ズムウォルト級ミサイル駆逐艦
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ズムウォルト級ミサイル駆逐艦 | |
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艦級概観 | |
艦種 | ミサイル駆逐艦 |
艦名 | 海軍功労者 一番艦は エルモ・ズムウォルト提督に因む |
前級 | アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦 |
次級 | 最新 |
性能諸元 | |
排水量 | 満載:14,564t |
全長 | 183 m |
全幅 | 24.1 m |
喫水 | 8.4 m |
速力 | 最大30.3 kt (56+ km/h) |
兵員 | 150名 (最終的には100名以下まで削減予定) |
兵装 | ・62口径155mm単装砲 2門 ・Mk57 VLS 80セル ・57mm砲 2門 |
艦載機 | ヘリコプター 1機 無人航空機 3機 |
DD(X)または、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦( Zumwalt class destroyer )は、アメリカ海軍が現在開発中の新型ミサイル駆逐艦。2010年頃に1番艦ズムウォルト(USS Zumwalt, DDG-1000)が就役予定。
目次 |
[編集] 開発の経緯
第二次世界大戦中に建造され戦後長く使用されたアレン・M・サムナー級駆逐艦・ギアリング級駆逐艦を代替すべく1970年代から1980年代にかけて開発されたスプルーアンス級駆逐艦が、2010年前後に寿命を迎えることから、これを代替する駆逐艦の計画が1990年代から開始された。
当初計画名はDD-21と呼ばれた。沿岸地域での活動能力や対地攻撃能力を重視した艦が計画され2000年には1番艦の艦名をエルモ・R・ズムウォルト・ジュニア提督に因んでズムウォルトにすることまで決まったが、2001年11月にそれまで別計画で進行していた新型ミサイル巡洋艦『CG-21計画』、及び沿海域戦闘艦(LCS)と一部共通の技術を使用することで開発費の削減を図ることが決定された。それにあわせて名称がDD(X)に変更され、能力も従来までの要求に加え、弾道ミサイル防衛能力や対空攻撃能力も要求されることとなった。
ズムウォルト級はDD-21の名称時からノースロップ・グラマン社を中心としたゴールドチームとジェネラル・ダイナミクス社を中心としたブルーチームの2つによる競合で、優れている方を採用することとなっていたが2002年4月にゴールドチーム案を採用することが決定し次の段階へ進むことへなった。
[編集] 船体
船体形状はこれまでの艦船とはかなり異なる。水平方向に輪切りにした断面積を考えると、従来の艦は甲板付近が一番大きくそこから船底に近づくほどすぼまっていく形状であったが、ズムウォルト級ではステルス性向上のため、吃水線付近が一番断面積が大きく、上にいけばいくほどすぼまっていくタンブルホーム船型と呼ばれる形状を採用した。アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦やフランス海軍のラファイエット級フリゲートのようなステルス性が重視されている艦は前から見るとひし形のような形状をしているが、この場合水平方向からくる電波は上部にあたると空に向かって、下部にあたると海に向かって反射され、直接もとの方向へ戻ってしまうことはない。しかし海に向かって反射された電波は海面で乱反射し、ある程度もとの方向へ戻ってしまう。DD(X)で採用したタンブルホーム船型の場合、水平方向からくる電波はほぼすべて空に向かって反射されるため従来までのステルス艦に比べ、よりステルス性が向上した。
船体は内殻と外殻を備える2重船殻となっている。この方式は潜水艦やタンカーでは一般的に使用されているが水上艦としては異例のことである。内殻と外殻の間には新型のVLSを搭載する。満載排水量は14,000トン程度と言われるが、これは現在アメリカ海軍が唯一保有する巡洋艦であるタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦より大きい。
[編集] 装備
ズムウォルト級では従来までのようなマストや回転式のアンテナは廃止される。レーダーには長距離目標探知用と武器管制用の2種類のフェイズド・アレイ・レーダーが搭載されるが、イージス艦に搭載されているAN/SPY-1ではなく新型の半導体を用いたレーダーになる予定である。また、戦闘システムも改良型のイージスシステムが搭載されるという。ソナーも従来より探知能力を高めた新型のものが搭載される。
[編集] ミサイル
ミサイルは内殻と外殻の間に装備するMk57 VLS(PVLS:Peripheral Vertical Launch System)に搭載される。Mk57 VLSは従来使用されているMk41VLSと同じようにトマホーク、スタンダードミサイル、発展型シースパローミサイルなど数種類のミサイルが使用可能。内殻と外殻の間に装備することで、被弾の際の爆圧を外側に逃がす構造になっている。
ズムウォルト級は当初、128セル前後を主砲とヘリコプター甲板の両脇付近に装備する予定と言われていたが、2005年現在、VLSは20基、計80セルまで削減されたようである。
[編集] 砲
主砲は62口径155mm単装砲2基を前甲板に装備する。この砲はAGS (Advanced Gun System) とよばれ、発射速度は1分間に12発程度、水上目標と地上目標用であり、対空目標に対しての使用は考慮されていない。
AGSは通常砲弾のほかにロケットモーターを装備し射程を180キロ以上に延ばした誘導砲弾 (LRLAP) の使用も可能である。この砲弾はアーレイ・バーク級などが装備するMk45Mod4で使用されるERGMより射程が長く攻撃力も高い。ステルス性向上のため、砲身は使用時以外には砲塔内に収納される。一般的に近年の艦載砲の即応弾数は多くても100発程度であるが、AGSは1門あたりの即応弾数は750発と非常に多い。
AGSは当初VLSのように垂直に打ち出す方式も考えられていたが、その場合通常の砲弾の使用ができなくなってしまうため結局従来までと同様の旋回砲塔となった。
また、副砲としてユナイテッド・ディフェンス社の57ミリ砲の採用が決定している(CIGS=Close In Gun System)。この砲は、LCS及びアメリカ沿岸警備隊のカッターでも採用が決定している。
[編集] ヘリコプター
ズムウォルト級は後部にヘリコプター格納庫と甲板を備えており、従来までのヘリコプターに加え無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicles)などの使用もできる。ヘリコプター甲板は従来の艦に比べるとかなり広く大型ヘリコプターの着艦も可能であると思われる。
[編集] 同型艦
DD-21計画時は最終的に32隻の建造が予定されていたが、DD(X)計画では未定となっている。議会では1隻30億ドルにのぼる本級の整備には批判の声が強く、一時は18,000tとも言われた排水量も当初予定の14,000tまで削減された。
イラク戦争で予算が逼迫しているアメリカ軍にとって、予算面で相当重荷なのは否めず、次期ミサイル巡洋艦「CG(X)」までのつなぎとして、多くとも10隻程度で打ち切られるのではとも言われている。なお、1番艦は暫定的な仕様フライト0とされ、2008年起工予定。
[編集] ファミリー
以下の艦船と、様々な技術が共用される予定である。
[編集] 関連項目
- シー・シャドウ (実験艦)
- シー・ジェット (実験艦)
[編集] 外部リンク
以下のサイトにはイラストもある。