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醤油 - Wikipedia

醤油

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

本来の表記は「醬油」です。この記事に付けられた題名は記事名の制約から不正確なものとなっています。
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醤油(しょうゆ)は、主に日本料理で使われる、大豆小麦を原料とし、麹菌酵母を利用した、味とうま味の強い汎用の液体発酵調味料である。

目次

[編集] 概説

醤油
醤油

醤油は東アジア各地に存在する「ひしお()」の一種である。主原料は大豆小麦で、麹菌乳酸菌酵母による複雑な発酵過程を経て生成される。この過程で醤油はアルコールバニリン等の香気成分による香り、大豆由来のアミノ酸によるうまみと、小麦由来の糖による甘みを持つ。なお、醤油の赤褐色の色調は、主にメイラード反応によるものである。

食品素材に対して上からかけたり、少量を浸す「つけ・かけ」用途の他、煮物の味付けにしたり、汁やたれの味のベースにしたりと、利用範囲が広い。

「しょうゆ」という語は15世紀ごろから用例が現れる。1470年頃成立の古辞書『文明本節用集』に、「漿醤」に「シヤウユ」と読み仮名が振られているのが文献上の初出である。漢字表記の「醤油」は和製漢語で、上記「漿醤」から約100年後の『多聞院日記』永禄11年(1568年)10月25日の条に初めて登場する。しかし『鹿苑日録』天文5年(1536年)6月27日条には「漿油」と表記されており、「シヤウユ」の漢字表記はこちらの方が古い可能性が高い。また、初期には「醤油」の「油」を漢音読みして「シヤウユウ」と発音されることもあった[1]

ちなみに醤油は正油とも書く。調味料を料理に用いる順番を表す語呂合わせの「さしすせそ」では、醤油は「せうゆ」として「せ」に割り当てられているが、歴史的仮名遣では「しやうゆ」と書くのが正しい。ただし、「せうゆ」という仮名遣も広く行われていたため、許容仮名遣となっていた。醤油の別名、したじは吸い物の下地の意から、むらさきの別名の語源は諸説あり、醤油の色から来た女房詞、または江戸時代に筑波山麓で醤油が多産されたことからとも言われる。

[編集] 歴史

[編集] 醤油の起源

醤油は(ひしお)の一種である。醤は、広義には「食品の塩漬け」のことを指す。紀元前8世紀頃の「周礼」で、「醤」という漢字が初めて使われた。この醤は肉の塩漬けだったようである。

醤はその素材により、

  • 肉の塩辛は「肉醤」(ししびしお)
  • 魚の塩漬けは「魚醤」(うおびしお)
  • 果物や野菜の塩漬けは「草醤」(くさびしお)
  • 穀物の塩漬けは「穀醤」(こくびしお)

と呼んで区別される。なお、ここで言う「うおびしお」は魚醤(ぎょしょう)とは異なる。区別のためにここではひらがな表記とする。

「うおびしお」は、イカや魚の塩漬けで、イカの塩辛などもその一種である。「くさびしお」は、現在で言うところの「漬物」である。日本におけるの起源は、魚や植物を塩漬けにして保存した縄文時代まで遡ることができると言える。

文献上で日本の「醤」の歴史をたどると、701年の「大宝律令」には、醤を扱う「主醤」という官職名が見える。また923年公布の「延喜式」には大豆3石から醤1石5斗が得られることが記されており、この時代、京都には醤を製造・販売する者がいたことが分かっている。

[編集] たまり醤油の誕生

醤油の貯蔵に使われた甕
醤油の貯蔵に使われた甕

醤油はを用いて製造することが特徴である。を用いた発酵食品は5~6世紀頃に中国で発明されたと考えられている。ちなみに500年頃の中国の『斉民要術』には、現代の日本の醤油に似た醤の製造法が記述されている。

現在の醤油の直接の起源は金山寺味噌とされる。

伝承によれば、13世紀頃、南宋鎮江(現中国江蘇省鎮江市)の金山寺で作られていた、刻んだ野菜味噌につけ込む金山寺味噌の製法を、紀州和歌山県)の由良興国寺の開祖法燈円明國師(ほうとうえんめいこくし)が日本に伝え、湯浅周辺で金山寺味噌作りが広まった。この味噌の溜(たまり)を調味料としたものが、現代につながるたまり醤油の原型とされている。ただし、この伝承を直接裏付ける史料は見つかっていない。

