを選択するというもの。外来遺伝子を取り込む能力を持つコンピテントセル(competent cell)が限られていることを利用する手法である。
- MAT vector法: 日本製紙株式会社の開発したMulti-Auto-Transformationの略である。いろいろなタイプがあるが、サイトカイニン(cytokinin)合成遺伝子(iptZ)と醤油酵母Zygosaccharomyces rouxiiの内在性プラスミドpSR1の部位特異的組換え酵素とその標的配列を順方向反復配列(direct repeats)として利用しているものの説明をする。植物ホルモンの一種であるサイトカイニンは頂芽優勢を打破するために、サイトカイニンが多いと側芽が次々伸びて多芽体を植物は形成する。iptZと部位特異的組換え酵素遺伝子を標的配列の順方向反復配列で囲み、その外側に目的遺伝子を配置したDNAを植物細胞に導入すると、サイトカイニンが過剰生産され、多芽体が形成される。その中から、部位特異的組換え酵素遺伝子が標的配列の順方向反復配列に作用してiptZと部位特異的組換え酵素遺伝子が除去され、目的遺伝子が残ったものが正常な頂芽優勢を示す表現型のものとして得られる。それを目的遺伝子のみを所持するものか検定して、確認する。
[編集] 新技術の導入
その他、現在、遺伝子置換を植物に応用する試みが進んでいる。植物は相同組換え活性が低く、内在性の遺伝子と相同性が高いDNA断片を導入しても内在性の遺伝子と殆ど相同組換えを起こさず、非相同組換えによって標的以外に組み込まれるものが大部分である。そこで様々な工夫が必要となる。
ひとつの例が、pyrimidinyl carboxy系除草剤であるbispyribacへの耐性を示すイネの開発である。この除草剤は、分岐鎖アミノ酸(blanched chain amino acids, BCAA)生合成系の酵素の一種であるacetolactate synthase (ALS)の阻害剤である。イネのある変異体は、ALSの2カ所のアミノ酸残基の変異によってbispyribacに対して高度に耐性を示す。そこで、非相同組換えによる耐性形質転換体を除去するためにpromoterとN末端側の配列を欠失したイネ由来の変異型ALSをイネに導入して耐性になった相同組換えによる遺伝子置換体を単離した。そのhomo接合体は著しくbispyribacに対して耐性となっていた(The Plant Journal (2007) 52, 157–166)。
この過程で変異型ALSのpromoterとN末端側の配列を欠失したものを用いているのは重要である。promoterとN末端側の配列を含む完全な変異型ALSを用いればゲノムの本来のALS以外のところに非相同組換えによって挿入されてもbispyribac耐性になってしまう。また、promoterのみを除去し開始コドンから完全な変異型ALSのORFを含んでいるものを用いれば、ほとんどの非相同組換えによるbispyribac耐性株を除去できるはずであるが、T-DNA taggingに用いられているようにAgrobacterium(アグロバクテリウム)法ではT-DNAはかなりの高頻度で転写活性の高い領域に挿入されるため、何らかの遺伝子のpromoter下流に挿入され、その転写方向と挿入断片のセンス鎖方向が一致すればbispyribac耐性株が生じる可能性がある。そこで、promoterとN末端側の配列を欠失したものを用いれば非相同組換えによるbispyribac耐性形質転換体によるバックグラウンドをほぼ排除できるわけである。
この遺伝子置換体は基本的に標的となったALSの配列のみが野生型と一部異なるだけであり、他の選択マーカー遺伝子が存在しないため、突然変異により育種されたものと区別がつかない。このことは遺伝子組換え食品の実質的同等性を確保する上で大きな意味を持つ。
また、変異型ALSのようなそれ自体が選択マーカーとなる遺伝子だけでなく、任意の遺伝子を遺伝子置換により遺伝子破壊する方法が開発された。この方法は、diphtheria toxinが真核生物の細胞質の蛋白質合成を阻害するため、diphtheria toxinを生産する真核細胞が死滅することを利用している。Agrobacterium法による形質転換においてT-DNAのright borderとleft borderの内側近傍にdiphtheria toxin-A(ジフテリア毒A)遺伝子を1個ずつ逆方向反復配列(inverted repeats)として配置し、更にその内側に遺伝子破壊したい配列と相同な配列と選択マーカー遺伝子を挿入することによって、相同組換えを起こしたもののみ生存できるようにしたものである。相同組換えによって2個のdiphtheria toxin-A遺伝子が除去され選択マーカー遺伝子が導入された細胞は生存可能であるが、非相同組換えによって標的遺伝子以外のところにright borderとleft borderとともにdiphtheria toxin-A遺伝子が導入された細胞は死滅すると考えられる。
