オセロ (シェイクスピア)
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『オセロ』 (Othello) は、ウィリアム・シェイクスピア作の悲劇。5幕で、1602年の作。副題は「ヴェニスのムーア人」 (The Moor of Venice) 。
ヴェニスの貴族であるオセロが、旗手イアーゴーの奸計にかかり、妻デズデモーナの貞操を疑い殺す。のち真実を知ったオセロは自殺する、という話。シェイクスピアの四大悲劇の一つ。最も古い上演の記録は1604年11月1日にロンドンのホワイトホール宮殿で行われたものである。
登場人物の心理が非常に明快であり、シェイクスピアの四大悲劇中、最も平明な構造をもつ。
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ヴェニスの貴族でムーア人のオセロは、デズデモーナを自らの妻とし、これをよく愛している。オセロの旗手イアーゴーは、同輩キャシオーの昇進を憎み、オセロに、デズデモーナがキャシオーと通じていると進言する。真実味を増すために、イアーゴーは、オセロがデズデモーナに送ったハンカチを盗み、キャシオーの部屋に置く。
これを知ったオセロは怒り、イアーゴーにキャシオを殺すように命じ、自らはデズデモーナを殺してしまう。だが、イアーゴーの妻のエミリアは、ハンカチを盗んだのは夫であることを告白し、イアーゴーはエミリアを刺し殺して逃げる。イアーゴーは捕らえられるが、オセロはデズデモーナに口づけをしながら自殺をする。
[編集] 原典
『オセロ』のもとは、ツィンツィオの『百物語』第3篇第7話にある。デスデモーナはギリシャ語で「不運な」という意味で、この話の中では、デズデモーナは事故死に見せかけてオセロが殺す。後に錯乱し、イアーゴーを解職したが、オセロはこの罪を問われ追放され、デズデモーナの親戚に殺される。イアーゴーはこのことが知られ、拷問の末に死亡する、という筋で、このほかは非常によく似ている。この話の中で名前で呼ばれているのはデズデモーナのみで、ほかはムーア人、旗手、などと呼ばれている。
[編集] 作品解説
表題の人物であるオセロは気高いムーア人(北アフリカのムスリム)であり、キプロスの軍隊の指揮官である。オセロはムーア人であるにもかかわらず、同情的に描かれている。これはムーア人のような肌の黒い人々が悪役として描かれることが多かった、シェイクスピアの時代のイギリス文学においては珍しいことである。オセロが黒人であるかアラブ人であるかについては研究者の間でも議論があるが、一般には前者と解釈されている。当時は黒人は人種差別の対象ではなく、イアーゴーがことにおよんだ原因がオセロの人種にあるとするのは誤り。シェイクスピアは劇中でイスラム教について全く触れていない。
[編集] 日本語訳
- 「オセロウ」岩波文庫、訳:菅泰男
- 「オセロー」新潮文庫、訳:福田恒存
- 「オセロ」角川文庫クラシックス、訳:三神勲
- 「オセロー」(シェイクスピア全集 13)ちくま文庫、訳:松岡和子
- 「オセロー」(シェイクスピア全集 27)白水Uブックス、訳:小田島雄志
[編集] 映画化
- オセロ (1922) エミール・ヤニングス主演のサイレント映画。
- オセロ (1952) オーソン・ウェルズ監督・主演。
- オセロ (1965) ローレンス・オリヴィエ、マギー・スミス出演。
- オセロ (1986) ヴェルディのオペラ『オテロ』の映画化。フランコ・ゼッフィレッリ監督、プラシド・ドミンゴ主演。
- オセロ (1995) ケネス・ブラナー、イレーヌ・ジャコブ、ローレンス・フィッシュバーン出演。
- O (2001) メキ・ファイファー、ジュリア・スタイルズ、ジョシュ・ハートネット出演。舞台は現代のアメリカのハイスクール。
- Omkara (2006) 舞台は現代のインド・ムンバイ。アジャイ・デーヴガン、サイフ・アリー・カーン、カリーナ・カプール出演。
[編集] 関連項目
- 威風堂々 (行進曲)
- オセロ (遊戯)(ネーミングの由来。詳しくはオセロ (遊戯)#オセロの歴史を参照)
- オテロ (ヴェルディ)
また、吹奏楽の作品としてA.リードの「オセロ」がある。
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