三段空母
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三段空母(さんだんくうぼ)は、SFアニメ作品『宇宙戦艦ヤマト』シリーズに登場する架空の兵器であり、ガミラス帝国の宇宙空母である。発着甲板が三層に重なっている姿からそう呼ばれる。但し正確には艦体後半部に着艦専用と思われる甲板がもう1層、全体で計4層あり、多層式宇宙空母と呼ぶのが正しい。
本艦の発展型として二連三段空母がある。
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[編集] 概要
名前の通り、艦前部に段違いに3つの甲板を備え、各甲板に白い中心線が書かれている。最上位の甲板には、側面の一部が欠き取られたデザインのように見え、アニメ本編でもそのように描写されているが、これは設定資料が不明瞭なため生じたミスで、本来はアングルド・デッキ(斜め離艦用飛行甲板)を意図したデザインである。このため、PS版・PS2版ゲームの『宇宙戦艦ヤマト』では本来のアングルド・デッキスタイルで登場している。
艦橋は小型のものを右舷前部に備えており、実在する空母と非常に似たレイアウトをしている。また、左舷前部にはレーダーを配置。推進ノズルは艦後部に大型のものを2基、艦底後部に小型のものを3基配置している。
武装として3連装ビーム砲を5基、計15門。4連装対空パルスレーザー砲を8基、計32門を搭載。
三段甲板という発想そのものは、太平洋戦争で空母機動部隊の主力として活躍し、ミッドウェー海戦で戦没した大日本帝国海軍の空母である赤城、加賀の竣工時の姿に範をとっている。
当初は、バラン星における対ヤマト戦で失敗を犯したドメル将軍の起死回生策を活かす新鋭艦として描かれたが、その後も、ガミラス帝国の機動戦力の象徴として各続編作品に登場している。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト
最上位の甲板には大きな白い矢印が書かれており、艦載機が出撃する際、矢印の先端が白と黒の交互で点滅する。 また、ガミラス本星の基地に着陸する際に、艦底部から引き込み式のゴムタイヤを出すなど、航空機さながらの描写がある(ただし、通常着陸ではなく垂直着陸であり、離陸も垂直離陸)。
21話にて七色星団での決戦に備え、サファイヤ、ルビー、ダイヤの各戦線から、それぞれ1隻ずつ計3隻がガミラス本星に呼び戻される。オメガ戦線から戻ってきた1隻の戦闘空母と旗艦ドメラーズ2世1隻の計5隻でドメル率いる空母機動艦隊(通称「ドメル艦隊」)を編成、明朝出撃した。
それぞれ命名されている戦線によって塗装を変えているようであり、ガミラス本星上空にて三段空母に艦載機が着陸するシーンから、艦載機の入れ替えを行ったようで、それぞれ1機種のみを搭載している。艦載機の説明は後述。
三段空母部隊の構成[1]は以下の通り。劇中において、下記の人物は隊長と呼ばれているが、艦長も兼ねていると思われる。
艦名 | 所属 | 隊長 | 艦の色 | 艦載機 |
---|---|---|---|---|
第1空母 | ルビー戦線 | ゲットー | 緑色 | 戦闘機 |
第2空母 | サファイア戦線 | バーガー | 紫色 | 急降下爆撃機 |
第3空母 | ダイヤ戦線 | クロイツ | 水色 | 雷撃機 |
22話では、まるで沖縄特攻における戦艦大和の運命をトレースするかのような「戦艦対艦載機」の闘いが展開された。
第1空母より戦闘機を通常発艦させ、ブラックタイガー隊を誘き寄せてる隙に、第2空母の急降下爆撃機をドメラーズ2世の瞬間物質移送器でヤマトの近くに送り込み、急襲した。急降下爆撃機の存在に気付いたブラックタイガー隊が帰投するのを確認すると、急降下爆撃機の攻撃を停止して陽動を開始、ブラックタイガー隊を再びヤマトから引き離す。今度は第3空母の雷撃機を瞬間物質移送器で送り込み、猛攻撃をかけ、第一砲塔を破壊するなどしてヤマトの戦闘能力を奪う。 そしてとどめとして、戦闘空母から発信した重爆撃機からドリルミサイルをヤマトの波動砲口に打ち込み、機関部まで侵入させて起爆、完全破壊を狙った。なお、各艦の隊長はそれぞれ自ら艦載機に乗り込み、艦載機隊の先頭に立って作戦に参加している。
このように艦載機をワープさせて、敵を奇襲攻撃する戦法は「デスラー戦法」と呼ばれ、以後の続編において応用された。
