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2011年問題 (日本のテレビジョン放送) - Wikipedia

2011年問題 (日本のテレビジョン放送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

日本のテレビジョン放送において、2011年問題(2011ねんもんだい)とは、地上アナログテレビジョン放送2011年7月24日までに終了し、地上デジタルテレビジョン放送に切り替わることで発生する、機器のデジタル化およびアナログ波停波に関する諸問題のことである。

地上波に限らず、衛星放送(BS放送)についても、同時期あるいはそれ以前にアナログ放送が完全に終了することになっている。

目次

[編集] アナアナ変換

地上デジタルテレビジョン放送は、地上アナログテレビジョン放送にも使われているUHF帯の一部(原則13ch〜52ch)を用いて放送されている。そのため、デジタル放送開始に際し、使用できる送信周波数帯(送信チャンネル)を確保するため、一部の地域ではデジタル放送と同一チャンネルとなるアナログ中継放送局のチャンネル(周波数)を変更する事となった。

これに掛かる費用のうち、

  • 各家庭用の受信設備の対策に係るもの
  • 地方局の送信設備の対策に係るもの

の2点については、主に携帯電話利用の対価として国が徴収した電波利用料を財源に支出し変更工事を行った。TV電波の変更工事に、繁栄を続けるTV放送業界の金ではなく携帯電話利用者からの金を流用することへの反発があったが[1]総務省は結局、電波利用料という特別会計からの支出によって全ての変更工事を行い、2007年3月に完了した。この様なアナログ放送チャンネルの変更・移動を、一般に「アナアナ変換」(アナログ-アナログ変換を短縮したもの、別名「アナ変」)と呼んでいる。

このアナアナ変換の実施は、地上デジタル放送開始時点には終了している事が望ましかった。影響を受ける地域の視聴者を個々に回る必要から、作業そのものに時間が掛かったり、変更したチャンネルが別の地域に影響を及ぼすため、相互に地域のアナアナ変換を進めなくてはならないことなどで、先行して放送開始した三大都市圏を含め、放送開始時点で対象の全戸の変更が未完了や、完了不可能な地域があった。そのため、暫定的に既存のUHFアナログ放送の視聴に混信妨害を与えないように放送アンテナの指向性・送信出力を制限していたため、局によってはアナアナ変換完了までの一時期、デジタル放送の受信可能範囲が著しく制限された。

[編集] 沿革

  • 2003年1月ごろ - 関東・関西・東海地方とその周辺の一部地域で実施を開始
  • 2005年1月ごろ - ほとんどの地方局の中継局で実施を開始
  • 2007年3月20日 - 愛媛県の長浜出海中継局(NHK松山総合のみ)を最後に、予定されていた全てのアナアナ変換が終了した。

[編集] 視聴者のニーズ

2008年3月現在、「地上アナログ放送が停波になる」認知率は総務省の調べで92.2%であり、それが2011年であると知っているのは64.7%であり、未だ知らない人は存在する。

そのため、地上波テレビ放送でも幾度とアナログ放送の終了を告知するCM・告知が放送されている。現に家電量販店などの店頭のアナログチューナーのみのテレビには「2011年アナログテレビ放送終了」のシールが貼付されている[2][3][4][5]

2005年位までは、家電量販店でも地上デジタル放送対応テレビのラインナップが殆ど店頭にならんでいなかった。そのため、地上アナログ停波が約3年で実施される実感がわかない国民も多い。2008年現在、家電量販店の店先に陳列される商品ラインナップは、買い替え用の高価な薄型大画面テレビが中心で、薄型テレビと比較して安価な地上デジタル放送対応ブラウン管テレビは姿を消してしまっている。また既存のアナログチューナー付きテレビに追加する地上デジタルチューナー自体が店頭に殆ど並んでいないばかりか、2008年現在では大手メーカー製地上デジタル・チューナーは価格が5~6万円と高い。このため、まだ十分使えるテレビを買い代えたり高いチューナーを追加購入することに抵抗感がある人も多く、これらのことが地上デジタル放送の普及を妨げる大きな要因であろう。