ただし、この方法によってもイネにおいて選択された形質転換体のうち目的とする遺伝子破壊体の頻度は1.9%であった(Plant Physiology, June 2007, Vol. 144, pp. 846–856)。今後の更なる効率上昇に関する研究は必要であろう。
[編集] 現状
GM作物は、1996年にアメリカで大豆の栽培が始められて以降着々と普及してきた。2007年現在、全世界の大豆作付け面積の64%、トウモロコシで24%、ワタは43%、カノーラで20%がGM作物である(ISAAA調査[1])。特に、食生活の変化による肉類消費の増加を背景とした、飼料用穀物の需要増加は、害虫、除草剤への耐性が高く、生産性も高いGM作物の需要増加に繋がっている[1]。アメリカを初め、中国やインド、ブラジル、カナダなど各国へ普及しており、2006年時点で22カ国で約1億200万 ha栽培され[2]、更に2007年には23カ国で約1億1430万 ha栽培された(ISAAA調査)。ちなみに現在の日本の全耕地面積は約470万 haである。2007年の遺伝子組換え作物生産国は(北米)アメリカ、カナダ、(中南米)メキシコ、ホンジュラス、コロンビア、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、(アジア、オセアニア)中国、インド、フィリピン、オーストラリア、(アフリカ)南アフリカ、(ヨーロッパ)ポルトガル、スペイン、フランス、ドイツ、チェコ、ポーランド、スロバキア、ルーマニアである。
- アメリカ
- 最初に栽培が始まったアメリカは比率が高い(「米国産作物の半分以上は遺伝子組み換え作物だ。大豆はほぼ100%、トウモロコシは約70%である」[1]より引用)。また、加工食品の多くにもGM作物が使用されている[1]。
- ブラジル
- 当所、ブラジル政府はGM作物に対して態度を明確にしていなかった。そのため、隣国であるアメリカでGM作物が問題となっていたことを利用して、2002年大統領選では候補者が「ブラジルではGM作物を作らない」と宣言して自国農作物をアピールする動きも見られた。ところが、そのときにはすでに密輸されたGM作物が国内に流通しており、2005年にブラジル政府はGM作物を認めることになる[1]。
- 中国
- GM作物を積極的に取り入れる動きがある。中国政府が積極的に取り組んでおり、研究は1986年から行われている[2]。2006年時点では、GM作物のほとんどは綿花とタバコだが、基礎食品である米の開発に力を入れており、商業栽培も間近な状況となっている[2]。
- 日本
- 一部自治体で環境や消費者団体などへの影響への懸念から条例で栽培を規制している。北海道、新潟県など10都道府県では実質的に栽培が禁止されている。また、スギ花粉症緩和米などは医薬品としての規制を受ける。厚生労働省医薬食品局食品安全部が安全性審査を終えた組換え作物を公表している[2]。
[編集] 論争
遺伝子組換え作物(GM作物)については健康や環境に悪影響があるのではと不安を抱く者も多く、英国や日本などの一部の国では商業目的でのGM作物を栽培していない。GM作物を否定する者と推進する者の間でその影響などについて論争が起きている。
[編集] 生態系などへの影響
遺伝子組換え作物の生態系への影響を含めた評価をする上で重要なことは、何と比較するのかということを明確にすることである。細胞融合や種間交雑、変異体育種、古典的交配を含めた在来の手法によって育種された品種や、慣行農法や有機栽培や自然農法との比較を行い、様々な観点からの評価を遺伝子組換え作物に対して総合的に行う必要がある。
本来野生植物が持っていない形質が、花粉の飛散等によって近縁の植物との間に雑種を作り、拡散してしまう可能性がある(遺伝子汚染)。そのため、組換え作物においても生態系への影響として、組換え品種と在来種や野生種との交雑の危険性があげられることがある。ただし、在来種や野生種との交雑に関しては、組換え品種のみではなく伝統的手法で育種された品種でも同様の問題を含んでおり、組換え品種にのみ限定された問題ではない。また、組換え品種を大量に栽培すると遺伝的多様性が失われるのではないかという懸念も、組換え品種特有の問題ではなく、在来品種においても少数の品種の大規模に栽培に伴う問題である。
組換え作物と在来種や野生種との交雑を防ぐ手法の一つとして、花粉を作らない雄性不稔の形質が求められている。その他の解決法として、葉緑体などのプラスチド(plastid)のゲノムは母系遺伝のため、花粉を通して拡散しないということを利用することもある。すべての形質転換植物に利用できるわけではないが、プラスチドのDNAに目的の外来DNAを相同組換えによって導入してプラスチド内で発現させる訳である。このような形質転換植物の外来DNAは種子を通してのみ伝達されるため、花粉を介した遺伝子拡散を回避できる。
