マルクス・ヴォルフ
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マルクス”ミッシャ”・ヴォルフ（Markus Johannes "Mischa" Wolf, 1923年1月19日 - 2006年11月9日）は、ドイツ民主共和国（東ドイツ）の職業的諜報員。大将。在ソ時代は、ミハイルと呼ばれていたため、ミーシャという仇名がある。
東ドイツの国家保安省（シュタージ）の対外諜報部門の長を30年以上に渡って務めた人物（在任期間1952年12月 - 1986年5月30日）。伝説的なマスター・スパイであり、在任時代は、様々な諜報手法を駆使して、西ドイツの防諜機関を完全に翻弄した。スパイ小説では、しばしば、敵役のモデルにもされている（ジョン・ル・カレの小説に出てくる「カーラ」等）。
[編集] 経歴
1923年、ドイツ南部のヘッヒンゲンに生まれる。父（フリードリヒ・ヴォルフ）は医者で、文学者としても知られ、共産主義者だった。マルクスは映画監督コンラート・ヴォルフの兄でもある。一家はユダヤ系であり、1933年にナチスの迫害を避けてフランスに移住し、1934年にはソ連に移住した。
ソ連でヴォルフは、モスクワ航空大学に入った。1942年からコミンテルンの第101破壊工作学校（バシキリア村所在）で破壊工作の訓練を受け、コミンテルン解散後は、対ドイツ工作のラジオ局「ドイッチャー・フォルクスゼンダー」(Deutscher Volkssender) の編集長・コメンテーターとなった。
1945年6月、東ドイツのベルリン・ラジオの特派員となり、ニュルンベルク裁判を取材した。1949年11月、在ソ東独大使館一等参事官。
1951年8月、シュタージの対外政治諜報部門に編入。1952年12月、同部門の長に任命。1958年、シュタージに、対外諜報を担当する「A」総局 (HVA)が創設され、「A」総局長兼国家保安省次官に就任。
ヴォルフの指揮の下、シュタージは、世界有数の諜報機関に発展した。長い間、西側諜報機関は、誰がシュタージの諜報部門を指揮しているのか特定できず、彼の顔写真が1979年に『デア・シュピーゲル』誌の表紙に載せられるまで、ヴォルフは「顔のない男」と呼ばれた。
その事に関してヴォルフはジャーナリストのガッド・シムロンに「何も隠れてたわけじゃない。本当言うと単に西ドイツの連中が馬鹿だった。何年も公的式典には参加してた。真ん中じゃなく端の方で。連中そっちは探さなかったんだ。」と告白している。
1986年5月30日、シュタージを辞職。ドイツ統一後、ヴォルフはオーストリア、後にソ連に移住した。1991年9月に帰国し、国家反逆の容疑で逮捕され、1993年末、懲役6年の判決を受けた。判決は、1995年に取り消された。1997年、誘拐の罪で禁固2年を言い渡された。その後、ドイツに在住。引退後は、CIA、モサド、MI6から顧問として招聘を受けたが、何れも応じなかった。2006年11月9日、死去。享年83だった。
[編集] パーソナル
3度の結婚歴があり（最後の妻はアンドレア）、子供4人、孫11人、ひ孫2人がいる。孫には、ロシア式の名前をつけており、また、死の直前には破壊工作学校があったバシキリア（2004年と2006年に同地を訪問している）に別れを告げた。
「異国でのゲーム」、「自らの意思により」、「友人は死なず」等の著作がある。