カーナビゲーションの自動車メーカー装着チューナーは、2008年現在も多くが地上アナログ波用である。地上デジタル放送チューナーは、ディラーオプションであるものが多い。2005年までは、ディラーオプションも設定されていないものが多かった。 アフターマーケットでの自動車用地上デジタル放送チューナーに於いても、2006年以前は、ワンセグ/12セグ切り替えに数秒以上時間が掛かったり、弱電界時のキャリア合成ダイバシティ機能の性能がよくなかったりなど、移動時の受信性能に問題があり、アナアナ変換移行期による地上デジタル放送の電波の弱さや、全国で地上デジタル放送の電波が発射されていなかったことなども併せてユーザーへの訴求力不足であった。

双方向機能が活かされるのはクイズやアンケート番組に視聴者が参加できる事やテレビショッピング程度ではないかといわれる。なお、地上デジタル放送では課金に係わる機能が実装されていないため、BSデジタル放送と異なり、テレビ単体でテレビショッピングはできない。

[編集] 地上デジタルチューナー非内蔵機器の継続使用

地上デジタルチューナーを持たないテレビ・録画機など[6]は、地上デジタルチューナー内蔵機器(単体チューナー、DVDレコーダー、テレビ、CATVセットトップボックスなど)のビデオ信号出力などを利用し、追加機器からテレビ側へ映像、音声、制御信号などを入力することで、廃棄することなく継続して使用できる[7]。デジタル放送の利点である画像品質やアスペクト比に拘らず、また各種の機能などを必要とせず、 コンポジット映像信号などのビデオ信号出力を利用すれば画質と音声の劣化はあるが、多くは継続使用できる。機器接続方法参照。ただしテレビとチューナーの双方を操作する必要が生じることから、従来のアナログテレビ単独使用と比べて利便性が低下するのは不可避となる。

地上デジタルチューナー非内蔵機器の多くは標準画質だが、2008年1月現在発売されている地上デジタル対応の単体チューナー、DVDレコーダー、CATVセットトップボックスはこの継続使用のため特化したものはなく過剰性能であり、その分、高価なものばかりである。総務省の情報通信審議会は電機メーカーに対し5,000円前後の特化した単体チューナーの発売を求める答申を出す方向で動いている[8]。2009年に地上アナログ放送停波のアメリカではLG電子が既に開発をしていてCES2007に出展された[9]

[編集] 地上デジタルチューナー非内蔵テレビ

地上デジタルチューナー内蔵機器をビデオ端子等で接続することで継続使用が可能である。現存するほとんどのテレビはビデオ信号入力端子を備えているが、ビデオ信号入力端子が搭載されていないテレビでは、ビデオ信号をアンテナ端子から入力可能なRF信号に変換するモジュレータ(例:マスプロ電工のAV変調器「VMD3M」)が追加で必要となる。なお、真空管テレビ(白黒)にて受信に成功した事例も報告されている。

[編集] 地上デジタルチューナー非内蔵録画機

地上デジタルチューナー非内蔵録画機(ビデオデッキ、CPRM対応DVDレコーダーなど)については、地上デジタルチューナー内蔵機器(地上デジタルチューナー内蔵テレビにも録画出力があるものがあり、それも使用可能)の映像・音声出力端子から映像・音声コードを介して録画が行える。ただし、CPRM非対応のレコーダーでは録画できないものがある。また、ここからさらに録画側をデジタル録画機にしての複製はコピーワンスのコピー制御により原則行えない。(コピー制御参照)

[編集] 移行の際の混乱

現行アナログ放送の終了は年金生活高齢者、生活保護世帯、単身者、勤労学生などの経済的弱者にも新しい受信機への買い換え、もしくは移行時点での予想最低価格5,000円以下の地上デジタルチューナーの買い足しができない人へ地上デジタルチューナーの新規購入を強いるものであり、そういった人へはあまねく国民全員が享受して来た情報伝達や娯楽手段を一部の人から奪う事になりかねないので、「弱者切り捨てではないのか」という不満の声がある。実際にインターネットコムと goo リサーチが行った「テレビに関する調査」では約2%がテレビ視聴を止めると答えている。

現に、ニュースサイト動画共有サイトSNSなど多くのインターネットコンテンツが若者に浸透しはじめ、「テレビよりもインターネットが面白い」と考える若者が多くなり、地上アナログ放送とデジタル放送がサイマル放送されている今でも、テレビ離れを加速させている。結果として地上波放送局の平均視聴率、それに伴って民間放送局広告収入は年々減少傾向にあり、デジタル放送に一本化する事によって減収も加速させるのではという懸念する声もある。

