産業技術短期大学
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産業技術短期大学(さんぎょうぎじゅつたんきだいがく、英称:College of Industrial Technorogy)は、兵庫県尼崎市にある私立短期大学で、技術者育成のため、1962年(昭和37年)社団法人日本鉄鋼連盟(鉄鋼業界)の発起により開学した(男女共学)。現在、全国で唯一4つの工学科を備えた総合技術系短期大学であり兵庫県で唯一の工科系短期大学。
略称は産技大(さんぎだい)・CIT(シーアイティー)。(改称前の名称「鉄鋼短大(てっこうたんだい)」・「鉄大(てつだい)」が広く知られており、この名称を用いる者も比較的多い)
産業能率大学、京都産業大学、自由が丘産能短期大学などとは別組織。
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[編集] 建学の精神
産業技術短期大学の建学の精神は「鉄鋼業並びにその関連産業はもとより、広くその他の産業界等の将来を担いうる学力と識見を備えた技術者を育成する」となっている。
社団法人日本鉄鋼連盟(鉄鋼業界)の発起により開学したが、鉄鋼業に限らず、機械・電気電子・情報関連など、幅広い産業分野に対応した学科を設置して、社会のニーズに応えている。
[編集] 設立の背景
日本の鉄鋼業は、第二次世界大戦によって、壊滅的な打撃を受けた。しかし、終戦後、設備の近代化とともに鉄鋼業は急速に発展し、技術者不足の問題が生じてきた。そこで社団法人日本鉄鋼連盟は、鉄鋼業が必要とする技術者の質と量を確保するため、4年制大学並みのカリキュラムを持つ短期大学を設立し、鉄鋼各社の従業員を教育して、優れた技術者を養成することとなった。 (現在の「産業技術短期大学」の名称になるまでは、旧名の「鉄鋼短期大学」として広く知られていた。)
[編集] 名称の由来
「産業技術短期大学」という名称は、「産業」を支える根幹となる「技術」を身につけた人材を短期間で育成し、広く社会に供給する使命を担っている、という観点からつけられた。
名称の「産業」部分には「産業社会のなかの豊富な経験と深い英知を教授」するという理念が、「技術」部分には「心豊かな人間形成と新時代の技術者の育成」を行うという理念が込められている。
[編集] 社会人学生との共学(特色)
新日本製鐵、JFEスチール、住友金属工業、神戸製鋼所などの鉄鋼業界(社団法人日本鉄鋼連盟)により設立されたため、産業界(主に鉄鋼会社)から派遣された社会人(企業派遣)学生が1学年あたり約60名(全体の約5分の1にあたる)在学しており、産業界との信頼関係が極めて厚い(これを背景に就職状況も良好)。
また、社会人学生の人生経験や企業経験と、高校卒業後すぐに入学した新卒学生の若いエネルギーや柔軟な発想の相乗効果により、お互いが人間性豊かな技術者に成長していく、ユニークでオリジナリティーあふれる大学である。
[編集] 沿革
- 1962年 関西鉄鋼短期大学(かんさいてっこうたんきだいがく)として開学。「鉄鋼科」「機械科」「電気科」の3学科を設置。
- 1964年7月1日 鉄鋼短期大学(てっこうたんきだいがく)と改名。
- 1969年 学科名の変更が行われる。
- 1971年 溶接工学科を増設(1990年構造工学科に改組。以後2003年度まで受け入れる。)
- 1988年 産業技術短期大学と改称。
- 1993年 情報処理工学科を増設。
- 2000年 専攻科「生産工学専攻」・「電気・情報工学専攻」設置。
- 2004年 材料工学科と構造工学科を改組してシステムデザイン工学科とする。
[編集] 象徴(校章・校歌)
校章は三角形。右に伸び上がる線は、「飛翔(ひしょう)」「発展」を表す。中央の「CIT」は、本学の英文名「College of Industrial Technology」の略称を表す。校歌は竹中 郁作詞・高橋 半作曲。校章のマーク・校歌の歌詞などは産業技術短期大学公式サイト内の大学案内・学校紹介「校章・校歌」に掲載されている。
