ムサイ
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ムサイは、アニメ「機動戦士ガンダムシリーズ」に登場する、ジオン公国が開発した宇宙用軽巡洋艦。架空の兵器。同時期に完成したモビルスーツの運用を前提に設計された艦艇。
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[編集] 概要
ムサイ級はMSの運用を前提に開発された軽巡洋艦で、『機動戦士ガンダム』では多数の艦が劇中に登場した。前期型は主砲である連装メガ粒子砲3基を背負い式に装備し、キャメル艦隊使用艦などの後期型は同兵装を2基装備している。艦の形状は艦体後方から流線型の支柱が伸び、その上部に艦橋を備えその直下にMSデッキを備える。その後方はMS発射口で側面は両舷3ヶ所づつの補給口がある。その下から左右斜め下方にエンジンがついている。平均的なタイプはモビルスーツを艦自体に4機、コムサイに2機の合計6機の収納が可能。ただし通常は、運用上の問題からコムサイには搭載されない。モビルスーツを搭載して戦闘空域に赴く事で、推進剤などの搭載量が限られているモビルスーツの行動範囲を大幅に拡げる事ができる。また、艦前方に収納されているコムサイは大気圏突入用カプセルでもあり、ムサイ本体から切り離してモビルスーツや人員を輸送する事もできる。
ただし、艦本体の火力は連邦軍の同クラス艦艇サラミス級に比べて明らかに劣っているとされている。一説では、サラミス級をも凌ぐ火力があると示唆する記述もあるので、その砲撃能力を一概に説明することは出来ない。初期型では対空兵装が存在せず、艦尾方向へ指向する火砲も装備されていなかった。本級の軽巡洋艦で後部兵装が搭載されるのは、最終生産型のみである。この基本的な戦闘力の欠如が一因であろうか、大戦初期においてはルウム戦役に投入された本級はそのほぼ全てを喪失するという憂き目を見ている。
ムサイ級にはさまざまな形が見受けられ、続編である『機動戦士Ζガンダム』にはティターンズ側についたジオン共和国軍の艦船としてムサイ改級が、OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』には後期型のなかでも最後期型に分類される形状に大規模な改修が加えられた艦が登場する。ただし、これは作品内の事情よりも、古いデザインを最近のデザイナーがリメイクしたという側面が強い。
THE ORIGINでは輸送船を改装した巡洋艦として登場している。MSの運用を前提に建造された訳では無いが、元々が輸送船なのでMSの運用能力は問題ないとされている。
この艦の設計思想は後にも受け継がれ、ティターンズのアレキサンドリア級巡洋艦にもその面影を見る事ができる。
[編集] 諸元
- 全長:234.0m、全幅:103.2m、基準排水量:13000トン、満載排水量:26200トン、主機:熱核ロケットx双発推進
特別な改装を施されていないU.C.0079年時の最も標準的な艦容である。
- 兵装
- ムサイ(ノーマル):連装メガ粒子砲×3、大型ミサイルランチャー×2、小型ミサイルランチャー×10
- ムサイ後期型:連装メガ粒子砲×5、連装155㎜機関砲×10、ミサイルランチャー×10
- ムサイ最終型:連装メガ粒子砲×2
- ムサイ改:連装メガ粒子砲×3、大型ミサイルランチャー×2、小型ミサイルランチャー×10、単装機関砲×2
[編集] 艦種の議論
現実世界での「軽巡洋艦」(英語略称「CL」)とは本来、第一次ロンドン軍縮条約で巡洋艦の排水量、主砲口径、保有総トン数等が制限された際便宜上儲けられた艦種名であり、主砲口径15.5センチまでの巡洋艦のことである。基準排水量1万トン以内、主砲口径20センチまでの艦は「重巡洋艦」と呼ばれる。
宇宙世紀では同じ名前で、独自の定義の「軽巡洋艦」が設定された可能性もあるが、今のところこの件に触れている商業メディアは無い。また、ロシア(旧ソ連)は、政治的事情から空母のことを「大型航空重巡洋艦」と呼称し続けている。
資料によってはムサイ級の艦種を軽重問わぬ「巡洋艦」とし、キャメル艦隊の主砲2基型艦のみを「軽巡洋艦」としている場合もある。
昨今の資料ではキャメル艦隊のものを含めムサイ級の艦種の略称を「CC」としており、これらは本級を単に「巡洋艦」として扱っている模様である。
[編集] 艦名
以下は、劇中で名称の判明している艦である。これ以外にも、名称不明の艦が多数登場した。
[編集] ファルメル
「シャア専用ムサイ」とも呼ばれる。『機動戦士ガンダム』冒頭でシャアが指揮をしていたムサイ級の艦艇。通常のムサイの艦橋が平たい形状なのに対して、ヘルメット状の特異な形状をしている。もともとはドズル・ザビの乗艦だったが、ルウム戦役でのシャアの功績により、この艦を譲り受けた(画像)。
なお、ファルメルという艦名は、かなり後年になってからつけられたもので、TV版、劇場版当時は「シャア専用ムサイ」とだけ呼ばれていた。