このため、低所得者世帯などに地上デジタルチューナーを無料配布することも政府内で検討されている[10]

また、経済的に余裕のある層でも『現行のアナログ放送でも事足りている』『まだまだ使える現行のアナログテレビがあるのに、わざわざ新たに対応テレビ(若しくは対応チューナー)を購入する魅力や必要性が乏しい』などといった価値観が根強く残っている事も普及への大きな妨げになっている。

更に#集合住宅での受信未対応件数の項でも述べたような問題に対して、「駆け込み工事」の混乱を未然に防ぐ為の方策が特に一戸建て世帯に対しては十分とは言えない現状も危惧されている。

デジタル放送は、その伝送誤りの処理能力内なら障害のない(または少ない)受信が可能だが、誤り訂正能力を超えた伝送誤りが発生するとベリノイズが現れたり、全く受信できなくなる。アナログ放送ならば、災害などで地元の放送局に障害が生じても、他県の放送をゴーストが生じたり、色がつかなかったりする状態で何とか受信して災害情報を得られる可能性があるが、デジタル放送ではその可能性は低くなる。これは、地上デジタルラジオの普及後もアナログラジオ放送を継続する政策の理由の一つである。なお通常時においても、現在は辛うじて受信できていて、デジタル波になったら全く受信できなくなる地域も存在する。特に2007年現在、地方局などではまだまだ受信耐久率がアナログ放送以下のテレビ局が多く、そういった局はやや強い雪が降っただけですぐに映らなくなる事が頻繁である。

デジタル放送の問題として、「額縁映像」をはじめとした表示形態の問題がある。詳細は表示形態。「額縁映像」は、ほとんどの場合セットトップボックスの設定を変えるなどして防ぐことができるが、高齢者やいわゆる「デジタル弱者」にとっては、本来簡単な設定の変更でさえ敷居が高いことが多い。

わずかな数のケーブルテレビ局だが、地上波以外のアナログ放送もパススルー方式で送信しており、地上デジタルアナログ契約では受像機一台分の契約しかしなくてもアンテナ分配器で実際の受像機の数を増やせた。だが、デジタル契約では「契約受像機数=セットトップボックス数=受像できる受像機数」となるので、複数の受像機を持っている場合、結果的に受像機数分の契約をする可能性もある。しかし他の多チャンネル放送に乗り換えられる可能性もあるのでケーブル局の増収となるとは限らない。ケーブルテレビでのデジタル放送受信方式にはセットトップボックスを必要としないパススルー方式があるが、パススルーによる送信は技術的に容易で設備も簡易で済む地上デジタル放送のみ実施している局が多い。

松下電器産業パナソニック)は「アナログチューナーのみの従来型テレビの生産を2006年で終了する」と発表した(ただし実際に生産終了したのは2007年8月)。大手では他に東芝三菱電機ソニーが既に生産を終了した。録画機器も松下電器産業(パナソニック)などがアナログチューナーのみの従来型ビデオデッキ・DVDレコーダーの生産を終了した。

これらの問題については、新聞などの投書欄で読者からの意見として紹介される事や、討論番組などで討論の内容になる事はあるが、テレビのニュースなどで取り上げられる事は少ない。これらのデメリットを詳しく知るためには、書店の専門的な雑誌を読む、ネットで調べるなど、疑問を持ち主体的に行動しなくてはならず、特にお年寄りなどには敷居の高いものとなっている。

なお、上記の告知CMには「(地上デジタル放送開始に伴うアナログ放送停止は)国の法令で定められている」というテロップが入っている。

以上の様な状況ではあるが、既にアナログ停波を宣言してしまっている以上、停波そのものの撤回は容易ではない。これは逆に買い替えをしてしまった視聴者からの反発も予想されるからである。また停波時期の延長も電波法の再改正を必要とするため容易ではない。なお、野党所属の国会議員の中には、格差問題などを考え、停波時期の延長や停波そのものの撤回も選択肢のひとつではないかと考えている者もいるようだ。

なお、2007年11月現在において、世界におけるアナログ放送を完全に終了させたは、オランダアンドラフィンランドイギリスのみであり、アメリカ韓国は、当初の終了予定を過ぎた現在でもアナログ放送を継続させている事から「日本でも同様の措置を取るべきだ」との声も強く、今後国会でも激しい論争が巻き起こる事も予想される。

