旅団
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旅団(りょだん、英:Brigade)は陸軍編成上の単位のひとつで、師団よりも小さく、連隊と同等又はこれよりも大きい単位で、1,500名から6,000名程度の兵員によって構成される部隊をいう。日本語にいう旅団の語は古代中国の軍隊の単位である旅に由来する。英語のBrigadeとはケルト語のbriga(争い)に由来するという。
英語のBrigadier(准将)は本来は旅団長に由来する。よって、諸外国の陸軍では旅団長には伝統的には准将級(准将を置かない軍隊では少将)が充てられてきたが、現代では大佐を充てる場合も多い。もっとも、将官の階級を3段階として准将級の階級を置かなかった旧日本陸軍では少将が、将官の階級を2段階とした陸上自衛隊では陸将補(少将相当)がそれぞれ充てられる。
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[編集] 旅団の種類
旅団の編成は時代・国によって多岐にわたる。
- 師団内旅団タイプ
- 旅団は、そもそもは単一兵科たる2個歩兵連隊によって構成され、2個旅団を以て1個師団(4単位師団)を構成する存在であった。また、この旅団を基幹として他兵科の部隊を配属して臨時に編成されたものを「混成旅団」という。ところが、第一次世界大戦頃から各国とも師団が3個歩兵連隊によって構成されるようになり(3単位師団)、このような伝統的な旅団の役割が終了した。
- 独立混成旅団(小型師団)タイプ
- 師団内旅団タイプの旅団が廃れた後に、小型紛争や後方の治安維持目的から小型師団の要求が高まった。すなわち、連隊は、単一兵科によって構成されており、兵站部隊を付属していないことから、独立してこのような任務に当ることは困難であり、連隊とは別箇又はその上級に各種兵科の混成部隊が必要とされた。そこで考えられたのが独立混成旅団である。「独立」とは師団に属さないことを、「混成」とは各兵科の混成部隊であることをそれぞれ表している。陸上自衛隊では、師団より規模の小さい各種職種混成部隊は「混成団」と称していたが、1999年(平成11年)以降は新たに「旅団」の編成を置くようになった。陸上自衛隊の旅団は単に「旅団」と称しているが、「独立混成旅団」(「小型師団」)タイプである。
- 近年は非対称戦争の続発に対処するためか、イギリス陸軍やフランス陸軍、イタリア陸軍、イスラエル陸軍などのように軍の基本編成単位を師団よりも小回りの利く独立混成旅団に改変する軍も多い。
- 特科部隊の単一兵科独立旅団タイプ
- 歩兵以外の砲兵部隊などで見られる編制で、師団に属しない独立部隊ではあるが、独立混成旅団タイプとは違って諸兵科連合の構成にはなっておらず、基本的に単一兵科のみで構成されているものである。一般に、複数の師団を束ねた軍団レベルで運用され、軍団指揮下の各師団に分属させたり、重点となる師団に配属されて使用される。例えば攻勢の中心となる師団に、この種の戦車旅団を配属したりすることが考えられる。陸上自衛隊の特科団や施設団などは日本語の名称では「団」と称されるが英訳ではいずれも "Brigade" の語が用いられており、このタイプといえる。
- 連隊タイプ
- アメリカ陸軍でも、かつては旅団は2個連隊(regiments)以上によって構成されていたが、現在では2個大隊(battalions)以上によって編成されるようになり、「連隊」と同等のものとなっている。
[編集] 日本
[編集] 大日本帝国陸軍の旅団
[編集] 沿革
大日本帝国陸軍では、鎮台時代から戦時には鎮台から旅団を臨時編成して戦地に派遣していた(西南戦争など)。後に師団制が採られるに至り、旅団は師団内旅団タイプとして位置づけられるに至った。この旅団は主に師団に属する歩兵旅団が主流で大半を占める。長は旅団長で少将が就任する。ただし、師団と異なり参謀長や参謀は置かれず、旅団長の補佐や旅団司令部の実務は旅団副官が行った。師団には2個の歩兵旅団が属し、旅団には2個歩兵連隊が属した。師団が出動するほどではない場合には砲兵部隊や騎兵部隊、工兵部隊などを配属し混成旅団として派遣した。混成旅団は臨時編制の場合が多い。日中戦争後期からは、通常4個連隊をもって1個師団(つまり2個旅団)としていたものを1個連隊減らし3個連隊をもって1個師団とした。この歩兵連隊の上級部隊としては従来の旅団ではなく歩兵団が統括した。歩兵団も旅団に準ずる組織として長である歩兵団長には少将が就任した。第二次世界大戦期に出現した戦車師団についても、同様の師団内旅団タイプの戦車旅団(各2個戦車連隊)が編成されていた。