生態系に与える他の影響として、Btトウモロコシの花粉がトウモロコシ畑の近傍の有毒雑草であるトウワタにかかり、それを食草とする蝶・オオカバマダラの幼虫の生育を阻害して生存率を下げたという報告が有名である(JOHN E. LOSEY, LINDA S. RAYOR & MAUREEN E. CARTER, "Transgenic pollen harms monarch larvae", Nature 399, 214 (1999))。この論文は、実験室内でトウワタの葉にBtトウモロコシ、トウモロコシ栽培品種の花粉をかけたものとかけなかったものを餌としてオオカバマダラの幼虫を飼育して経時的に体重と生存率を測定したものである。その際に、トウワタに散布した花粉の密度が、"Pollen density was set to visually match densities on milkweed leaves collected from corn fields."と非定量的であるにもかかわらず、体重変化や生存率を定量的に示したという問題点を含んでいる。著者らが、"it is imperative that we gather the data necessary to evaluate the risks associated with this new agrotechnology and to compare these risks with those posed by pesticides and other pest-control tactics."と述べているように、Btトウモロコシの栽培と慣行栽培によるリスク評価の比較を行うことは重要である。すなわち、殺虫剤の散布に伴う生態系への影響や残留農薬、食害に伴う微生物汚染などのリスクとBtトウモロコシのリスクを比較する必要がある。たとえば、慣行農法によって殺虫剤をまくことによって害虫以外への影響とBtトウモロコシの栽培による影響を相互比較した場合、どちらが生態系への影響が大きいかを検定することなどである。なお、Bt toxinを生産させるための発現カセットのプロモーターを花粉で発現しないものに交換したことにより、花粉に含まれるBt toxinの量は激減した。
[編集] 経済問題
組換え品種を開発した企業が、種子の支配を通じて食料生産をコントロールすることにつながるのではないか、という懸念が出されている。多くの場合、組換え種子の販売会社と生産農家は、収穫した種子の次回作への利用を禁止する契約を結んでいる。更に、組換え種子を毎作毎に農家に購入させるための手法として、一時期、結実はできるが発芽できないようにする、いわゆる「ターミネーター遺伝子」を導入した組換え品種の開発が行われたが、批判も多く、現在、販売されているものの中にはない。毎作毎に種子を購入する必要性に関しては、組換え品種に限定された問題ではない。現在、交雑によるF1品種が多く栽培されており、これらの場合も安定して同一形質の作物を得るためには、毎作毎に種子を購入しなくてはならない。更に、F1品種でなくても自家採取した種子は、遺伝的な純粋性の問題、病原菌汚染や種子の品質の問題、その品種名を名乗って販売する場合の種苗法の問題があり、多くの農家が種子を種苗会社から購入している現状があり、特定企業による種子の支配の問題は、遺伝子組換え品種に特有の問題ではない。
上記のラウンドアップ耐性作物を開発・販売しているモンサント社は農家の種子の採取に対して「特許侵害」として数多くの訴訟を起こしており、これに反発する農家も存在する[3]。
1998年、カナダモンサント社はカナダ、サスカチェワンの農民、パーシー・シュマイザーの農場でラウンドアップ耐性ナタネ(カノーラ: canola)が無許可で栽培されていることに対し特許権侵害で訴訟を起こした。シュマイザーは種子に特許が存在しないこと、農場のナタネの9割以上がラウンドアップ耐性ナタネになっていたのは意図的に栽培したのではなく周辺で栽培されているラウンドアップ耐性ナタネによる「遺伝子汚染」の結果であると主張した[4]。しかし、交雑等の可能性があっても約400 haに植えられたナタネの9割以上のナタネがラウンドアップ耐性ナタネになることは現実にはあり得ないとしてカナダ最高裁はモンサント社に対する特許侵害を認めた。下級審の判決を妥当としシュマイザーは敗訴した。[5]
種子に対する特許が認められたことに対しカナダの市民団体と生産者団体は強く反発している。
被告のシュマイザーは自らを遺伝子汚染の被害者として、遺伝子組換え作物反対派と共に日本国内でもたびたび反対活動を行っている。
[編集] 倫理面
