メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
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メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(Metro-Goldwyn-Mayer Inc.,MGM)はアメリカの巨大マスメディア企業。主に映画やテレビ番組の製作・供給を行う。
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[編集] 概要
1924年に設立。現在のMGMは実質的にはユナイテッド・アーティスツ(UA)の後継会社 。1985年以前のMGM作品の権利は、1986年にMGMがテッド・ターナーによって一時的に買収されたその間にターナー・エンタテインメント(1996年以降タイム・ワーナーグループ)に移された。
2005年4月8日にソニーや投資銀行を中心とするコンソーシアム(ソニーのアメリカ法人、コムキャスト、プロビデンス・エクイティ・パートナーズ、テキサス・パシフィック・グループ、DLJマーチャント・バンキング・パートナーズ)によって買収された。現在は持株会社のMGMホールディングスがMGM Inc.を所有し、その下にMGMスタジオ、MGMピクチャーズ、UA、オライオン等の事業会社や著作権・商標管理会社が入る形態である。
[編集] 歴史
1924年、3社の映画スタジオが合併しMGMスタジオが成立。MGMの名前の由来は、その3社の頭文字を取ったもの。Metro Pictures Corporation (1915年創業)、Goldwyn Pictures Corporation (1917年創業)、Louis B. Mayer Pictures (1918年創業)の3社。
親会社は当時最大の劇場チェーン、ロウズだったために財力に恵まれ、製作も豪華主義で、設立当時から業界トップの地位を約束された。さらに同社を潤わせたのは「ボーイ・ワンダー(神童)」と謳われたアーヴィング・タルバーグの存在である。心臓疾患を持ちながら24時間編集室を出ないという働きぶりで、総帥ルイス・B・メイヤーと組んで初期作品を一手に手がけた。しかし37歳で1936年に早世。また30年代には「芸術のための芸術」をモットーにライオンが咆哮するトレードマークが生まれ、1950年代まで隆盛を極めた。
1946年、レコード事業に参入。コニー・フランシスやハーマンズ・ハーミッツなどのスターを生み出すが、1972年にポリグラムへ売却。
かつてMGMはグレタ・ガルボやジョーン・クロフォード、クラーク・ゲーブルやジミー・デュランテをはじめとする多数のスターを擁し、「空の星の数よりも多いスターたちがいる」がキャッチフレーズだった。
その後、巨大になりすぎた社の方針は時代の流れに折り合わず、1960年代から次第に衰退。1973年には配給部門を整理し、UAが配給権を掌握したが『天国の門』の大失敗で経営破綻し、1981年にMGMが吸収してMGM/UAに。1986年にはテッド・ターナー率いるターナー・ブロードキャスティング・システム(TBS、現在はタイム・ワーナー傘下)傘下になり、この時にMGM・ワーナー(1948年以前の旧作)・RKO・アソシエイテッド・アーティスツ・プロダクション(a.a.p.)製作の旧作の版権の大部分(『オズの魔法使い』・『風と共に去りぬ』・『トムとジェリー』・『ビクター/ビクトリア』など)がターナーに移され、版権が残されたのはUA制作の作品(『お熱いのがお好き』・『噂の二人』・『ロッキー』など)以外は少数の作品(『野郎どもと女たち』・『昼下りの情事』・『007 美しき獲物たち』など)となった(MGM/UA名義の作品はUA作品の続編(007シリーズ等)のみMGMに残された)(ポルターガイストシリーズの様に、版権が分断されたものもある)。ただ、ターナーの取引銀行はMGMの巨額の負債を理由にこの買収を支持しなかったため、実質UAの後継会社となったMGM/UAを買収から74日後に再度カーコリアンに売却した。
さらに1990年代初頭はオーナーの交代が相次ぎ、1996年に前社長で大投資家のカーク・カーコリアンが株を買い戻し、元のMGMに復帰。1997年、復興後のオライオン・ピクチャーズを傘下に収める。
かつてMGMはロサンゼルス・カルヴァーシティーに巨大なスタジオを所有していた。1970年にスタジオの敷地を一部売却。売却された土地はその後高級住宅地に生まれ変わった。現在、残された敷地をソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(SPE)がスタジオとして使用している。
2004年、ソニーを始めとする投資家グループがMGM/UAを約6,000億円で買収(ソニーのMGM所有権は20%)。北アメリカにおいてMGMとUAの映画は米国SPEが配給・DVD発売をすることになった。しかし2006年にアメリカでは自社配給に改め、20世紀フォックスからDVDを発売するようになった(SPEとの共同製作品を除く)[1]。日本では20世紀フォックスが劇場配給やDVDの発売を行っている。アップルの「iTunes」による映像ライブラリのインターネット配信も行っており、ソニーから独立した経営をしている。なおMGMと20世紀フォックスは、ソニーが推進するブルーレイディスクを支持している。
2006年11月にはUAのトップにハリウッドの俳優トム・クルーズと、パートナーのポーラ・ワグナーが就任。新生UAとして2007年から映画製作を開始。
尚、ソニーの資本が入った2005年以降、UA作品の続編・リメークを中心にSPEとの合作が頻繁に行われるようになった(ロッキー・ザ・ファイナル、ピンクパンサー(2006年版)、007 カジノ・ロワイヤル(2006年版)、等)。20世紀フォックスとSPEの、どちらが配給/DVD発売するかは作品毎に決める。
