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特定アジア - Wikipedia

特定アジア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

特定アジア(橙色部)
特定アジア(橙色部)

特定アジア(とくていアジア)は大韓民国朝鮮民主主義人民共和国中華人民共和国の3カ国を総称した用語。台湾もこれに含まれる。

目次

[編集] 概要

[編集] 語源

  • 朝南政昭(=南川政昭)は米国戦略国際問題研究所 (CSIS) が2002年8月1日に発表した報告書『統一コリアに対する米政策の青写真』を「特定アジア」の語源としている[2]
  • ただし、ここで語源とされているCSIS報告書中の “a selected Asian nation(s)” (アジアの特定の国(々))という表現は「朝鮮半島が統一した場合に統一コリアがとり得る外交戦略としては、(中略)アジアのどこかの国(々)と同盟関係を結ぶことが考えられる」という文脈で用いられており、本来は本記事で述べている「特定アジア」とは異なる意味である[3]
  • なお、CSIS報告書中のこの語に対して朝鮮日報は2002年9月19日の報道で「特定アジア諸国」という日本語訳を与えている[4]。なお、「特定アジア諸国」という語はそれ以前よりさまざまな文脈で用いられている[5]

[編集] 「特定アジア」という分類が主張されるにいたった起源

「特定アジア」的な分類が日本の右派・保守派の間で広まったのはインターネット(特に匿名掲示板)上が起源であるとされている。彼らの主張に従えば、

  • 「アジア」とは地球上の一地域名であり、日本からアラブ世界までを含む本来数十カ国から成る(アジア参照)。
  • 現在、中国・韓国・北朝鮮の反日姿勢は、他のアジア諸国と大きく隔たっている。
  • 日本のマスコミ市民団体は反日姿勢を持つ中国・韓国・北朝鮮の三カ国だけで「アジア」という言葉を使用する傾向があり、「アジア諸国の反応」としながら、実際にはこれらの三カ国のみの反応を報じることがある。
  • それによって「アジア」という語が恣意的に使用され、正確な情報伝達が阻害されている。

とする論調の一派が「特定アジア」という用語が生み出し、是正を図った。また同義語であるがより蔑視・攻撃の姿勢が見られる言葉として極東三国、反日国家、反日三兄弟、バカ三国等が見られる。いずれも専らインターネットスラングとして使われ、日常でのコミュニケーションで使われることは稀である。

[編集] 「特定アジア」諸国の対日本観

[編集] BBCの国際世論調査

  • 2006年2月3日、英国BBCワールドサービスによる、日本を含む9の国および地域が世界に与えている影響についての印象を尋ねる世論調査の結果が公表された[6]。この調査は、世界33カ国において、約39500人を対象として実施され、調査実施国のうち、調査主体によってアジアに分類されているのはアフガニスタン、インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、スリランカ、中国、フィリピンの8カ国である[7]。北朝鮮は調査実施国に含まれなかった。
  • その結果、日本については、33カ国のうち31カ国において「主として世界に好影響を与えていると感じる」と回答した人の数が「主として悪影響を与えていると感じる」と答えた人の数を上回った(全体平均は「好影響」55%対「悪影響」18%)。これに対して、本記事において「特定アジア」と定義する中国と韓国の2カ国においては「主として悪影響」が多数であった(中国16%対71%、韓国44%対54%)[8]
  • 同機関が2007年3月に発表した調査では、27カ国、28000人を対象に、日本を含む13の国および地域が世界に与えている影響の印象を尋ねた[9]。アジア・太平洋地域の調査実施国はインド、インドネシア、オーストラリア、韓国、中国、フィリピンの6カ国である[10]。北朝鮮は調査実施国ではなかった。その結果、24カ国で日本に対して「主として好影響」が「主として悪影響」を上回り(全体平均は54%対20%)、中国と韓国の2カ国のみで「主として悪影響」が多数であった(中国18%対63%、韓国31%対58%)[11]
  • 同機関の2008年3月発表の調査では、34カ国、17457人を対象に、日本を含む14の国および地域が世界に与えている影響の印象を尋ねた[12]。アジア・太平洋地域の調査実施国はインド、インドネシア、オーストラリア、韓国、中国、日本、フィリピンの7カ国である[10]。北朝鮮は調査実施国ではなかった。その結果、日本はドイツと並び調査対象国中もっとも「好影響」の回答率が高かったが(全体平均は56%対21%、ただし、前年以降継続データのある24カ国のみの平均)、前年、前々年と同様、中国、韓国においては「悪影響」との回答が多かった(中国30%対55%、韓国37%対52%)[13]
  • アジア・太平洋地域の調査実施国中、韓国、中国以外の国においては、対日本感は継続して肯定的である。2006年以降の各年毎の数値は、インド(48%対13%→37%対16%→26%対9%)、インドネシア(85%対8%→84%対9%→74%対12%)、オーストラリア(60%対12%→55%対27%→70%対15%)、フィリピン(79%対13%→70%対8%→70%対12%)である。