宗教上やその他の信念により遺伝子操作自体を忌み嫌う人も存在し、反対活動を行っている。
[編集] 食品としての安全性
- 従来考えられないほどの短い期間で新品種の開発が行われる。
- 従来はありえなかった「種の壁を越えた」品種開発が可能である。
などを根拠に安全性を保障する実績がないとして忌避する意見も根強い。しかし、従来の非GM作物であっても100%の安全性証明がなされているわけではなく、暗黙のうちに「危険性」が許容されている。また、「種の壁」は一般に信じられているほど強固なものではなく、遺伝子の水平伝播や雑種形成も知られていることなどを考えるべきで、GM作物だけを問題視するのは公正とはいえない。GM作物の安全性については「実質的同等性」の概念に基づいた議論が重要である。ヒトのタンパク質消化において大部分はアミノ酸にまで分解されてから吸収されるため、よほどでない限り遺伝子組換え作物によって変化した僅かなアミノ酸配列の違いが消化・吸収に大きな影響を与えるとは考えにくい。
モンサント社のニューリーフ・ポテトはアメリカのEPA(U.S. Environmental Protection Agency)に農薬として登録された。しかし、日本では農薬としては登録されていない。ニューリーフ・ポテトBT-6系統やSPBT02-05系統とはBacillus thuringiensisの結晶性殺虫タンパク質(Bt toxin)を生産してコロラドハムシというジャガイモの害虫に抵抗性を持たせたジャガイモのことである。付け加えて、更にある種の植物ウイルスに抵抗性も持たせたニューリーフ・プラス・ポテトやニューリーフY・ポテトの系統も存在する。ニューリーフ・ポテトにおいて生産されているBt toxinは哺乳類に対する安全性が確認されたタンパク質であり、ニューリーフ・ポテトに関する安全性は様々な安全性試験によって確認されている。農薬を使い害虫駆除をするようなこととは違い、ポテト自体に害虫を殺す作用があるという理由で、ポテト自体が通常の農薬としてEPAに登録されている。なお、ニューリーフ・ポテトと同様にBt toxinを生産しているトウモロコシやワタの複数の系統が組換え作物として認可されており、これらにもニューリーフ・ポテトと同様に作物自体に害虫を殺す作用があるが、これらは農薬として登録されたことはない。
一方、ある種の組換え作物の方が食品としての安全性が高いという報告がある。これはBt toxinを発現しているトウモロコシYieldGardの方が野生型の栽培種に比べ含有しているカビ毒(mycotoxin)量が数倍から20倍程度少ないというものである(Regulatory Toxicology and Pharmacology 32, 156-173 (2000))。昆虫などによって摂食された傷口からカビが侵入し繁殖するため、Bt toxinを発現していると摂食されにくくなるためカビ毒が大幅に減少したと考えられる。カビ毒には発ガン性や女性ホルモン活性などを有し、様々な疾患を引き起こすものがあることが知られている。このように現在判明している食品としての安全性検査では明らかにある種の組換え作物の方が有利である。
遺伝子組換え食品の安全性審査においては、急性および亜急性毒性の審査しかしていない、多世代にわたって投与した際の安全性を調べていない、という批判がある。そこで、ラウンドアップレディー・ダイズの安全性に関しては、多世代の動物飼育における給餌実験によって試験された。例えば、サウスダコタ大学のグループは4世代にわたってマウスにラウンドアップレディー・ダイズを給餌しても、何ら悪影響を見いだすことができなかった、と報告した(Brake DG, Evenson DP. Food and Chemical Toxicology 2004;42:29-36 A generational study of glyphosate-tolerant soybeans on mouse fetal, postnatal, pubertal and adult testicular development. [6] )。また、東京都の健康安全研究センターも2世代にわたるラットへの給餌試験を行ったが何ら有意差を見いだせなかった[7]。同様な研究は多数行われている。2-4世代にわたる多世代飼育実験の世代数が十分かどうかについては異論があるかもしれないが、これらの実験においては少なくともこの世代数では有意な危険性は検出できなかったといえる。
