アミラーゼ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アミラーゼ (Amylase) とは、膵液や唾液に含まれる消化酵素。グリコシド結合を加水分解することでデンプン中のアミロースやアミロペクチンを、グルコース、マルトースおよびオリゴ糖に変換する。
α-アミラーゼ(EC3.2.1.1)、β-アミラーゼ(EC3.2.1.2)、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)がある。
α-アミラーゼは別名を1,4-α-D-グルカングルカノヒドラーゼ、グリコゲナーゼといい、デンプンやグリコーゲンの1,4-α-結合を不規則に切断し、多糖ないしオリゴ糖を生み出す酵素である。
β-アミラーゼは別名を1,4-α-D-グルカングルカノマルトヒドラーゼ、グリコゲナーゼあるいはサッカロゲンアミラーゼといい、デンプンやグリコーゲンを麦芽糖に分解する。
グルコアミラーゼは正式名称がグルカン1,4-α-グルコシダーゼといい、1,4-α-D-グルカングルコヒドラーゼ、エキソ1,4-α-グルコシダーゼ、γ-アミラーゼ、リソソーマルα-グルコシダーゼあるいはアミログルコシダーゼを別名とする。糖鎖の非還元末端の1,4-α結合を分解してブドウ糖を産生する。
アミラーゼは、植物では果実の成熟や穀物の発芽の間に合成される。
微生物の分泌するアミラーゼは工業的に大量に生産され、製糖、食品加工、胃腸薬、衣料製造、洗剤等に利用されている。
尿中や血中のアミラーゼは、膵疾患や唾液腺疾患の診断に使われる。
[編集] ヒトアミラーゼ
ヒトのアミラーゼには以下のものがある。
酵素名 | 遺伝子 | 遺伝子座標 | 機能 |
アルファ1A アミラーゼ(唾液腺) | AMY1A,EC 3.2.1.1 | 1 p21 | 澱粉の分解 |
アルファ1B アミラーゼ(唾液腺) | AMY1B,EC 3.2.1.1 | 1 p21 | 澱粉の分解 |
アルファ1C アミラーゼ(唾液腺) | AMY1C,EC 3.2.1.1 | 1 p21 | 澱粉の分解 |
アルファ2A アミラーゼ(膵臓) | AMY2A,EC 3.2.1.1 | 1 p21 | 澱粉の分解 |
アルファ2A アミラーゼ(膵臓) | AMY2B,EC 3.2.1.1 | 1 p21 | 澱粉の分解 |
[編集] マクロアミラーゼ血症
医療においてアミラーゼ高値を呈していることは、必ずしも膵疾患(特に急性・慢性膵炎)、唾液腺疾患を意味しない。疾患を合併しない代表的なものとしてマクロアミラーゼ血症がある。これはアミラーゼと免疫グロブリンが複合体を形成し、血清アミラーゼを測定すると高値を呈するもので、臓器障害を意味しない。