大湊地方隊
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大湊地方隊(おおみなとちほうたい、JMSDF Ominato District)は、海上自衛隊の地方隊の一つ。主要部隊は青森県むつ市大湊町にある大湊基地に配備されている。第45掃海隊及び第1ミサイル艇隊が配備されている。宗谷海峡と津軽海峡という、2つの重要な国際海峡の防備を担当する。
1899年(明治35年)に日本海軍の部隊が配備されたことに始まる。もともと北海道室蘭市に「室蘭鎮守府」が設置される予定であったが、ロシアの脅威が差し迫っており、津軽海峡の防備を重視するために、大湊に決まったといわれている。戦前は「大湊警備府」が置かれた。終戦で、一旦は武装が解かれるが、1953年(昭和28)年保安庁警備隊大湊地方隊として復活し、海上自衛隊へと変わると大湊地方隊に改称され、函館基地隊が新編された。海上自衛隊の5つの地方総監部の内、鎮守府に由来しない唯一の地方総監部である。
目次 |
[編集] 沿革
- 1902年(明治35年)8月1日 - 海軍大湊水雷団が置かれる。
- 1905年(明治38年)12月12日 - 大湊要港部が置かれる。
- 1941年(昭和16年)11月20日 - 大湊警備府が置かれる。
- 戦後:海軍解体により廃止される。
- 1953年(昭和28年)9月16日 - 警備隊に大湊地方隊が新編される。新編時の大湊地方隊には、大湊地方総監部、函館基地隊、大湊基地警防隊が新編される。
- 1954年(昭和29年)8月1日~7日 - 昭和天皇・皇后の津軽海峡渡航に際して大湊地方隊は、自衛艦隊及び館山航空隊とともに機雷警戒を実施する。
- 1956年(昭和31年)6月16日 - 隷下に大湊航空隊を編成する。
- 2006年(平成18年)9月5日 - 余市防備隊所属1号型ミサイル艇が機関砲誤射事故。
- 2008年(平成20年)3月26日 - 第25護衛隊が護衛艦隊隷下に編成替えし第15護衛隊に改編。 大湊航空隊を第21航空群に編成替えし第25航空隊に改編。
[編集] 担任区域
北海道及び青森県の太平洋・日本海・オホーツク海。宗谷海峡と津軽海峡。 警備区は、主に、津軽海峡、宗谷海峡及び日本海側・太平洋側ともに青森県以北の北方(北海道及び青森県の区域並びに青森県と秋田県の境界線が海岸線と交わる点から270度に引いた線と青森県と岩手県の境界線が海岸線と交わる点から90度に引いた線との間にある北海道及び青森県の沿岸海域)。ロシア海軍太平洋艦隊が通過する津軽海峡・宗谷海峡の警備を担当する部隊である。
[編集] 編制
- 大湊地方総監部(大湊基地:青森県むつ市)
- 大湊警備隊
- 大湊陸警隊
- 大湊港務隊
- 大湊水中処分隊
- 「水中処分母船2号」
- 大湊弾薬整備補給所
- 大湊造修補給所
- 大湊基地にある海上自衛隊基地唯一のドックの運用も行う
- 大湊基地業務隊
- 大湊衛生隊
- 大湊音楽隊
- 函館基地隊(函館基地:北海道函館市)
- 昭和27年8月1日に保安庁警備隊の横須賀地方隊に函館航路啓開隊が新編される。昭和28年9月16日に函館基地隊に改編、大湊地方隊に移籍する。津軽海峡及び北海道周辺海域の警備等を担当する。函館基地は、北海道における海上自衛隊の各種折衝の代表的な窓口になっており、総監部のある大湊基地に劣らぬ重要な基地である。
- 余市防備隊(北海道余市町)
- 稚内基地分遣隊(稚内基地:北海道稚内市)
- 多用途支援艦「すおう」
[編集] 総監部
詳細は地方隊#編成を参照
[編集] 高級幹部
職名 | 氏名 | 階級 | 就任日 | 出身校・期 | 前職 |
---|---|---|---|---|---|
地方総監 | 武田壽一 | 海将 | 2007年3月28日 | 防大19期 | 自衛艦隊司令部幕僚長 |
幕僚長 | 矢野一樹 | 海将補 | 2008年3月26日 | 防衛大学校訓練部長 |
[編集] 歴代高級幹部
[編集] 地方総監
代 | 氏名 | 在任期間 | 出身校・期 | 前職 | 後職 | 備考 |
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1 | 小國寛之輔 | 1953.9.16 - 1956.1.15 | 第二幕僚監部経理補給部補給課長 | 術科学校長 | 警備監補 /海将補 |
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2 | 赤堀次郎 | 1956.1.16 - 1958.12.15 | 海兵55期 海大37期 |
第1警戒隊群司令 | 海将補 | |
3 | 山下雅夫 | 1958.12.16 - 1961.2.28 | 海兵57期 | 海上幕僚監部総務部長 | 海将補 | |
4 | 武市義雄 | 1961.3.1 - 1962.1.15 | 横須賀地方副総監 | 幹部学校付 →1962.4.1第2術科学校長 |
海将補 | |
5 | 岡本功 | 1962.1.16 - 1963.4.30 | 海兵57期 海大38期 |
第1掃海隊群司令 | 海上幕僚監部付 →1963.7.1海将・退職 |
海将補 |
6 | 山田龍人 | 1963.5.1 - 1964.4.30 | 海兵58期 | 航空集団司令官 | 海上幕僚監部付 → |
|
7 | 森永正彦 | 1964.5.1 - 1964.12.15 | 海兵59期 | 横須賀地方副総監 | 呉地方総監 | 海将補 |
8 | 佐藤文雄 | 1964.12.16 - 1967.6.30 | 海兵59期 | 幹部候補生学校長 | 横須賀地方総監 | 海将補 |