[編集] アナログ放送終了に備えた措置

2008年7月24日からNHKで実施する地上波アナログ放送終了告知ウォーターマーク(透かし)(イメージ)
2008年7月24日からNHKで実施する地上波アナログ放送終了告知ウォーターマーク(透かし)(イメージ)
2009年7月から始まり、2011年1月から完全実施する地上波アナログ放送レターボックス放送※ウォーターマーク(透かし)はNHKのみ(イメージ)注意:地上波アナログテレビ放送の終了日は2008年5月7日現在、正式な期日は決定されていません。画像の期日は架空のものです。
2009年7月から始まり、2011年1月から完全実施する地上波アナログ放送レターボックス放送※ウォーターマーク(透かし)はNHKのみ(イメージ)
注意:地上波アナログテレビ放送の終了日は2008年5月7日現在、正式な期日は決定されていません。画像の期日は架空のものです。

現在アナログ放送を受信している視聴者でも、デジタル放送だと勘違いをしている視聴者がいるため、停波になったとき多少の混乱が起こることも懸念されている。そのためか、2008年7月24日から、アナログ放送終了に備えた措置を実施することを計画している。この措置は大きく4段階にわかれている。[11][12]


地上波アナログ放送終了に備えた措置

  • 2008年7月24日 【第1段階】アナログ放送終了の告知画面・告知スーパーの放送を開始。NHKではアナログ放送の画面に常時「アナログ」のウォーターマーク(透かし)の表示も開始。アナログ放送終了告知を強化。
  • 2009年7月 【第2段階】アナログ放送の一部の番組を4:3レターボックス放送に変更(その後、段階的に拡大。)。告知テロップの表示回数を増加。
  • 2011年1月 【第3段階】アナログ放送の全番組を4:3レターボックス放送に変更。告知テロップを常時表示。アナログ放送終了告知をさらに強化。
  • 2011年7月 【第4段階】アナログ放送終了を知らせる画面を表示。
  • 2011年7月24日までに アナログ放送を停波。

BSアナログ放送終了に備えた措置

  • 2008年5月1日 NHK衛星第1・第2テレビジョンのアナログ放送で、チャンネルロゴの下に「アナログ」の文字を表示。[13]
  • 2008年5月9日 WOWOWのBSアナログ放送用デコーダの新規申し込み受付を終了。(BSデコーダー所持者のBSアナログ放送のWOWOWへの再加入は可能。)
BSアナログ放送については、受信機の普及が地上波よりもかなり進んでいることや、全国一律放送であることもあり、地上波と同時期もしくはこれより早く終了させる方向で検討することを決めており、既存のアナログ視聴者に対しても、デジタルへの移行を促している。
なお、上記措置においては、視覚障がい者に対する配慮を行うとされている。
なお全国に先駆け、鹿児島市の一部でサービスを行っているかごしま光テレビ2008年3月で、地上アナログ放送の再送信を終了し、テレビの完全デジタル化を完了した。

[編集] 地上アナログ放送での受信障害

視聴者が使用しているブースターが多くのチャンネルを増幅できる性能が十分でない場合、地上デジタル放送開始とともにUHF帯域のチャンネル数が増えるためにUHF帯域の地上アナログ放送にスノーノイズが現れる。これが現れた場合は社団法人電波産業会受信対策センターに相談するよう、呼びかけられている。地上デジタル放送へのフィルターを取付てくれ、地上アナログ放送に障害がでないようにしてくれるという。地上デジタル放送への対応はしてくれない。この障害が現れると地上デジタル放送への対応には多くの場合、ブースターの調整または交換が必要である。地上アナログ放送が停波すれば、交換しなくても地上デジタル放送が支障無く受信できる可能性は増えるが確実ではない。

[編集] 視聴できない地域

地上デジタルテレビジョン放送の開始は段階的に進められ、東京都・大阪府などの都市部を優先して試験的に開始し、2006年末に43県の県庁所在地および近辺に位置する一部の市・町・村で受信できるようにはなったが、県庁所在地から大きく離れたおよび離島での受信が不可能な状態で開始されることとなった。

