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糖尿病 - Wikipedia

糖尿病

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

糖尿病のデータ
ICD-10 E10-E14
統計
世界の患者数 約1億8000万
(2006年推定患者数)
日本の患者数 約700万
(2005年推定患者数)
学会
日本 日本糖尿病学会
世界
この記事はウィキプロジェクト雛形を用いています

糖尿病(とうにょうびょう、Diabetes Mellitus: DM)は、糖代謝の異常によって起こるとされ、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が病的に高まることによって、様々な特徴的な合併症をきたす危険性のある病気である。一定以上の高血糖では尿中にもブドウ糖が漏出し尿が甘くなる(尿糖)ため糖尿病の名が付けられた(Diabetes=尿、Mellitus=甘い)。腎臓での再吸収障害のため尿糖の出る腎性糖尿は別の疾患である。

全世界の患者数は2006年現在で1億8000万を越えると見積もられ、2030年までに倍増すると予想されている。 日本国内の患者数は、この40年間で約3万人から700万人程度にまで膨れ上がってきており、境界型(糖尿病予備軍)を含めると2000万人に及ぶとも言われる。厚生労働省発表によると、2006年11月時点の調査データから、日本国内で糖尿病の疑いが強い人は推計820万人であった。

目次

[編集] 概要

血液中のブドウ糖濃度(血糖値、血糖)は、正常では常に一定範囲内に調節されている。これは、ブドウ糖がをはじめとした各器官の主要なエネルギー源であるだけでなく、組織の糖化ストレスをもたらす有害物質でもあるからである。血糖が上昇したときの調節能力(耐糖能)が弱くなり、血糖値が病的に高まった状態(または、高まることのある状態)を糖尿病と言う。

[編集] 病態

耐糖能の低下はインスリン作用が不足することによって起こる。インスリン作用は、血中にインスリンが必要なだけ分泌されることと、血中からインスリンが必要なだけ消費されることの、両方が必要である。血中にインスリンを分泌するのは膵臓にあるランゲルハンス島の内分泌細胞であり、血中のインスリンを消費するのは肝臓脂肪筋肉等である。従って膵臓での分泌や、脂肪筋組織での消費に問題が起こると糖尿病になる。膵臓でのインスリンの分泌は血糖値に応じてランゲルハンス島から分泌され、肝臓等各組織でのインスリンの消費はグリコーゲンの合成や脂肪の合成、タンパク同化を促している。

[編集] 分類

糖尿病は、耐糖能が低下する機序(メカニズム)によって1型糖尿病と2型糖尿病に分けられる。また近年、境界型糖尿病も重要視されている。

[編集] 1型糖尿病

1型糖尿病(いちがたとうにょうびょう)(ICD-10:E10)は「インスリン依存型糖尿病」ともいい 、膵臓ランゲルハンス島インスリンを分泌しているβ細胞が死滅する病気である。ほとんどの患者が20歳までに発症することから昔は小児糖尿病とも呼ばれていた。しかし、20歳を過ぎて発症するケースも少なくない。血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極度に低下するか、ほとんど分泌されなくなるため血中の糖が異常に増加する。20世紀前半にインスリンが治療応用されるまでは、極度の食事制限を要する致死的疾患の一つであった。血中に自らの膵細胞を攻撃する自己抗体が認められるものを1A型(自己免疫性)、ないものを1B型(特発性)とする。飲み薬は無効で、患者はかならず注射薬であるインスリンを常に携帯し、毎日自分で注射しなくてはならない。インスリンを注射しなければ、容易に生命の危険に陥る。また、1型糖尿病のなかでも、特に20歳を過ぎてから発症する「劇症1型糖尿病」という数日間でインスリンが枯渇するさらに危険な病もある。診断の基準としては抗GAD抗体、抗IA2抗体が陽性かどうかが重要である。2型と違い遺伝素因は少ないとされている。生活習慣病である2型とは違い、1型は生活習慣病ではない。また1型糖尿病では甲状腺疾患を合併しやすいことが知られているため女性では注意が必要である。

[編集] 2型糖尿病

2型糖尿病(にがたとうにょうびょう)(ICD-10:E11)は「インスリン非依存型糖尿病」ともいい、インスリン分泌低下と感受性低下の二つを原因とする糖尿病である。欧米では感受性低下(インスリン抵抗性が高い状態)のほうが原因として強い影響をしめすが、日本では膵臓インスリン分泌能低下も重要な原因である。少なくとも初期には、前者では太った糖尿病、後者ではやせた糖尿病となる。遺伝的因子と生活習慣がからみあって発症する生活習慣病。糖尿病全体の9割を占める。基本的には除外診断によって診断していく。気をつけるべき点としては2型にみえる1型糖尿病が存在するということである。SPIDDM(slowly progressive IDDM)と言われるものがある。1型にしては30~50歳で発症と発症年齢が高く、臨床像は2型そのものだが徐々にインスリン依存状態に陥っていく。こういった患者は抗GAD抗体が持続陽性となっており、検査をしないと1型とわからない。SU剤が一時期効果あったかのようにみえることもあるが基本的に1型糖尿病であるのでSU剤は進行を進める作用となるので注意が必要である。

[編集] その他の機序、疾患によるもの

[編集] 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの

MODY(モディ、Maturity Onset Diabetes of Young)、ミトコンドリア遺伝子異常、インスリン受容体異常症などが知られている。いずれも比較的若年に発症し、1型ほど重症ではなく、強い家族内発症がみられるという特徴があるが、臨床所見は大きく異なる。

  • MODY
    純粋に糖尿病のみを来すメンデル遺伝疾患で、常染色体優性遺伝を示す。内服薬による治療が奏効する場合が多い。
    MODYには6種類の病型があり、原因遺伝子はそれぞれHNF-4α(MODY1)、グルコキナーゼ(MODY2)、HNF-1α(MODY3)、IPF-1(MODY4)、HNF-1β(MODY5)、neuroD1(MODY6)である。
  • ミトコンドリア遺伝子異常
    そのメカニズム通り(参考: ミトコンドリアDNA)母方のみから遺伝し、難聴を伴うMIDD(Maternally Inherited Diabetes and Deafness)、最重症型で脳卒中・乳酸アシドーシスなどを来すMELASなど多彩な病像を呈する。
    ミトコンドリア遺伝子異常にはいくつかの変異ポイントがあるが、最多のものは3243A->G変異である。
  • インスリン受容体異常症
    黒色表皮腫や体毛が濃いなどの特徴的な体格がみられる。糖尿病として診断されるのはヘテロ接合型の患者であり、ホモ接合型では乳児期以降まで生存しない。
  • インスリン自体の遺伝子異常
    報告されているが極めてまれである。

いずれも診断にはゲノムDNAミトコンドリアDNAを検体とした特殊な検査が必要である。

[編集] 他の疾患、条件に伴うもの

続発性糖尿病(ぞくはつせいとうにょうびょう、二次性糖尿病)(ICD-10:E13)は、他の疾患によって引き起こされる糖尿病である。以前は原因となる疾患と一括されていた。原因となる疾患は血糖の調節機構に挙げたホルモンが異常高値になるものである。

