フェレット
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Mustela putorius furo | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
フェレット | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
ferret |
フェレット (英:ferret) は、イタチ科に属する肉食性の哺乳小動物である。 イタチの一種であるヨーロッパケナガイタチから家畜化されたもので、古くからヨーロッパで飼育され、現在は世界中で飼われている。 狩猟、実験、毛皮採取、愛玩用に用いられる。 同じイタチ科の仲間には、ほかにイタチ、カワウソ、アナグマなどがある。 体長は、成体で35~50 cmほど。メスの方が小さい傾向にある。 毛色はさまざまだが、野生のヨーロッパケナガイタチと異なり、一般に白色か薄い黄色であることが多い。また、このことからシロイタチとも呼ばれる。 寿命は6~12年である。
目次 |
[編集] 歴史
フェレットは野生のヨーロッパケナガイタチ(Mustela putorius)を改良したものとされているが、詳細は不明であり、3000年ほど前から飼育されていたと考えられている。学名 M. p. furo は、ヨーロッパケナガイタチの亜種の扱いである。また、 M. putorius の亜種とせず、M. furo とされる場合もある。
その昔、ヨーロッパにおいて、フェレットは狩りに珍重されていた。フェレットがウサギや齧歯類などの獲物を巣穴から追い出し、それを猟師が狩るという方法で、今でもイギリスやオーストラリアでは続いている。 また、ネコと同様、ネズミ退治にも利用された。
電気が普及すると、フェレットに電線やケーブルに繋いだ紐を繋ぎ、狭いところの配線を手伝わせていた。最近では、泳ぎがうまいフェレットの特性を利用して、大陸間海底ケーブルの施設にも貢献している。
現在は、アメリカ・カナダ・ニュージーランド等に、ペット等としてのフェレットを繁殖させる大規模なファームがあり、出身ファームごとに「マーシャル」、「パスバレー」、「カナディアン」、「ミスティック」、「サウスランド」、「マウンテンビュー」などと、ファームの名称が冠されて販売されている。ただし、犬・猫のように明確な品種の差があるわけではなく、基本的には全て同様のフェレットであるが、ファームにより体格・性格・毛色等の傾向に一定の差があり、それぞれにファンがついている。
なお、近年新たなファームが出現と消滅を繰り返している状況で、一時アジア、オセアニア圏の新興ファームが日本向けに生体を輸出したこともあった。また、現在では中国で繁殖された個体もペットとして輸入、販売されている。
コンパニオン アニマルとしての繁殖、飼育以外に、実験動物としてもフェレットは世界中で広く飼育されている。
[編集] ペットとしてのフェレット
フェレットの行動は、まるで成長しない子猫のようであり、一生活発で好奇心が強い。しかしフェレットは、一般的にネコよりも人間になつき、飼い主との遊びを好む。
飼い主から離れたフェレットが自然界で生き延びることができる可能性は非常に低いと今までいわれてきた。また、ペットのフェレットは、発情期に体臭が非常に強くなったり、凶暴になることを嫌う飼い主が多いため、大手供給社のペットは去勢・避妊されている。このような理由から、逃げ出したフェレットが野生化して増え、群れを形成するという心配はないといわれてきた。
しかし、近年、フェレットの人気上昇と平行して、捨てられた(あるいは逃げ出した)個体も増加し、住宅街の一角で複数のフェレットがじゃれあって飛び回っているのを目撃する例もでてきた。非去勢フェレット個体が野外に増えた場合、フェレットがアライグマのように外来侵入種として定着して社会問題化するのも時間の問題かもしれない。
[編集] アンゴラフェレットについて
前述したように、一般的にフェレットには犬・猫における犬種・猫種のようなものはなく、主に出身ファーム、披毛のカラー・パターンなどで分類される。品種差で分類される例外的なフェレットとしては、北欧で突然変異的に発生した披毛が極端に長くなる個体の遺伝的性質を、選択的な繁殖によって人為的に固定した「アンゴラフェレット」が挙げられる。この種類のフェレットは、その体格、骨格、性質などの面で他の一般的なフェレットと異なる点が多いと言われる。
