竜雲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
竜雲（りゅう うん、簡体字：龙云、繁体字：龍雲、ピン音: Lóng Yún 1884年11月19日-1962年6月27日）は、中国の中華民国時代から中華人民共和国時代にかけての軍人、政治家。字は志舟、元名は登雲。彝族。彝族名は、納吉鳥梯。雲南省昭通県出身。中華民国時期の滇軍（雲南軍、雲南軍閥）の指導者の1人で、雲南省政府主席。
[編集] 事跡
宣統3年（1911年）、竜雲は四川省で展開されていた鉄道保護運動に参加し、同年、四川へ進軍していた謝汝翼の滇軍に加わる。翌民国1年（1912年）に雲南省へ戻り、雲南陸軍講武堂に入学する。民国3年（1914年）、雲南陸軍講武堂第4期騎兵科を卒業し、雲南将軍唐継堯の指揮下に入る。唐に下級将校から1歩1歩抜擢されて、民国5年（1916年）には近衛兵の隊長になる、
民国10年（1921年）に唐継堯が顧品珍に追われても、竜雲は引き続き唐を支持し、広西省に駐屯していた李友勳率いる滇軍の前敵司令となる。翌民国11年（1922年）の唐継堯雲南帰還の戦いで、李友勳が戦死すると、竜雲が軍を継いだ。同年3月、顧品珍を倒して唐継堯が復権すると、竜雲は滇軍第5軍軍長兼滇中（昆明）鎮守使に任命された。
民国16年（1927年）2月、竜雲は同僚の滇軍軍長胡若愚らと共に唐継堯を失脚させたが（「2・6政変」）、その後の実権争いから、同年6月、胡若愚らに急襲、拘禁されてしまう（「6・14政変」）。しかし、竜雲配下の師長盧漢らが竜雲を奪回し、竜雲はその後の雲南省内の内戦で胡若愚ら敵対勢力をすべて撃破した。竜雲は国民政府から、同年8月には国民革命軍第38軍軍長に、民国17年（1928年）1月には雲南省政府主席・国民革命軍第13路軍総指揮（第38軍軍長兼任）に、民国18年（1929年）春には討逆軍第10路総指揮（第38軍軍長兼任）に任命された。これ以後、民国34年（1945年）までの統治により、竜雲は「雲南王」と称された。
この間、国民政府・中国国民党内の争いでは、竜雲は蒋介石支持を堅持する。民国18年（1929年）、竜雲は滇軍を貴州省に送り込み、李宗仁ら広西派に与する貴州省政府主席周西成を攻撃して、これを戦死させた。民国19年（1930年）5月には、盧漢らを広西省へ侵攻させたが、省会（省都）南寧を攻略できず、撤退した。民国20年（1931年）3月、盧漢ら配下の軍人たちが、竜雲に対して兵変を起こしたが（「3・10政変」）[1]、竜は何とか盧らを降伏させている。また、竜雲は雲南省の内政でも、経済・社会・教育等の多方面における近代化建設に堅実な成果をあげた。
民国26年（1937年）に日中戦争が勃発すると、竜雲は抗日統一戦線を支持した。竜雲は、盧漢率いる滇軍（国民革命軍第60軍）などを派遣し、また、昆明を後方基地として堅持するなど、日中戦争勝利に多大な貢献をする。なお、民国27年（1938年）に汪兆銘（汪精衛）と会談しているが、これを支持することはなかった。
しかし、日中戦争を通して蒋介石以下中央勢力が雲南省内に浸透・介入してきたため、「雲南モンロー主義」を望む竜雲は不満を抱き、民国33年（1944年）頃には中国民主同盟（民盟）に秘密裏に加入したとされ、さらに中国共産党との関係も強化した。この結果、蒋介石は竜雲の排除を決断し、民国34年（1945年）10月に、昆明に駐留していた中央軍の杜聿明率いる軍に竜雲を拘禁させた。以後、竜雲は軍事委員会軍事参議院院長という名ばかりの職を与えられ、南京に3年間軟禁された。民国37年（1948年）12月、クレア・リー・シェンノート（陳納徳）などに助けられ、竜雲は香港に逃亡し、中国国民党革命委員会（民革）に参加して、その中央委員となった。
1949年10月1日に中華人民共和国が建国されると、竜雲は中央人民政府委員に列せられ、1950年1月に北京に戻り、新政府に参加した。以後、人民革命軍事委員会委員、西南軍政委員会副主席、西南行政委員会副主席、全国人民代表大会常務委員、中国人民政治協商会議全国委員会常務委員、中国国民党革命委員会中央常務委員会副主席などを歴任する。1956年にかつてのソビエト連邦、ルーマニア、チェコ、ユーゴスラビアなどの東欧諸国を訪問したが、1957年の反右派闘争で批判された。
1962年6月27日、北京で死去。享年77歳。その翌日に右派の指定は取り消され、1980年7月、中国政府が、竜雲は右派でないと正式に宣言して名誉回復された。
[編集] 注
- ^ 詳しい事情は不明だが、前年の敗戦後に軍縮を行ったこと、竜雲側近への不満等が原因とされる。
[編集] 参考文献
- 謝本書『竜雲伝』四川民族出版社、1999年