[編集] 妊娠糖尿病

妊娠中は耐糖能が悪化しがちであり(hPLエストロゲン、プロゲストロンなどといった妊娠中に増加するホルモンによる)、妊娠中のみ血糖値の異常を来す患者がおり、妊娠糖尿病とよばれる。一般には出産後、改善する。ICD-10:O24.4、O24.9。いっぽう、もともと糖尿病患者が妊娠した場合は、糖尿病合併妊娠と呼ばれる。とは言え、もともと糖尿病であったかどうかを完全に確認できているわけではなく、妊娠糖尿病で発症し、分娩後もそのまま糖尿病が治らないこともままある。基本的に食事療法が行われるが、改善しない場合、後述の胎児へのリスクもあり、また飲み薬は催奇形性の懸念があるためインスリン注射療法を行うことになる。胎児への影響があるため、通常時より厳格な管理を必要とし、六分食やインスリン持続皮下注(CSII)などを行うこともある。

妊娠糖尿病では先天異常のリスクが高まるが、妊娠初期から正常血糖を保っていれば、通常の妊娠と同等である。早産も多く、羊水過多、妊娠高血圧症候群の頻度も高いハイリスク妊娠のひとつである。 妊娠糖尿病では巨大児になり易い為、難産になりやすい。また妊娠糖尿病では中枢神経系よりも身体の発育が良いので、出産のときに頭が通っても肩が通らない肩甲難産になり易い。その為、分娩が長引く場合は帝王切開が良い。

[編集] ステロイド糖尿病

膠原病などでステロイドを長期に内服している場合、続発性糖尿病を発症することがある。ステロイド(糖質コルチコイド)作用の、肝臓の糖新生亢進作用、末梢組織のインスリン抵抗性の亢進、食欲増進作用が関わっているとされる。ステロイドを減量すれば軽快する。ステロイド糖尿病では、網膜症などの血管合併症が起こりにくいとされる。

[編集] 原因

上記の分類に示されている通り、一言に糖尿病といっても多種多様な病気を含んでいて、本来症候群とでもいうべき疾患群である。そのなかで、1型と2型を除いたほとんどの糖尿病については上記の通り原因が明らかである。

しかし、糖尿病患者のほとんどを占める1型、2型の原因については確定的なことは何も分かっていない。ここでは提唱されている仮説について述べるにとどめる。

[編集] 1型糖尿病の原因

自己免疫の異常が重要な要因の一つと考えられている。しかし、自己免疫系はそれ自体が不明な部分を多く残すため、1型糖尿病の発症メカニズムも正確には明らかではない。

  • 自己免疫疾患の遺伝的素因(HLA-DR、DQ、PTPN22、CTLA-4など)
  • 自己抗体(ICA、抗GAD抗体、抗IA-2抗体、抗インスリン抗体など)
  • 分子模倣(コクサッキーBウイルスと抗GAD抗体の抗原であるグルタミン酸デカルボキシラーゼの相似性を根拠とする、そのほかエンテロウイルスEBウイルスがよく候補に挙げられる)

一方、1型糖尿病の一部には自己抗体が証明されず、膵臓にも炎症細胞の浸潤が証明されないものもある。これはあきらかに自己免疫性とは言えないものである。アジア、アフリカ人に多いとされるこの病型の原因についてはほとんど不明である。

[編集] 2型糖尿病の原因

2型糖尿病の原因についても明らかではない。主な病態が「インスリン抵抗性」と「インスリン分泌低下」の二つであり、それぞれに原因が提唱されている。大筋を言うと、遺伝的に糖尿病になりやすい体質の人が、糖尿病になりやすいような生活習慣を送ることによって2型糖尿病になると考えられている。しかし、そのような体質とは何かについてはほとんどわかっていないし、そのような生活習慣とはどのようなものかについても意見の食い違いがある。

近年特に国際的に特に注目されていて、広く認められている研究成果としては、アディポネクチンをはじめとするサイトカインネットワークの異常を原因とするものや、あるいは炎症を原因と考えるものなどがある。

  • 遺伝的素因(TCF7L2、Calpain-10、PPARγ受容体などの一塩基多型 (SNP))
  • アディポサイトカイン(アディポネクチン、TNF-α、レプチン、レジスチン、RBP4)
  • 食事パターン
  • 内臓脂肪型の脂肪分布パターン
  • 喫煙
2007年に発表されたメタ分析[1](対象論文25、調査人数1200万人)によれば、喫煙者は非喫煙者よりも2型糖尿病の罹患率が1.6倍高いという。さらに、喫煙量と罹患率には正の相関があり、特にヘビースモーカーでは罹患率がさらに高いと報告されている。
  • 炎症
  • 小胞体ストレス


[編集] 症状

糖尿病は、極度の高血糖(約600mg/dl以上)にならない限り自覚症状は多飲・多尿程度である(血糖値の上昇による浸透圧の上昇のため)。あるいは急性期(発症初期)の血糖高値のみでもこむらがえりなどの特異的な神経障害がおこることがある。慢性期になって、下記の合併症が発症したり進行すると、それに応じた症状が出現する。

分子中にアルデヒド基を持ち、蛋白質を構成する塩基性アミノ酸側鎖のアミノ基と高い反応性を持つブドウ糖の糖化ストレスにより血管系をはじめとした各器官に慢性的な障害をもたらす。このブドウ糖とタンパク質の反応はメイラード反応の前半部分に相当し、またアルデヒド基とアミノ残基の反応によるタンパク質の架橋反応である点でホルマリンによる生物組織の固定作用とも共通する要素を持つ。

[編集] 糖尿病性昏睡

これは糖尿病の急性合併症であり、一時的に著しい高血糖になることによって昏睡状態となる。体調不良によって平常通りに服薬できなかった場合などに特に起こりやすく、機序によって分類される以下の二つが知られている。

  • 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
    インスリンの絶対的不足に伴い細胞内の糖が欠乏し、あわてて脂肪酸からエネルギーを取り出そうとすると副産物として生じるケトンが全身性の代謝性ケトアシドーシスを引き起こして発症する。意識障害、低体温、腹痛などが症状。統計的には1型糖尿病患者に多い。
  • 高血糖性高浸透圧状態(HHS、非ケトン性高浸透圧性昏睡、HONK)
    高血糖性高浸透圧状態(こうけっとうせいこうしんとうあつじょうたい)は、高血糖に脱水が加わって起こる。意識障害が主症状。高齢者はそもそも脱水状態になりやすいのでこの病態にもなりやすい。統計的には高齢の2型糖尿病患者に多い。

上記二つの高血糖による意識障害のほか、糖尿病患者は治療薬の副作用によって低血糖による意識障害や乳酸アシドーシスを呈する場合もある。

[編集] 慢性期合併症 

多彩であるが、糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症の微小血管障害によって生じるものを、糖尿病の「三大合併症(triopathy)」といわれる。これら3つの合併症を後述の血管障害、いわゆる大血管障害と対応させて、小血管障害という。小血管障害は糖尿病発症の経過と比較することが重要である。神経障害は比較的早期から出現してくるが、網膜症は発症から5年ほどで出現してくる、発症10年で約50%で出現する。網膜症は腎症に先行することが多く、網膜症がなければ、腎機能障害は腎症によるものではなく、高血圧など別疾患によるものである可能性が高い。

[編集] 糖尿病性神経障害

比較的早期から出現し、小径の自律神経から感覚神経へと障害が進展する(ICD-10:E10.4、E11.4、等)。細胞毒としての 多発神経障害のほか、栄養血管の閉塞から多発単神経障害の形も同時に取る。自律神経障害としては胃腸障害(便秘/下痢)、発汗障害、 起立性低血圧、インポテンツ等。感覚神経障害としては末梢のしびれ、神経痛等である。多発単神経障害としては、一時的な黒内障もみられる。不思議なことに、末梢神経障害は糖尿病にかかっている時間の長さとは相関しない。自律神経障害は、相関する。胃腸障害は、現時点での血糖値に影響されるため、やはり相関しない。