[編集] 日本国内の有名人の発言における「特定アジア」的な視点

以下に、本項で説明するような視点を共有する日本国内の有名人の発言例を示す。

櫻井よしこ
2005年8月15日NHKで放送された番組「日本の、これから」内で、ある中国人が靖国神社問題について「日本はアジアの批判に対して……」と発言した際、櫻井よしこが「あなたのおっしゃる『アジア各国』とはどの国ですか?」と質問したところ、その中国人は「特に中国韓国」と答えた。
櫻井はこの返答を受けて、「私たちはここできちんと定義した方がいい。『アジア』と言うとアジア全域と思うが、特に激しい批判してるのは中国、韓国。台湾は積極的に要人が(靖国神社に)参っている。マレーシアもそう。まず『中国・韓国』と定義したい」と続けている。
麻生太郎
2005年に麻生太郎外務大臣に就任した後、「靖国の話をするのは世界で中国と韓国だけ」と発言した(共同通信社配信)。
また同年12月8日にも日本外国特派員協会にて上がった「小泉純一郎内閣総理大臣(当時)が中韓のトップと会えず、信頼関係もない中、アジア外交に対するビジョン戦略もないのに、どうやってアジアを将来へ導いていくリーダーになれるのか」との質問に対し、「中国と韓国だけがアジアではない。北東アジア以外にも、日本の周りには東南アジアや南西アジアなど多くの国がある。それらの国々との関係は極めてうまくいっている」と述べている[14]
小泉純一郎
2006年8月15日に現職総理として21年ぶりに靖国神社を参拝をした直後のインタビューで、「『靖国に参拝するな』ということは、突き詰めて言うと、『中国・韓国が不快に思うことはやるな』ということだ」と発言したために、マスコミはこの件についてアジアという言葉を使うことができなかった。なお、このインタビューは全文が官邸のサイトで公開された。これは極めて異例のこととされている[15]
古田博司
古田博司は自著『東アジア「反日」トライアングル』(文春新書)でこれら三カ国の共通点抽出を試みつつ、これら三カ国に共通した反日志向を非難している。
新聞記事等
SANKEI EXPRESS2007年3月22日の記事中に、「4月下旬に訪米する安倍氏としては、中国北朝鮮韓国の「特定アジア」を喜ばせるだけの日米離間は望ましくない。」という一節でこの語が用いられた[16]。なお、この記事を書いたのはizaブログで常に上位にランキングされている産経新聞記者の阿比留瑠比である。

