豪快な号外
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「豪快な号外」(ごうかいなごうがい)とは、軌保博光(てんつくマン)が中心となって[1]TEAM GOGO! 2007[2]が夏至の日にあわせて2007年6月から配布した、地球温暖化防止を呼びかけた市民意見広告である。別名「30秒で世界を変えちゃう新聞」。
突発的な事件を早く報道するため臨時に発行した一般的呼称での「号外」ではない。
公式サイトによると配布部数は3000万部という空前の規模の発行部数である。当初は日本全体の世帯数に匹敵する4900万部との計画もあった。TEAM GOGO公式ウェブサイトにおいて、PDFファイルが無料配布されている[3]。
共同主催者として中村隆市が、呼びかけ人として坂本龍一、田中優、辻信一、高木善之、池松耕次、中村文昭、南ぬ風人まーちゃん(まーちゃんうーぽー)、長島龍人、田中章義、きくちゆみ、山田成雲、山田玲司、高樹沙耶らが名を連ねている。
なお、TEAM GOGOは認可されたNPO(特定非営利活動)法人ではなく、任意団体である。軌保博光を含め、主な呼びかけ人は各々のNGO(非政府組織)やNPO団体の主催者で同誌に記事を寄稿している。
冬至の日にあわせ一部地域において2007年12月から号外が配布されたが、冬至の日をもってTEAM GOGO! 2007[4]は解散した。
目次 |
[編集] 内容
表紙を含め全8ページ。 冒頭にTEAM GOGOが予測した10年後の環境汚染された未来において、地球がいかに危機的状況にあるかを、4ページにわたって山田玲司の漫画で説明されている。
また、漫画以外の部分では以下のような記述が存在している。
- NPOバンク、市民バンクの奨励
- 国産木材使用の奨励
- 最大の環境破壊は戦争&軍隊であるという主張
- カーボンニュートラル概念の紹介
- マニフェストを読んだ上での選挙権行使の推奨
- フードマイレージ概念の紹介
- 省エネ製品使用の推奨
- 「マイ水筒」や紙パック入り飲料、リターナブル瓶入り飲料の推奨
- フェアトレード製品の推奨
- 「マイ箸」利用の推奨
- 銀行や郵貯に預けられた資金がアメリカ国債を買う為に使われ、結果的にアメリカの軍事行動を支えているとの主張。
- バナナを使用した紙の紹介
- 地球温暖化を止める為のチェックリスト
中村隆市による「言い出しっぺのひとりごと」というコラムでは、六ヶ所村核燃料再処理施設への疑問が示されている。
[編集] 募金と収支
個人募金者以外に100万円を責任持って集める100万番長と下限額を定めない裏番長が主な募金者であり、3000万部発行・発送という計画での募金総額は1億2000万円を予定していた。 2007年9月時点では支出が約1億3600万円に膨らみ、2600万円を超える借入金が発生した[5]。借入金は主催者である軌保博光と中村隆市が返済にあたるとされている。
2007年11月TEAM GOGO公式ホームページにおいて、借金返済のための募金を行う[6]。
[編集] 配布
「みんなでちょっと動けば変わる」を掛け声に配布参加者を大募集した。各地区にリーダーを配置し、虹の天使が動けば変わるメンバーを統括する指示系統である。独自に配布したメンバーも僅かだが存在する。配布方法は主に街頭での配布とポスティング、店舗・施設・企業等への設置などであるが、中には小学校や中学校などの教育機関に依頼し学生へ配布されたものも含まれている。
[編集] あえて紙を使う
紙の調達においては、同誌の話を知った印刷会社の人が他の印刷会社にも呼びかけ、余った紙を提供してくれたとされる[7]ただし、実際には大手二社の印刷であり、このエピソードの信憑性を疑問視する声もある。軌保博光と支援者は、同誌発行による環境負荷を認めつつも、むしろ告知効果による地球温暖化防止の啓蒙による効果が優ると考え、また、人の手で配ることによって地域に人と人とのつながりが生まれることを期待した。この件に関して軌保博光は、自分の気持ちを公式サイトのメッセージに掲載している[8]。
2007年9月TEAM GOGO公式ウェブサイトにおいて、「カーボンニュートラル大作戦」[9]で植林活動の計画を発表している。
[編集] 内容に関する批判
- 誘導部の漫画においてインデペンデント紙の報道の内容や数値のみ採用し、中立的立場の科学者2,500~3,500人で構成されている国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)やスターン報告書[10]の内容や数値が全く反映されていない。これについて制作側は、自分たちは「IPCC報告書」に批判的な立場であることを明らかにしている[11]
- 「5.4℃では海面上昇は5メートル」という数字は、IPCCの示す数字よりかなり大きい。しかし、「海面上昇は5メートル」と提示する根拠は明らかにされていない。