なお、「たまり」の文献上の初出は1603年に刊行された『日葡辞書』で、同書には「Tamari. Miso(味噌)から取る、非常においしい液体で、食物の調理に用いられるもの」と記述されている。また、同書で「醤油」の別名とされている「スタテ(簀立)」が、1548年成立の古辞書『運歩色葉集』に「簀立 スタテ 味噌汁立簀取之也」と記されていることも、醤油の成立を考える上でともども注目される。

[編集] 17世紀の海外輸出

日本国外への醤油の輸出は1647年オランダ東インド会社によって開始された。伝承によればルイ14世の宮廷料理でも使われたという。フランスでの日本産醤油に関する記述は、『百科全書』(1765年)に現れる。当時の記録によると腐敗防止のために、醤油を一旦沸騰させて陶器に詰めて歴青で密封したという。用いられたビンは「コンプラ瓶」と呼ばれた陶器の瓶であり、多数が現存する。

[編集] 濃口醤油・淡口醤油の登場

うすくち醤油(左)、こいくち醤油(右)
うすくち醤油(左)、こいくち醤油(右)

江戸時代初期までは、日本の醤油の主流はたまり醤油で、主な産地は上記の湯浅に代表される近畿と讃岐(引田小豆島)に集中していた。しかし、たまり醤油は製造開始から出荷まで3年かかり、生産量が需要に追いつかなかった。

1640年代頃、寛永年間、巨大な人口を抱えて醤油の一大消費地となっていた 江戸近辺において、1年で製造できる「こいくち醤油」が考案された。また1666年には、現在の兵庫県たつの市で円尾孫右兵衛が「うすくち醤油」を考案したと言われている。

[編集] 近代日本の醤油

明治以後、醸造技術及び企業形態の近代化が進む一方で、醤油が生活必需品である事に目をつけた政府が「醤油税」を導入。これは大正期まで続いた。

第二次大戦後、食糧難に伴い主原料の大豆が確保出来ず、日本の醤油製造は危機的状況に陥った。連合国軍最高司令官総司令部が醤油の重要性を理解せず、大豆を酸で加水分解した方が効率良く製造できるとの指導を行ったとも言われる。このため、苦肉の策として大豆の加水分解液を醤油に利用する方法が導入され、戦後しばらくの間はこうした醤油造りが続いた。

しかし、食糧事情の回復とともに本来の醤油造りが復活し、現在ではアミノ分解法等の製法は、ほとんど用いられていない。

現在、減塩食の流行や食事の欧米化に伴い、醤油の国内消費量は減少傾向にある。一方、日本人海外渡航者数の増加や、海外における健康食としての日本食の流行などにより、醤油の輸出量は増加していった。こうした状況を受け、キッコーマンはアメリカ合衆国に工場を建設するなど、醤油はグローバルな調味料として愛好されている。

[編集] 様々な醤油

近年登場した「卵かけ飯専用醤油」
近年登場した「卵かけ飯専用醤油」
台湾の醤油
台湾の醤油
インドネシアのケチャップマニス
インドネシアのケチャップマニス
中国の醤油
中国の醤油

[編集] 日本の醤油

日本の醤油には長い歴史があり、各地で独自の風味や味わいを持つ醤油が開発されてきた。日本農林規格(JAS)では、製造方法、原料、特徴などから、「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5種類に分類されている。そして醤油は「しようゆ」と表記されている。

