ブレーキローター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ブレーキローターとは、自動車やオートバイ、その他輸送機器に用いられる制動装置(ディスクブレーキ)の部品。鉄・ステンレス・アルミ・カーボン製の円盤状の部品である。
目次 |
[編集] 素材
ディスクブレーキは、ディスクローターにブレーキパッドを押付け、その摩擦によって制動するものである。ディスクローターには摩擦熱に強く、放熱効果が高い素材が求められることから、自動車には鉄、バイクにはステンレス鋼製のものが主に使用される。アルミニウム製は軽量であるが耐久性や熱変形において劣るため使われることは少ない。F1やルマン・シリーズなどの一部のモータースポーツや航空機ではカーボン繊維を原料としたブレーキローターが使用される。
装着する車種によっては単なる一枚の円盤ではなく、ローターの表面積を確保して放熱容量と制動力をアップすることがあり、主に次のようなものがある。
- ドリルローター:円盤の面に多数の穴を空ける。二輪車でよく見られる。
- スリットローター:円盤の面に放射状に溝を掘る。摩擦でブレーキパッドを削正する効果もあるため、スポーツカーやレーシングカーで幅広く採用されており、後述するベンチレーテッドディスクと組み合わされることが多い。
- ベンチレーテッドディスク(Vディスク):ディスクを2枚にしてその内側に多数のフィンを挟む。自動車や鉄道車両で見られる。
[編集] 注意点
- ブレーキローターは使用に伴って磨耗していくので、定期的に交換や研磨が必要である。日本車では廃車まで一度も交換しないケースも多いが、欧州車のなかにはブレーキパッド交換2回に1回程度の交換サイクルを要求するものもある。
- カーボン製ブレーキローターは、適切な温度域内で使用しないと本来の性能を発揮せず、ブレーキローターの割れや異常磨耗などを発生することもあるために温度管理が不可欠である。また、一台分で300万円程度と非常に高価。セラミックなどを付加することによって市販車にも使用できるように改良されたものがポルシェやフェラーリの一部には採用されている。カーボンローターはカーボンローター専用のカーボンブレーキパッドとのセット使用が原則。
[編集] トラブル
- 脈動・・・ブレーキローターの偏磨耗によって、ブレーキング時にブレーキキャリパーのピストンが押し戻されることによりブレーキペダルが戻される現象。ローターの研磨や交換が必要。
- ジャダー・・・ブレーキング時に発生する振動。スポーツ走行などでブレーキローターが長時間熱にさらされた場合などに発生しやすい。高熱にさらされて熱変形したブレーキローターが冷える際に一部が元通りに戻らず、変形したままの状態になってしまうことが主な原因。ブレーキローターの交換が必要。ハブベアリングの不良やブレーキキャリパー取付け部の剛性不足でも似たような現象が発生することがあるので注意。