なお、IPCC第3次評価報告書では地球の平均地上気温は1990年から2100年までの間に1.4~5.8℃上昇すると予測され、海面水位が0.09~0.88メートル上昇すると予測されている。2007年のIPCC第4次評価報告書では、21世紀末(2090年から2099年)の平均海面水位上昇は、環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する社会においては、0.18~0.38メートルである一方、化石エネルギー(化石燃料)源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会では0.26~0.59メートルと予測している</ref>参考:IPCC第三次評価報告書の要約(気象庁訳)、IPCC第四次評価報告書第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について。</ref>。 - 「(地球温暖化が)このまま続くと地球全体から氷がなくなって海面は70メートル上昇」という主張は、IPCCの示す数値に較べるとかなり大きい。IPCCでは数千年間温暖化が続いた場合は完全にグリーンランドの氷床が消滅し海面水位が約7メートル上昇すると予測している[12]。IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書では「最後の間氷期(約125,000年前)における世界平均海面水位は、20世紀に比べて4~6メートル高かった可能性が高い。これは主として、極域の氷の後退によるものである。氷床コアのデータによれば、その期間における極域の平均気温は、地球の公転軌道の違いにより、現在より3~5℃高かったことが示されている。グリーンランドの氷床北極の他の雪氷域の、観測された海面水位上昇への寄与は多くとも4メートル程度である可能性が高い。南極からの寄与もあった可能性がある。」としている。
- 「10年後東京の気温は1.5℃上昇」という数値は、IPCCの示す数値に較べるとかなり大きい。IPCC第4次評価報告書では、「2030年までは、社会シナリオによらず10年当たり0.2℃の昇温を予測(新見解)」としている。
- 「5.4℃では海面上昇は5メートル」という数字は、IPCCの示す数字よりかなり大きい。しかし、「海面上昇は5メートル」と提示する根拠は明らかにされていない。
- メタンガスが大気に放出されることにより地球温暖化に繋がるとして、シベリア(ロシア)産のベニヤ(合板)を使わずに国産のものを使うよう呼びかけているが、ロシアからの輸入量が少なく、またFCS認証(森林認証制度)を取得しているロシア極東地域の材木業者は2007年3月時点で1社しか存在しない。日本政府の調達品に対応するグリーン購入法が要求事項を明確化されていないため、ロシアの業者が対策を取れない状況であり、前述のことも含め材木や合板がロシア産であるかどうかを判別する手掛かりはほとんどない。また、材木がシベリア産でも日本国内で加工された場合、国産扱いとなる。よって、号外の呼びかけに応えようにもなかなか実行に移すことができない。
- 六ヶ所村核燃料再処理施設の稼働によって東北や北海道産の食料が放射性物質の汚染を受けるとの指摘があるが、これについては各種の反論が存在している。詳しくは六ヶ所村核燃料再処理施設の項を参照のこと。
[編集] その他の批判
同誌への批判は次のようなものがある。これらの批判に対しては、TEAM GOGOが自サイト上のQ&Aで一部回答している[13]。
[編集] 告知方法に対する批判
- 国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」の「エコ貯金プロジェクト」のウェブサイトアドレスを無許可で同誌に掲載したことについて、TEAM GOGO公式ホームページで訂正告知[14]をした以外に、配布先に直接通知を行わなかった。
[編集] 対応に対する批判
[編集] 軌保博光の言動に対する批判
[編集] ギネスブック登録失敗
同誌は、ギネスブックに「世界一発行部数の多いフリーペーパー」として登録をすることをうたい文句としていたが、結局配布部数を証明することが出来ず、ギネスブックへの登録は失敗に終わった。登録失敗の経緯については、TEAM GOGO公式ホームページにて[17]説明されている。
募金したという方にはギネスブックにおける申請手順と矛盾点を指摘している[18]。
なお、地域密着型フリーペーパーを発行している日本のぱどは、総発行部数約1100万部でギネス認定されている。
[編集] 脚注
- ^ てんつくマンの日記No.313
- ^ TEAM GOGO! 2007公式ホームページ
- ^ [http://teamgogo.s271.xrea.com/gogo/GoukaiNaGougai_A_A4.pdf 「30秒で世界を変えちゃうweb新聞」
- ^ てんつくマンの日記No.410
- ^ TEAM GOGO公式ホームページ 収支報告
- ^ TEAM GOGO公式ホームページ 「支えれば変わる」チーム募集!
- ^ てんつくマンの日記No.318
- ^ てんつくマンの日記No.314
- ^ TEAM GOGO公式ホームページ カーボンニュートラル大作戦
- ^ スターン報告書公式ホームページ
- ^ TEAM GOGO公式ホームページ 号外に載っている地球温暖化の漫画で使った数字はどこのものを使ったのでしょうか
- ^ IPCC第四次評価報告書第1作業部会報告書 政策決定者向け要約
- ^ TEAM GOGO公式ホームページ Q&A
- ^ 『30秒で世界を変えちゃう新聞 豪快な号外』正誤表
- ^ 「豪快な号外」の不都合な真実
- ^ TEAM GOGO公式ホームページ ウエブ印刷受注証明書
- ^ TEAM GOGO公式ホームページ ギネスへの挑戦はどうなっていますか
- ^ TEAM GOGO事務局さんのギネス申請への道のりをちょっとだけ?検証するHP
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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