電波利用料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
電波利用料(でんぱりようりょう)とは、電波の適正な利用を確保するため、行政機関が無線局の免許人から徴収する料金のことである。競売でライセンスを販売する方式と、金額を政府機関や審議会で決定する方式がある。
目次 |
[編集] 日本の電波利用料
日本では、総務省が審議会に諮問して金額を決定している。原則として全ての無線局が対象となる。携帯電話も例外ではなく、事業者が負担している。
日本のテレビ局は37億円しか電波利用料を払っておらず、国の放送事業歳出費の2百数十億円と比べ約7倍の格差がある。2007年、総務省はテレビ局の電波利用料を引き上げる考えを示し、現在議論されている。一部テレビ局は電波利用料値上げに反対している。
現在、国・地方公共団体・独立行政法人が開設する公共の安全(安全保障、治安維持、防災対応、気象業務等)に関する無線局には電波利用料の減免措置があるが、平成20年に予定されている電波法の改正により、これらも徴収の対象となる。ただし、金額は政府・独立行政法人全体で4億円程度の名目的なものに抑えることとされており、各種手数料等への転嫁等も行われない見込みである。[1]
日本では1993年5月1日から導入された制度で、その収益は総合無線局監理システムや電波監視システムの整備・運用、周波数逼迫対策のための技術試験事務、携帯電話の過疎地での基地局維持・設置などに充てられている。
[編集] 2005年10月以降の電波利用料の算定方式
2005年10月より、移動体通信・無線アクセス向けの周波数帯域の迅速な新規割り当てのため、逼迫周波数・逼迫地域での利用について帯域幅・人口密度・空中線電力などを加味した算定方法となった。その他の区分においても、利用価値に応じた料金となった。
帯域幅の考え方としては、「使用する帯域 / 利用する免許人の数」で算出することが原則となった。マルチチャネルアクセス無線などについては利用実態に応じた換算係数が定められている。
減免措置として、次のようなものが定められた。
周波数 (GHz) | 利用の方針 | 帯域当たりの負担係数 |
---|---|---|
- 3 | 移動体通信への割り当てを増やす | 3 |
3 - 6 | 無線アクセスへの割り当てを増やす | 1 |
6 - | 用途開発を行う |
地域区分 | 地域名 | 帯域当たりの負担係数 |
---|---|---|
第1 | 東京都 | |
第2 | 神奈川県・大阪府 | |
第3 | 過疎地・離島を除くその他の道府県 | |
第4 | 過疎地・離島 |
[編集] 2005年9月以前の電波利用料の額
電波利用料の年額を次に示す。無線局免許状の免許の有効期間を超えない範囲で、あらかじめ支払う前納が可能な場合がある。
- 移動する無線局(パーソナル無線など) - 600円
- 移動しない無線局で、移動する無線局と通信を行うため陸上に開設するもの(8.を除く) - 5,500円
- 人工衛星局(8.を除く) - 24,100円
- 人工衛星局の中継により無線通信を行う局(8.を除く) - 10,500円
- 自動車、船舶その他移動するもの、又は携帯して使用する無線局にあって、人工衛星の中継により無線通信を行う局(8.を除く) - 2,200円
- 放送をする無線局 - 23,800円
- 多重放送をする無線局 - 900円
- 実験局およびアマチュア無線局 - 500円
- その他の無線局 - 16,300円
- 上記区分にかかわらず、包括免許における特定無線局(携帯電話、MCA移動局など) - 540円
テレビジョン放送の無線局は、2003年(平成15年)度から2010年(平成22年)度においては、追加額が指定されている。
大規模局 | 中規模局 | 小規模局 | |
---|---|---|---|
出力 | VHF: 50kW以上 UHF:100kW以上 |
VHF: 0.1W以上50kW未満 UHF:0.2W以上100kW未満 |
VHF: 0.1W未満 UHF:0.2W未満 |
料額 | 310,000,000円 | 83,000円 | 620円 |
[編集] 納付方法
無線局の免許の日になると、総務省から無線局免許状の免許人に対して納入告知書が送付されるので、それを金融機関に持参して納付するか、口座振替やインターネットバンキングなどの手続きによって行う。
指定された納付期限までに納付できない場合は、督促状が送付され、延滞金が加算される。それでも納付されない場合は、国税徴収法の滞納処分の例によって、 強制的に差押等の処分がなされることがある。
[編集] 周波数オークション
周波数オークションとは、周波数帯域の利用免許を競売で電気通信事業者に売却して事業を行わせるものである。有限な公共財である電波を有効利用するための手法である。
アメリカ合衆国の移動体通信事業で1996年に世界ではじめて採用された。その後、ヨーロッパ各国の第三世代携帯電話で採用された。予想以上の高額で落札が行われたため、経営破綻する事業者が続出し事業開始の遅れの原因となったと批判されることもある。また、周波数帯域の需要と供給の実態に即しない「周波数バブル」であるとの批判もある。
[編集] 各国の制度比較
各国の電波利用料およびオークションによる収入、そのうちテレビ局に掛かる金額を以下に示す(総務省調べ)。
- 日本
- 電波利用料収入653.2億円(平成19年度)。そのうち80%を携帯電話会社が負担。
- テレビ局に対する電波利用料はわずか7億円。アナアナ変換対策にかかる暫定追加電波料30億円。合計38億円。
- このことについては、携帯電話会社が多く負担することで間接的に国民の負担する額と比較してテレビ局が負担する額が微々たるものであり、一部で国民の負担が大きすぎるのではないか、各自業者間に不公平感があるのではないか、放送局に対して社会的責任を認識させるには不十分な額であり放送局の暴走を許しているのではないか、といった指摘がなされている。
- 国の放送事業歳出費は2百数十億円に及ぶのに、テレビ局が38億円(H19年度)しか払わず、約7倍の格差があるのは不公平との声が、総務省内からも上がり、現在、テレビ局の電波利用料値上げについて議論されている。
- アメリカ
- 電波利用料収入約240億円、オークション収入年平均4,600億円。
- 放送局の免許も、原則オークションの対象。
- イギリス
- 電波利用料収入約213億円、オークション収入年平均2,250億円
- 放送局に対する電波利用料は減額。代わりに放送事業免許料約538億円を徴収。放送局に対する特別措置を勘案して、総額は840億円となる。
- フランス
- 電波利用料収入約94億円、第三世代携帯電話免許料年平均約113億円+売上げの1%
- 放送局に対する電波利用料は免除。代わりに映画産業等の支援のための目的税等約380億円を徴収。
- 韓国
- 電波利用料収入約200億円、出損金による収入約250億円
- 放送局に対する電波利用料は免除。代わりに広告収入の一部約350億円を徴収し、放送発展基金に充当
[編集] 注
- ^ むしろ、総務省が他の政府機関に対して行っている帯域・免許の制限のほうが問題である。