[編集] キャメル
『機動戦士ガンダム』に登場。
ドレン大尉指揮するキャメル・パトロール艦隊の旗艦で、リックドムを搭載する。元上官であるシャア大佐の要請により、ホワイトベースに艦隊戦を挑むが、ガンダムにより沈められた。
なお、キャメル・トクメル・スワメルは本来連装三基の主砲塔が二基しか描かれていない。これは単なる作画ミスと推測され、TV版では、ビームは普通のムサイ同様三対発射されていた。しかし、放映後に「主砲塔を二基に削減した戦時急造の『後期型』ムサイ級があった」という設定が付け加えられた。
[編集] トクメル
『機動戦士ガンダム』に登場。
ドレン大尉指揮するキャメル・パトロール艦隊に所属。ホワイトベースとの艦隊戦の際、ホワイトベースの砲撃により沈められた。
[編集] スワメル
ドレン大尉指揮するキャメル・パトロール艦隊に所属。ホワイトベースとの艦隊戦の際、ガンダムの攻撃により沈められた。
[編集] クワメル
『機動戦士ガンダム』に登場。
コンスコン少将指揮するコンスコン機動部隊に所属。中立区域のサイド6から出港するホワイトベースとの砲撃戦で真っ先に沈められた。ホワイトベースを包囲するために単艦で迂回行動をとったが、本隊が先走って戦火を開いてしまった。その結果、交戦の禁じられたサイド6の空域からまだ出ていないクワメルは絶好の標的になってしまい、不幸にも満足な抵抗も出来ず撃沈された。
[編集] バロメル
『機動戦士ガンダム』に登場。
マ・クベ大佐指揮するソロモン救援艦隊(マ・クベ艦隊)に所属。テキサスコロニー宙域においてマ・クベ大佐がガンダムとの一騎討ちに出た後、旗艦艦長デラミン准将の指揮下で行動するが、ホワイトベースの砲撃により大破、後撃沈される。
[編集] ワルキューレ
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場。艦名の由来は北欧神話に出てくる神『ワルキューレ』から。
ルビコン作戦の一環としてリボーコロニーへの核攻撃を行うフォン・ヘルシング大佐のグラーフ・ツェッペリンの護衛に就く。THE ORIGINではファルメル以上の改修をされており、ドズル・ザビの乗艦になっている。
[編集] ジークフリード
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場。艦名の由来は『ニーベルンゲンの歌』の主人公ジークフリートと推測される。
ワルキューレと同じく、グラーフ・ツェッペリンを護衛。なお、ヘルシング艦隊は往路途上で連邦軍と遭遇して護衛艦1隻を失い、中立国への核攻撃という暴挙を行うことなく投降している。どちらが沈められたかは不明。
[編集] ペールギュント
『機動戦士ガンダム0083 STAR DUST MEMORY』に登場。アナベル・ガトーの搭乗艦。艦名の由来はヘンリック・イプセンが1867年に作った戯曲(劇詩)『ペール・ギュント』から。
後期型をさらに改装強化した最後期型ムサイ。ペール・ギュント以外にも何隻かの最後期型がデラーズ・フリートやシーマ艦隊で確認されている。なお、ムサイ伝統の緑ではなく、カーキ色に塗装されている。
[編集] ハボック
MS-06R-3Sを使用した公国軍初のビームライフル試射実験を行った実験艦隊の所属艦。実験中に連邦軍MS部隊の襲撃により撃沈される
[編集] ホーカム
MS-06R-3Sを使用した公国軍初のビームライフル試射実験を行った実験艦隊の所属艦。
[編集] シュレスヴィヒ
『機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079』に登場。
ブリティッシュ作戦の際は、単縦陣を取る第32戦隊に所属している。当艦の撃沈により、第32戦隊の単縦陣が崩れたことから、第32戦隊にとって重要な位置を占める艦だった可能性が高く、旗艦だとの見方もある。
また、劇中、最初に連邦軍艦隊の砲撃により撃沈されたムサイ級巡洋艦であるほか、MS用カタパルトが設置されていない事から、最初期に建造された艦と推測される。
[編集] ケンプテン
『機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079』に登場。
第91パトロール艦隊所属。僚艦1隻のみと行動していることから、第91パトロール艦隊本体所属ではなく、別働隊所属の可能性が高い。
ア・バオア・クー戦においてEフィールドを横断するヨーツンヘイムを先導、護衛する任に付いた。しかし、Eフィールドの目標地点手前を横断中に敵艦隊と遭遇、僚艦が艦橋の右側根元に連邦のメガ粒子砲の直撃に遭い、撃沈される。が、当艦とヨーツンヘイムは、敵艦隊の間隙をぬうことに成功し、護衛目標であるヨーツンヘイムと共に無事目標地点に到達、オッゴ10小隊のヨーツンヘイム発艦を見届けた。だが、その直後に現れた新たな敵艦隊の2発のミサイル攻撃が直撃し、撃沈されている。
[編集] ノルトハウゼン