一方、健康への影響例としてよく挙げられるものに「遺伝子組換えジャガイモを実験用のラットに食べさせたところ免疫力が低下した。」と世間に大きな衝撃を与えたレポート(Pusztai(パズタイ、プシュタイまたはプッタイとも表記される)事件)がある。1998年8月10日、スコットランドのアバディーンのロウェット研究所のArpad Pusztai博士が、英国のテレビ番組で、組換えジャガイモにより、ラットに免疫低下などがみられたと公表した。その真偽を巡り、大騒ぎになったが、論文としては1999年のthe Lancetの10月16日号まで公表されなかった。そのため、この間、この報告を検証できない状態であるにもかかわらず、一部の間ではさも真実であるかのように受け取られた。しかし、公表された論文からは実験そのものがずさんであり、A. Pusztai博士の主張には無理があることが判明した。使用した遺伝子組換えジャガイモが安全性が確認され商品化されているジャガイモとは全く別なレクチンという哺乳動物に対し有害な作用を持つタンパク質を作る遺伝子を組み込んだ実験用ジャガイモであり、有害な遺伝子を組み込んだ遺伝子組換え作物は有害だったと当たり前の結果が出たに過ぎない。この実験は、マツユキソウの殺虫活性のあるレクチンを生産する組換えジャガイモ、親株のジャガイモにレクチンを注入したもの、親株(母本)のジャガイモ、を生のままものと茹でたものに分け、6頭ずつのラットに10日間与えて消化管を調べたところ、炎症や免疫の低下が組換えジャガイモを飼料としたものにみとめられたというものである("Effect of diets containing genetically modified potatoes expressing Galanthus nivalis lectin on rat small intestine", Stanley WB Ewen and Arpad Pusztai, the Lancet, Vol. 354, p. 1353-1354 (1999)[8])。
この実験には栄養学的な問題や検定数が少ないという問題以前に実験の設計段階での欠陥として、
- レクチンの遺伝子を含まない空のベクターを用いて形質転換した、つまりレクチンを生産しない組換えジャガイモと、更にそれにレクチンを注入した2種類の対照(コントロール)がない。
- 注入したレクチンが複数のレクチンの混合物でないことを証明していない(組換え体は単一の遺伝子に由来するレクチンを生産しているが、実験で用いられたレクチンは単一の遺伝子産物であるという証明がなされていない)。
- 遺伝子組換えと関係がない、組織培養に伴う体細胞変異を考慮していない。(組織培養に伴うトランスポゾンの活性化に伴う変異以外にも、ジャガイモのような栄養繁殖植物の場合、植物体は変異の蓄積した細胞のキメラ集団として存在していることが多い。そのため、何ら変異処理をしなくても単細胞となるプロトプラストにして植物体を再生させると様々な表現型の変異株が得られることがある。)
という点が挙げられる。実験設計の不備のため、この実験によって遺伝子組換え自体によって危険性が増すという結論を導き出すことはできない。この論文に関しても、社会的な問題が大きいから論文の内容にかかわらず掲載することにしたという異例の編集者の意見が明記されて掲載された経緯がある(commentary, "Genetically modified foods: "absurd" concern or welcome dialogue?", Richard Horton, the Lancet, Vol. 354, p. 1314-6 (1999)[9]それには以下のように記されている。
- While criticising the researchers' “sweeping conclusions about the unpredictability and safety of GM foods”, he pointed to the frustration that had dogged this entire debate: “Pusztai's work has never been submitted for peer review, much less published, and so the usual evaluation of confusing claim and counter-claim effectively cannot be made”. This problem was underlined by our reviewers, one of whom, while arguing that the data were “flawed”, also noted that, “I would like to see [this work] published in the public domain so that fellow scientists can judge for themselves… if the paper is not published, it will be claimed there is a conspiracy to suppress information”.