[編集] 糖尿病性網膜症

詳細は糖尿病網膜症を参照

糖尿病(性)網膜症(とうにょうびょう(せい)もうまくしょう)は、糖尿病による網膜症。(ICD-10:E10.3、E11.3、等) 白内障、緑内障をはじめとする眼科疾患の原因となるほか、硝子体出血、牽引性網膜剥離、虹彩血管新生などにより失明に至る。後天性失明では最多である。定期的な眼科眼科受診、レーザー治療などで失明を予防することができる。基本的には慢性期の合併症だが、治療方針によっては血糖コントロールがついても網膜症によって失明してしまうことがあるため、糖尿病の治療前には眼科受診が望ましいといわれている。また網膜症が出現すると、腎症も出現しやすい。

[編集] 糖尿病性腎症

詳細は糖尿病性腎症を参照

糖尿病の患者で蛋白尿が指摘され、徐々に体がむくむネフローゼ症候群という病態になり腎不全となり、治療をしなければ死にいたる病気。2008年現在、日本において透析導入の原因の第一位である。糖尿病の治療を行い、予防できなければ、進行を遅らせたり、透析、腎移植を行う以外有効な治療法は確立していない。網膜症がなければ出現しにくいと考えられている。

[編集] 血管合併症

下記の三つの合併症は「大血管合併症」といわれ、糖尿病の有名な合併症であるだけでなく、糖尿病がある場合のこれらの疾患は通常よりも重症で治療が効きづらいことがわかっている。大血管合併症の中では心筋梗塞が最も多い。

[編集] 皮膚合併症

糖尿病性リポイド類壊死症(類脂肪性仮性壊死症)
下腿部に生じる橙色の萎縮斑。中央部が硬くなり、時に潰瘍化することがある。
糖尿病性浮腫性硬化症
うなじから肩にかけて指圧痕を伴わない腫脹が出現する。
環状肉芽腫
糖尿病性黄色腫
Dupuytren拘縮
手掌から指腹にかけしこりができる。進行すると指の伸展障害を引き起こす。
糖尿病の足(Diabetic foot)
神経障害により足の感覚がなくなっているため、足をぶつけることによる痛みに気づかず、ダメージを受け続けて足に傷が出来る。しかし足の血管障害もあるため傷の部位へなかなか栄養が行かず、ちょっとした傷を治癒させることができずにどんどん大きくなってしまい潰瘍を形成してしまう。足趾壊疽とは成因が異なる。
皮膚感染症(丹毒蜂巣織炎皮膚カンジダ症足白癬など)を併発しやすくなる。
糖尿病の易感染性による。特に細菌感染では、血糖値の上昇がみられ、血糖値のコントロールが通常より困難になるので注意が必要である。
色素性痒疹は糖尿病が原因のこともある。

[編集] 下肢合併症

神経障害性関節症(シャルコー関節)
神経障害のために関節痛に気付かず、障害がある関節がさらに破壊されていく。軽度の疼痛があることもある。
糖尿病性壊疽(足趾壊疽)
閉塞性動脈硬化症とは密接に関連しておこる合併症で、手足の末端への血管がほぼ完全に閉塞することによって栄養が行き届かなくなり、先端から手足の細胞が壊死していく。壊死すると、組織が黒く乾いて見える。

[編集] 免疫不全

糖尿病患者は、軽度の免疫不全状態となり、皮膚感染症(蜂窩織炎など)、尿路感染症(膀胱炎など)、カンジダ性食道炎、アスペルギルス症などをおこしやすく、また健康な人には感染しないような弱い菌やかび(真菌)による感染症にかかりやすい(AIDS、後天性免疫不全症候群ほどではない)。高血糖状態では白血球(具体的には好中球)の機能が低下することが原因と考えられている。

[編集] 創傷治癒遅延 

糖尿病患者は、傷が健康な人よりも治りにくい。これは特に、手術後に傷がくっつきにくいということに現れやすく、糖尿病患者は手術前に血糖値をよくするためだけに入院を要することがある。

[編集] 検査

[編集] 血糖値関連の検査

血糖値
血糖値は、食事を食べたり運動をしたりすることで容易に変動する。朝起きてから食事を取らずに測定した空腹時血糖と、どんなとき測ってもよい随時血糖が評価の対象である。 常用負荷血糖(普段の食事をして測定した血糖)では、食事開始(はしをつけて)から1時間後のpostprandial glycemia 1hr(PPG1hr)がピークとなることが多いとされ、有望視されている[2]
HbA1c
過去1-2ヶ月の血糖値の平均値を表すとされる。HbA1c 6.5%未満をコントロール良好とする。[3]食生活による変動が激しいことも知られおり、最近過食気味といったエピソードがあるだけで糖尿病かの診断では偽陽性となっていまうことがある。肝硬変、溶血の患者では低めに出ることが知られており、その場合はグルコアルブミンを代用することがある。HbA1cは5.8%以下で正常、6.5%以上で糖尿病と言われているが、OGTTに基づく診断では正常型、境界型、糖尿病型の各型とも広範囲に分布するためoverlapすることが多く、境界型糖尿病の診断や糖尿病の否定などには用いることができないといわれている。5.8%より大きい値が出たら境界型糖尿病なども疑い精査する必要がある。
グリコアルブミン
最近2週間程度の血糖値の平均値を表すとされる。HbA1cよりも最近の血糖値の推移がわかるという利点があるが、HbA1cとはことなり臨床研究で有効性が確認されてはいない。また、ネフローゼ症候群では低値となる傾向がある。
フルクトサミン

[編集] インスリン分泌能を測る検査

インスリン分泌指数(II)
75g経口ブドウ糖負荷試験にて負荷後30分の血中インスリン増加量を血糖値の増加量で除した値をインスリン分泌指数という。これはインスリン追加分泌のうち初期分泌の指標となる。糖尿病の初期から初期分泌は障害される傾向がある。この値が0.4以下が糖尿病型である。境界型糖尿病の患者でもこの値が0.4以下の患者では糖尿病に進展しやすいといわれている。
II=⊿血中インスリン値(30分値―0分値)(μU/ml)/⊿血糖値(30分値―0分値)(mg/dl)
血中Cペプチド
インスリン分泌能の指標とされる。治療としてインスリンを使用している患者では血中インスリンをはかっても、注射したインスリンも一緒に測定してしまい意味がない。また、抗インスリン抗体をもつ患者では血中インスリン測定値は正確な体内での有効インスリン量を反映しない。Cペプチドは、膵臓がインスリンをつくるときにできる副産物であり、(注射したものではなくて)体が作っているインスリン量を反映する。空腹時血中Cペプチドが0.5ng/ml以下ではインスリン依存状態と考えられる。
尿中Cペプチド
24時間ためた尿中のCペプチドを測定することにより、血中Cペプチドよりもさらに正確にインスリン分泌能を測定する。冷蓄尿が必要なため、入院中しか検査することができないがインスリン分泌能で最も信頼されている検査である。20μg/day以下ならばインスリン依存状態と考えられる。
グルカゴン負荷試験
最も正確で、臨床研究で用いられるインスリン分泌能測定検査。インスリンを出させるホルモンであるグルカゴンを注射し、注射前後でのCペプチド値の変化を見る。
HOMA-β [[1]]

