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日本人論 - Wikipedia

日本人論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日本人論(にほんじんろん)は、日本人について論じる論、著作、報告のこと。

日本人論の起源としては、古くは安土桃山や江戸時代宣教師の母国への報告書や、海難・漂流体験からロシアカナダなどを見る経験を得た日本人漁師や船頭の経験譚が挙げられる。幕末から明治にかけては、日本からの海外視察団による報告や、来日外国人による文化人類学的な観察記録やエッセイなどに日本人論を見ることができる。日清日露戦争、そして二度の世界大戦を経て、海外で日本人の戦略や戦術、道義心、忠君愛国の背景にあるものへの関心が深まると、ルース・ベネディクトの『菊と刀』やオイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』といった日本研究が進んだ。戦後には、日本経済の驚異的な躍進から再びその成功を支える社会的基盤に対する関心が高まって様々な日本人論が著されることになる。日本人を包括的に均一な集団としてとらえ、歴史的変遷や階級による相違を無視して、外国・異文化との比較を通してその独自性を論じるところを共通項とする論が多い。ベストセラーもいくつか出るほどの人気分野となっている。このような現象は日本を除いて世界に類がない、という見方があるが、これは日本人論において比較対照になるのが過去において日本よりも優秀とされた欧米、特にイギリス、アメリカ、フランス、ドイツなどの列強先進国であったためである。これらの国から目を離せば、トルコ、韓国、マレーシアなど他の国でも自民族論は盛んである。よって日本人論が特殊であるという考えそのものが他国でも見られる自民族論の典型ともいえる。

文化人類学社会学的研究としての日本人論もある一方で、民族主義的心情に基づく日本人自身による自国、自民族の特殊性を殊更強調するように書いた論考も数多く出版されている。そのため、Peter N. Dale(1986)、ハルミ・ベフ(1987)、 吉野耕作(1992)他、日本人論を文化的ナショナリズムの現れの一形態として批判的に研究する学者もいるので、現在では、「評論」であって学問ではないという見方がアカデミズムでは一般的である。

目次

[編集] 日本人論の特徴

杉本とマオア(1982)は、日本人論の多くは以下の3つの根本的主張を共有していると指摘している:

  1. 個人心理のレベルでは、日本人は自我の形成が弱い。独立した「個」が確立していない。
  2. 人間関係のレベルでは、日本人は集団志向的である。自らの属する集団に自発的に献身する「グルーピズム」が、日本人同士のつながり方を特徴づける。
  3. 社会全体のレベルでは、コンセンサス・調和・統合といった原理が貫通している。だから社会内の安定度・団結度はきわめて高い。

その一方、日本人論の論調はその時代時代の社会情勢を反映して変化してきている。例えば戦後の荒廃時は、民主主義国として再構築を目指す中、日本に残る独特な封建的な制度・習慣がアメリカや西欧諸国と比較され批判的に検証された。高度経済成長期に入ると逆に日本の特殊性が肯定的に見直されるようになる。

青木保(1990)はこのような戦後日本人論の変容を4つの時代に区分している。

  • 第1期「否定的特殊性の認識」(1945-54)
『菊と刀』(1948年)、『日本社会の家族的構成』(1948年)など
  • 第2期「歴史的相対性の認識」(1955-63)
『雑種文化』(1956年)など
  • 第3期「肯定的特殊性の認識」前期(1964-1976)、後期(1977-1983)
『「甘え」の構造』(1973年)、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979年)など
  • 第4期「特殊から普遍へ」(1984-)

また、同じ日本人といえども、時代によって日本人の性質や性格は現在とは大きく異なるということも念頭に置かねばならず、様々な時代の様々な場所での旺盛な研究が待たれるものである。

[編集] 日本人論の出版数・分類

野村総合研究所(1978)の調査によると、1946年から1978年の間に「日本人論」というジャンルに分類される書籍が698冊出版されている。このうち58%が1970年以降、25%以上が1976年から1978年の3年間に出版された。内訳は以下の通りである:

【一般書籍(著者のプロフィール別)】

  • 哲学者 -- 5.5%
  • 作家・劇作家 -- 4.5%
  • 社会文化人類学者 -- 4.5%
  • 歴史・民俗学者 -- 4.5%
  • 政治・法・経済学者 -- 4.5%
  • 科学者 -- 4.0%
  • 言語・文学者 -- 3.5%
  • 外交官・評論家・ジャーナリスト -- 3.5%
  • 心理学者 -- 3.5%
  • 外国人学者 -- 4.0%
  • 外国人ジャーナリスト -- 5.5%
  • 外国人 -- 7.0%
  • その他 -- 5.5%

