市松
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市松(いちまつ)は、必殺シリーズ第6弾『必殺仕置屋稼業』に登場した仕置屋の一人。沖雅也が演じた。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] キャラクター
表の稼業は竹細工職人。父親の市造(第2話、6話、10話の回想シーンでやはり沖が演じた)も竹細工師で、闇の仕事師であった。少年時代に父親が殉職し(享年28歳)、以後は父親の弟分にあたる鳶辰(津川雅彦)の元で育てられ、竹細工とそれを利用した殺し技を身につける。第2話(「一筆啓上罠が見えた」)で、実は市造は鳶辰の罠にかかって殺害されたことが判明、市松はその過去との決別のため鳶辰を自ら葬った。
とある夜、中村主水(藤田まこと)に殺しの現場を目撃されたため、主水を狙おうとしたところを逆に彼に誘われた。当初はまるで人を寄せ付けない雰囲気で、主水、印玄(新克利)、捨三(渡辺篤史)と裏の仕事で対立することも多かったが、徐々に他のメンバーとも心を通わせていった。しかし、鳶辰に「殺人マシーン」として育てられたこともあるためか、その後も単独で仕事を引き受けたり、他の元締の依頼を引き受けることも止まらなかったため、その行動が仕置屋の崩壊につながっていった。
その容姿ゆえか男女とも言い寄る者が多いが、陰間扱いされる事は我慢がならない。自分の殺しを目撃した者は、たとえ子供でも殺そうとする冷酷さを持つ一方、子供には優しく仕置屋仲間にも見せない笑顔を向けることも多い。
仕置の前には殺し道具となる竹串や竹細工を砥石と水を使って丹念に磨いて仕上げるシーンが流される(このような描写は秀(三田村邦彦)の仕事前のシーンにも受け継がれている)。こうして仕上げた竹細工はまさしく金属製の刃物に劣らない武器となる。このシーンの後、手に入った仕置料で遊郭に向かった印玄が派手に遊んでいるという好対照なシーンが流れることが多い。裏の仕事の遂行時には手製の竹串を悪人の首筋に刺す。刺した後、傷口がすぐに分からないように串の刺さっている部分を折って首筋に食い込ませることもある(第8話、13話、26話、28話)。また、扇子に仕込んだり(第1話他)、折鶴に装着して、標的の首筋目掛けて飛ばしたりもする(第2話、4話。その際、折鶴は真っ赤な血の色に染まり、地面に落ちて行く描写は圧巻)。竹とんぼを飛ばし、悪人の喉元をかき切ったり(第10話、竹とんぼは最終回でも使用したが、殺し目的の使用ではない)、おでんの串を使い、相手の心臓を刺すといった変則技も披露した(第21話)。笹の葉のついた竹串を手裏剣のように投げる事もあった(第2話、15話。ただし、使用はけん制や脅しのため)。
仕置屋の崩壊劇を描いた最終回(「一筆啓上崩壊が見えた」)で、市松は奉行所に捕らえられ、処刑場に送られかけたが、主水と捨三が協力し、主水が不手際で逃がしたことを装って解放した。これが原因で、主水は定町廻りから小伝馬町の牢屋見廻り同心に降格させられることになる。市松を逃がす際に、主水は市松におにぎりを渡し、市松が逃亡中にそのおにぎりを食べると中から小判が出てくるというエピソードがある。逃亡後の市松は、信州諏訪宿で、やはり逃亡中だった上州沼木藩元藩士・真野森之助(後の赤井剣之介=中村敦夫)と出会い、裏稼業を行った。市松から主水を紹介された剣之介は、愛人の旅芸人・お歌(中尾ミエ)とともに江戸に赴き、主水を頼って仲間入りした(『必殺仕業人』)。
[編集] 解説
- 沖雅也にとって、『必殺仕置人』以来2度目の「必殺シリーズ」登場となる本作は、前回の棺桶の錠の熱血漢とは正反対の、浮世離れしたクールな美形仕事師を演じ、大当たりした。この路線は、『必殺からくり人・血風編』新之介(ピーター)、『新・必殺仕事人』から登場した三味線屋の勇次(中条きよし)、『必殺仕事人V』、『同・激闘編』で活躍した組紐屋の竜(京本政樹)に受け継がれることとなる。特に京本は、後年のインタビューで竜役について「風貌から仕草まで市松の影響を直接受けた」と公言している。
- 新聞やテレビ情報誌の番宣広告、番組表、宣伝ポスターでは主水の次にクレジットされているが、本編のエンディングのキャストロールでは、市松が先頭で、主水が最後尾(トメ、テロップは起き上がってくる)となっている。沖の養父兼所属事務所社長・日景忠男が、主水が完全な主人公であることにクレームをつけたため、制作サイドが日景に配慮する形で市松を先頭にした(現在発売中のDVDソフトでも同様)。日景は制作サイドに感謝していたという。このため、旧作の雰囲気をこよなく愛するマニアと呼ばれるファンや、沖のファンの一部からは、主人公は主水でなくキャストロールの順番通り市松だという声も多い。『蔵出し 絶品TV時代劇』(近藤ゆたか編、フィルムアート社。1997年6月発売 ISBN 4845997681)の巻末にある「連続TV時代劇放映リスト」でも、主演は沖雅也と掲載されている。
- 捨三役の渡辺とは、その後も『俺たちは天使だ!』(日テレ)、『同心部屋御用帳 新・江戸の旋風』『江戸の朝焼け』(ともにフジテレビ、全作品とも東宝製作)で共演している。
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