[編集] インスリン抵抗性を測る検査

75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)
検査時点の耐糖能障害を示す検査である。ブドウ糖75gを含んだ溶液を飲み干した後、時間経過に従っての血糖値、尿糖、血中インスリン値などの経過を見る。国内診断基準ではこのOGTTの2時間血糖値が採用されている。また、0分~30分の血糖値とインスリンの変動は、日本ではinsulinogenic indexとして知られ、インスリン分泌能の評価に有用とされる(国際的コンセンサスではない)。75gOGTTではピークが後ろの時間にずれるためPPG1hrとはピークが異なる(ブドウ糖液は吸収スピードが遅い)。自覚症状のある糖尿病の患者では重篤な高血糖を招く恐れがあるため施行するべきではないといわれている。逆にHbA1cは5.8%~6.5%の時は最もよい適応となる。
血中インスリン
意外だがインスリン抵抗性の指標である。1型糖尿病では極めて少ないか、検出できないこともある。2型糖尿病初期には通常、高すぎる血糖を下げるため高値である。近年では、メタボリックシンドロームと関連しても注目されている(診断基準には含まれていない)。早朝空腹時の血中インスリン濃度が15μU/ml以上であった場合は明らかなインスリン抵抗性が考えられる。インスリン分泌能をみるにはインスリン分泌指数を計算する。その際に血中インスリン濃度は必要であることから分泌能検査ともいえるが単独では抵抗性の指標となる。
HOMA-R
空腹時血糖値が140mg/dl以下の場合、他のインスリン抵抗性の値とよく相関するといわれる外来でも行うことができる簡便な指標である。空腹時血糖値と空腹時血中インスリン濃度にによって計算される。
HOMA-R=空腹時インスリン値(μU/ml)×空腹時血糖値(mg/dl)/405
2.5以上の場合はインスリン抵抗性があり、1.6以下では正常である。ただしインスリン治療中の患者では用いることができない。
グルコースクランプ法
グルコースとインスリンを注射し、血糖値の定常値を維持するポイントをさだめることによって、インスリンがその人においてどれくらい血糖値を下げることができるのか、すなわちインスリン抵抗性を測定する。インスリン抵抗性の測定においてはもっとも正確であるとされるが、煩雑なので一般病院ではあまり行わない。
メタボリック症候群の指標
内臓脂肪型肥満、高血圧、高中性脂肪(TG)血症、低HDL血症ではインスリン抵抗性を有する例が多いといわれている。

[編集] 脂質代謝の検査

ケトン体
アセト酢酸3-ヒドロキシ酪酸アセトンという3つの物質をあわせてケトン体と呼ぶ。ケトン体は、インスリンの作用不足でブドウ糖をエネルギー源として利用できない時、体が脂肪をエネルギーに変換しようとする結果、発生する。尿または血液検査で調べられる。ケトアシドーシスは1型糖尿病で起こりやすいため、1型糖尿病では重要な検査。また、シックデイ(感染症などの糖尿病以外の病気に罹患して食事もとれないような日を総称的に指す言葉)の時には、ケトン体が増えやすいため、1型糖尿病で体調を崩した時には測定すると状態を自分で評価できる(ケトン体が出ているようなら、インスリン注射量が需要を下回っているので追加で注射したほうがよい)。最近は、血中ケトン体が測れる血糖自己測定器もある。
中性脂肪(TG)
中性脂肪は肝での産出亢進、および末梢組織での利用低下によって血中で上昇する傾向がある。

[編集] 画像診断

合併症に対して各種画像診断が行われる。

眼底写真
糖尿病性網膜症について評価するため撮影される。
超音波検査
腹部超音波検査によって、糖尿病性腎症による腎臓の形態変化を確認する。
頸部エコーにより頚動脈の動脈硬化を評価する。これは全身の動脈硬化を反映していることが多い。

[編集] 診断

日本では、日本糖尿病学会1999年の診断基準を用いる。これはアメリカ糖尿病学会1997年診断基準に基づいたものである。ただし、アメリカでは検査の簡便さも考慮し、空腹時血糖のみを重視するのに対して、日本とヨーロッパでは食後血糖を診断基準に含んでいるところに違いがある。

空腹時の血糖または75g経口ブドウ糖負荷試験で診断する。空腹時に126mg/dl以上の血糖があればブドウ糖負荷をしなくても糖尿病型と判定される。

空腹時血糖(mg/dl) 2時間後血糖(mg/dl)
正常型 110未満 140未満
境界型 126未満 200未満
糖尿病型 126以上 200以上

通常は判定を2回繰り返し、2回とも糖尿病型であれば糖尿病と診断。口渇や多飲、多尿などの典型症状や糖尿病性網膜症が存在する場合や、HbA1cが6.5%以上である場合は1回だけの判定で糖尿病と診断する。空腹時血糖110-126mg/dlをImpaired Fasting Glucose, IFGと呼び、75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値が140-200mg/dlであるものを耐糖能異常; Impaired Glucose Tolerance, IGTと呼ぶ。

IGTはいわば「糖尿病予備軍」と言える病態であり、臨床上の糖尿病との違いは後述する合併症があるかないかという点であった。しかし現在、IGT患者にも神経障害、心筋梗塞、動脈硬化をはじめとした合併症が出現することが知られており糖尿病とはっきり区別する意味は希薄になってきている。内部リンク境界型糖尿病を参照のこと。(DECODA study[4]、舟形町研究)

糖尿病と診断したら、次に必要なのはどういった糖尿病であるのかを把握し、それにも基づいた治療を考えることである。これらを行うためには。糖尿病が発症した原因と引き金、高血糖の程度と持続時間、合併症の程度を把握することが重要であるとされている。


[編集] 糖尿病が発症した原因と引き金

まずは1型糖尿病であるのか、2型糖尿病であるのか、二次性糖尿病であるのかといった成因から診断していく。ほとんどの場合は2型糖尿病であるがこれはあくまで除外診断によって行うべきである。手順としてはまずは1型糖尿病から疑っていく。基本的に1型糖尿病と2型糖尿病はまったく異なる臨床像を示すため区別は容易であるように思える。しかし、SPIDDM(slow progressive IDDM)という一見2型糖尿病を思わせる病型が存在するため、必ず一度は抗GAD抗体を測定し、否定しておくべきである。これを怠ると治療方針を誤ってしまう。また、糖尿病を誘発する疾患の有無を検索する。この過程は気にしだすときりがない。肝性糖尿病(糖新生をおこなうのが肝臓であるため、肝臓疾患の患者は糖尿病となりやすい)、膵性糖尿病(インスリンを分泌するのが膵臓のβ細胞であるため膵臓疾患の患者は糖尿病になりやすい)、また感染症、悪性腫瘍は比較的検査しやすい。診療所などで設備が乏しい場合は糖尿病と診断した時点で人間ドックやがん検診の受診を勧めるべきである。また精査まではしないにしろ内分泌疾患は念頭に置いた診察を心がける。バセドウ病先端巨大症クッシング症候群などが二次性糖尿病の原因としてよく知られている。甲状腺の触診や顔貌をみたりといった基本的な身体診察で疑えることも多い。重要なことは二次性糖尿病は原疾患の治療によって完治可能ということである。1型糖尿病、二次性糖尿病が否定できたら生活習慣病である2型糖尿病と考える。 2型糖尿病でも発症の背景を問診することで具体的に生活習慣のどこがいけなかったのが明らかになることが多い。生活習慣の乱れとしては食生活なのか運動習慣なのかアルコールなのか、糖尿病の家族歴があれば体質によるものなのか、ペットボトル症候群などにおちいっていないのかということを確認すると生活習慣の改善を行いやすくなる。