艦載機は多くの損失を出しつつも、戦闘は終始ドメル艦隊有利で進められたが、波動砲を封じたドリルミサイルの逆回転の成功により、ドリルミサイルがヤマトを離れ、戦闘空母の艦橋に激突して爆発。密集隊形をとっていたため、第1空母が戦闘空母の艦体に激突して大破、その破片が第2空母に激突、さらに第3空母にも誘爆して旗艦を除いた全ての空母が一瞬にして爆沈するという失態を演じている(このあたりはミッドウェー海戦を原案にしている)。その際の爆発の色はそれぞれの艦で異なっていた。その後、ドメラーズ2世もヤマトを巻き添えにして自爆したため、ドメル艦隊は全滅するのであった。
アニメ劇中には無かったが、ゲームにおいてはヤマトに艦砲射撃を加えるシーンがあり、これによってヤマトが艦体を貫かれて轟沈してしまうというゲームオーバーがある。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト2
本作で諸元が設定され、全長200m、全幅62.5m、自重48000tとなった。
3話より、ガミラス残存艦隊として登場。仕様は『宇宙戦艦ヤマト』のものと同じだが、色はガミラス標準色の緑。中段・下段飛行甲板の白線が2本づつ描かれている艦もいた。
23話では三段空母のものと思われるDMB-87型急降下爆撃機とDMT-97型雷撃機がヤマトを攻撃した。24話でヤマトとの激突で大破、航行不能となったデスラー艦から脱出したデスラーとタランが乗った救命艇を収容している。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち
今作では全長180mに改められているが、仕様は上記と変わらない。主にやられ役としての面が強い。
デスラー残存艦隊として画面上に3隻が登場。新天地を探す旅に発つ前に最後の別れを告げるべく、ガミラス本星に向かうが、そこでガミラシウムの採取をしていた暗黒星団帝国の作業船団と護衛艦隊に遭遇。他の艦と共に砲撃を加え、これを殲滅する。作業船の誘爆により、火山活動が活発化したガミラス本星を脱出した。
その後、ガミラス本星の消滅により、イスカンダルは暴走、移動速度が上がったためワープしてしまう。デスラー艦隊もワープしてイスカンダルに追いつくが、直後に暗黒星団帝国マゼラン方面第一艦隊に報復攻撃を加えられ、1隻が甲板を貫かれて撃沈。
何とかイスカンダルに到着し、マザータウンの海に着水するデスラー艦隊だが、1隻が暗黒星団帝国マゼラン方面第一艦隊旗艦プレアデス艦載のイモ虫型戦闘機の魚雷攻撃を受け文字通り沈没した。
ヤマトにプレアデスと巡洋艦隊を殲滅させられたため、マゼラン方面軍総司令官メルダーズが乗艦した自動惑星ゴルバがイスカンダルに現れる。この時点でデスラー艦隊は三段空母1隻と旗艦であるデスラー戦闘空母1隻の計2隻しか残っていなかった。母星を破壊された怒りのために敵の力量を見誤ったデスラーはゴルバに対して、全艦突撃を命令。三段空母からDMB-87型急降下爆撃機を発進させるが、ゴルバ艦載の戦闘ヘリとの戦闘で次々と撃墜され、さらにゴルバの上部ミサイル砲によって急降下爆撃機はおろか、発進させた三段空母も攻撃を受け、デスラー戦闘空母に寄りかかる形で大破した。結局、戦闘終了後に生き残った艦はデスラー戦闘空母ただ1隻のみであった。
[編集] 宇宙戦艦ヤマトIII
16話のデスラーの回想シーンでデスラー残存艦隊として画面上に2隻が登場。ボラー連邦に支配されていたガルマン・ガミラス本星を偶然発見し、三段空母の艦載機と思しきDMT-97型雷撃機でボラー軍を攻撃し、ボラー連邦から星を解放した。
さらに同作においては、ガルマン・ガミラス世代の新三段空母が設定されたが、話の短縮などにより劇中に登場しなかった。しかし、この発展型である二連三段空母は登場し、ヤマトとの新たな決戦を演じている。この新しい三段空母は、デザイン的には二連三段空母の片方の甲板後方にガルマン・ガミラス戦闘空母の艦橋を付けた様なものとなっており、全長も戦闘空母と同じく大型化され、500mを超えている。
[編集] 艦載機
[編集] 戦闘機
正式名称は「ドメル式DMF-3型ガミラス戦闘機」。通称「ガミラスファイター」。
『宇宙戦艦ヤマト』の第1空母艦載機として登場したのみで、以後の続編には登場しなかった。
機首部は横に膨れており、機体後方に主翼を配置するなど、エンテ型のような配置になっている。パルスガンを主翼に4門ずつ合わせて8門、機首部に4門の計12門を装備。また、翼下にミサイル4発ずつ、計8発搭載できる。 横から見た胴体のフォルムや、キャノピーと大型の垂直尾翼のデザインは未完の機体であるドイツ空軍のTa 283ジェット戦闘機に似ている。胴体に縦に配置した2輪の主脚を装備した前輪式。双発機で、機体はガミラス標準色の緑。ゲームではさらに鋭角的なデザインに変更された。
[編集] 急降下爆撃機
