諸君!
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諸君!(しょくん)は、株式会社文藝春秋が発行する月刊オピニオン雑誌。毎月1日発売、定価680円。現在の編集長は内田博人。
発行部数は約82,058部(2006年現在)。オピニオン誌としては「現代」や「正論」に次ぐ3位。
[編集] 概要
1969年創刊。株式会社文藝春秋の池島信平は、論壇が左翼一辺倒であると認識していた。そこで、看板雑誌の『文藝春秋』では扱いにくい、「日本人として恥ずかしくない」保守的記事を扱える雑誌を作ろうとした。池島は同様の危機感を持つ、福田恆存、三島由紀夫などを中心に結成された保守系団体「日本文化会議」の依頼を引き受け、その機関誌として創刊する予定であった。しかし社内の反発も強く、現状の形に落ち着いたという。“文春の社説”とも言われる。編集部員は5名と小所帯で制作している。
時の社長・田中健五の意向を強く反映した内容を踏襲している。『正論』、『Voice』、『WiLL』と共に、保守・右派系の代表的な論壇誌であり、リベラル・左派路線の岩波書店の『世界』、朝日新聞社の『論座』などと対をなしている。そのため戦前日本(大日本帝国)を全否定する自虐史観路線とは一線を隔しており、中国や韓国.北朝鮮など周辺諸国(特定アジア)を非難する論文を掲載する傾向にある。北朝鮮の拉致問題は、左派系マスコミが沈黙する中で、当初から大きく取り上げていた。また、初期にはサイエンス関係の企画も扱っていた。
とりわけ朝日新聞批判は創刊以来のライフワーク的存在であり、しばしば特集を組んで批判論陣をはる(もっとも最近では朝日側から批判されることもしばしばで、論座では『「諸君!」それでも「正論」か!』など、同じ系統の雑誌とあわせて揶揄されている。)。古くは本多勝一の『中国の旅』批判、21世紀に入ってからは女性国際戦犯法廷のNHK番組改変問題で、安倍晋三の主張と同じく“捏造を行った朝日”と批判を大々的に行っている。また、主に左派文化人の呼称である「進歩的文化人」批判もしている。特に、左派文化人がソ連共産党の独裁体制や中国の文化大革命、北朝鮮の金日成崇拝を無条件で礼賛していた各種の過去の発言を、雑誌や新聞から発掘し、個人名を挙げて出典付きで紹介する「悪魔祓いの戦後史」(稲垣武)の連載は反響を読んだ。
また、2001年2月号では南京大虐殺論争では多種多様なアンケート結果を掲載し、紙上で石川水穂の司会で否定派の内の中間派秦郁彦と幻派の東中野修道による座談会を行った。
2005年には「あなたが朝日に狙われたら」や「あなたが中国に狙われたら」などの特集が組まれたが、これらの一見荒唐無稽かつ刺激的なタイトルも、いわゆる諸君のタイトル付けの伝統である。特にイザヤ・ベンダサンと本多との誌上論戦は有名で、ベストセラー『日本人とユダヤ人』の著者として有名人であったベンダサンの主張に対して本多の反論(その後数回に渡り往復書簡形式を取ることになる)を載せたことで、本誌の部数の増大には大いに貢献したとも言われる。
自由主義史観の主要論陣拠点である。新しい歴史教科書をつくる会に『正論』とともに深く関わっている。
論客は中西輝政や櫻井よしこら保守論客が常連だが、毎月出過ぎの感も否めなくなったため、最近では漫画家倉田真由美らを加えたが、倉田は脱税問題以降は登場回数を減らしている。
靖国神社参拝を強力にプッシュする立場であったが、2006年の富田メモ発見では自社出身の半藤一利が真贋判定に関わったこともあってか、強硬論を和らげる特集も組むなど、編集方針のとまどいを露呈している。 安倍内閣の時は右派論客に寄稿させる形でまさに「美しい国」に関わる特集を多く組んでいたが、2007年の第21回参議院議員通常選挙で自民党が大敗し、安倍晋三が総理を辞任する直前に編集長を交代。路線転換を図っている。
以前から小林良彰、浅田彰、山口二郎、大塚英志、立山学など、右派陣営に属さない人物に寄稿させることもあったが、近年も上野千鶴子、大沼保昭、稲葉振一郎、井上章一など右派に属さない論客が対談や論説など様々な形で登場しており、この点は「正論」とは異なるところである。また時折アンケートという形で各界の識者の意見を聞く特集を行うが、その場合は登場する面子は左派から政治的な色彩が薄い人物まで様々である。
斎藤貴男によると、ある時期までは「天皇の悪口を言わない限り何を書いてもいい」ところがあったという。また、斎藤は現在の諸君!を「月刊2ちゃんねる」と評している。これは主義主張が2ちゃんねる上で日々行われている反アジア・反リベラル・保守回帰の書き込みと同質である事に加え、毎月の特集の組み方自体が、2ちゃんねる同様に繰り返されている事を批判したものである。同時に、斎藤が自身に同誌から浴びせられた批判に苛立ちを隠せないことも分かる。
仲正昌樹が斎藤らを批判した「サヨクの最後の砦──「格差社会」「愛国心」「共謀罪」ハンタイ」(2006年8月号)に2ページでいいから反論させろと要求したところ、「読者投稿欄なら」との編集部の回答に失望したのだという。(『創』2006年9・10月号)しかし、これまでも投稿欄を利用しての反論のやり取りは同誌では行われており、投稿欄では嫌だという斉藤の主張が一種の横車であるともいえるとの批判もあったが、数ページにわたる批判記事への言論人の反論には2ページ割いて反論を載せるのは諸君の伝統であって石井英夫のそれに対しても俵孝太郎は2ページ反論する機会を与えられている。結局、投稿欄への反論を斉藤は行うことはなかった。