2007年末時点での受信可能地域は2006年末時点よりも増えてきているものの、それでも各県にある全ての中継局が整備されておらず、地上デジタル放送を受信できるようにするための整備が常に後手に回る事態となっており、特に人口の少ない地域ほど後回しになっている。

また、難視聴区域の中でも、京都府和束町では、高圧送電線の電波障害を解消するために関西電力が造った電波受信施設で、現在はアナログ波を各家庭に配信しているが、この施設をデジタル波用に改修するに際しての費用負担の問題から、地上デジタルに完全移行への不安が残る地域も存在する。[14]

加えて、新潟県上越市大島区(旧大島村)等の一部市町村ではその地理的な環境より、全面的に難視聴地域となることが予想されている。これは、デジタル波の直進性と閾値以下では映像が見られない特性によるものある。これら地域は過疎化高齢化に悩む地域で、全国に点在している。このような地域では経済的にも恵まれず、デジタル放送に関して積み残しとの指摘もある。総務省では、これらの解消を考慮はしているが、予算等の事情から完全実施は不可能であり、地域住民の負担で行うしか方法はないが、1世帯あたりの負担は重く、それら施設工事の国庫負担率1/3から1/2へと引き上げが望まれている。

地上系による放送の放送対象地域は県域または広域が原則である(短波放送を除く)が、送信される電波は県域または広域に留まらず県外または圏外にも漏れる場合が多い[15]。これは、圏外の視聴者には喜ばれる一方、地元の放送局やそのスポンサーにとっては、隣接する都道府県または広域圏を放送対象地域とする放送局に視聴者を奪われる事、番組著作権・番組出演者の肖像権の侵害にもつながる重要な問題であった。

今回の地上デジタルテレビジョン放送への移行実施に当たり総務省は現在アナログ放送で見られるエリアのほとんどをデジタルで視聴可能にするとしている[16]。実際に、独立局を中心にアナログ放送と同等のスピルオーバーのエリアを確保している局も多くあるが、デジタル放送に新たに割り当てられたチャンネルで混信が起こり、視聴が不可能または困難な地域もある。また、現在中継局の整備が不完全であるためスピルオーバーのエリアは完全ではない。地域によっては、スピルオーバーと中継局の未整備とが相まって、受信できる放送局が他の都道府県を放送対象地域としている放送局のみというケースも生じている[17]

前記は施策の遅れ・困難さに伴う副次的な影響であるが、さらに実際の施策を進めていく上でも、地上デジタルテレビジョン放送では、送信所から発信される電波の方角・強度を細かく設定できる事や、出力もアナログUHF局の10分の1に抑える事で、地上アナログテレビジョン放送に比べ本来の放送対象地域に沿った放送が実施可能となると見られる。また、社団法人日本民間放送連盟ケーブルテレビに対して区域外再送信を認めない(放送局個別の判断で方針は運用されており、一部例外あり)事から[18]、地元の放送局は視聴者を奪い返す絶好の機会、自局が属する系列以外の事業者への番組販売の増加による収益確保、新規系列局の開局にもつながる可能性が期待できる(ただし、難視聴地域の増加や広告出稿への影響などを考慮すれば、区域外再送信やスピルオーバーの可否もケースバイケースであろう。下記CATV局の事例も参照のこと)。しかし、チャンネル数の選択肢の少ない地域(福井県宮崎県など)で他の県の放送を頼りにしている地域への配慮がないことについて、改善の兆しもなく、また経済格差や既存テレビ局の圧力などで新規テレビ局の設置→チャンネル数の増加が困難な例がある。この点は、宮崎県知事である東国原英夫が公約として「宮崎県にテレビ局を作る」が盛り込まれたことがいえる。また、県の単位と実際の地域経済単位や文化の単位も異なる例があり(例:山口県西部は福岡県の影響がある)ことに対し、有力な反論は表されていない面もある。

[編集] ケーブルテレビの区域外送信問題

一方、区域外再送信を売りに加入者数を増やしてきたケーブルテレビ局は「区域外再送信を禁止されるとこれに伴う解約者が増えかねない」と異論を唱える局もあり、実質視聴可能な放送局数の減少や地域間格差の拡大[19]など、区域外視聴者からの反発も予想される。

