甘酒
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甘酒(あまざけ、醴)は日本の伝統的な甘味飲料の一種で、見た目はどぶろく(濁酒)に類似する白濁液である。
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[編集] 概要
古くは「一夜酒(ひとよざけ)」または「醴酒(こさけ、こざけ(「濃い酒」の意))」と呼ばれた。
かつては夏に、冷やしたものまたは熱したものを暑気払いに飲む習慣があり、俳句では現在でも夏の季語となっているが、現在は冬に温めて飲むのが一般的である。体が温まるだけでなく、夏に飲む場合は夏バテを防ぐ意味合いもあり、健康的な飲料として好まれている。
正月には、初詣客に有料または無料で甘酒を振る舞ったり、自宅に持ち帰る甘酒を初詣客に販売する寺社が多い。また、米農家が収穫を感謝するため、甘酒を造ったり、祭りに甘酒を供える風習が残っている土地もある。
甘酒を供する店としては、箱根の『甘酒茶屋』や神田明神の『天野屋』などが有名。
ビタミンB1 、ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸、すべての必須アミノ酸、そして大量のブドウ糖が含まれているが、これらの栄養は病院の点滴とほぼ同じ内容であり、ブドウ糖以外は製法(後述)による差異も少ない。
「酒」の名は付くが、実際にはアルコール飲料ではなく、未成年者でも飲用が許されている。しかし、原料に含有され、あるいは製造過程で生成されることでアルコールが含まれることがあり、酒に弱い者(特に幼児)が大量に飲むと酔う可能性がある。
酒粕が甘酒の原料に使用されることがあるが、酒粕には、日本食品標準成分表によるとアルコール分が約8%程度残存している。 このことから、アルコール飲料としての清酒と同様の扱いをして、本来アルコール飲料でないにもかかわらず、ドライバーが出席する場や未成年の集まる集会での振る舞いが見送られることが多い。
マクロビオティックでは砂糖の代わりに甘味料として使われることが多く、海外での需要も高まっている。
[編集] 製法
製法は次のどちらかである。
- 本格的製法(米こうじと米を原料とする)
- 日本酒と同様に米こうじを用い、米の粥、または水分を多めに柔らかく炊いた飯を50 - 60℃程度に保温し、1晩(10 - 12時間)程度かけて発酵させ、デンプンを糖化することで甘味を得る。古く「一夜酒(ひとよざけ)」と呼ばれたのはこの製法から来たもので、冬でないと酒を造れない酒蔵が夏の副業に手掛けていたともいう。
- 発酵の過程で乳酸菌が少量混入し、コウジカビの酵素による発酵のほか、乳酸発酵も進行する。温度が高すぎるとコウジカビの酵素が充分に作用せずに糖化が進まず甘味が乏しくなり、逆に温度が低すぎると乳酸発酵が進行しすぎ、雑菌も繁殖するので、酸味が強く風味が損なわれる。本来は砂糖を加えないが、市販のものでは砂糖など糖類を加えたものも少なくない。
- 砂糖を加えないものは自然な甘さがあり、乳酸のほのかな酸味もある場合が多く、2.の「簡略製法」よりさっぱりした味わいで珍重されるが、製造には手間がかかる。一部の茶店や中小メーカーが現在でもこの方法を採っている。
- 簡略製法(酒粕を原料とする)
[編集] 市販の甘酒
主にビニール袋詰めで販売されているが、缶入りで売られている甘酒もあり、冬場に自動販売機で多く見かけられる。これらの製法は、袋詰めについては上記の1.を、缶入りについては2.をとっている場合が多く、缶入りの中身はストレートだが、袋詰めは中身を濃縮している物もある。なお森永製菓の缶入り甘酒については製法1.と2.を複合して製作しているという。
製法2.については製法1.のように発酵のために必要なスペースが不要となり、そのため製造設備もはるかに簡素ですむ(つまり設備投資が安い)上に大量生産に向いているほか、酒粕はあくまで酒造の副産物であるため材料コストがはるかに安上がりという面もあると考えられる。
また、現代人の味覚が砂糖に慣らされており、従来の製法1.の方式では酸味も含むことから(現代人全般にとっては)ややさっぱりしすぎているため、濃厚な甘みをつけることが容易である製法2.を好む向きがあるとも考えられる。
[編集] 飲み方
前述のように、今では冬季に飲まれる。体が温まるように(風邪の予防としても)、甘酒を熱くしショウガ汁を入れて飲まれることが多い。缶入りにもショウガ入りの製品がある。