点と線
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『点と線』(てんとせん)は、松本清張の長編小説。筆者初の長編推理小説である。「旅」1957年2月号から1958年1月号に連載し、同年に光文社から刊行された。後に新潮文庫から文庫本も発売され、電子書籍化もされている。
福岡市の香椎海岸で発見された男女の情死体に疑問を持った2人の刑事の事件捜査を活写する作品である。F・W・クロフツによって確立された「アリバイくずし」のスタイルを継承した推理小説の名作であり、清張の代表作である。また、動機を重視したこの作品は「社会派推理小説」と呼ばれ、「清張ブーム」を巻き起こした。
1958年に高峰三枝子主演で映画化されている。また、2007年11月24日・25日に、ビートたけし主演で初ドラマ化され、テレビ朝日系列で2夜連続放送された。
目次 |
[編集] あらすじ
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
料亭「小雪」の女中2人と、東京駅の13番線プラットフォームで見送られていた機械工具商会を経営する安田辰郎。この3人は、向かいの15番線プラットフォームに、同じく「小雪」で働くお時が男性と夜行特急列車「あさかぜ」に乗り込むところを見つける。だが数日後、お時とその男・佐山は、香椎の海岸で情死体となって発見された。
一見ありふれた情死に見えたが、博多のベテラン刑事・鳥飼重太郎は、佐山が持っていた車内食堂の伝票から事件の裏の真相を探るため、一人、捜査をすることにする。
一方、佐山は現在社会をにぎわしている××省の汚職事件の関係者であった。この事件を追っていた本庁の刑事・三原紀一は、心中事件を追って九州へ向かい、鳥飼と出会う。
捜査の結果、二人は、東京駅で13番線プラットフォームから15番線プラットフォームが見えるのは、1日の中でわずか4分間しかないことを突き止め、安田を容疑者として追及しようとする。だが、安田には完璧なアリバイがあった。
[編集] 作品鑑賞
当時は新幹線がまだ無いどころか特急も本数が少なく、飛行機も一般的ではない時代であり、日本国内の旅行・移動には相当遠距離でも主に鉄道(急行列車)が用いられていたこと等、当時の社会状況が反映されている。また、本作品は、「社会派推理小説」という一分野を確立することにもなった。一方で新潮文庫版の解説にて平野謙が「いかにして空白の4分間に佐山とお時に15番線を確実に歩かせるのかトリックが説明されていない」ことを指摘していることをはじめ、いくつか重大な欠点も存在する。
なお清張の他の作品『時間の習俗』も、本作と同じく三原警部補と鳥飼刑事が活躍する作品である。
[編集] 映画版
[編集] スタッフ
- 監督:小林恒夫
- 脚色:井手雅人
- 音楽:木下忠司
[編集] キャスト
- 安田亮子:高峰三枝子
- 安田辰郎:山形勲
- 三原紀一:南広
- 鳥飼重太郎:加藤嘉
- 笠井警部:志村喬
- 土屋刑事:河野秋武
- 石井刑事:曽根秀介
- 大島刑事部長:永田靖
- 捜査第二課長:堀雄二
- 佐山憲一:成瀬昌彦
- 佐山の兄:神田隆
- お時:小宮光江
- 八重子:月丘千秋
- 石田部長:三島雅夫
- 佐々木事務官:増田順二
- 長谷川医師:明石潮
- 庶務部長:斎藤紫香
- とみ子:光岡早苗
- まゆみ:奈良あけみ
- 河西:吉川英蘭
- 果物屋の親父:花沢徳衛
- 「かき舟」の女中:楠トシエ
- 「海風荘」の女将:風見章子
[編集] テレビドラマ版
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『松本清張 点と線』(まつもとせいちょう てんとせん)の題名で、テレビ朝日の開局50周年記念番組として、2007年11月24日と25日に、同局系列(フルネット24局)で二夜連続で放送した。同年の文化庁主催の芸術祭テレビ部門参加作品ともなり、審査員からは「推理ドラマの枠組みをはるかに超えた人間ドラマで、見るものを圧倒した」と評価され、ドラマとしては4年ぶりとなる大賞を受賞した。
