アセトン
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アセトン | |
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一般情報 | |
IUPAC名 | 2-プロパノン(系統名) |
別名 | ジメチルケトン |
分子式 | C3H6O |
分子量 | 58.08 g/mol |
組成式 | |
式量 | g/mol |
形状 | 無色液体 |
CAS登録番号 | [67-64-1] |
SMILES | |
性質 | |
密度と相 | 0.788 (25 ℃) g/cm3, |
相対蒸気密度 | (空気 = 1) |
水への溶解度 | 任意に混和する |
への溶解度 | |
への溶解度 | |
融点 | -94 °C |
沸点 | 56.5 °C |
昇華点 | °C |
pKa | 20(水中) |
pKb | |
比旋光度 [α]D | |
比旋光度 [α]D | |
粘度 | |
屈折率 | 1.3591 (20 ℃) |
出典 |
アセトン (acetone) は有機溶媒として広く用いられる有機化合物で、もっとも単純な構造のケトンである。IUPAC命名法では 2-プロパノン (2-propanone) と表される。両親媒性の無色の液体で、水、アルコール類、クロロホルム、エーテル類、ほとんどの油脂をよく溶かす。常温で高い揮発性を有し、強い引火性があるため、取扱い時には火気に厳重な注意が必要である。
目次 |
[編集] 関連法規
- 消防法による危険物(第四類 引火性液体、第一石油類)に指定されており、一定量以上の貯蔵には消防署への届出が必要で、一定量以上の取り扱いには危険物取扱者乙四類か、甲種免許所持者でなければならない。
- 麻薬向精神薬原料対象物質
[編集] 製造
酢酸カルシウムの乾留や、クメン法によるフェノール製造の過程で、クメンヒドロペルオキシド (C6H5C(CH3)2OOH) の酸分解の段階において、アセトンが副生物として得られる。
また、イソプロピルアルコールを酸化亜鉛などの触媒存在下に脱水素、あるいは空気酸化して得られる酸化物を分解することによっても得られる。プロピンに水を付加することでも得られる。プロピレンをワッカー酸化によってアセトンとする方法も用いられる。
アセトンから出発する有機合成の需要は比較的少なく、クメン法などに伴い副生するアセトンの産量は過剰である。このため価格は安い。
合成アセトンの 2004年度日本国内生産量は 538,735 t、工業消費量は 110,269 t である。
歴史的には、ハイム・ワイツマンが第一次世界大戦中に、砂糖などから得られたデンプンにバクテリアの1種クロストリジウム・アセトブチリクムを作用させるバクテリア発酵法を発明し、イギリス軍に提供した。これがきっかけでバルフォア宣言が出され、後のイスラエル建国が約束され、ワイツマンはイスラエルの初代大統領となった。
[編集] 性質
人体に対しては深刻な毒性は持たないが、吸引すると頭痛、気管支炎などを引き起こし、大量だと意識を失うこともある。ラットの半数致死量 (LD50) は 10.4 mL/kg(経口)[1]。 ヒト経口推定致死量 50~75ml
[編集] 用途
マニキュアの除光液の主成分であるが、アセトンの脱脂性が強いため、爪を劣化させることがあり、ノンアセトンタイプの除光液も発売されている。
有機溶媒も水もよく溶かし、沸点が低く乾きやすいため、有機化学研究の分野で器具の洗浄に使われる。また、1,2-ジオールのアセトニド保護にも使われる。
その他の用途では、生物学に関連する諸分野で、生物組織の脱水、脱脂、固定などに用いられることがある。
アセトンは、メタクリル酸メチル (MMA) の原料として用いられる。
溶媒と酸化剤とを兼ねるかたちで、オッペナウアー酸化(Oppenauer oxidation、トリアルコキシアルミニウム触媒により 2級アルコールからケトンを生成する酸化反応)にて用いられる。
アセトンをしかるべき反応条件で酸化させると、過酸化アセトン、あるいはジメチルジオキシランを生じる。
工業においては、単体では容易に分解やそれによる爆発を起こしやすいアセチレンを、ガスボンベ内で安定な状態で保つためにアセトンが使われる。まずガスボンベ内にケイ酸カルシウムを入れ、次にアセトンをボンベ内に入れることでケイ酸カルシウムにアセトンを吸着させる。その吸着しているアセトンにアセチレンを溶解することで、ボンベ内で比較的安定に保つことができる[2]。
[編集] 参考文献
- ^ Merck Index 13th ed., 67.
- ^ 化学の質問ありまへんか。