[編集] 学科
- システムデザイン工学科
メインテーマ…「映画で憧れた未来の世界。夢の形をデザインしよう!」
情報と機械を複合的に学ぶ学科。コンピュータを活用した新しいシステムづくり・モノづくりを目指し、システムデザイナを育成している。
- 機械工学科
メインテーマ…「ものづくりの基礎を学び、将来は機械エンジニアへ!」
「材料力学」「流体力学」「熱力学」などをベースに、機械系専門科目はもちろん、コンピュータや電子制御なども幅広く学ぶ学科。機械エンジニアを育成している。
- 電気電子工学科
メインテーマ…「電気・電子のスペシャリストになろう!」
電力の輸送からマルチメディアの情報伝送まで、電気エネルギー関連技術者とIT・デジタル技術者を育成している。
- 情報処理工学科
メインテーマ…「いつでも、コミュニケーション どこでも、コンピューティング」
「情報処理技術専修プログラム」「マルチメディア技術専修プログラム」を用意し、多様なニーズに応えられる柔軟な情報処理技術者を育成している。
[編集] 専攻科
短期大学等を卒業後、さらに専門的な研究をすすめたい人のために、修業年限2年(=4年制大学の3・4年次にあたる)の専攻科を設けている。4年制大学同様「学士取得・大学院への進学」も可能。
- 生産工学専攻
- 電気・情報工学専攻
[編集] 教育
産業界が設立した大学であるため、技術者の「質」を重視し、少人数教育に力を入れている(学生8名に専任教員1名という徹底ぶりは特筆に価する)。また、「企業研修(=インターンシップ)」・「演習・実験・実習科目」「卒業研修(=卒業研究)」など、実学教育も充実している。充実かつ特徴あるカリキュラムによって「基礎学力の充実」と「専門領域の深い学び」を両立させている。
資格取得についても、各学科ごとに目標を定め、夏休みや春休み期間に対策講座・技能練習会・講習会等の受験指導を行っている。
短期大学ではあるが、教育の専門性が高く、4年制大学に編入する卒業生も比較的多い。
[編集] 研究
産業界が設立した大学であるため、社会への貢献が学生の未来を豊かにするという理念のもとで「産官学連携(=産官学技術交流)」を推進している。尼崎市を始めとする地域社会や大阪大学・神戸大学・兵庫県立大学等の大学等と研究・交流を深めている。
[編集] 学生生活
イベントが活発。11月の飛翔祭(=短期大学祭)には毎年有名なゲストが登場する。一般的なコンサートや模擬店、クラス・クラブ展示の他、名物餅つき・野菜市など、地域社会を意識した独特の人気プログラムもある。また、5月には体育祭があり、特に創意工夫を凝らした応援合戦が毎年見どころとなっている。全学生が参加する体育祭は大学のイベントとしては珍しい。その他新入生歓迎会・卒業研修発表会など。
クラブ活動が盛んで、現在、体育系18・文科系8のクラブ・同好会が活動している。全国私立短期大学体育大会の優勝常連校としても知られている。
212名収容の大規模な青雲寮(=学生寮)が大学敷地内にあり、遠方から進学する学生にも便利。
[編集] キャンパス
大阪と神戸の中間に位置する都市型大学だが、敷地は7.2万平方メートル(甲子園球場の約2倍)と広く(学生1人あたり約140平方メートル)、緑豊かな環境である。
都市型大学でありながら、広い敷地をベースにゆったりとした建物配置(建物は最高4階建てまで)により、明るく開放感のあるキャンパスを実現している。広大で緑豊かなゆとりのあるキャンパスにより、心も広く豊かなエンジニアを育成するという理念がある。
[編集] 施設・設備
建物は2.8万平方メートル(高さ30メートルのシンボルタワー「白塔」を中心に、1~8号館、実験実習棟、学生寮、体育館、飛翔会館(学生会館)、白塔会館、クラブハウスなど)。その他プール・テニスコートなども完備。
(学園の附属機関として人材開発センターがある。)
設備は光造形装置、三次元モデリング装置、透過型電子顕微鏡、高周波誘導加熱溶解装置、切削式RP装置、EPMA、高電圧発生装置、低速風洞実験装置など多数。情報処理教育システムも充実。