正式名称は「ドメル式DMB-87型ガミラス急降下爆撃機」。正式名称にある「DMB-87」はドイツ空軍のJu 87急降下爆撃機から取ったものと思われる。
『宇宙戦艦ヤマト』の第2空母艦載機として初登場後、『宇宙戦艦ヤマト2』、『新たなる旅立ち』にまで登場した息の長い機種である。『宇宙戦艦ヤマト2』での戦闘空母とデスラー戦闘空母にも艦載されている。
直線的なデザインで、元ネタとなったJu 87の特徴である中翼配置の逆ガルウィングに固定脚を装備した前輪式。双発エンジンで、垂直尾翼2枚を斜めに配した無尾翼機となっており、機首部からのキャノピーにかけてのフォルムは同じくドイツ空軍のMe 262ジェット戦闘機を彷彿とさせるデザイン処理である。『宇宙戦艦ヤマト』の機体は水色でランチャー内は赤色となっているが、21話では全てのシーンで機首先端が黄色となっているが、22話では機首先端が赤色になっていたり、機体と同じ水色になっているシーンがあるなど、塗装が統一されておらず、デザインについてもシーンによっては機首部が角ばっていたり、丸くなっていたりと差が激しかった。『宇宙戦艦ヤマト2』では紫がかった水色の機体に機首先端とランチャー内は赤色で統一。『新たなる旅立ち』に登場したものは機体は緑色で、ランチャー内まで同じ色になり、機首先端が黄色となった。
大量の爆弾を搭載でき、胴体爆弾倉に中型6発、主翼下に大型1発ずつ計2発と中型5発ずつ、計10発を搭載する。また、機首にある2つの出っ張りはランチャーとなっており、小型の対艦ミサイルを8発ずつ、計16発を搭載。また、自衛用として後部機銃座にパルスレーザー砲2門装備している。『宇宙戦艦ヤマト2』では、一部のシーンでミサイルのように噴射させながら爆弾(あるいは対艦ミサイルの可能性もある)を撃ち出していた。
『宇宙戦艦ヤマトIII』において、本機と下記の機種を統合したような雷撃機が登場し、ガルマン・ガミラス帝国の二連三段空母と戦闘空母に搭載されている。
[編集] 雷撃機
正式名称は「ドメル式DMT-97ガミラス艦上攻撃機」。正式名称にある「DMT-97」は大日本帝国海軍の九七式艦上攻撃機から取ったものと思われる。
『宇宙戦艦ヤマト』の第3空母艦載機として初登場。『宇宙戦艦ヤマト2』にも登場し、『宇宙戦艦ヤマトIII』では16話のデスラーの回想シーンにのみ登場した。
1つのキャノピーに座席を2つ並列配置した構造である。急降下爆撃機と同じように無尾翼で、高翼配置の逆ガルウィングに主脚を備えるが、こちらは固定脚でなく引き込み式で、胴体にも主脚を装備しており、それぞれ4輪ボギー式。また、逆ガルウィングの角度もこちらの方がきつい。単発機であり、垂直尾翼は1枚で、機体は水色。『宇宙戦艦ヤマトIII』では、機体は緑色に塗装されていた。キャノピーの大きさから察するに上記の2機種よりも大型である。
魚雷を包み込むようなボディをしており、宇宙魚雷2本を縦列に搭載する。自衛用火器はかなり強力で4隅に銃身を配置した球形4連装銃座を胴体下(2本の魚雷の間)と、キャノピー後部、エンジンノズルの上下に合わせて4基、計16門装備する。『宇宙戦艦ヤマト2』のものは機体がコンパクトなデザインとなり、宇宙魚雷は1本のみの搭載である。『宇宙戦艦ヤマトIII』の機体は、大きさやデザインなどは『宇宙戦艦ヤマト2』と同じであるが、銃座の機銃が2連装に減らされているようである。また、一部のシーンで宇宙魚雷を自由落下させており、主翼の足を引き込むスペースであるポットも爆弾のように投下していた。
『宇宙戦艦ヤマト』で、上記の2機種は三段空母に通常着陸する中、本機種のみが垂直着陸しており、離陸する時は通常離陸だったため、本機はVTOL機かSTOVL機ではないかと思われる。
『宇宙戦艦ヤマトIII』において、上記の機種と本機を統合したような後継機が登場し、ガルマン・ガミラス帝国の二連三段空母と戦闘空母に搭載されている。
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
- ^ その後の作品で登場する際には、全艦緑色で登場するが、『宇宙戦艦ヤマト2』でデスラーが乗り換えた艦が「第2空母」と呼ばれたこと、『新たなる旅立ち』で最後の1隻が急降下爆撃機のみを発進させたことなどから、この構成は同じのようである。
[編集] 外部リンク
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総合 | 宇宙戦艦ヤマトシリーズ |
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