一部のケーブルテレビ局は、加入者の減少対策として放送対象地域外の放送局の電波が提供地域の全世帯までに届いていればその放送局の区域外再送信を行う局も出始めている[20]。また、大分県で起こったこの問題に対して『区域外送信を認める』との大臣裁定が降りた事により、デジタル波でも再送信を行うケーブルテレビ局が出ている。

なお、ケーブルテレビ局の中には加入世帯数の伸び悩みにより、老朽化した送信設備を地上デジタル対応に改修する費用を捻出できなくなる局もあり、地上アナログ放送終了とともに廃局となる局もある(盛岡市直営のテレビ都南は2011年をもって廃局決定)。

[編集] 既存の建造物などによる受信障害への対応

現在、建造物によって周辺にテレビ受信障害(電波障害)が発生した場合、建造物の設置者が費用を負担して、ケーブルテレビへの加入や共聴設備を設置することで対応することが多い。しかし、そうして設置された共聴設備の大半は地上デジタルを想定しておらず、視聴するには改修工事が必要となる。

ところが、地上デジタル放送の開始が建築前には告知されていなかった場合は、その分の改修費まで補償する法的義務はないと建築者や建物の管理者が主張していることが多い。従って、電波障害によりデジタル放送が受信できない場合、そのテレビの所有者が実費で対処を検討する問題が起きる。なお、地上デジタルを所管する総務省はこのような場合、協議を推奨している[21]

[編集] 新規地上アナログ放送局開局が困難

2011年7月24日には地上デジタルテレビ放送に完全移行し、現在の地上アナログテレビ放送の終了を予定している。そのため、開局を断念した放送局一覧の項でも触れた茨城・福井・徳島・佐賀・宮崎・沖縄の6県に割り当てられた新規アナログテレビ放送用の周波数割り当ても取り消されている他、既存の民放テレビ局(特に平成時代に開局した局)のアナログ放送中継局および送信所の新規開設の凍結など、地上アナログ放送の新規の開局は事実上不可能となった。

ただし、アナログ放送終了後にこれらの地域でも地上デジタルでのテレビ局の新規開局の可能性はあり、2007年5月にテレビ東京が宮城・静岡・広島の各県に新局を設ける構想(テレビ大阪の兵庫県・京都府への放送対象地域拡大も含めて)を発表している。

[編集] その他

2011年~2012年時点でも大量にある、多くが不自由なく機能し続けるであろう現行のテレビ受像機が多く廃棄された場合、3Rリデュースリユースリサイクル)の観点も含め、社会全体の負担コストが大きく、環境にも良いとはいえない。

「地上アナログテレビジョン放送終了 = テレビが見られなくなる」と曲解し、誤解させる詐欺事件も起こっている。

総務省は、UHF帯に移行したのち、空いたVHF帯を移動体向け放送(携帯電話通信そのものではなく映像放送などの新規サービス)など新規サービスに開放するとしている(新規サービスの予定については概説(日本)も参照)[22]。VHF帯は電波の波長が長いために直進性が低く、例えば携帯電話向けの1.5GHz帯を用いたサービスなどで大きな問題となるビル影・山影による不感問題が生じにくいといった利点はあるものの、一方で効率のよい送受信には長いアンテナが必要となる。また、一部のアマチュア無線家などからは空いたVHF帯のアマチュアバンド化を求める声やかつてそうだった146~148MHz帯を再びアマチュアバンド化し割り当てられていた警察・消防無線を移動させる声もあがっているものの、総務省は聞く耳を持たないようである。

遅延問題」は、日本で行われる(今後の)災害情報通知への問題を含んでいる。具体的には、「緊急地震速報」への通知手段として、現行のアナログ放送では、同時の通報が可能であるが、一方「遅延」が発生する地上デジタルテレビジョン放送では、3~5秒程度伝達遅延が発生する。その為、仮に5秒前に速報を発信しても、実際に届くのは事後(被災後)となる。津波情報に対しても緊急性が要求されるので、人命にからむ問題である。これもアナログラジオ放送が継続される大きな理由となっている。ブラジルで採用されたSBTVD-T方式では遅延が改善されているが、日本が既に採用したISDB-T方式ではこれ以上の遅延の改善は不可能に近い。