こいくち(濃口)
関東地方で発達した最も一般的な醤油。醤油の生産高の約9割はこれを占め、通常、単に「醤油」というとこれを指す。様々な料理の味付けに使われる。食堂にある醤油は、まずこれと思ってよい。原料の大豆と小麦の比率は半々程度である。生産地として、千葉県野田市銚子市香川県小豆島がある。
うすくち(淡口)
1666年に龍野の円尾孫右衛門長徳が考案したとされる。濃口よりも原料の麦を浅く炒り、酒を加えるのが特徴。元々は龍野でのみ消費されていたが、18世紀半ばに京都への出荷が本格化。以降、関西地方で多用されるようになった。濃口に比べると色や香りは薄いが、塩分濃度は高い。食材の色や風味を生かしやすいため、汁物、煮物、うどんつゆなどに好んで使われる。仕込み時に、麹の量を少なく、仕込み塩水の比率を高くする。圧搾前に甘酒を加えることもある。淡口は色が最重要視されることから、酸化して黒みが出たものは価値が低い。そのため、こいくちよりも賞味期限が短くなる。
たまり(溜り)
風味、色ともに濃厚なもの。刺身につけたり、照焼きのタレなどに向く。原料は大豆が中心で、小麦は使わないか使っても少量である。東海3県九州地方が主産地である。
さいしこみ(再仕込み)
甘露醤油とも呼ばれる、風味、色ともに濃厚なもの。天明年間に周防国柳井で考案されたと伝えられる。刺身、寿司などに向く。仕込工程にて、塩水のかわりに生醤油や醤油を用いて造る。一般的には淡口醤油の諸味が用いられる。
しろ(白)
色は薄く、醤油というよりナンプラーのような色をしている。味は塩分が強く、少し甘みを含む。煮物に向く。原料は大豆が少なく、小麦が中心である。色の淡さが特に重要なため、淡口よりさらに賞味期限が短くなる。
減塩しょうゆ・うす塩しょうゆ
塩分の割合を通常の醤油より減らしたもの。前者は高血圧心臓病腎臓病などの人を対象に、厚生労働省の「特別用途食品」に指定され、減塩しょうゆの塩分は9%で通常の醤油の半分。うす塩しょうゆの塩分は13%で通常の醤油の8割程度。製造方法は、醤油からイオン交換法で塩分を除去する方法と、濃厚に造った醤油を希釈する方法の2通りがある。
刺身しょうゆ、だししょうゆ、土佐しょうゆ等
醤油を原料に、昆布だしやカツオだし、液糖やステビア等の甘味料を添加し、うまみを強化した液体調味料。公的な基準はないため、同じ「刺身しょうゆ」でもメーカーごとに風合いは異なっている。

[編集] 日本以外の醤油

健康食として日本食が世界各地で好まれるようになってから、醤油を世界各地で手にいれることが出来るようになった。醤油は現在100カ国以上の国に輸出されており、生産は年14万キロリットルにも達する。大手メーカーでは現地生産も行っている。

一方、アジアの他の国々にも醤油に似た調味料が存在し、英語では産地やタイプに拘わらず "Soy sauce" と呼ばれている。

醤油(中国)
中国にも大豆から作る「醤油 jiàngyóu」がある。中国料理における醤油の用途は、香りや味より、むしろ色づけに重点を置いているため、色調は濃い。カラメル等を加え、どろっとしてマイルドな「老抽」、塩が立って色が淡めの「生抽」がある。
カンジャン(韓国)
大韓民国では「カンジャン」(간장、「塩辛い醤」の意)と呼ばれる醤油がある。カンジャンも、日本の醤油と比較して色調が黒めで、主に他の調味料とブレンドし、ヤンニョムとして利用することが多い。また、日本と同様に刺身に「つけ・かけ」用途でも用いる。
ケチャップマニスとケチャップアシン(インドネシア)
インドネシアでも、歴史的に大豆を原料とした液体調味料が使われている。代表的なものとして「ケチャップマニス」(Kecap manis, manis=「甘い」)、「ケチャップアシン」(Kecap asin, asin=「塩辛い」)が用いられている。ケチャップマニスは、物性的には、色調が黒く、甘辛くどろっとした調味料である。ケチャップアシンは、比較的色が薄く、塩が立つさっぱりした調味料である。
シーユー(タイ)
タイでは、一般的に魚醤である「ナンプラー」がよく使われているが、大豆から作られた醤油「シーユー」も、炒め物の味付けなどに使われる。甘味がある「シーユー・ダム」と、辛口の「シーユー・カオ」が一般的。
ショーユ(ハワイ)
かつて日本人が多く移民し、現在も日系人が多数在住しているハワイでも独自の醤油が生産されている。日本の醤油の系統に属する味ではあるが、大豆の風味が薄くさらっとした塩味になっている点が特徴である。