【調査レポート(テーマ別)】

  • 国民性総論 -- 7.0%
  • 欲求と満足度 -- 3.5%
  • 勤労に関する意識 -- 4.0%
  • 貯蓄に関する意識 -- 4.0%
  • 諸意識 -- 6.5%
  • 日本人の生活時間 -- 3.5%
  • 外国人の見た日本の経済活動 -- 6.5%
  • 海外の対日世論調査 -- 4.5%

[編集] 主要な日本人論の著作

[編集] 外国文化との比較

モンスーン砂漠・牧場の気候・風土を主眼に置いた比較文化論。
西欧文化は倫理基準を内面に持つ「罪の文化」であるのに対し、日本文化は外部(世間体・外聞)に持つ「恥の文化」と一方的に決め付けた。第二次世界大戦中、アメリカの日本占領政策を検討するために書かれたもので、戦後、日本でも刊行されベストセラーになった。しかし現在ではそのステレオタイプ的で一方的な断定の仕方が批判されている。
ユダヤ人との比較で、日本人は安全と水はタダだと思っている、と論じた。当時は大ベストセラーとなったが、事実誤認が多く信用できないと批判されている。
イギリス生まれで外交官としていくつかの国・文化と接した著者が、いくつかの国と日本との体感する違いを把握しようとして、感性主義と知性主義、個別主義と普遍主義という概念での認識に行き着き、これを提示・提案する。
  • ポール・ボネ藤島泰輔の筆名)『不思議の国、ニッポン-在日フランス人の眼』角川書店 1982年
  • 金容雲『韓国人と日本人 双対文化のプリズム』サイマル出版会 1983年
  • 池田雅之『イギリス人の日本観 来日知日家が語る"ニッポン"』河合出版 1990年
  • 篠田雄次郎『日本人とドイツ人 猫背の文化と胸を張る文化』光文社 1997年
  • クライン孝子『お人好しの日本人 したたかなドイツ人』海竜社 2001年
  • リチャード・E・ニスベット『木を見る西洋人 森を見る東洋人』ダイヤモンド社 2004年

[編集] 心の象徴の問題

[編集] 日本文化論

経済学を勉強した著者が、理論が力を持つということは、持たないということはどういうことか、という視点から、日本における社会認識の仕方、社会科学書の読み方について論ずる。
野球を通して日米の文化について比較考察する。書名はルース・ベネディクトの『菊と刀』より。
1946年生まれの著者が、本居宣長のいう「漢意(からごころ)」を実感として分かってしまった、とこれを逡巡・考察する。
  • ロナルド・フィリップ・ドーア『国際・学際研究システムとしての日本企業』NTT出版 1995年
  • ロナルド・フィリップ・ドーア『江戸時代の教育』岩波書店 1996年
  • 村島定行『日本の未来を拓く学問のすすめ』牧歌舎 2007年

[編集] 経済的な成功の背景

1970年代後半頃から、終身雇用年功序列などの「日本的経営」が日本の経済発展の基盤にあるという論調が多く見られるようになった(日本的経営論)。

[編集] 日本社会の構造

  • 川島武宜『日本社会の家族的構成』 1948年
親分子分といった擬制家族関係から日本社会の封建制を批判した

[編集] 外国人による日本紹介

[編集] 日本人による日本紹介

海外向けに英語で書かれた著書。後に日本語訳された。

  • 内村鑑三『代表的日本人』(『Japan and Japanese』 1894年、改訂版『Representative Men of Japan』 1908年
  • 新渡戸稲造武士道』(『BUSHIDO:THE SOUL of JAPAN - Another of the History of the Intercourse between the U.S. and Japan』 The Leeds and Biddle Company 1900年
アメリカ人に持ち、キリスト教徒で、学者として日本と欧米で活動をした著者が、日本の道徳理念・慣習について問われ、逡巡した後その源は武士道だと行き着き、これを解説、説明する書。
アーネスト・フェノロサに付いて日本美術の調査をしたのをきっかけに日本に目覚めた著者が、帝国主義全盛時代の欧米に、を通して自己充足の在り方を投げかけた書。

[編集] 日本を描いた文芸

[編集] 映画で描かれたもの

[編集] 外国映画

[編集] 日本映画

  • 家族 
  • 萌の朱雀

[編集] 小説・評論

[編集] 小説

[編集] 評論

[編集] インターネット上にある日本人論(外部リンク)

[編集] 参考文献

[編集] 関連項目

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