[編集] 周辺環境
産業技術短期大学がある尼崎市は、昭和初期頃から南部(臨海部)を中心に鉄鋼産業を中心として工業地帯が形成され、第二次世界大戦後高度経済成長期に著しい発展を遂げ、現在では日本を代表する工業都市になっている。したがって、鉄鋼産業及び地元企業への技術者としての就職は大変スムーズであるといえる。
一方、産業技術短期大学自体は尼崎市の北部に位置し、南部とは一転して緑豊かで静かな環境である。大学周辺には次のような自然に恵まれたスポットがある。
- 昆陽池公園(こやいけこうえん)
産業技術短期大学の北東に位置。全国屈指の渡り鳥の越冬池。公園面積は28.5ヘクタール。
- 武庫川(むこがわ)
産業技術短期大学の西を流れる。大学付近から河口までは公園として整備され、サイクリングロードなどもある。
- 甲山森林公園(かぶとやましんりんこうえん)
産業技術短期大学の西(武庫川のさらに西)に位置。全体の90%が樹林の緑豊かな公園。公園面積は83ヘクタール。
[編集] 就職実績
産業界からの信頼により、好不況に関らず例年求人社数は豊富。
(2007年3月卒業生には700社以上・就職率97%)
- システムデザイン工学科
- 機械工学科
- 電気電子工学科
- 情報処理工学科
[編集] 編入・進学実績
例年35~50名程度が4年制大学に編入学。なかでも国公立大学への進学者が多い。
(2007年3月卒業生では国立大10名・私立大27名。進学合格率86%)
- システムデザイン工学科
- 機械工学科
- 電気電子工学科
- 情報処理工学科
[編集] 所在地
[編集] 連絡先
- TEL:06-6431-7561 FAX:06-6431-5998
[編集] アクセス
- 阪急電鉄神戸線武庫之荘駅北出口より、尼崎市バス40・41系統で常陽中学校バス停下車、北へ徒歩約200m。
- 西日本旅客鉄道JR宝塚線伊丹駅より、伊丹市バス1・7系統で昆陽里バス停下車、西へ徒歩約400m。
大阪「梅田」駅や神戸「三宮」駅を経由する場合は、阪急電鉄「武庫之荘」駅の利用が便利。JR東西線・JR宝塚線を経由する場合は、JR「伊丹」駅の利用が便利。
[編集] 参考文献
- 『日本の私立短期大学』(日本私立短期大学協会、1980年)
- 『メイド・イン・ジャパン-日本製造業変革への指針-』(ダイヤモンド社、1994年)
- 『システムデザイン工学科を開設』(産業新聞記事、2003.5.30)
- 『産業技術短期大学が新学科』(読売新聞記事、2003.6.3)
- 『産業技術短期大学システムデザイン工学科開設』(毎日新聞記事、2003.6.25)
- 『KansaiWalker 7月号』(角川書店、2006年)
- 『改革本番 産業界担う技術者を』(日刊工業新聞記事、2006.5.12)
- 『高等教育再考』(兵庫県教育新聞記事、2006.10.1)
- 『日経進学BOOK』(日本経済新聞社、2007年)
- 『2007毎日進学ガイド』(毎日コミュニケーションズ、2007年)
- 『蛍雪時代全国短大学科内容案内』(旺文社、2007年)
- 『進学事典2007』(リクルート、2007年)
- 『2007学校選びガイド』(日本ドリコム、2007年)
- 『2007職業・学部・学科カタログ』(日本ドリコム、2007年)
- 『大学・短期大学大辞典2007』(ベネッセコーポレーション、2007年)
- 『大学発見ナビ2007』(ベネッセコーポレーション、2007年)
- 『関西の大学・短大』(教育新聞社、2007年)
- 『2008大学・短期大学 進路の手引』(昭栄広報、2007年)
- 『2008大学・短大への進路』(さんぽう、2007年)
- 『2008大学・短大進路の手引』(ランセンスアカデミー、2007年)
- 『兵庫県唯一の工科系短期大学』(兵庫県教育新聞記事、2007.6.11)
- 『産業技術短期大学大学案内2008』(産業技術短期大学、2007年)
ほか多数