[編集] 醤油の好みの地方差

醤油は長い歴史の中で、地方ごとの食文化に適したものが好まれ、作られてきたため、地方ごとに物性面・官能面の傾向が異なる。このような醤油の地方性は、地方の食文化と密接に関連したものであり、品質と直結して語られるものではない。

醤油を使い分ける地域ではその物性にメリハリが大きいケースが多い。例としては関西の濃口醤油は色が一般的に濃い。一方で煮物や吸い物の味付けには淡口を用い、出汁の風合いを壊さないよう調味する。

北海道・東北
北海道東北では、基本的に関東の食文化に準ずる使い方をするが、東北地方ではより濃厚で塩辛い味付けが好まれる傾向がある。一部地域には、秋田のしょっつるのような、魚醤を利用する文化がある。
東日本
東日本では、基本的に濃口醤油のみを利用する。そのため、濃口醤油の品質に対する要求が厳しくなった結果、香りが高く、淡色かつ赤い色合いで、癖のない軽い風合いが好まれるようになった。最も醤油らしい醤油だけに、全国的に好まれている。代表的なメーカーとして、キッコーマンヤマサ醤油ヒゲタ醤油がある。
中部
中部では、濃口は一般用途、淡口は煮物や吸い物、たまり醤油は刺身、と使い分ける。白醤油の産地(主に碧南周辺)を抱えており、家庭での需要も高い。代表的なメーカーとして、ヤマシン醤油、イチビキサンビシ盛田、七福(白醤油)がある。
西日本
西日本では、濃口を刺身用(たまり醤油も使われる)、淡口を煮物や吸い物用など、使い分けは中部地方とさほど変わらない。よって白醤油を使うこともある。淡口醤油の需要が特に高く、メーカーの競争も激しい。そのせいか関東の料理屋でも「淡口醤油はヒガシマル以外は使わない」などのこだわりを持つ者も多い。代表的なメーカーとして、ヒガシマル醤油マルキン忠勇がある。
九州
九州では、こいくちでも関東のものに比べ、比較的色は黒く、トップノートの弱い(関東の濃口と比較して「鼻にツンと来ない」と評される)、色や香りに濃厚な風合いが好まれる傾向にある。また、混合醸造方式・混合方式(前述)の比率が比較的高いという特徴もある。甘みやうまみを添加した、どろっとした風合いの「さしみ醤油」も使用される。「さしみ醤油」は、特に脂が多い刺身への「のり」が良いという特徴がある。代表的なメーカーとして、フンドーキン醤油ニビシ醤油等がある。
沖縄
沖縄では、古来、うま味を得るためには昆布と魚や豚の出汁を利用することが多く、醤油は代表的な調味料ではなかった[要出典]。しかし戦後の食文化の変化に伴い、醤油も一般的に用いられている。
沖縄で販売されているものはキッコーマンヤマサ醤油等、他県産のものが多い。県内には赤マルソウ等、小規模な生産者がある。シークヮーサーを漬け込んだ商品なども人気が高い[要出典]

[編集] 醤油の製造法

[編集] 基本的な製造法(本醸造・こいくちしょうゆ)

現在、国内で生産されている醤油の大半が本醸造であり、また濃口が大半を占める。 「本醸造」の条件は、大豆、麦、米等の穀物を蒸煮し、麹菌を用いて作成したに、塩水または生揚げを混合して発酵・熟成させたものを指す。麹に、蒸した米や甘酒を添加したり、分解を促進するための、セルラーゼ等の酵素を添加することも許されている。ただしプロテアーゼを除く[2]。 JAS特級の条件には「本醸造であること」という項目も含まれているため、特級醤油であれば常に本醸造醤油である。