[編集] 高血糖の程度と持続時間

これらは自覚症状と病歴を作成することで把握することができる。自覚症状としては口渇、多飲、多尿(特に夜間尿の回数)を確認する。次に体重の経過をきく。最大体重、20歳のころの体重、現在の体重を中心に推移を見ていく。治療を行っていないにも関わらず体重が減少したら糖尿病の進行であることが多い。こういった兆候があったばあいは高血糖の持続時間は非常に長く小血管障害といった合併症の存在が疑われる。経験的に網膜症がなければ腎症はないことが多いため、明らかな腎障害を認めなければ眼底検査を優先するという方法もある。健康診断で糖尿病を疑われた、尿糖が指摘されたといった病歴作成は今後の治療の役にたつことが多い。

[編集] 合併症の程度

これはしっかりやろうとすると、糖尿病の合併症をすべて確認する必要がある、外来などでは一度にすべてを確認してもらうことは現行の医療体制では難しい。

大血管障害
大血管障害、具体的には心筋梗塞脳血管障害境界型糖尿病の時点から出現することが知られている。基本的には動脈硬化の程度の確認をする。頸動脈、腹部血管、大腿動脈の雑音の聴取、膝窩動脈、足背動脈、後脛骨動脈の触知は動脈硬化の指標となる。また境界型糖尿病、糖尿病の患者は無痛性心筋虚血をおこすため、エピソードがなくとも心電図を施行するべきである。小血管障害の出現などは血糖値の推移と並行することが多いので予測しやすいが、大血管障害は耐糖能障害がある時点でいつおこってもおかしくないため定期的に動脈硬化の程度を把握しなければならない。近年よくおこなわれるのが頚動脈エコー検査である。これはIMT(頸動脈内膜中膜複合体肥厚度)を測定する検査である。頸動脈の最大肥厚部とその左右1cmの3点を測定し平均値を指標とする検査である。頸動脈分枝部に病変があることが多い。IMTが1.1cmを超えるときは動脈硬化の兆候があり脳神経外科とのコンサルトが必要となることもある。IMTは大血管障害の発生とよく相関し、治療効果が目に見えるので扱いやすい指標である。動脈硬化のリスクファクターを除去することは言うまでもない。
小血管障害
神経障害の評価としては下肢の振動覚、深部腱反射(DTR)である膝蓋腱反射(PTR)やアキレス腱反射(ATR)が指標となる。足の視診をその際に行う。基本的にニューロパチーがあると思えばよい。気がつきやすい症状としては足のしびれ感である。腎症の評価は尿検査で行う。尿蛋白が陽性ならば腎症があるのはほぼ確定だが、陰性であっても腎症は否定できない。微量アルブミンを測定し、30~300mg/gCr以上なら早期腎症となる。早期腎症の時点で血圧コントロール、具体的には腎保護作用があるACE阻害薬を投与することで進行を防止することができる。治療効果判定は血圧の効果と蛋白尿の減少である。網膜症に関しては眼科にて眼底検査を行う。気がつきやすい症状としては目のかすみである。異常が見られなくとも年に一回は眼底検査を行うべきである。網膜症の出現は腎症が今後進行することを強く示唆する。また眼底検査は糖尿病治療前に行うべきである。網膜症は進行すると血糖値を急速に改善すると網膜症が進行するということが知られている。もし進行した網膜症があった場合はHbA1cを3%下げるのに6か月位かければ、比較的安全に治療することができるといわれている。


[編集] 治療

[編集] 概要

  • 糖尿病の治療は病因、または重症度(進行度)によって異なる。2型糖尿病初期において最も重要なのは食事療法運動療法である。
  • 食事療法、運動療法でコントロールがつかない場合は経口血糖降下薬インスリンといった薬物を使用する。
  • 治療効果判定は血糖値に準ずるパラメータで行うこととなっている。治療する目的は糖尿病の各種合併症を防ぐということである。

[編集] 具体的治療指針

初期糖尿病の治療で重要なのが、食事療法運動療法である。高血糖ストレスによるインスリン分泌細胞の疲弊、死滅が進行する前に開始することが望ましい。耐糖能異常の段階から生活習慣の修正や体脂肪減量を行うことが糖尿病患者の発生を防ぐために推奨されている。体脂肪の中でも内臓脂肪の減量が重要とされ、インスリン抵抗性を解除し、高血糖状態からインスリン分泌低下の悪循環を和らげることができる。これは糖尿病の進行がどの段階でもいえることである。糖尿病の診断がつく前、いわゆる境界型糖尿病の段階から行うべき治療である。特にIGTといわれる境界型糖尿病では大血管障害のリスクが高いため積極的な治療が必要と考えられており、ビグアナイド薬やαGIといった経口血糖降下薬も生活習慣の改善には劣るが効果があるといわれている。これらの内服は食事、運動の改善が不可能な患者にも一定の効果はあるもの糖尿病の進行を必ずしもくいとめられるわけではなく、治療方法もガイドライン化されていない。

詳細は境界型糖尿病を参照

血糖値が高い状態であれば、経口血糖降下薬を用いた薬剤療法開始、インスリン療法開始を行う。最近では血糖が高い状態で長い時間経過するということ自体がその後のさまざまな合併症を引き起こすことが指摘されており、できるだけ早期の治療を行うよう世界中の学会が声明文を出している。
血糖値はどれくらいならよいのか

糖尿病の治療は食事、運動といったインスリン抵抗性を改善させる治療からインスリンといった血糖を下げるものなど様々なものがあるが、合併症予防という観点では治療効果判定は血糖コントロールで行う場合が多い。

糖尿病のコントロール状態は食前または食後血糖値、またHbA1cを測定することで評価する。HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、ヘモグロビンに糖が付着したもので、過去1~2ヶ月の平均的な血糖値を反映する。一方、グリコアルブミンは過去数週間の血糖変化と、食後血糖を反映する検査値である。

実際の治療目標は、血糖値に関して理想的には食前110mg/dL以下(近年、アメリカでは100mg/dL以下を推奨している)、食後140mg/dL未満を目標とする。HbA1cに関しては日本糖尿病学会によると、5.8%以下は優、5.8-6.5%は良、6.5-8.0%は可(6.5-7.0%は不十分、7.0-8.0%は不良)、8.0%以上は不可と評価される。臨床研究によると、HbA1cが6.5%をこえたり、食後血糖値が180mg/dLを越えると、その後の合併症の危険度が増大することがわかっている。[5]また、細小血管合併症においては血糖コントロール閾値は認められていない。[6]

糖尿病患者はインスリンそのものの分泌のタイミングが健康な人よりも遅いことが多いか、分泌されても感受性が低下しているため、食前よりも食後の高血糖を起こしやすく、なおかつ血糖降下薬を用いてもコントロールが難しい(一日の血糖平均値は低下する)。食後数時間のみが高血糖状態であることを「隠れ糖尿病」と表現することもある。一日のうち数時間のみが高血糖でも、長い年月にわたりその状態が継続すると、通常の糖尿病と同様に合併症発生のリスクにさらされる。このようにとりわけ食後の血糖値をいかにして正常範囲に保つかが、今後の糖尿病の合併症予防の課題といえる。