独立混成旅団(小型師団)タイプの旅団としては、1934年(昭和9年)に正式編制の小型師団として「独立混成旅団」が創設され、日中戦争以降は占領地の治安維持を主目的に約100個ほど編成された。独立混成旅団の編制の特徴としては、旅団の下に連隊が存在しないことが通常で、代わりに独立歩兵大隊から成っていた点が挙げられる。なお在中国の独立混成旅団のうち24個のように、後に本物の師団に拡大改編された例も多い。このほか、第68旅団や海上機動旅団のように、同様の小型歩兵師団タイプの旅団ながら独立混成旅団を名乗らない編制も存在した。戦車師団を小型化したタイプで、戦車連隊に加えて歩兵なども含んだ独立戦車旅団も存在する。
なお、師団内旅団タイプと独立混成旅団タイプの中間的な旅団も太平洋戦争期には出現した。これは、第102師団のような、独立混成旅団を改編・格上げした師団などに見られたものである。師団の下に2個の「歩兵旅団」が置かれた点では師団内旅団に近いが、各旅団の下には連隊が存在せずに、多くの独立混成旅団のように独立歩兵大隊から構成され、旅団作業隊(工兵の一種)や旅団通信隊など若干の特科部隊を有することが多かった。このタイプの旅団を持つ師団は分散して治安任務にあたることが本来の任務で、旅団単位での独立行動を容易にするための編制であった。第109師団なども類似の「混成旅団」2個から成っていた。
特科の単一兵科独立部隊タイプの旅団としては、日清戦争後の軍備拡張に際し砲兵旅団と騎兵旅団(小型騎兵師団タイプとも見うるが。)が2個ずつ編成されたのが最初である。それまでも同種の独立部隊はあったものの、小規模で旅団の名を冠していなかった。その後、野戦重砲兵旅団など多数が誕生した。前出の独立戦車旅団の中にも、旅団編制内に歩兵を持たずに他部隊との協同を前提とした、この範疇の旅団が存在する。
[編集] 師団内旅団型の歩兵旅団の基本編制
- 旅団司令部
- 歩兵連隊(2個)
- 連隊本部
- 大隊(4個)
- 大隊本部
- 中隊(4個)
- 機関銃中隊
- 歩兵砲小隊(大隊砲小隊)
- 歩兵砲中隊(連隊砲中隊)
- 速射砲中隊
[編集] 独立混成旅団の基本編制
- 旅団司令部
- 独立歩兵大隊(3~8個)
- 歩兵中隊(3~5個)
- 機関銃中隊
- 歩兵砲中隊
- 旅団砲兵隊
- 旅団工兵隊
- 旅団通信隊など
- 独立歩兵大隊(3~8個)
[編集] 陸上自衛隊の旅団
陸上自衛隊の作戦基本単位は、管区隊が改組されて以降、師団及び混成団とされていたが、冷戦後の軍縮の流れの中で、師団の規模を縮小化させ、また混成団の規模を拡充させる必要が生じたことから、1999年以降順次に、第5、第11、第12、第13の4個師団および全ての混成団が旅団に改編されている。防衛大綱により最終的に6個旅団(及び8個師団)が編成される予定である。
陸上自衛隊の旅団は、一定期間独立して作戦行動をなしうる戦略単位である点で師団に共通するが、規模が縮小されている(第二次世界大戦前の日本陸軍にいう混成旅団に近い形態。)。また、戦術的戦闘単位である普通科連隊を複数(うち1個連隊は即応予備自衛官を主体とするコア部隊:※1)保有する点で、混成団と異なる。
原則として、旅団司令部並びに3~4個普通科連隊、戦車中隊(隊)(※2)及び特科隊などの戦闘部隊、施設中隊並びに後方支援隊などを以て編成され、定員は約3千名から約4千名である。後方支援隊には整備中隊、補給中隊、輸送隊、衛生隊及び本部付隊などが置かれて兵站も有するので、ほぼ完全にミニ師団である。そのこともあり、旅団の番号は師団と重複しないものとなっている。また、旅団でありながら師団と同等の普通科連隊数を有している点が大きな特徴である。旅団長には陸将補、副旅団長及び幕僚長には1等陸佐(I類)が充てられている。
陸上自衛隊に、現在置かれ又は将来置かれることとなっている旅団には次のものがある。
師団 | 方面隊 | 司令部所在地 | 隷下主要戦闘部隊 | 特色 | |||
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普通科 | 特科 | 高射特科 | 戦車 | ||||
第5旅団 | 北部 | 北海道帯広市 | 3個連隊 | 1個隊 | 1個中隊 | 1個隊 | |
第11旅団 | 北部 | 北海道札幌市 | 3個連隊 | 1個隊 | 1個中隊 | 1個大隊 | |
第12旅団 | 東部 | 群馬県榛東村 | 4個連隊 | 1個隊 | 1個中隊 | 空中機動旅団 | |
第13旅団 | 中部 | 広島県安芸郡海田町 | 3個連隊 | 1個隊 | 1個中隊 | 1個中隊 | |
第14旅団 | 中部 | 香川県善通寺市 | 2個連隊 | 1個隊 | 1個中隊 | 1個中隊 |
※1:第13旅団及び第14旅団を除く
※2:第5旅団は隊編制で隊長は1等陸佐、第12旅団は旅団化にあたり戦車部隊を全廃
[編集] 関連項目
- 近代陸軍の編制
- 旅管区
- 国際旅団
- ドイツ・フランス合同旅団