醤油製造は、以下の工程を経て行われる。

  • 原料工程
    大豆(または脱脂加工大豆)は浸水し、膨潤したところで圧力をかけて蒸煮する。小麦は焙煎し、割砕して荒い粉末状にする。加熱条件には留意する。これは、生の大豆タンパク質が最終工程に残ると製品(加熱時)の濁りにつながり、小麦の生デンプンは、一般的な醤油酵母は資化できないためである。
  • 製造工程
    1. 製麹(せいきく)工程:蒸煮大豆と割砕小麦を約1:1で混合したものに種麹を加えて混ぜ、高湿度下で3・4日程度培養を行い醤油を作る。麹菌は、Aspergillus oryzaeまたはAspergillus sojaeが用いられる。
    2. 仕込工程(前期):醤油麹に水を加え、麹の塊を崩して混合しながら醸造タンクに移送することを「仕込工程」と呼び、麹と塩水の混合物を諸味と呼ぶ。麹由来の酵素により蛋白質アミノ酸に、デンプン質はに分解される。
    3. 仕込工程(中期):諸味内にて微生物による発酵が起きる。まずは乳酸菌(Tetragenococcus halophilus)により乳酸が作られ、諸味全体が酸性に傾く。次に、酵母(Zygosaccharomyces rouxii)により、アルコール発酵が起きる。醤油の香りの成分の多くはこの工程で発生する。
    4. 仕込工程(後期):「後熟工程」とも呼ばれ、味・香を熟成させる工程。活発な発酵は行われず、アミノグリコシド反応等の、比較的静かな反応が続く。この時期にはCandida属酵母による香気成分の生成が行われる。淡口醤油の場合、仕込工程の末期に甘酒や米麹を添加することがある。
    5. 圧搾工程:ナイロン等丈夫な素材で作られた「圧搾布」に諸味を包んで加重し、固体と液体を分離する。液体が「生醤油」、固体が「醤油粕」である。この際、主に大豆由来の油脂が分離して液面に浮かぶ。これを「醤油油(しょうゆあぶら)」と呼ぶ。醤油油は微生物による分解や酸化のため、食用油脂としての利用はできない。また、醤油粕も利用価値が低いことから、メーカーは処分に苦慮することが多い。
    6. 火入工程:圧搾工程で得られた生醤油には、醸造工程で含まれた各種酵素などのタンパク質が多く含まれている。これを加熱すると、タンパク質は熱変性して不溶化し、沈殿する。また、製品に焦げた臭い(焦げ香)をつけ、微生物を殺す。一般的にはプレートヒーター等を用い、熱がかかりすぎないように留意する。熱履歴が高い場合は製品の色が黒色を呈し、焦げ香が強くなりすぎることになる。
    7. 清澄・濾過工程:沈殿除去、珪藻土濾過や精密濾過などを用い、醤油に含まれる変性タンパク質など不溶性固形分を除去する。製品醤油の濁りは品質的には製品事故となる。ここで生醤油は、「火入醤油」と、沈殿分・濾過除去された分の「オリ」に分けられる。
    8. 詰工程:火入醤油に適切な成分調整を加え、容器に詰めて製品とする。
原料としての大豆
醤油醸造では「脱脂加工大豆」が多く用いられる。脱脂加工大豆は、醸造用加工大豆と呼ばれることもあるが、一般的には大豆を原料に油脂製造を行った際の副生産物である。製品の一括表示内に原材料「大豆」と表示されているものは、未加工の大豆である丸大豆を使用していることを表し、脱脂加工大豆が使用されている場合は「脱脂加工大豆」と表示される。原料に丸大豆を使用する場合、仕込工程の説明のように、丸大豆には未処理の油脂が大量に含まれているため、これらの油分は仕込工程中に分離して、諸味の上に浮かんで油脂の層を作る。
丸大豆醤油を支持する製造者は、
  • 「油脂の層により諸味の酸化が防げる」
  • 「油脂から分解されたグリセリンが風合いを変える」
等の主張がある。一方、分析および官能試験では有意な差がないという意見もあり「丸大豆だから美味しい」とは一概に言えず、議論が発生する。
酵素添加による速醸法
仕込工程初期に酵素剤を添加することで醸造期間を短縮する技術がある[3]。しかし、この場合は醤油業中央公正取引協議会の業界基準により、製品表示に「天然」「生」等の用語を利用することができない。