ポケットラジオでは「FMワイドバンド対応。テレビの1~3チャンネル音声が受信可能」と謳う製品が多いが、これらの機種は88~108MHzでラジオ放送が行なわれている国(アメリカなど)でしか意味を成さなくなる。1~12chテレビサウンド対応のラジオもある(ラジカセの中にはさらにUHFにも対応しているものがある)が、アナログテレビ停波後は全く無意味となる。そのためラジオのカタログには「アナログテレビ放送終了後はテレビの音声を聞くことができません」の注意書きが付記されている。

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

  1. ^ 電波利用料はアマチュア無線局の開設者など放送局自身を含む国以外のあらゆる無線局免許を交付された者から徴収されている。
  2. ^ AV Watch『10月22日からアナログテレビに「2011年放送終了」シール』
  3. ^ AV Watch『「2011年アナログテレビ放送終了」シール貼付け開始』
  4. ^ MYCOMジャーナル「総務省とD-pa、2011年のアナログ放送停波告知を開始」
  5. ^ 「地上デジタル放送対応テレビは本当に必要か?」という主張をしているバイ・デザインでは、「2011年アナログテレビ放送終了」のシール貼付を拒否している。ただ、販売店では同社製品に対しても貼付していることがある。
  6. ^ 2000年~2003年に発売された、BS・110度CSデジタルチューナーは内蔵しているが地上デジタルチューナーは内蔵していない機器を含む。
  7. ^ ただし、携帯用の小型テレビは外部AV入力・外部アンテナ入力を備えないことが多いため、継続使用はできない。
  8. ^ 「アナログTV用安価チューナーを」…総務省審議会
  9. ^ アナログ停波に向け最も必要なものは何?・LG電子ブース
  10. ^ 米国では、2009年2月の停波に向け、デジタル対応テレビへの買い換えが困難な低所得者層に対し、デジタルTV変換コンバータ購入用としてUS$40のクーポンを配布する方針である。日本もこれに見習ったものである。しかしながら、地上デジタル放送への移行に受像機の変更だけでなく新たなアンテナ設備(工事費を含めて数万円)も必要であるが、このことは「デジタルへの移行」自体よりさらに少数の理解しか得られていない。実際、「デジタルへの移行」は何となく理解して、新しい受像機に買い換えるときに「地上デジタル放送対応」製品を購入したものの、アンテナその他までには理解が及ばず、実際には従来のアナログ放送を新しい受像機で受信しているだけなのにもかかわらず、デジタル放送を視聴していると信じ込んでいる例も報告されている。
  11. ^ asahi.com2008年4月18日 「アナログ放送終わります」テレビ画面に常時字幕へ
  12. ^ 形態としては2006年4月から2007年10月末まで表示していたNHKアナログ衛星ハイビジョン(2007年9月末で番組送出終了)と同じ形式となる見込み。
  13. ^ かつてはNHKアナログ衛星ハイビジョンでも2006年4月から2007年10月の完全停波まで同じ形式で表示していた。
  14. ^ 朝日新聞2007年8月3日付朝刊京都欄記事より。
  15. ^ これをスピルオーバーと呼び、山梨県の一部で在京キー局の地上波を受信できるのが代表的な例といえる
  16. ^ しかし、北海道にあっては未だに民放の中継局が未整備で、札幌市以東・以北でアナログ放送すら受信できない地域が多い
  17. ^ 例として、長崎県島原市では、2008年1月時点ではデジタル放送で受信可能な放送局は、有明海を介して熊本県を放送対象とする放送局のみとなっている。
  18. ^ ITmedia「関西で火の手が上がったCATVの「区域外再送信」問題』
  19. ^ 関東広域圏は地上波民放が6局以上視聴できる場合があるのに対し、徳島県佐賀県は地上波民放が1局しか視聴できなくなる地域も出てくる。しかし、徳島県については在阪局全5局が、佐賀県については在福局全5局が地上デジタル放送の区域外再送信に同意しており、一部ケーブルテレビ局では放送対象地域外の民放局の地上デジタル放送での区域外再送信が行われている。
  20. ^ ITmedia「区域外再送信問題、いよいよ決着へ」
  21. ^ 総務省「都市受信障害共同受信施設で受信する場合」
  22. ^ 以前、テレビ放送の周波数帯をすべてUHFとする政策が示されたが、空いたVHF帯の用途が提示されなかったことと、既存VHF局の抵抗により、実施が見送られた。

[編集] 外部リンク


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