経口薬の開始はインスリンの適応から外れていることが前提である。そのためインスリンの適応から示す。またどうような治療をした場合も管理目標は日本糖尿病学会のガイドライン[7]ではHbA1c <6.5%、食後2時間の血糖値<180mg/dLとなっている。国際糖尿病連合の「食後血糖値の管理に関するガイドライン」[8]では、食後2時間で血糖値<140mg/dLとなるよう謳っている。

インスリン療法の絶対的適応
インスリン依存状態であるとき
糖尿病性昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、乳酸アシドーシス)であるとき
重症の肝障害、腎障害を合併する時
重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例など)のとき
糖尿病合併妊娠(妊娠糖尿病で食事療法だけでは良好な血糖コントロールが得られない場合も含む)
中心静脈栄養時の血糖コントロール
インスリン療法の相対的適応
インスリン非依存状態の例でも著名な高血糖(例えば、空腹時血糖値250mg/dl以上、随時血糖値350mg/dl以上)を認める場合。
経口薬療法では良好な血糖コントロールが得られない場合(SU薬の一次無効、二次無効など)
やせ型で栄養状態が低下している場合
ブドウ糖毒性を積極的に解除する場合

インスリンの適応から外れた場合は、軽症か重症化によって治療方法が若干異なる。

軽症糖尿病の場合

目安として、HbA1c<8%、空腹時血糖値<150mg/dl,食後血糖値<250mg/dlを軽症として扱うこととする。このような軽症糖尿病に対してもかつてはSU薬を用いていたのだが近年は他の経口血糖降下薬を用いることが多い。

肥満によるインスリン抵抗性増大例
BMIが25を超えて軽症糖尿病である場合、肥満によるインスリン抵抗性による可能性が高いと考えられる。そのため肥満の解消が最優先事項となる。そのためには食事療法運動療法が重要なのは言うまでもない。そして経口血糖降下薬を用いるのなら肥満を助長しない薬であることが望ましいと考えられる。その後の治療効果判定が難しくなるからである(たとえば、血糖値は下降傾向になったが太りましたという結果にしても、改善傾向ではない可能性がある。)。インスリン分泌促進薬は副作用として体重増加がよく知られているため、この時点ではふさわしくないためそれ以外の薬を用いるべきである。体重に対する影響としてはビグアナイド薬が不変から減少傾向、αGI薬は不変、チアゾリジン誘導体は効果が出る場合は浮腫の副作用以外に体重が若干増加する傾向が知られている。
以上のことを踏まえるとまずはビグアナイド薬、塩酸メトホルミン(メルビン®)からはじめ、副作用の胃腸障害によって服薬困難であればαGIやチアゾリジン誘導体に切り替える。また心不全の既往があればメルビン®、アクトス®ともに適応外となるためベイスン®、グルコバイ®といったαGIを処方するという流れが考えられる。但し、適応外さえ守ればこれらのくすりはどれを使ったから明らかに悪いということはない。定期的にフォローアップし、効果判定をしていくことが大切である。特にアクトス®は全く効果がない場合もある(量が足りないのかといったところで悩む)ので、思い切った変更が必要である。
やせ型、インスリン分泌低下による食後高血糖例(かくれ糖尿病も含める)
こういった症例も1990年代はSU薬での治療が主流であった。作用機序からも明らかであるように食後高血糖(インスリンの追加分泌の初期分泌能の低下)はαGIや速効型インスリン分泌促進薬スターシス®やグルファスト®がよい適応となる。SU薬はインスリンの基礎分泌を高める薬であり、追加分泌を促す作用はない。そのため食後高血糖が低下するように基礎分泌をあげてしまうと空腹時に低血糖となり、空腹感を覚え過食となり治療がうまくいかないこともあった。歴史的にはこういった背景もあり、速効型インスリン分泌促進薬スターシス®は販売開始となったのだが、皮肉なことにこのような血糖値のパターンの患者でもSU剤にてコントロール良好となった例ではスターシス®やグルファスト®は効果があまり良くないといことが明らかになった。そのためスターシス®は当初、現場では効かない薬と思われていた。2008年現在は血糖値の変化パターンは同一だがスターシス®が効果的な場合とSU薬が効果的な場合が存在し、治療を行うまで区別することはできないと理解されている(実際には食事、運動療法が全くできていない効果がないことも多々あり、生活習慣病治療の難しいところである)。
以上のことを踏まえるとこういった症例では第一選択としてスターシス®を用いて、効果不十分ならばスターシス®とグルコバイ®、ベイスン®の併用療法、それでも効果がなければ薬効が低めのSU剤、具体的にはグリミクロン®を用いるといった方法が考えられる。
注意すべきことはほぼ同じ作用機序であるにも関わらず、SU薬はインスリン基礎分泌のみを上昇させ、ナテグリニド(スターシス®)はインスリン追加分泌のみを上昇させる。基礎分泌と追加分泌両方が足りないということは多々あるのだが、保険診療上SU薬とナテグリニドの併用は認められていない。併用したいときはナテグリニドをαGIで代用することとなっている。
重症糖尿病の場合

具体的にはHbA1c>8%である場合のアプローチを考える。この場合重症度には相当な幅があるため、まずはインスリンの適応に入るのかどうかを検討する。インスリンの適応がなければ経口血糖低下薬の出番である。HbA1c>8%となるくらいの高血糖の場合は追加分泌障害も存在する可能性があるが基本的には基礎分泌が足りていないためSU薬は良い適応となる。SU薬を少量から開始し、血糖値の減少を見ながら徐々に増量していく。アマリール®であったら1~2mg/day,オイグルカン®であったら1.25~2.5mg/dayあたりから開始することが多い。効果不良例では最も薬効の強いSU剤であるオイグルカン®5.0mg(分1、分2問わない)あたりまで増加させるが、ここまでやって効果不良の場合SU剤の増量よりも多剤併用療法に切り替えた方がうまくいくことが多い。SU剤にて全く効果がない場合を一時無効といい、インスリンの適応となる。はじめは効果があったのに徐々に効果がなくなっていくことを二次無効という。原因としては食生活の乱れ、肥満の悪化、膵臓β細胞の疲弊(持続的な高血糖にさらされると膵臓β細胞の破壊が進行することが知られている)が考えられる。基本的には効果判定は食事、運動を踏まえた生活歴と体重、血糖値の2~3か月の推移にて判断する。2次無効と判断した場合はまずは2剤併用療法を行う。問題点として肥満によるインスリン抵抗性の増大を考えるのならビグアナイド薬メルビン®やチアゾリジン薬アクトス®、インスリン初期分泌の障害が気になるのならαGI薬であるグルコバイ®といった具合に軽症糖尿病時と同様の考え方で2剤目を選ぶ。この状態で3ヶ月ほどで効果判定を行い、さらに効果不良であれば3剤併用療法となる。これでも効果不十分ならばいよいよインスリン導入ということとなる。インスリンの導入では皮下注射を自分で行えなければならない、血糖自己測定(SMBG)ができなければならない。シックディの対応、低血糖の対応といった問題が生じてくるので、この段階になる前に説明しておくことが望ましい。重要なことはインスリン治療を開始することで膵臓のインスリン分泌能が回復してきて、経口血糖降下薬すら不要になることがあること(一生インスリンを打ち続けなければならないということではない)、食事運動療法が上手くいっていなければ教育入院を機会に改善できる可能性があるということである。コントロール不良も食事、運動療法をせず高血糖持続で体重減少となるとかなりひどい状態が考えられる(こういった状態で食事、運動をしっかりやりましたと平気でいう患者もいる、定期的にフォローしている患者ならばおかしいことに気がつけるが、初診でたまたま来た患者がこのような状態であると判断できない)が、体重が増えて血糖値が高値というのはインスリン自体は分泌されているのでインスリン導入にて改善の見込みはある場合がある。設備のある病院ならばインスリン分泌能、インスリン抵抗性を客観的に測定するべきである。