[編集] 脚注

  1. ^ 産経新聞2006年7月18日朝刊
  2. ^ 『朝日新聞のトンデモ読者投稿』晋遊舎、2007年4月、ISBN 4883806162
  3. ^ Center for Strategic and International Studies, Blueprint for U.S. Policy toward a Unified Korea, 2002年8月1日, p. 24. ここでは、朝鮮半島が統一した場合に、米国との同盟以外にあり得る外交戦略の選択肢として、中立国、東アジアの地域的安全保障システムへの参加の他に、例えば中国のような、アジアの特定の国家と親密な関係を結ぶことがある、と述べられており、“selected Asian nations” は具体的な特定地域を指しているわけではなく、ましてや、中国、韓国、北朝鮮の3国をこのように呼称しているわけではない。
  4. ^ 朱庸中「米国が発表した「統一韓国の青写真」」『朝鮮日報』日本語オンライン版、2002年9月19日。
  5. ^ 例として「特定アジア諸国における国境貿易及び越境取引」『日本エスカップ協会調査資料』、24-1号、1998年7月、1-51頁などをあげることができる。
  6. ^ 調査の実施は調査専門機関である GlobeScan およびメリーランド大学国際政策観プログラム(PIPA)による。調査の詳細及びデータについては、GlobeScan, "Global Poll: Iran Seen Playing Negative Role," (BBC Poll: Attitudes towards Countries) n.d.、最終アクセス2008年4月2日(英語)。同趣の調査は2005年にも公表されている。なお、調査報告の表題に「イランは悪影響を与えていると見られている」とあるように、これらの調査は日本の印象を尋ねることを主目的とした調査ではない
  7. ^ 「中東」および「ユーラシア」(トルコ・ロシア)は「アジア」と区別されている。
  8. ^ 日本と同じく質問対象国であった中国は、全体平均で「主として好影響」が45%、「主として悪影響」が27%という結果となった。韓国では、中国に対して「悪影響」が58%と、対日本(54%)よりも高かった。
  9. ^ GlobeScan, "Israel and Iran Share Most Negative Ratings in Global Poll"、 2007年3月6日、最終アクセス2008年4月2日(英語)。質問対象国別のデータはBackgrounderの章を参照のこと。
  10. ^ a b 「中東」は「アジア」と区別されている。
  11. ^ 日本と同じく質問対象国であった中国、北朝鮮については、中国が全体平均で「好影響」42%対「悪影響」32%、北朝鮮が19%対48%という結果となった。また中国では対中国の回答が81%対6%、対北朝鮮が34%対39%、韓国では対中国が32%対48%、対北朝鮮が12%対78%であった。
  12. ^ GlobeScan, “Global Views of USA Improve”、2008年4月2日、最終アクセス2008年4月2日(英語)。質問対象国別のデータはBackgrounderの章を参照のこと。なお、『読売新聞』の報道によれば、本調査は「読売新聞社が英BBC放送と実施した共同世論調査」であるが(「日本『世界に良い影響』、独と並びトップ…BBC・読売調査」2008年4月2日)、GlobeScan の調査報告書によれば、読売新聞社は当調査を実施している調査機関 GlobeScan の日本におけるリサーチ・パートナーであり、調査の主体(依頼主)はBBCのみである。
  13. ^ 日本と同じく質問対象国であった中国、北朝鮮については、中国が全体平均で「好影響」47%対「悪影響」32%、北朝鮮が23%対44%という結果となった。また中国では対中国の回答が90%対4%、対北朝鮮が47%対32%、韓国では対中国が40%対50%、対北朝鮮が17%対72%であった。またこの年は日本も調査実施国となったが、日本について「好影響」としたのは36%にとどまり、「日本の市民は調査実施国中でもっとも謙遜」(Japanese citizens are the most modest of those polled)と評された(報告書トップページ)。一方で、日本での回答は、対中国が12%対59%、対北朝鮮が2%対90%であり、「圧倒的多数」(an overwhelming majority)が北朝鮮に対して否定的と報告されている(Backgrounderの章)。
  14. ^ 麻生外相、特派員協会で会見「アジアには中韓以外にも多くの国ある」ライブドアニュース、徳永裕介。但し東南アジアの一部であるマレーシアやインドネシアからも、折に触れ軍国主義批判の声が出ている事は無視しているようである
  15. ^ 小泉純一郎内閣総理大臣の靖国神社参拝に際しての談話
  16. ^ 「【安倍政権考】「戦後レジーム」の厚い壁」 『SANKEI EXPRESS』、2007年3月22日、 [1]

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 古田博司『東アジア「反日」トライアングル』文春新書467、文藝春秋、2005年10月、ISBN 4166604678
  • 石破茂、清谷信一『軍事を知らずして平和を語るな』ベストセラーズ 、2006年10月、ISBN 4584189676

[編集] 外部リンク

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