アルカロイド
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アルカロイド (alkaloid) は窒素原子を含み、塩基性を示す有機化合物の総称。かつては植物塩基(英訳 plant base)という訳語も用いられた(因みに、この訳語が提唱されたのは1818年)。現在、近似種を含め約数千種が在るといわれている。その元祖と言われているのは、ドイツの薬剤師Sertürner(ゼルチュネル)が1804年(1805という記述もアリ)にアヘンから分離抽出したモルフィン、つまりモルヒネであるらしい。
大半はアミノ基やイミノ基を持つ。窒素源がアミノ酸に由来する場合が多いが、アンモニア性窒素に由来するものも存在し、そのようなものを偽アルカロイド(pseudo-alkaloid)と呼ぶ。また、窒素源をアミノ酸由来とするものは脱炭酸反応を伴うものとそうでないものが存在し、それぞれ真正アルカロイド(true alkaloid)、不完全アルカロイド(proto-alkaloid)と呼ぶ。多くは植物から発見されているが、動物由来のアミンもアルカロイドとしての性質を有するものがある。生理学的に共通した性質はあまりなく、多彩な効果を発揮する。化学的には塩基性を持つため、酸と反応しやすいという性質を持つ。そのため、塩として存在する場合も多い。
アルカロイドは植物体内の各種アミノ酸によって生合成され、シュウ酸・リンゴ酸・クエン酸・酢酸・酒石酸などの「有機酸」、「塩」という状態で各々の体内に保持している(例、クエン酸塩、リンゴ酸塩など)。それが何らかの要因で分解、分離、もしくは抽出されればアルカロイドと呼べる物体になり、摂取した動物の体内に諸影響を及ぼす。
基本的に植物は、体の中に何種類ものアルカロイドを保持していて(例、アヘン→ モルヒネ、コカインなどを筆頭に約20種)、それらアルカロイドは科学的に近しい性質を持つものであることが多い。体内に植物が保持しているアルカロイドの中で、比較的含有量が多いものは主アルカロイド、それに伴う幾種ものアルカロイドが副アルカロイドと呼ばれる。
アルカロイドは強い生物活性をもつものが多く、植物毒の多くはアルカロイドである。また、薬用植物の主成分もアルカロイドであることが多く、医薬品の原料として用いられる。
アルカロイドは主に顕花植物、殊に双子葉類の植物に見出される。体内にアルカロイドを含有する植物としては主に、キンポウゲ科、ケシ科、ナス科、ヒガンバナ科、マメ科、メギ科、ユリ科、トウダイグサ科、ウマノスズクサ科など。
[編集] アルカロイドの例
- アコニチン(トリカブトに含まれる猛毒成分)
- アトロピン(ベラドンナなどのナス科植物に含まれる猛毒成分。パーキンソン病、サリン又は、VXガス中毒の治療に使われる)
- アリストロキア酸(ウマノスズクサ類にふくまれる)
- アレコリン(ビンロウに含まれる。興奮、刺激、食欲の抑制作用あり)
- エフェドリン(麻黄に含まれる。鎮咳効果あり)
- カフェイン(コーヒー豆、緑茶、紅茶に含まれる。中枢神経興奮作用あり)
- カンプトテシン
- キニーネ(キナの皮に含まれる。マラリアの特効薬として使われる)
- クラーレ(アマゾンで矢毒としてつかわれた)
- コカイン(コカから抽出。中枢神経興奮作用あり)
- コルヒチン(痛風の特効薬)
- スコポラミン(ナス科ハシリドコロなどに含まれる成分。交感神経抑制。主に乗り物酔い止め薬として使われる)
- ストリキニーネ(マチンに含まれる成分)
- ソラニン(ジャガイモの芽や皮に含まれる)
- タキシン(イチイの果肉を除く部分に含まれる)
- テオフィリン(利尿薬、気管支喘息治療薬)
- テトロドトキシン(フグなどが持つ猛毒成分)
- ドーパミン(覚醒アミン)
- ニコチン(タバコ草に含まれる。喫煙による摂取では人体への影響は弱いが依存症になる傾向大)
- ビンカアルカロイド(ニチニチソウに含まれる10種以上のアルカロイドの総称。ビンクリスチン、ビンブラスチン等には細胞分裂阻害作用があり抗がん剤として用いられる)
- ベルベリン(キンポウゲ科オウレン、ミカン科キハダの成分。止瀉薬として使われる)
- モルヒネ(アヘンより抽出されるオピオイド。中枢神経抑制、鎮痛効果あり)
- リコリン(ヒガンバナ科の植物に含まれる毒・ヒガンバナ自身はガランタミンも含有)
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