9 | 水谷秀澄 | 1967.7.1 - 1968.6.30 | 海兵62期 | 海上訓練指導隊群司令 | 佐世保地方総監 | |
10 | 石田捨雄 | 1968.7.1 - 1969.6.30 | 海兵64期 | 海上幕僚監部総務部長 | 海上幕僚副長 | |
11 | 橋本正久 | 1969.7.1 - 1971.7.1 | 東高船 | 海上幕僚監部調査部長 | 退職 | |
12 | 安永稔 | 1971.7.1 - 1973.11.30 | 海機47期 | 海上幕僚監部経理補給部長 | 横須賀地方総監 | |
13 | 石野自彊 | 1973.12.1 - 1975.3.17 | 海兵69期 | 練習艦隊司令官 | 退職 | |
14 | 植草重信 | 1975.3.17 - 1976.12.1 | 海兵69期 | 教育航空集団司令官 | 退職 | |
15 | 大賀良平 | 1976.12.1 - 1977.8.31 | 海兵71期 | 護衛艦隊司令官 | 海上幕僚長 | |
16 | 江上純一 | 1977.9.1 - 1979.3.22 | 海兵71期 | 自衛艦隊司令部幕僚長 →1977.8.1海上幕僚監部付 |
退職 | |
17 | 松井操 | 1979.3.22 - 1980.7.1 | 海兵73期 | 幹部候補生学校長 | 退職 | |
18 | 吉田學 | 1980.7.1 - 1981.6.30 | 海兵75期 | 海上幕僚監部防衛部長 | 海上幕僚副長 | |
19 | 山田善照 | 1981.7.1 - 1983.4.25 | 海兵75期 | 自衛艦隊司令部幕僚長 | 海上幕僚副長 | |
20 | 安岡亀雄 | 1983.4.26 - 1984.6.5 | 海兵76期 | 海上幕僚監部調査部長 | 海上幕僚副長 | |
21 | 高崎郁男 | 1984.6.6 - 1985.12.19 | 55外4幹候海保大 | 海上幕僚監部総務部長 | 佐世保地方総監 | |
22 | 金崎實夫 | 1985.12.20 - 1987.7.6 | 56外6幹候海保大 | 自衛艦隊司令部幕僚長 | 佐世保地方総監 | |
23 | 富田成昭 | 1987.7.7 - 1989.3.16 | 56外6幹候 鹿児島大水産 |
教育航空集団司令官 | 退職 | |
24 | 吉川圭祐 | 1989.3.16 - 1991.3.16 | 防大1期 | 海上幕僚監部防衛部長 | 退職 | |
25 | 林崎千明 | 1991.3.16 - 1992.6.15 | 防大4期 | 海上幕僚監部防衛部長 | 佐世保地方総監 | |
26 | 猪狩眞 | 1992.6.16 - 1993.7.1 | 防大4期 | 幹部学校長 | 退職 | |
27 | 塚原武夫 | 1993.7.1 - 1995.3.23 | 防大6期 | 防衛大学校訓練部長 | 退職 | |
28 | 五味睦佳 | 1995.3.23 - 1996.3.24 | 防大8期 | 開発指導隊群司令 | 海上幕僚副長 | |
29 | 金子豊 | 1996.3.25 - 1997.3.25 | 防大9期 | 海上幕僚監部監察官 | 佐世保地方総監 | |
30 | 山崎眞 | 1997.3.26 - 1998.6.30 | 防大9期 | 海上幕僚監部装備部長 | 自衛艦隊司令官 | |
31 | 長谷川語 | 1998.7.1 - 1999.12.9 | 防大10期 | 自衛艦隊司令部幕僚長 | 自衛艦隊司令官 | |
32 | 牧本信近 | 1999.12.10 - 2001.1.10 | 防大13期 | 海上幕僚監部監理部長 | 幹部学校長 | |
33 | 尾崎通夫 | 2001.1.11 - 2002.3.21 | 防大13期 | 幹部候補生学校長 | 佐世保地方総監 | |
34 | 田内浩 | 2002.3.22 - 2003.3.27 | 潜水艦隊司令官 | 退職 →2003.7.1神戸製鋼所顧問 |
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35 | 吉川榮治 | 2003.3.27 - 2005.1.11 | 防大15期 | 統合幕僚会議事務局第5幕僚室長 | 横須賀地方総監 | |
36 | 宮本治幸 | 2005.1.12 - 2006.3.26 | 防大16期 | 自衛艦隊司令部幕僚長 | 教育航空集団司令官 | |
37 | 松岡貞義 | 2006.3.27 - 2007.3.27 | 防大18期 | 幹部候補生学校長 | 航空集団司令官 | |
38 | 武田壽一 | 2007.3.28 - | 防大19期 | 自衛艦隊司令部幕僚長 |
[編集] 室蘭の自衛隊誘致
2006年2月、北海道室蘭市では、室蘭港への海上自衛隊基地誘致を目指す、官民合同の「防災拠点港実現に向けて海上自衛艦を誘致する会」が発足した。室蘭港に耐震構造の防災埠頭を作り、災害発生時の物資輸送、避難・救助活動の拠点港にしようというものであり、海上自衛隊の自衛艦を誘致することで、防災拠点としての実効性が高まり、さらなる港湾整備に弾みがつくという設立趣旨である。
防衛省も、北海道への新たな海上自衛隊基地建設に関心があるとされ、室蘭港を有望な候補先としていると言われる。実際に2004年2月には、自衛隊イラク派遣のため、室蘭港からおおすみ型輸送艦を使って装甲車両などの機材搬出を行っており、海上自衛隊艦船の寄港も多い。設立総会には、大湊地方隊函館基地司令が招待された。