『機動戦士ガンダム MS IGLOO 黙示録0079』に登場。
ア・バオア・クー戦においてEフィールドをヨーツンヘイムと共に防御していた説と、NフィールドからEフィールドを抜け、本国のサイド3へ撤退中のデラーズフリート艦隊の一隻もしくは別の所属だった説がある。耐久性能の臨界点を突破し、撃沈している。
[編集] コムサイ
ムサイ級の前部に搭載されている宇宙往還機(画像)。大気圏突入カプセルと呼ばれるが、実際はそれなりの機動性を有するリフティングボディ機である。ガイドレールをつかってムサイから射出されることで初速を得るため、姿勢制御以外の燃料消費無しで地球帰還が可能。
ザクを2機搭載できる貨物スペースの左右に軌道エンジンと制御エンジンブロック、武装であるマシンガンブロックおよび小デルタ型の水平安定板と延長保持された垂直安定板がつく構造である。これだけのスペックを持ちながら、ガウ攻撃空母に収まるコンパクトさを誇る。
気密キャビンは衝撃波の内側に入るよう上部中よりに取り付けられているため、着陸時には有視界飛行は不可能。のちに機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY登場時にはポップアップ式に改良され視界は大きく向上した。
地球からの脱出には、「マスドライバー+ブースター」「空中発射機+ブースター」「有翼ブースター」などの組み合わせがあると推測されるが、劇中で描かれたことはない。機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY登場時は、有翼ブースターらしき物を装着していたように見えたが、離陸直後撃墜されている。
貨物室は、後部に気密通路付ハッチ、上部に片持ちハッチ、下部に観音開きハッチと3方向の開口部がある。このため、空中での貨物投下を含め、どのような姿勢でも荷物の搬出入ができる。
- 漫画版機動戦士ガンダム THE ORIGINでの改変
- ザクが4機搭載可能な大型の降下カプセルが登場する。これは3機のザクが登場するシーンにも係らず、2機しか収容できないコムサイでは木馬降下妨害作戦に参加するパイロットが納得しないだろうという理由によるものである。
- 装備した際の不釣合な外観からドレンに「ハハコムサイ」と呼ばれていた。
[編集] 設定解説
名前の元ネタについては諸説ある。一つは、旧大日本帝国海軍戦艦武蔵からきているというもので、同じ富野監督作品である『伝説巨神イデオン』に登場する宇宙戦艦「ムサッシ」もそのように連想できる。もう一つは、ギリシャ神話の神ゼウスと女神ムネモシュケの間に生まれた姉妹達の総称「ムサイ」からの命名とするものである。
三角錐状に曲線で構成された独特の形状と、作中でもジオン側艦船としてはほぼ最初から最後まで出ており数も多いことから、非常に印象に残る。ロボットアニメ史上初の量産型艦艇でもある。
基本デザインはアメリカのテレビシリーズ“スタートレック”に登場する宇宙船“エンタープライズ”の引用である。これを上下反転させ、細部の変更や武装の追加が行われている。エンタープライズのスワン型に対して逆スワン型宇宙船と呼ばれる。『機動戦士ガンダム記録全集』などに掲載されている準備稿では司令室が最下部にあったが、諸般の事情により反転された。
[編集] 関連項目
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地球連邦軍 / エゥーゴ / ティターンズ 所属艦船の等級 | |
サラミス - マゼラン - ペガサス - パブリク - コロンブス - バーミンガム - アイリッシュ - アーガマ - ネェル・アーガマ - アレキサンドリア - ドゴス・ギア - ジュピトリス - ラビアンローズ - クラップ - ラー・カイラム | |
ジオン公国 / ネオ・ジオン / 火星独立ジオン軍 所属艦船の等級 | |
ムサイ - ザンジバル - チベ - グワジン - ドロス - パプア - パゾク - ヨーツンヘイム - エンドラ - グワダン - グワンバン - サダラーン - ムサカ - レウルーラ - RFムサイ | |
クロスボーン・バンカード 所属艦船の等級 | |
ザムス・ガル - ザムス・ギリ - ザムス・ジェス - ザムス・ナーダ - マザー・バンガード | |
ザンスカール帝国 所属艦船の等級 | |
スクイード - アマルテア - カリスト - アドラステア - リシテア |
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ガンダムシリーズの映像作品 | ||||||
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ガンダムシリーズの劇中項目 | ||||||
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