[編集] 混合醸造方式・混合方式

混合醸造方式、混合方式ともに、塩酸で原料処理を行い、水酸化ナトリウムで中和して得られたアミノ酸液を利用している。平成16年のJAS(日本農林規格)の改正に伴い、旧名「新式醸造」のうち混合先が諸味のものが「混合醸造方式」となり、混合先が諸味ではなく生揚げ醤油なものと旧名「アミノ酸添加法」が「混合方式」と変更された。現在の醤油生産は、本醸造がその多くを占めるが、アミノ酸液には独特の香りと味があり、特にそれが好まれる地域において混合醸造・混合方式も残っている。

混合醸造方式
原料に塩酸を添加すると加水分解してアミノ酸液が得られる。これを水酸化ナトリウムで中和し、諸味とともに仕込み熟成を経る方法を「混合醸造」と呼ぶ。
混合方式
生揚げ醤油(諸味を絞った液)に、アミノ酸液を混合して製品とする手法。熟成の有無は問わない。

[編集] 添加物

保存料
醤油では一般的に、防黴効果の高い安息香酸ナトリウムまたはパラオキシ安息香酸ナトリウムを使用する。高付加価値商品では安息香酸を添加しない製品もある。
アルコール
保存料として安息香酸を利用しない場合、アルコールの防黴作用を利用することがある。アルコールを添加して防黴作用を持たせる場合は、安息香酸を添加した場合と比較し、品質保持期間は短くなる傾向にある。
甘味料
一般的に、甘草、ステビア、果糖ブドウ糖液糖、サッカリン等が使用される。塩の辛さをやわらげ、マイルドな味わいとなる。
カラメル
黒色を呈色させる場合に添加する。また、独特の甘さと香りも追加される。
調味料(アミノ酸等)
グルタミン酸ナトリウム、核酸系調味料を添加して、うまみを強化する場合がある。

[編集] 使用器具

かい棒
醤油や酒などを作る際、樽内をかき混ぜるために使用する棒のことを指す。

[編集] 醤油の保存

醤油は塩分とアルコールを多く含んでいるので常温でも腐敗しにくい。ただし開封後は、極力酸素を避けて密封し、冷蔵保存することが望ましい。酸素存在下で放置すると、揮発性成分が揮発して香りが減少するほか、特に防黴剤として安息香酸が含まれない場合は、醤油液面に酵母(産膜酵母)が白く膜状に繁殖することがある。

このような産膜酵母の実態は、醤油の主発酵酵母と同種のZygosaccharomyces rouxiiであり、いわゆる「醤油に生えるカビ」である。害は無いが香りは悪くなり、糖を消費するため味も劣化する。さらに、酸化によりメイラード反応が進み、色は黒くなる。

なお、醸造期間にも劣化は平行して進行するため、単純に「長期醸造」が高品質というわけではない。

[編集] 醤油メーカー

日本国内の醤油メーカーは、近年は急速に減少し、20年前には2000社以上を数えたと言われたが現在は約1500社を下回っている[4]。 これは、醤油価格が低迷している上、大手メーカーの地方進出に加え、副製産物の廃棄コストや設備の維持費高騰のため、地方の零細・小規模メーカーが廃業を続けているためである。

商品としての醤油はコモディティ化が進んでおり、他の食品と比較して利益は一般的に低い。その一方で、年々、衛生面での要求は厳しくなり、廃棄物に対する規制は強くなっている。特に、エネルギーコストが必要な製麹工程、人的・場所的コストが必要で、醤油油や醤油粕などの廃棄コストが必要な仕込工程を省略し、全工程を独力で行わない製造者が増加している。製麹工程までを外部に依存するケース、仕込工程までを行わずに大手生産者より生醤油を購入し、火入・詰工程を行うケース、OEMとして大手製造者に発注するケースがある。また、協業組合として複数の生産者が、製麹・仕込工程までを行う工場を作るケースもある。地方の中小メーカーの存在は、地域の食文化に密接に関係するもののため、文化保全の意味も含めて、「残って欲しい」と惜しまれている。

都道府県別では、キッコーマン(野田市)、ヤマサ、ヒゲタ(いずれも銚子市)等の大手が存在する千葉県が34%、ヒガシマル(たつの市)が存在する兵庫県が16%であり、この2県が圧倒的である。