インスリン療法

インスリン療法としては強化インスリン療法とその他の治療法に分けられる。まずはインスリンの適応があるかどうかを判断する。インスリンの適応があると判断したら、患者の状態を把握し、インスリン強化療法を行うのか、それともその他の治療法を行うのかを判断する。インスリン療法の基本は健常者にみられる血中インスリンの変動パターンをインスリン注射によって模倣することである。健常者のインスリン分泌は基礎インスリン分泌と、食事後のブドウ糖やアミノ酸刺激による追加インスリン分泌からなっている。これをもっともよく再現できるのは強化インスリン療法であるが、手技が煩雑であるのがネックである。今後の糖尿病管理も強化インスリン療法を行うのなら、患者教育なども行い導入する価値はあるが、手術や処置で一時的に経口血糖降下薬を用いられないという場合、生活スタイルから強化インスリン療法を行うのが不可能な場合はその他の療法が選択される。

強化インスリン療法
強化インスリン療法とは、インスリンの頻回注射。または持続皮下インスリン注入(CSII)に血糖自己測定(SMBG)を併用し、医師の指示に従い、患者自身がインスリン注射量を決められた範囲で調節しながら、良好な血糖コントロールを目指す方法である。基本的には食事をしている患者では、各食前、就寝前の一日四回血糖を測定し、各食前に速効型インスリン(R)を就寝前に中間型インスリン(N)の一日四回を皮下注にて始める。オーソドックスなやり方としては各回3~4単位程度、一日12~16単位から始める。朝食前のRは昼食前の血糖を下げ。昼食前のRは夕食前の血糖を下げる。夕食前のRは就寝前の血糖を下げ、就寝前のNは朝食前の血糖を下げると考えると分かりやすい。量を調節する場合は2単位程度までの変更にとどめた方が安全である。
その他の療法
基礎インスリン分泌が保たれているような患者では、速効型(または超速効型)インスリンの毎食前3回注射など強化インスリン療法に準じた注射方法がある。また頻回のインスリン注射が困難な患者や強化インスリン療法が適応とならない患者では混合型または中間型の一日1回~2回投与という方法もある。具体的にはNを朝食前に一回打ちにしたり、混合型製剤を朝食前、夕食前の2回打ちにし、食後血糖を抑えるためαグルコシターゼ阻害薬を併用した入りするなどがオーソドックスといわれている。病棟などではインスリンスライディングスケールという方法をとることがある。これは各食前の血糖値に基づいてその時にうつインスリンを決定するという方法であり、短期間ならば良いが血糖の変動を激しくするので避けたほうが良い。このような投与法でもインスリン量は0.2単位/kgにて開始し、0.5単位/kgまで増量可能である。中間型を2回打ちする場合は朝:夕を2:1または3:2の比率とすることが多い。中間型インスリンが一日10単位以上の場合は一日二回と分けることが多い。
食事をしないIVHの患者では高カロリー輸液にRを混ぜることもある。この場合はグルコース10gにつきR1単位から始めて血糖を測定から至適量を決めていく。注意として速効型インスリン以外の静注は禁止である。
糖尿病緊急症のときのインスリンの使用
糖尿病性ケトアシドーシスや非ケトン性高浸透圧性昏睡の場合、インスリンを投与することがある。糖尿病性緊急症を疑ったら、まずはRを10単位静注する。以後は0.1単位/kg/hrにて点滴静注する。血糖が250~300mg/dl、HCO3>18、pH>7.3になるまで続ける。インスリン投与にて低カリウム血症となるためカリウムを補充する必要がある。これはインスリンがカリウムを消費することと糖尿病性緊急症の時はアシドーシスがあるためカリウムが高めに測定されるということの二つの理由で説明できる。


インスリン療法での注意点

インスリン療法の絶対的適応例では入院による導入が望ましいといわれているが、相対的適応例におけるインスリン療法の開始や経口血糖降下薬からの切り替えの場合は外来で行うことが多い。この際、インスリン量の調節のため外来を頻回にすることで対処することが多い。外来での導入に関しての危険性を評価するには

ケトーシスがないこと。
感染症や悪性腫瘍といった高血糖の原因となる他の疾患が存在しないこと
網膜症(特に福田分類でBとなるもの)、腎機能低下といった進行した糖尿病慢性合併症が存在しないこと。
食事療法、インスリン注射、血糖自己測定といった自己管理能力があること

を確認することが望ましい。これらに該当するようならば糖尿病専門医がいる施設や教育入院を用いないと外来でのコントロールは危険である。

インスリン療法では注意するべきことがいくつかある。インスリンの導入では皮下注射を自分で行えなければならない、血糖自己測定(SMBG)ができなければならない。シックディの対応、低血糖の対応といった問題を克服しなければ自宅では行うことができない。入院中は看護師の管理によって教育が不十分でも管理可能だが、退院前にこれらの教育がなされていなければ大きな事故につながりかねない。

特に気をつけることが低血糖の対応である。低血糖発作は初期ならばブドウ糖を摂取することで改善できる。しかしこのあと、低血糖になったからということで次の投与のインスリンを自己判断でスキップしてしまう場合が多い。低血糖が起こった場合は責任インスリンの調節をし再発予防を行わないと意味がないのでこういったことには十分留意する。

インスリン療法を開始すると膵機能が回復してくることがある。この目安はインスリン必要量の低下によって判断する。この場合はインスリン療法を中止できることもある。

αGIなどの経口血糖降下薬の中にはインスリンと併用できるものもある。SU剤で二次無効となったとき、内服薬を中止せず就寝前にNを投与することで糖毒性が解除されSU薬の効果が再び現れることもある。

[編集] 食事療法

詳細は食餌療法を参照

糖尿病治療の基本はエネルギーの制限である。日常の生活強度に合った食事をする必要がある。目安としては、デスクワークの多い成人男性では、1500kcal~1600kcal(約20単位)ということになる。また近年エネルギー制限だけではなく糖質の制限といった食事療法もおこなわれている。

[編集] 運動療法

詳細は運動療法を参照

医師の指導に従って、自分に適した運動メニューを作り実行する。いきなり激しい運動をするのは避け、徐々に運動を習慣づけるのがよい。 筋への糖取り込み率を高め、インスリン抵抗性を改善する働きもある。

[編集] 薬物療法

[編集] 経口血糖降下薬

詳細は経口血糖降下薬を参照

[編集] インスリン製剤

詳細はインスリンを参照

[編集] GLP-I注射薬

詳細はインクレチンを参照

exenatide (BYETTA ™)など


[編集] 各国において

世界保健機関(WHO)によると、2006年の時点で世界には少なくとも 1億7100万人の糖尿病患者がいるという。患者数は急増しており、2030年までにこの数は倍増すると推定されている。糖尿病患者は世界中にいるが、先進国ほど(2型の)患者数が多い。しかしもっとも増加率の高い地域はアジアとアフリカになるとみられており、2030年までにほとんどの患者が発見されるだろうと考えられている。発展途上国の糖尿病は、都市化とライフスタイルの変化にともなって増加する傾向があり、食生活の「西欧化」と関連している可能性がある。このことから糖尿病には(食事など)環境の変化が大きくかかわってくると考えられているが、詳しいメカニズムはまだわかっていない。

