VLS
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VLS(Vertical Launching System) は、潜水艦を含む艦艇に使用されるミサイル発射システム。日本語では垂直発射システムまたは垂直発射装置と訳される。
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[編集] 登場の経緯
VLSの基本的な考え方は、ミサイルをミサイル格納庫から直接飛ばしてしまおうというものである。VLSの登場以前においては、艦船からミサイルを発射する場合、ミサイル格納庫からミサイルを発射装置に装填し、敵の方向に発射装置の向きを変える必要がある。次のミサイルを発射するには、発射装置の方向を装填位置まで戻してから再装填を行うため、ミサイル発射に時間がかかる。このタイムロスを解決するために開発されたのがVLSである。
[編集] 装填・発射・飛翔
水上艦用VLSの一般的な装填から飛翔までの仕組みは以下の通り。
- 装填
- ミサイルは細長い箱の中に格納した状態で、艦艇に埋め込まれた発射機内部の「セル」と呼ばれる空間に、クレーンを使って垂直に装填される。このコンテナ状の箱は通常複数本が並べられた状態で発射機内部で主要な位置を占める。セル毎に異なるタイプのミサイルの装填が可能な場合が主流である。
- 発射
- ミサイル発射時にはセル上部の蓋が開き、そのままエンジンに点火するホットローンチ方式か、ガス圧を利用するコールドローンチ方式によってミサイルが垂直に打ち出される。コールドローンチ方式では、発射機のガス発生器からのガスの圧力によって空中高く投げ上げられてからロケットエンジンに点火される。
- 飛翔
- 垂直に発射されたミサイルは、自身や母艦の誘導に従って空中で飛翔方向を修正しながら目標に向かって飛んでいく。
[編集] 利点・欠点
以下に示す欠点はあるが、スピードが重視される現代戦においてはVLSのリアクションタイムの短さや高発射速度などは非常に有利であり、各国海軍が新造している水上戦闘艦では、至近距離に向けて発射する近接防御システムのミサイルを除いては、ミサイルの発射機構にVLSを採用するケースが多い。
[編集] 利点
短時間で多数のミサイルの発射が可能である。逐次装填型の発射装置では、発射速度は最速でも4秒に1発程度であるが、VLSは1秒に1発程度の発射が可能である。ソ連には船内のミサイルをドラムにセットしてドラムを回転して同じ発射口から発射する、いわばリボルバー式拳銃のようなタイプのVLSも存在する。
多くのVLSではセルごとに異なった種類のミサイルを装填することが可能となっており、対空対地対艦対弾道弾などの異なる種別や異なる射程のミサイルを混載することで敵の脅威度や艦の用途に応じたVLS搭載艦の柔軟な運用が可能になる。小型対空ミサイルのESSMのように1つのセルに4本が収納できるものもある。
今後、開発される新型ミサイルに対しても搭載可能とするだけの技術的余地があり、そうしたミサイル性能の向上が享受できるのみならず、VLSの長期使用によるコスト削減が期待できる。
部分的な障害に強いことも有利となる。逐次装填型ではただ1つの発射装置が被弾や故障によって障害が発生するとすべてのミサイルの発射が不可能となるが、VLSではいくつかのセルに障害があっても、他のセルのミサイルは発射可能な状態であることが期待できる。
従来の発射機が露天甲板上に露出していたのに比べて、メンテナンスを含めた耐候性に優れ、被弾性も低く出来る。多くの艦船でのVLSでは発射装置全体が甲板下に埋め込まれており、ステルス性にも若干優れる。
重心の低下が実現出来る。例えば、VLS以前の艦艇用ミサイルシステムであったアスロックでは、8連装発射機と艦橋下層など上甲板の上に保管された予備ミサイルの重量によって船の重心が高くなる点で不利であった。
[編集] 欠点
例えばMk41VLSはセルよりも射撃管制装置が高価なため、セルの数を減らしてもあまり値段が下がらず、小型艦にとってはコスト負担が大きい。
垂直に発射した後で空中でミサイルの姿勢を変更するのに時間がかかり、近接飛来物の迎撃のような用途にはあまり向かない。
[編集] 様々なVLS
[編集] アメリカ
- Mk 41
- スタンダードミサイル、VLAと呼ばれる垂直発射型アスロック、トマホーク、ESSM(発展型シースパローミサイル)など、様々な用途のミサイルを発射する事が可能な汎用性に優れたVLS。8セルで1セットを構成する。
- Mk 48
- シースパロー専用。ESSMも搭載可能。
- Mk 57
- 現在開発中の新型VLSでPVLS (Peripheral Vertical Launch System) と呼ばれる。ズムウォルト級ミサイル駆逐艦に搭載予定。
- 潜水艦搭載VLS
- 全てのバージニア級原子力潜水艦と、ロサンゼルス級原子力潜水艦SSN-719プロビデンス以降にはトマホーク用のVLSが搭載されている。
[編集] フランス
- SYLVER
- A-43、A-50、A-70の三種あり、数字が大きくなるほど搭載可能なミサイルは長くなる。A-43、A-50はアスターSAM用、A-70は対地巡航ミサイルSCALP Naval用。これらはコールドローンチ方式である。
[編集] イギリス
- シーウルフ
- 短射程艦載対空ミサイル、シーウルフは初期型はボックスランチャーで運用されたが、後期型は専用のVLSが開発された。
[編集] イスラエル
- バラク
- 短射程艦載対空ミサイル。8セルで1セットを構成する。
[編集] ソ連/ロシア
- S-300F「フォールト」
- 艦隊防空ミサイルシステム。8発1セットでリボルバー状に装填されたVLSから、1発ずつガスでコールドローンチする。NATOコードネームではSA-N-6「グラムブル」(Grumble)と呼ばれた。
- 3K95「キンジャール」
- 個艦防空ミサイルシステム。発射方式はS-300Fと同様。NATOコードネームではSA-N-9「ゴーントリト」(Gauntlet)と呼ばれた。このミサイルシステムの派生元となった陸上型9K330「トール」システムも、装軌車両から垂直にミサイルを発射する。
- P-700「グラニート」
- 重長距離対艦ミサイル。NATOコードネームではSA-N-19「シップレック」(Shipwreck)と呼ばれた。
- SS-N-27
- 対艦ミサイル。インド艦向けのものであるが、ロシア本国では採用されていない。
[編集] 中国
- 蘭州級駆逐艦のVLS
- 艦隊防空ミサイル用。外観はS-300Fのものとよく似ているが、1セット6発のそれぞれのセルに蓋があることから、S-300Fのように回転はせずそのままそれぞれのミサイルが発射されると思われる。
[編集] 南アフリカ
- Umkhonto
- 個艦防空ミサイル。搭載するミサイルには赤外線誘導のUmkhonto-IRとレーダー誘導のUmkhonto-Rの2バージョンがある。8セルで1セットを構成する。
[編集] 関連項目
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