醤油メーカーの名称はキッコーマンに代表される「キッコー○○」の商標名が各地に多い。

参考 : 日本の醤油メーカー

[編集] 醤油の評価法

品質は「色」「香」「味」で評価される。高品質の醤油を製造するためには高い醸造技術・醸造管理・衛生管理・保存管理が必要となる。

醤油の色
醤油の「色」は熟成の期間や温度経過によって異なり、無色に近い淡褐色から、黒に近い暗赤褐色まで存在する。醤油はアミノ酸と糖に富むため、酸化や加熱、成分の揮発のほか、メイラード反応が進むことで産生されるメラノイジンにより色は濃くなる傾向にある。
一般的には淡色で赤い色調のものが良いとされ、製造/管理的に高度な技術が必要だが、地方性により、特に濃口醤油においてはむしろ色が濃いものが好まれる場合もある。
醤油の香り
醤油の「香」には、鼻で匂いをかぐときに感じる「トップノート」と、口に含んでから感じる「フレーバー」がある。香気成分の多くはアルコールをはじめとする酵母の発酵生産物であり、メイラード反応から、ストレッカー分解を経て産出される有機化合物、加熱工程にて産生される焦げ香も、醤油を特徴付ける重要な要素である。
醤油は長期保存によって酸化が進み、「劣化臭」といわれる臭いがつくこともある。また、製造工程における衛生管理の問題により、バクテリアによる腐敗臭や、味噌のような臭いがつくこともある。
醤油の味
醤油は、塩辛さ、うまみ、甘みを強く持つ。塩辛さは原料の塩から、うまみは主にアミノ酸、甘みは糖による。アミノ酸は、麹により産生されたプロテアーゼアミラーゼ等の酵素によって大豆由来のタンパク質が分解されたもの、糖は同じく小麦由来のデンプンが分解されたものである。

[編集] 醤油の官能評価

「きき味」により、主に色・香・味が評価される。「色は淡色で赤みがある色調で、かつ香り高く、味が良い」醤油が良質とされる。

花のような甘い香りや爽やかに鼻に抜ける香が一般的に良しとされるが、製品によっては生乾きの雑巾のような臭い、汗のような臭いなど「悪い香」を呈するものもある。また、「麹の香」「味噌の香」「アルコールの臭」などの香りが加わっているものもある。

「よい香」とされる香も強すぎると問題となるため、それらのバランスにおいて製造者ごとに特徴が出る。

[編集] JASによる格付け

JAS(日本農林規格)では、醤油の品質基準に、含有する窒素分、無塩可溶性固形分(エキス分)、アルコールの量に従って格付けされている。 その中でもっとも重要とされるのが、「うま味」の指標となる全窒素分である。

  • 「標準」(濃口:1.2%以上、淡口:0.95%)
  • 「上級」(濃口:1.35%以上、淡口:1.05%)
  • 「特級」(濃口:1.5%以上、淡口:1.15%)

また、JASの他に日本醤油協会が定めている基準がある。

  • 「特選」:特級の10%増し(濃口:1.65%、淡口:1.265%)
  • 「超特選」:特級の20%増し(濃口:1.8%、淡口:1.38%)

また、醤油業中央公正取引協議会が定めるものとして、以下の表示を利用することができる。

  • 上級醤油は「上選」、「吟醸」、「優選」、「優良」
  • 特級醤油は「特吟」や「特製」
  • 日本醤油協会で言うところの「超特選」(特級の1.2倍)の場合、「濃厚」

[編集] 醤油と微生物

[編集] 麹菌

カビの中で、を作る際に用いられる菌が麹菌である。麹菌Aspergillus oryzaeおよび、醤油麹菌Aspergillus sojaeは、ともに醤油醸造に用いられているが、分類学的にはそれぞれAspergillus flavusAspergillus parasiticusと分類される。 Aspergillus flavus, Aspergillus parasiticusともに猛毒アフラトキシンを生産する、有毒なカビとして知られるが、産業的に用いられているAspergillus oryzaeおよびAspergillus sojaeは、醸造工程中でアフラトキシンを生産することはない。 下の研究の結果、麹菌のアフラトキシン生合成経路は機能していないことが明らかとなった。 麹菌のアフラトキシン生合成能は、天然の麹菌から良質の麹菌株を得た時、もとからアフラトキシン生合成能を持たない株を選抜したか、数百年にわたる選抜および育種の結果、アフラトキシン生産能が欠けてしまったものと考えられる。