[編集] 主な映画
[編集] 1920年代
- 殴られる彼奴 He Who Gets Slapped (1924)
- ビッグ・パレード The Big Parade (1925)
- メリー・ウイドー The Merry Widow (1925)
- ベン・ハー Ben-Hur (1925)
- ラ・ボエーム La Bohème (1926)
- 真紅の文字 The Scarlet Letter (1926)
- 肉体と悪魔 Flesh and the Devil (1926)
- 思ひ出 The Student Prince in Old Heidelberg (1927)
- アンナ・カレニナ Love (1927)
- 知られぬ人 The Unknown (1927)
- 風 The Wind (1928)
- 活動役者 Show People (1928)
- 踊る娘達 Our Dancing Daughters (1928)
- ブロードウェイ・メロディー The Broadway Melody (1929)
- ハリウッド・レヴィユー The Hollywood Revue pf 1929 (1929)
- ハレルヤ Hallelujah! (1929)
[編集] 1930年代
- アンナ・クリスティ Anna Christie (1930)
- 結婚双紙 The Divorcee (1930)
- マタ・ハリ Mata Hari (1931)
- グランド・ホテル Grand Hotel (1932)
- フリークス Freaks (1932)
- 類猿人ターザン Tarzan the Ape Man (1932)
- 永遠に微笑む Smilin' Through (1932)
- クリスチナ女王 Queen Christina (1933)
- 晩餐八時 Dinner at Eight (1933)
- ダンシング・レディ Dancing Lady (1933)
- 白い蘭 The Barretts of Wimpole Street (1934)
- 影なき男 The Thin Man (1934)
- メリイ・ウイドウ The Merry Widow (1934)
- オペラは踊る A Night at the Opera (1935)
- アンナ・カレニナ Anna Karenina (1935)
- 南海征服 (戦艦バウンティ号の叛乱) Mutiny on the Bounty (1935)
- 孤児ダビド物語 David Copperfield (1935)
- 嵐の三色旗 A Tale of Two Cities (1935)
- 浮かれ姫君 Naughty Marietta (1935)
- 踊るブロードウェイ Broadway Melody of 1936 (1935)
- 巨星ジーグフェルド The Great Ziegfeld (1936)
- ローズ・マリイ Rose Marie (1936)
- ロミオとジュリエット Romeo and Juliet (1936)
- 桑港 San Francisco (1936)
- 結婚クーデター Libeled Lady (1936)
- 椿姫 Camille (1936)
- 大地 The Good Earth (1937)
- 君若き頃 Maytime (1937)
- 我は海の子 Captains Courageous (1937)
- 少年の町 Boys Town (1938)
- マリー・アントアネットの生涯 Marie Antoinette (1938)
- テスト・パイロット Test Pilot (1938)
- 城砦 The Citadel (1938)
- 初恋合戦 Love Finds Andy Hardy (1938)
- オズの魔法使 The Wizard of Oz (1939)
- ニノチカ Ninotchka (1939)
- チップス先生さようなら Goodbye, Mr. Chips (1939)
- 風と共に去りぬ Gone with the Wind (1939)
[編集] 1940年代
- トムとジェリー Tom and Jerry (1940-1986)
- ブーム・タウン Boom Town (1940)
- フィラデルフィア物語 The Philadelphia Story (1940)
- 哀愁 Waterloo Bridge (1940)
- 高慢と偏見 Pride and Prejudice (1940)
- 桃色の店 The Shop Around the Corner (1940)
- 塵に咲く花 Blossoms in the Dust (1941)
- ジキル博士とハイド氏 Dr. Jekyll and Mr. Hyde (1941)
- 女性No.1 Woman of the Year (1942)
- ミニヴァー夫人 Mrs. Miniver (1942)
- 心の旅路 Random Harvest (1942)
- キュリー夫人 Madame Curie (1943)
- 町の人気者 The Human Comedy (1943)
- ガス燈 Gaslight (1944)
- ドーヴァーの白い崖 The White Cliffs of Dover (1944)
- 緑園の天使 National Velvet (1944)
- 愛の決断 The Valley of Decision (1945)
- 錨を上げて Anchors Aweigh (1945)
- 子鹿物語 The Yearling (1946)
- 雲流るるままに Till the Clouds Roll By (1946)
- 郵便配達は二度ベルを鳴らす The Postman Always Rings Twice (1946)
- 湖中の女 Lady in the Lake (1947)
