ライオン
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ライオン Panthera leo(オス) |
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種の保全状態評価 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
VULNERABLE (IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
P. l. persica インドライオン CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Panthera leo (Linnaeus, 1758) |
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ライオン | |||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Lion |
ライオン(Panthera leo)は、動物界脊索動物門哺乳綱ネコ目(食肉目)ネコ科ヒョウ属に分類される食肉類。
目次 |
[編集] 分布
- P. l. bleyenberghi アンゴラライオン
- P. l. krugeri トランスバールライオン
アフリカ大陸南部
- P. l. massaieus マサイライオン
アフリカ大陸東部
- P. l. persica インドライオン
- P. l. senegalensis セネガルライオン
アフリカ大陸西部
以前はアフリカ大陸とユーラシア大陸西部から南部にかけて広く分布していたが、開発による生息地の破壊や乱獲等により現在の分布域は北部を除くアフリカ大陸とインドの一部のみに分布する。
[編集] 形態
体長オス170-330cm、メス140-270cm。尾長60-100cm。体重オス150-260kg、メス120-182kg。背面は黄褐色、腹面は淡黄色の体毛で覆われる。稀に白化型(ホワイトライオン)も見られる。
頭部は太短く丸みを帯び、顎の力は強い。
オスは頭部から頸部にかけて鬣が発達する。鬣の色には変異があり、黄褐色、赤褐色、黒等がある。鬣は体を大きく見せたり頭部や頸部に対しての攻撃を防ぐのに役立つと考えられている。鬣はメスや幼獣では発達しない。鬣の数え方は「1むら」。 幼獣には暗色の斑紋が入るが、成長に伴い消失する。
- P. l. persica インドライオン
やや小柄で、体色がうすい。体毛が長いが、オスの鬣はあまり発達しない。
ヒョウ属の他種との間に種間雑種を生じることができる。有名なところでは、雄ヒョウと雌ライオンの雑種がレオポンである。ライオンとトラの雑種の場合、父がライオンであればライガー、父がトラであればタイゴンと呼ばれる。ごく一部の例外を除いて、これらの雑種動物には繁殖力がない。
[編集] 亜種
- Panthera leo bleyenberghi アンゴラライオン Angolan lion
- Panthera leo krugeri トランスバールライオン Transvaal lion
- Panthera leo massaieus マサイライオン Masai lion
- Panthera leo persica Meyer, 1826 インドライオン Asiatic lion
- Panthera leo senegalensis セネガルライオン Senegalese lion
[編集] 絶滅亜種
[編集] 生態
サバンナに生息する。(亜種インドライオンは森林。尚、同じインドに棲むトラとは生息地が違うため、野生下で遭遇する事はない。)ネコ科では珍しくオス1-6頭、メス4-12頭、そしてその幼獣からなるプライドと呼ばれる群れを形成し、生活する。通常はプライド内でもさらに小規模な群れを作り生活することが多い。若い雄は産まれ育った群れから追い出され、成長するまでオスだけで暮らす(兄弟2頭で行動することが多い)。オスは基本的に外敵(他の雄ライオン、ハイエナ)の駆除を生業としている。プライドは広大な縄張りを形成して生活し、吠えたり尿を撒いて臭いをつけることで縄張りを主張する。獲物が少なくなると縄張りを拡大することもある。 さらに、獲物の60%はハイエナから横取ったものである。
食性は動物食で、主に体重50-200kg程の中型から大型の哺乳類を食べるが、小型哺乳類、鳥類、爬虫類等も食べる。また他の肉食獣が捕らえた獲物を奪う事もよく知られている。家畜や人も襲う。体調が優れない時は、胃の内容物を嘔吐するため草を食べる事もある。主にメスが集団で狩りを行い、扇形に散開しながら獲物に忍び寄る。大型の獲物は吻端や咽頭部に噛みつき窒息死させる。
繁殖形態は胎生で、1回に1-5頭の幼獣を産む。妊娠した雌は、出産が近くなるとプライドから離れ、1頭で行動し、出産する。妊娠期間は100-120日程。幼体がプライドの移動に遅れないくらい歩けるようになると元のプライドに戻る。メスは同じ群れの幼獣を一緒に育て、自分が産んだ幼獣以外にも授乳する。幼獣は生後3ヶ月程で肉を食べられる様になるが、生後6ヶ月までは乳離れしない。生後3-4年程で性成熟する(飼育下では2年から2年半までに性成熟する傾向がある)。
雄は2歳前後でタテガミが発達し、群から排除されるが、単独または兄弟たちと数年放浪し(これはノマドと呼ばれる)、乗っ取られたプライドでは新たに君臨した雄によって子殺しが行われ、子供がいるうちは発情しない雌が発情するようになり交尾して新たな子孫をもうける。しかし、例外のある地域もアフリカにある。大きな違いは、暑さのため雄のタテガミはほとんどないことと群れを獲得した後子殺しはしないことである。
[編集] 人間との関係
種小名leo は「ライオン」の意で、本種そのものを指している。
古代ローマ時代では闘技場で奴隷と戦わせるための乱獲、開発による生息地及び獲物の減少、毛皮や肉目的の狩猟、害獣としての駆除等の理由でアフリカ大陸北部やユーラシア大陸(インドの一部を除いて)では絶滅した。また、人間の力を誇示する目的でマサイ族がライオン狩りをした時期もある。動物園でも簡単に繁殖するため種としての絶滅の危機は少ないが、生息地における純粋な亜種の個体数は自然の破壊とともに減少の一途をたどっている。
[編集] 象徴
その威風堂々とした容貌から「百獣の王」と称される本種は古来より紋章や文様に用いられている。古代エジプトでは人の顔、ライオンの体、鷲の翼を持つスフィンクスとして神格化された。日本の狛犬や沖縄のシーサーもインドでライオンを意匠化したものが中国経由で伝わったものと考えられる。
キリスト教では、本種は聖マルコの象徴である。聖マルコはヴェネツィアの守護聖人であるため、サン・マルコ広場 にあるライオンの像を始め、ヴェネツィアのいたるところで本種の意匠を見ることができる。ベネチア映画祭の金獅子賞もそれに由来する。
イングランド王室でも王冠をかぶったライオンが象徴として用いられているが、これはノルマンディー公時代から受け継がれており、現在のフランスのノルマンディー地方でも本種をあしらった旗が用いられている。勇猛なことで知られるイングランド王、リチャード1世は獅子心王とよばれていた。
中国語でライオンを示す「獅」や、日本語の「獅子」という語は、「百獣の王」=「師」であることから作られた語である。 だが、実際は百獣の王の器には当てはまらない面もある。ライオン=全知全能というのは人間の思い込みである。
[編集] 画像
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社、1984年、77頁。
- 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科1 食肉類』、平凡社、1986年、36-41頁。
- 『小学館の図鑑NEO 動物』、小学館、2002年、60頁。
[編集] 外部リンク
- 2007 IUCN Red List of Threatened Species
- Bauer, H. & Nowell, K. 2004. Panthera leo. In: IUCN 2007. 2007 IUCN Red List of Threatened Species.
- Cat Specialist Group 2000. Panthera leo persica. In: IUCN 2007. 2007 IUCN Red List of Threatened Species.
- Bauer, H. & Nowell, K. 2004. Panthera leo. In: IUCN 2007. 2007 IUCN Red List of Threatened Species.
- CITES homepage
- 環境省