先進国において、糖尿病は 10大(あるいは5大)疾病となっており、他の国でもその影響は増加しつつある。

[編集] 世界糖尿病デー

上述の通り、現在、糖尿病を世界の成人人口の約5~6%が抱えており、その数は増加の一途を辿っている。また糖尿病による死者数は、後天性免疫不全症候群(AIDS)による死者数に匹敵し、糖尿病関連死亡は、AIDSのそれを超えると推計している。このような状況を踏まえ国際連合は、国際糖尿病連合(IDF)が要請してきた「糖尿病の全世界的驚異を認知する決議」を2006年12月20日に国連総会で採択し、インスリンの発見者であるバンティング博士の誕生日である11月14日を「世界糖尿病デー」に指定した。日本でも、2007年11月14日には東京タワーや通天閣などを「世界糖尿病デー」のシンボルカラーである青にライトアップし、糖尿病の予防、治療、療養を喚起する啓発活動が展開された。

なお、国連が「世界○○デー」と疾患名を冠した啓発の日を設けたのは、12月1日の「世界エイズデー」に引き続き、「世界糖尿病デー」が2つ目である。

[編集] 日本

[編集] 統計

  • 死亡率の都道府県ワースト1位は14年連続徳島県(2007年にはワースト6位と改善している)

厚生労働省の2006年の人口動態統計(vital statistics)によれば、全国の死亡率の都道府県ワースト1位は1993年から14年連続で徳島県である(10万人当たり19.5人、ちなみに最低は愛知県で7.5人)。 特定の疾患等による死亡率で10年以上継続して、同一の県で1位であるのは他にあまり例を見ない(他に地域的な高率としては、精神医療の分野において、秋田県が1995年から2006年まで12年連続自殺率1位などがある。秋田県の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は42.7人。全国平均は23.7人)。糖尿病は生活習慣病の一種であるだけに、治療型から保健指導型の予防医療への転換を図らない限り、その死亡率を劇的に下げることは容易でない。徳島県は医療機関数・医師数などが全国平均よりも高い県であるだけに、徳島県医師会や医療機関、徳島県その他行政機関及び地域住民の糖尿病予防に対する知識と意識の低さが、毎年、要因として指摘され続けている[要出典]が、少なくとも統計上の結果としては、ほとんど改善されていない。徳島県は2005年11月に「糖尿病緊急事態宣言」を宣言したが、数値の上では何ら結果を出さず、かえって10万人当たり死亡率は前年の18.0人から19.5人まで悪化した。全国初の死亡率20人越えも視野に入り、死亡率最低の愛知県の実に3倍の死亡率にも達する勢いで更に増加傾向にある。特定の疾患の地域間格差としては極めて異例である。また徳島県では肥満という要素でも、20歳以上の男性の37.2%が肥満であり、全国平均の28.4%を大きく上回っており糖尿病予備軍としての肥満の若者の存在は更に将来の展望を厳しいものにしている。 糖尿病の四大原因は、加齢、遺伝、肥満、運動不足と言われているが、徳島県に限らず、公共交通機関が少ないマイカー頼みの地方社会が死亡率が高い傾向がある。 ちなみに、2006年は、徳島県を筆頭に、2位鹿児島県(14.2人)、3位福島県(14.1人)、4位鳥取県(13.7人)、5位青森県(13.6人)がワースト5であり、逆に東京都(9.9人)の他、岐阜県(9.5人)、長崎県(9.5人)、大分県(9.5人)、宮崎県(9.3人)、滋賀県(9.1人)、埼玉県(8.9人)、奈良県(8.5人)、神奈川県(8.4人)、愛知県(7.5人)の10都県が10万人当たりの死亡率が10人を下回る。際立った地域格差が見られるのも糖尿病死亡率の特徴で、死亡率の低い地域に九州の高齢者が多い地域も入っていることから、加齢や遺伝以外にも、食習慣や運動習慣が大きく影響することは以前より指摘されている。 徳島県をはじめ死亡率の高い県は、きめ細かい分析と対応に早急に取り組み、なおかつ、それを根気よく継続していく必要に迫られている。

[編集] 1型糖尿病
  • 発症率(0~14歳)は10万人に1.5人(1993年日本糖尿病学会小児糖尿病委員会より) 
  • 最近、世界的に1型糖尿病の発症率の増加が報告され、環境要因との因果関係が疑われている(IDF報告およびLancet2004 Nov 6-12:1699-700.より)

[編集] 2型糖尿病
  • 患者数500万人(2002年)
  • 有病率約5%(2002年)

[編集] 歴史

[編集] 分類
  • 1985年に日本糖尿病学会によって「インスリン依存性糖尿病(IDDM)」「インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)」等に分類されていた。これは治療法からみた分類法であった。
  • 1999年に日本糖尿病学会によって「1型糖尿病」「2型糖尿病」等に分類された。これは病因による分類である。

[編集] 米国

北米における糖尿病比率は、少なくともここ20年間は増加を続けている。2005年には、米国だけでおよそ 2080万人の糖尿病患者がいた。全米糖尿病協会(American Diabetes Association) によると、620万人の人々がまだ診断を受けておらず、糖尿病予備軍は4100万人に達する。

[編集] 歴史上の人物と糖尿病

歴史上著名な人物にも、晩年糖尿病を患ったと思しき記録が残されている人物が散見される。中国史においては代に反乱を起こした安禄山が反乱の最中に失明などを引き起こしたのが糖尿病によるものではないかとする説がある。また日本史上では藤原道長の晩年の健康状態を記した記録(藤原実資の日記「小右記」に見られる)が糖尿病の病態と酷似しており、糖尿病の日本での最古の記録に相当するのではないかと言われている。また、道長の一族には「飲水」と呼ばれる病気が原因で死去するものが多かったと伝えられており、詳細は不明であるが患者はしばしば水を飲用したがる病状が見られるという記録からこれを糖尿病であると考えて、藤原摂関家には糖尿病の遺伝的要因があったのではとする学者もいる。

[編集] 脚注

  1. ^ Willi C, Bodenmann P, Ghali WA, Faris PD, Cornuz J. Active smoking and the risk of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2007 Dec 12;298(22):2654-64.
  2. ^ 門脇孝:糖尿病UP-DATE,1999; Hanefeld: Diabetologia, 1996
  3. ^ http://lipid.umin.ne.jp/guideline.html
  4. ^ Nakagami T. et al: Diabetologia, 47: 385-394, 2004
  5. ^ Intensive insulin therapy prevents the progression of diabetic microvascular complications in Japanese patients with non-insulin-dependent diabetes mellitus: A randomized prospective 6-year study. Diabetes Res Clin Pract 28:103-117,1995
  6. ^ Association of glycemia with macrovascular and microvascular complications of type 2 diaetes (UKPDS 35): prospective observational study. BMJ 321: 405-12, 2000.
  7. ^ http://minds.jcqhc.or.jp/0004_ContentsTop.html#G0000107_GL
  8. ^ http://www.idf.org/webdata/docs/Japanese_GMPG_Final_280308.pdf

[編集] 参考文献

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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