- グッド・ニュース Good News (1947)
- イースター・パレード Easter Parade (1948)
- 若草物語 Little Women (1949)
- アダム氏とマダム Adam's Rib (1949)
[編集] 1950年代
- キング・ソロモン King Solomon's Mines (1950)
- 花嫁の父 Father of the Bride (1950)
- アニーよ銃をとれ Annie Get Your Gun (1950)
- 恋愛準決勝戦 Royal Wedding (1951)
- 可愛い配当 Father's Little Dividend (1951)
- コーズ・フォー・アラーム Cause for Alarm! (1951)
- 巴里のアメリカ人 An American in Paris (1951)
- クォ・ヴァディス Quo Vadis (1951)
- ショウ・ボート Show Boat (1951)
- 雨に唄えば Singin' in the Rain (1952)
- 黒騎士 Ivanhoe (1952)
- バンド・ワゴン The Band Wagon (1953)
- 円卓の騎士 Knights of the Round Table (1953)
- キス・ミー・ケイト Kiss Me, Kate (1953)
- ローズ・マリー Rose Marie (1954)
- 掠奪された七人の花嫁Seven Brides for Seven Brothers (1954)
- 暴力教室 Blackboard Jungle (1955)
- 野郎どもと女たち Guys and Dolls (1955) (←現在もMGMが版権保有)
- 上流社会 High Society (1956)
- 禁断の惑星 Forbidden Planet (1956)
- 愛情の花咲く樹 Raintree County (1957)
- 熱いトタン屋根の猫 Cat on a Hot Tin Roof (1958)
- 恋の手ほどき Gigi (1958)
- 北北西に進路を取れ North By Northwest (1959)
- ベン・ハー Ben-Hur (1959)
[編集] 1960年代
- バターフィールド8 Butterfield 8 (1960)
- 予期せぬ出来事 The V.I.P.s (1963)
- いそしぎ The Sandpiper (1965)
- ドクトル・ジバゴ Doctor Zhivago (1965)
- 2001年宇宙の旅 2001: A Space Odyssey (1968)
- 荒鷲の要塞 Where Eagles Dare (1968)
[編集] 1970年代
- 戦略大作戦 Kelly's Heroes (1970)
- エルビス・オン・ステージ Elvis: That's the Way It Is (1970)
- エルビス・オン・ツアー Elvis on Tour (1972)
- ザッツ・エンタテインメント That's Entertainment! (1974)
- 風とライオン The Wind and the Lion (1975)(コロンビア映画との合作)
- ネットワーク Network (1976)(合併前のUAとの合作)
- グッバイガール The Goodbye Girl (1977)(ワーナー・ブラザースとの合作)
[編集] 1980~5年
- ポルターガイスト Poltergeist (1982)
- ビクター/ビクトリア Victor/Victoria (1982)
- ↑ここまでは現在タイム・ワーナーが版権を保有(注釈付きを除く)↑
[編集] 1986年以降
- ポルターガイスト2 Poltergeist II: The Other Side (1986)
- 月の輝く夜に Moonstruck (1987)
- ポルターガイスト3 / 少女の霊に捧ぐ… Poltergeist III (1988)
- ザ・グリード Deep Rising (1998)
- ザッツ・エンタテインメントⅲ That's Entertainment! III (1993)
- ↑これのみターナー(→タイム・ワーナー)が過去のMGM作品を抜粋して製作
- ハンニバル Hannibal (2001)
[編集] レオ・ザ・ライオン
1924年の創業当時からライオンがほえるオープニングロゴを使用、「レオ・ザ・ライオン(Leo the Lion)」の愛称で親しまれている。一時期ライオンのシルエット静止画を意匠としたものも使われた(『グラン・プリ』・『2001年宇宙の旅』で使用)が、すぐに元に戻している(MGMレコードのロゴにも使われた)。
あまりにも馴染みのあるためか、パロディーとして使われることも多い。一例として『トムとジェリー』では、チャック・ジョーンズ期のオープニングでライオンのかわりにトムがほえるというものがあったり、ジーン・ダイッチ期の一部作品でもジェリーが同様のまねをしている。またMGM作品以外にも『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』では、凶暴なジャイアンが冒頭でライオンの代わりにほえている。
[編集] 主要子会社
- MGMスタジオ (Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.)
- ユナイテッド・アーティスツ(UA、United Artists Corporation, 1981年に合併)
- オライオン・ピクチャーズ (Orion Pictures Corporation)
[編集] 関連項目
- パルファメト協定
[編集] 脚注
- ^ “Why Sony Is Now A Bit Player At MGM”, BusinessWeek, 2006-11-20. 2007-12-31閲覧.(英語)