ロリータ
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『ロリータ』(Lolita) はロシア生まれのアメリカの作家、ウラジーミル・ナボコフの小説の題名。登場人物の美少女「ロリータ」を題材にしている。初版は1955年にパリで出版された。
1940年に渡米したナボコフは教職のかたわら、この作品を1948年から書き始め、1953年には完成した。しかし、性的に倒錯した主題を扱っている為、アメリカでは5つの出版社から刊行を断られた。その為、初版はポルノグラフィーの出版社として有名なパリのオランピア・プレスから1955年に出版されたが、グレアム・グリーンらの紹介により読書界の注目の的となる。アメリカでは1958年に出版されベストセラーになった。日本では1959年に大久保康雄による翻訳(河出書房新社)、2005年に若島正による翻訳(新潮社)が出版された。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
目次 |
[編集] あらすじ
ヨーロッパからアメリカに亡命した中年の大学教授である文学者ハンバート・ハンバートは、少年時代の死別した恋人がいつまでも忘れられない。その面影を見出したあどけない12歳の少女のドロレス・ヘイズ(Dolores; 愛称ロリータLolita)に一目惚れをし、彼女に近づく為に下心からその母親である未亡人と結婚する。母親が不慮の事故で死ぬと、ハンバートはロリータを騙し、アメリカ中を逃亡する。しかし、ロリータはハンバートの理想の恋人となることを断固拒否し、時間と共に成長し始めるロリータに対し、ハンバートは衰え魅力を失いつつあった。ある日突然、ハンバードの目の前から姿を消したロリータ。その消息を追って、ハンバートは再び国中を探しまわる。3年後、ついに探し出すが、大人の女性となった彼女は若い男と結婚し、彼の子供を身ごもっていた。哀しみにくれるハンバートは彼女の失踪を手伝い、連れ出した男の素性を知り殺害する。後に逮捕され、獄中で病死。そして、ロリータも出産時に命を落とす。作品はハンバートが獄中書き残した「手記」という形式をとっている。
前思春期の少女にあらわれる性的な魅力を「ニンフェット」の倒錯した魅力と巧みに規定して、社会に衝撃と影響を残したこの作品は、全体の構成より細部(文体)へと関心が傾けられ、様々な引用や巧妙な言葉遊びに満ちている。作者の分身ともいえるハンバートによるメタファーを多用した独白調の文章は晦渋なことでも有名。知的で複雑な歴史を持ち、自意識に満ちたハンバートにヨーロッパ旧世界の象徴を、成熟しつつ素朴なロリータにアメリカの象徴を読み取る解釈も一般的に存在する。
[編集] 関連する作品
- The Enchanter:本書の着想ともいえる同作者の小品。
- Lolita A Screenplay:キューブリック監督の映画化時に、作者が書き起こした脚本。
- The Annotated Lolita:研究者Alfred Appel の注釈付き本
[編集] 類作の存在
『ロリータ』には原作があると言われ、ドイツの作家で後にナチス系ジャーナリストに転じたハインツ・フォン・リヒベルク(1891年~1951年)の1916年の作品『Die verfluchte Gioconda.』の中に、Lolitaという少女の出てくる類似のテーマの作品がある。 このことはドイツの文芸批評家が発見し、2004年3月に各新聞や文芸誌で報じられた (FAZ.27.03.2004参照)。 ナボコフとリヒベルクは15年間を同じベルリンで過ごした同時代人。もっとも、文学的本質から言えば、両者は別の文学であるとされる。
[編集] 映像化
これまで2度映画化されている。
[編集] その他の二次作品
[編集] オペラ
- ジョシュア・ファインベルク作曲による作品
- 作曲年:2006年
- 音響技術協力:IRCAM
- 初演団体:アンサンブル・アンテルコンタンポラン
- ロディオン・シチェドリン作曲による作品
- 作曲年:1993年
- 作品番号:Op.84
- 委嘱:ストックホルム王立歌劇場
[編集] 転用と派生
- この作品に由来して「ロリータ・コンプレックス」と命名された「10代前半の女性に特別な感情を抱く」心理学用語が生まれたが、本来は「ハンバート・コンプレックス」とするべきかもしれない。日本においては、ロリコン(「ロリ」など共に略されることがある)と短縮されて使われる場合もあるが、心理学用語本来の意味である年上の男性に惹かれる少女という意味を離れて、幼女や少女を性愛の対象とする男性を表す言葉として一般的に用いられる。また、ロリコンは、否定的なニュアンスで使われる場合もある。類義語に少女愛、児童性愛(ペドフィリア)があり、対義語に少年愛がある。しかし、ロリコンは必ずしも男性のみの持つ志向であるとは限らない。(女性少女愛)。
- 一般的に「ロリータビデオ」「ロリータもの」と表現されている作品は、児童性愛的な男性が喜ぶような児童ポルノ的な作品である傾向が強い。また、ネットスラングでは「炉」と略称される事が多く、モデルの人種に応じて「和炉」(日本人)、「洋炉」(欧米人)、 「亜炉」(アジア系)、と使い分けられている。
- 誘惑的な美少女や、実年齢より見た目が幼い有名人を「ロリータ」と呼ぶことがある。しかしこの用例は前述のロリータ・コンプレックスの影響もあり日本においては一般的ではない。女性ジュニアタレントに対し「ロリータアイドル」や、ほしのあきの「ロリエロ隊長」など。ただし、「ロリータ(ロリィタ)少女」「ロリータさん」となると、ロリータ・ファッションを身に着けた少女という意味である可能性が高い。さらに少女性あるいは、幼女性を連想させるという面から、「ロリータボイス」、「ロリータ声優」などの使い方もされる。
- ロリータが海外(特にフランス)においては社会全体の抱く小女のイメージ(少女らしさ)を指す言葉でもあることから、少女っぽい無邪気な言動で男性に対してコケティッシュに振舞うファム・ファタール的な女優・モデルを小説「ロリータ」のロリータになぞらえて「フレンチ・ロリータ」と呼ぶ。日本語で言うところのアイドルに近く、露骨さのない知的なセックス・アピールを売りとする。前述のロリータアイドルとの違いは、実際の年齢が少女である必要はないという点である。
- 「ロリータ・ファッション」、「ゴシック・アンド・ロリータ(ゴスロリ)」という独自のカテゴリーとなったファッション用語も生まれている。男性の性的志向としてのロリータと区別する為に、ファッション用語としては「ロリィタ」表記を使うこともある。
[編集] 出版
- ウラジーミル・ナボコフ(大久保康雄訳)新潮社: ISBN 4102105018
- ヴラジーミル・ナボコフ(若島正訳)新潮社: ISBN 4105056050
- Nabokov, Vladimir ISBN 0679723161 (原著)
[編集] 関連項目
[編集] ロリータ、およびロリータ的主題の芸術
[編集] ロリータから派生したさまざまな概念
類似の概念として
[編集] その他の関連項目
- エイミー・フィッシャー(「ロングアイランドのロリータ」事件)