この論文に関しては更に著者らとの異例の誌上討論が行われた(GM debate, the Lancet, Vol. 354, Issue 9191, 13 November 1999, P. 1725-1729)。そこでは空のベクターを用いていないという指摘に対して、著者らは、 "If our experiments are so poor why have they not been repeated in the past 16 months? It was not we who stopped the work on testing GM potatoes expressing GNA or other lectins or even potatoes transformed with the empty vector, which are now available." と実験において空のベクターを用いていなかったことを明確に認めている。
[編集] 背景
上記のような一般消費者の不安の背景として以下のようなことも指摘、主張されている。
- GM作物を推進する側の研究・行政サイドから市民へのGM作物に関する広報活動はこれまで充分であったとは言いがたく、反対派の先行を許してしまったことが今日の混乱を生んだ面がある。
- 一般人の科学知識の欠如により正確にGM作物が理解されていない。
以上2点は、研究開発に関わる側からよくなされる指摘であるが、反対派からは自らの視点が絶対に正しいと決め付けているとの批判もある。
- 「遺伝子組換え作物を人体に危険なものと消費者に訴え、自社商品の売り上げを伸ばそうとする非遺伝子組換え食品商法に走る業者」等[10]のネガティブキャンペーンがある。
- 「種子の特許を利用してアメリカ大企業は世界支配をたくらんでいる」と主張する「反米団体」や「環境団体」がいる。
- 政府に対する信用が低い。イギリス政府はBSE問題の収拾に失敗し、日本では薬害など厚生労働省の失態や国内でのBSE発生(農林水産省)が報じられ国民の信用が低下していた。どちらの国も遺伝子組換え作物の規制が厳しい。しかし、各国の政府に対する信用と各国の遺伝子組換え作物に対する政策に対する相関性は報告されていない。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ a b c d 『遺伝子組み換え作物、事実上の勝利 安全性への懸念をよそに栽培農家は世界中で急増』2007年12月17日付配信 日経ビジネスオンライン
- ^ a b c 『“遺伝子組み換え作物”中国進む技術開発 コメ商業栽培もう一歩』2007年10月29日付配信 産経新聞
[編集] 外部リンク
- 遺伝子組換え食品ホームページ(厚生労働省医薬食品局食品安全部)
- 遺伝子組換え農作物/遺伝子組換え食品関係情報
- 遺伝子組換え作物の栽培に関する検討委員会
- 食品の安全性と遺伝子組換え生物の将来展望に関する情報と解説
- 本当はどうなの?遺伝子組み換え食品
- 世界の遺伝子組換え作物の栽培状況
- 人類生態学の視点からみた遺伝子組換え技術
- 農林水産技術会議事務局技術安全課遺伝子組換えに関するQ&A
- 日本版バイオセーフティクリアリングハウス(環境省)
- 遺伝子組み換えの科学的情報を提供する バイテク情報普及会