ヴェニスの商人
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『ヴェニスの商人』(ヴェニスのしょうにん、The Merchant of Venice)はウィリアム・シェイクスピアの喜劇用の戯曲である。1594年から1597年の間に書かれたとされている。『ベニスの商人』とも記される。
目次 |
[編集] 概要
中世イタリアのヴェネツィア共和国と架空の都市ベルモントを舞台に繰り広げられる商取引と恋の喜劇で、ユダヤ人の金貸しシャイロックが金を貸す際に吹っかけた証文が現実になったことによって起こる裁判と、ベルモントの女相続人を射止めんとする若者の話を基軸とする。
この話の元になったものとして主に次の2つがある。ひとつは中世イタリアのデカメロン調の物語集『イル・ペコローネ(愚者)』(Il Pecorone)の4日目第1話であり、人肉裁判と指輪の部分の原話である。もうひとつはラテン語による短編集『ゲスタ・ロマノールム』で、箱選びの部分の原話となっている。
執筆当時はただの喜劇として見られていたが、ハイネは「シャイロックの悲劇」と呼び、観劇中後ろで涙を流している女性を見たという逸話が残る。また第二次世界大戦後、劇中の第3幕第1場でシャイロックが「猶人《ヂウ》には目がないか? 猶人《ヂウ》には手がないか? 鼻や耳や口はないか? 四肢五體は?」(坪内逍遥訳)といったのを反ユダヤ主義と関連させる見方も増えている。後述する映画などでは、その様な背景からそれまでただの悪人と見られていたシャイロックに対して、同情的な見解を見せる場面も増えた。
なおタイトルの『ヴェニスの商人』とは有名なユダヤ人の金貸しシャイロックを指すのではなく、商人アントーニオの事である。
千葉県浦安市にある東京ディズニーシーにはこの作品のタイトルが元になったショップ「マーチャント・オブ・ヴェニス・コンフェクション」がある。
[編集] 登場人物
- アントーニオ: 商人
- バサーニオ: 高等遊民
- ポーシャ: 女相続人
- シャイロック: ユダヤ人金貸
- ソラーニオ・ソレーニオ: バサーニオの仲間※1
※1このような人物が四人の本と二人の本とに分かれる
- ネリッサ: ポーシャの女中
- テューバル: シャイロックの友人
[編集] 物語
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
物語はイタリアのベニス(ヴェネツィア)。バサーニオは富豪の娘の女相続人ポーシャと結婚するために先立つものが欲しい。そこで、友人のアントーニオから金を借りようとするが、アントーニオの財産は航海中の商船にあり、金を貸すことができない。アントーニオは悪名高いユダヤ人の金貸しシャイロックに金を借りに行く。アントーニオは、金を借りるために、指定された日付までにシャイロックに借りた金を返すことが出来なければ、シャイロックに彼の肉1ポンドを与えなければいけないという条件に合意する。アントーニオは簡単に金を返す事が出来るつもりだったが、彼の商船は難破し金を返す事が出来なくなる。シャイロックは、日頃から快く思っていなかったアントーニオに復讐できる機会を得た事を喜ぶ。
その間に、バサーニオは、ポーシャと結婚するためにベルモントに向かう。ポーシャの父親は金、銀、鉛の3個の小箱から正しい箱を選んだ者と結婚するよう遺言を残していた。バサーニオはポーシャの巧妙なヒントによって正しい箱を選択する。バサーニオはポーシャから貰った結婚指輪を絶対はずさないと誓う。しかし、幸せなバサーニオの元にアントーニオがシャイロックに借金返済が出来なくなったという報せが届く。バサーニオはポーシャから金を受け取りベニスへと戻る。一方、ポーシャも侍女のネリッサを連れて密かにベルモンテを離れる。
シャイロックはバサーニオから厳として金を受け取らず、契約通りアントーニオの肉を要求する。若い法学者に扮したポーシャがこの件を担当する事になる。ポーシャはシャイロックに慈悲の心を見せるように促す。しかし、シャイロックは譲らないため、ポーシャは肉を切り取っても良いという判決を下す。シャイロックは喜んで肉を切り取ろうとするがポーシャは続ける。「肉は切り取っても良いが、契約書にない血や髪の毛など他の物は何一つ切り取ってはいけない」。仕方なく肉を切り取る事を諦めたシャイロックは、それならばと金を要求するが一度金を受け取る事を拒否していた事から認められず、しかも、アントーニオの命を奪おうとした罪により財産の半分は自分の娘ジェシカに与えることとなり、また、キリスト教に改宗させられる事になる。
バサーニオはポーシャの変装に気付かずにお礼をしたいと申し出る。バサーニオを困らせようと結婚指輪を要求するポーシャにバサーニオは初めは拒んだが結局指輪を渡してしまう。
ベルモンテに戻ったバサーニオは指輪を失った事をポーシャに責められる。謝罪し許しを請うバサーニオにポーシャはあの指輪を見せる。驚くバサーニオにポーシャは全てを告白する。
[編集] 演劇以外の作品
[編集] 劇付随音楽
- 「シャイロック」(ガブリエル・フォーレ)
[編集] 映画
[編集] 漫画
- 「ベニスの商人」(手塚治虫)1959年
[編集] 外部リンク
- ゲスタ・ロマノールムのラテン語テキスト該当部分(George Mason大HP内)
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