[編集] 酵母

仕込中期にアルコール発酵を行う酵母を「主発酵酵母」と呼ぶ。過去、主発酵酵母は耐塩性のSaccharomyces属と分類されていたが、現在はZygosaccharomyces rouxiiと分類されている。古くなった醤油に生える白いカビも同種のもの。また、仕込後期に穏やかに香気成分を生産する酵母を「後熟酵母」と呼ぶ。Candida versatilis等、主にCandida属酵母である。

[編集] 乳酸菌

過去、Pediococcus属の乳酸菌と考えられており、Pediococcus halophilusPediococcus sojaeと分類されていたが、DNA相同性による分類の結果、アンチョビやキムチから分離された耐塩性乳酸菌と同種であることが判明し、現在ではTetragenococcus halophilusと分類されている。

[編集] 醤油に関する俗説

醤油は人の髪の毛から作られている
日本では、大正時代から昭和初期にかけ、物資不足解消のため、様々な原料から食品を製造する試みが行われていた。醤油原料としても様々な原料が検討され、それぞれ長所・短所がある独特の製品が作られた。これを代用醤油と呼ぶ。原料としては、魚介類海藻カイコの蛹、鯨ひげ[5]などが用いられた。製造法の代表的なものとして、タンパク質原料を加水分解したものを中和したアミノ酸液を得るものである。また、廃毛髪[6]や、牛の血液を用いたという俗説もある。
現在の日本でも、都市伝説として、醤油の原料に人毛由来のアミノ酸が使われているという噂があるが、現在ではキャリーオーバーを除きJAS法や品質表示基準によって植物性たん白質の使用しか認められておらず、髪の毛のような動物性たん白質の使用は禁止されている。しかも、髪の毛を収集するコストと、脱脂加工大豆の購入価格を比較すれば、髪の毛からアミノ酸を生産することは非常に高コストで非効率である。また、現在の日本において、法的には髪の毛由来のアミノ酸を原料とした場合、それを「しょうゆ」と呼ぶことはできない。
人件費の安い中国では政府の禁止令にもかかわらず密造が後を絶たない[7]
醤油を飲めば兵隊に取られない
かつて徴兵制度が実施されていた時代に、検査の前日に大量の醤油を飲むことによって体調を崩し不合格となるといったことが、兵役を逃れる目的で実際に行われていたとされる。醤油は高濃度の塩分を含む液体のため、一時に大量を摂取すれば腎機能や肝機能の検査値に異常をきたすことは確実だが、こうした無茶な行為によって不可逆的な疾病を患ったり、急性症状によって死に至る例もあったと伝えられている。
醤油を使うとガンになる
昭和40年代に広まっていた俗説。はっきりとした根拠は不明だが、麹菌がアフラトキシンを生産する、という噂が一人歩きしたものに、「大量に醤油を摂取した場合には塩分の過剰摂取による体調不良が起きる」ことが付与されて作られた俗説と考えられる。
大手メーカーは2週間で醤油を作っている
本醸造醤油の場合は、混合醸造方式・混合方式を利用することができないため、理論的に2週間では不可能と言ってよい。仕込み開始から2週間、比較的高温で推移させた場合は、麹菌の酵素により諸味は一応液化するが、微生物による発酵過程を経ないため、香りは立たず、色は黒く、歩留まりは悪くなると思われる。また、先に挙げた酵素添加による速醸法を用いることで、1ヶ月程度に醸造期間を短縮することができる。しかし醤油醸造は酵素反応で原料が分解されれば終了という単純なものではなく、広く使われてはいない。

[編集] 博物館施設

[編集] 脚注

  1. ^ 山科言継『言継卿記』永禄二年(1559年)条や1638年成立の『毛吹草』等。
  2. ^ [1]
  3. ^ [2]
  4. ^ キッコーマン・Factbook[3]
  5. ^ 大村秀雄 『鯨を追って』岩波書店(岩波新書)、1969年、21頁。
  6. ^ [4]
  7. ^ 中国に残る 髪の毛で造る「醤油」日経NBオンライン2008年3月27日閲覧

[編集] 参考文献・リンク

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