1957年の東京駅のホームや、福岡・東京の町並みを細部まで再現したオープンセット、さらには日本各地で昭和30年代の列車を再現してのロケーションが行われた。東京駅のプラットフォームのセットは、JR西日本の協力のもとに宮原総合運転所の敷地内に作られた。スタッフやキャストですら完成度に驚いたという。新宿行きの路面電車のシーンは当時の車両を運び込み、岡山で撮影された。
また、同局の『土曜ワイド劇場』の主役級である、小林稔侍(『炎の警備隊長五十嵐杜夫』)、橋爪功(『新・赤かぶ検事奮戦記』)、市原悦子(『家政婦は見た!』、同シリーズの第1作は清張原作の『熱い空気』を『松本清張の熱い空気』というタイトルでドラマ化したもの)をはじめとした、多数の豪華なキャスト布陣も話題になった。
鳥飼が独断で東京に行き捜査すること、鳥飼や安田の太平洋戦争中のエピソードなどテレビドラマ版独自の設定が追加されている。また事件後は鳥飼と三原は三原が報告に博多を訪れたのを最後に会うことはなかったとしており、『時間の習俗』への連続性はなくなっている。
ホームページの「おさらい」では物語の結末を明かしているため、未見の場合は注意が必要である。
視聴率(関東地区)は第1夜が23.8%、第2夜が23.7%であった。
[編集] 放送日時
[編集] キャスト
[編集] 警察関係者
- 鳥飼 重太郎:ビートたけし
- 田中係長(博多東警察署):小林稔侍
- 永井課長(博多東警察署):平泉成
- 三原 紀一(警視庁捜査二課警視):高橋克典→現在の三原:宇津井健(特別出演)
- 笠井係長(警視庁捜査二課):橋爪功
- 寺崎課長(警視庁捜査二課):名高達男
- 児島刑事(警視庁捜査二課):金児憲史
- 柳原刑事(警視庁捜査二課):芦川誠
- 刑事(博多東警察署):でんでん
- 監察医:金田明夫
- 刑事(北海道警):深水三章
- 幹部(警視庁捜査二課):河西健司
[編集] 産業建設省
[編集] その他の登場人物
- 鳥飼 つや子:内山理名→現在のつや子:池内淳子(特別出演)
- 小林 安子(重太郎の義姉):樹木希林
- 安田 辰郎(安田交易社長):柳葉敏郎
- 安田 亮子(辰郎の妻):夏川結衣
- 佐山 憲一(産建省課長補佐):大浦龍宇一
- 佐山の兄:中島久之
- 桑山 秀子(お時):原沙知絵
- 桑山 ハツ(お時の母):市原悦子(特別出演)
- 博多の旅館の番頭:升毅
- 博多の旅館の仲居:星野真里
- 八百屋の店主:斉藤洋介
- 割烹料亭「小雪」の女将:松井紀美江
- とみ子(割烹料亭「小雪」の仲居):筒井真理子
- 八重子(割烹料亭「小雪」の仲居):あめくみちこ
- アパートの大家:伊佐山ひろ子
- 安田家(鎌倉)の家政婦:樋田慶子
- 河西(安田の取引相手):佐戸井けん太
- 函館駅の駅員:半海一晃
- 車掌:梨本謙次郎
- 東京駅助役:小野武彦
- 長谷川医師(亮子の主治医):坂口良子
- ある家の女:かたせ梨乃
- ドロップを差し出す女:高橋由美子
- 日本航空社員(受付):天宮良
- 喫茶店の給女:滝沢沙織
- 駅員:山谷初男
- 2人の死体を発見した漁民:志賀圭二郎
- タクシーの運転手:伊藤克信
[編集] ナレーション
[編集] スタッフ
- 監督:石橋冠
- 脚本:竹山洋
- 音楽:坂田晃一
- チーフ・プロデューサー:五十嵐文郎
- プロデューサー:藤本一彦
- CG:4d、エヌジーシー、白組、イマージュ、ビークル、東京工芸大学メディアアート表現学科
- 技斗:佐々木修平
- 協力:日本航空、JTBパブリッシング
- ロケ協力:JR西日本、JR北海道、銚子電気鉄道、大井川鐵道、岡山電気軌道、JR東日本、江ノ島電鉄、函館市、備前市、はこだてフィルムコミッション、いばらきフィルムコミッション、銚子フィルムコミッション、大阪ロケーションサービス協議会、神戸フィルムオフィス、フィルムサポート島田、岡山県フィルムコミッション連絡協議会、ほか
- 美術協力:テレビ朝日クリエイト、つむら工芸、青野設計、都市空間設計、淀橋商事
- 技術協力:ビデオスタッフ、NiTRo、バウムレーベン、ブル、東新、サウンドシップ、テイクスタジオ、渋谷ビデオスタジオ
- 制作協力:シネハウス(協力プロデューサー:牧義寛)
- 企画協力:オフィス北野、北九州市立松本清張記念館、清張生誕100年実行委員会、エヌエス企画、日本文学振興会松本清張賞事務局
- 制作著作:テレビ朝日