特に目立つ差異としては、前述したように披毛が非常に長くなること (ただし個体差があり、非常に長い披毛を持つものから、一般的なフェレットと変わらないものまでいる)、鼻の形が独特で、鼻腔内や鼻の表面にも短い毛が生えていること (こちらも個体差があり、一般的なフェレットと変わらないものもいる) 等が挙げられる。また、性格がきつく、攻撃的でなつきにくい個体も多いと言われている。これらの性質のため、アンゴラフェレットの飼育者には、その性質をよく理解し、その特性を生かす形での飼育が求められる。
なお、北米や日本で開催されるフェレットショーにおいては、アンゴラフェレットは一般的なフェレットとは異なるものとされ、原則として出場できない。ただしアンゴラの人気が高く、飼育頭数の多い日本においては、特例的にアンゴラフェレットに特化したクラスが設けられており、このクラスにのみ出場することができる。なお、ヨーロッパなどで開催されているフェレットショーはこれらとは全く異なる基準で行われているため、出場制限のない場合もある。
[編集] 飼う際の注意
フェレットは壁の穴や戸棚、電化製品の裏側に好んで入りこむ。そのため、ファンや配線が露出していないか、暖房の排管がないか、危険な物が落ちていないか、などに留意する。また、落ちているものを運んだり噛んだりする。小さな物であれば飲み込んでしまう可能性もあるため、床の上やフェレットの手の届くところには、危険なものを置いてはいけない。
また、フェレットは布団や毛布などの間に潜り込むのが好きであるため、座る前にはフェレットが寝ていないか確認しなくてはならない。
フェレットにとっての適温は一般的15℃から22℃と言われている(多少の個体差有り)。目安としては、フェレットの体感温度は実気温+10℃。
汗腺が全くない(生まれた直後は肉球にのみあるが、生後数日で消失)ので夏の暑さにとても弱く、室温が28℃を越えると熱中症になる危険があるので、日本で飼う場合は一部の地域を除いて5月ごろから天気によってはクーラーを入れ、梅雨が明けたら24時間クーラーをかけ続ける覚悟をしないとならない。
クーラーをかける時は風の向きに注意する。温度は厳重に管理したものの、クーラーの風が直撃していたのに気づかず肺炎になってしまったという悲しい話もある。
また、夏でなくても直射日光は厳禁(気温は低くても体感温度が上がる)。冬でもよく晴れた日に窓際にケージを長時間置いて熱中症になったというケースがある。
ペットショップで店員に「フェレットは犬や猫より飼いやすいですよ」などと言われても、それを真に受けてはならない最大の原因がこの温度調節の問題である。
フェレットについてあまり知識のないままインターネットなどを通じてフェレットを譲り受けてしまい、届いてみるとまだ避妊、去勢、臭腺除去の手術がされておらず、その臭いや発情行動にとても耐えることができず、やむ無くそのまま処分することになってしまった、という飼い主、フェレット共に悲劇的なケースもあり、フェレットを飼育する場合は信頼できる入手先かどうか特に注意する必要がある。
[編集] フェレットの病気
耳をかきむしる・食欲不振・下痢・嘔吐・脱毛・陰部の腫れ・鼻水・便の異変・肉球の硬化等、いつもと違うことがあれば「病気」の可能性がある。病気の早期発見は、飼い主の日ごろの観察によるものである。フェレットのような体の小さい動物は、ちょっとしたことが命取りになる。また、転落や異物の飲み込みも、好奇心の旺盛なフェレットに多い事故である。
フェレットをペットとして飼育する場合、最寄りの動物病院で、必ずアレルギー検査の後、「フィラリア予防・ジステンパー予防接種」をうける。また、フェレットを診察できる動物病院は日本ではまだ少ないので、飼い始める前に何件かの動物病院をピックアップしておき、健康診断等の名目で連れて行って最も信頼できる病院をかかりつけの病院にするとよいだろう。
- ジステンパー
- 正確には「犬ジステンパーウイルス感染症」といい、犬に感染するタイプと同じウイルスがフェレットに感染して起こる病気である。ほかに、アライグマ科の動物にも感染する。ウイルスを含んだ糞や目・鼻の分泌物が空気中に飛散し、予防接種をしていない個体がこれを吸い込んだり接触することで感染する。治療方法はなく、死亡率はほぼ100%。念のため、接種後30分は様子を見るべきである。
- フィラリア
- 犬の病気として知られており、フィラリア(犬糸状虫)と呼ばれる寄生虫が心臓に寄生する病気である。すでに感染している犬の血液を吸った蚊が「媒体」となり、別の犬もしくはフェレットから吸血した際に寄生虫(フィラリアの幼虫)が移ることで感染する。フェレットの場合は、数匹のフィラリア幼虫が寄生しただけで、重度の心不全の症状が現れ、元気がなくなったころに病院に連れて行っても手遅れの場合も多く、死に至る。ジステンバーとともに、フェレットにとって死亡率の高い病気である。
- 副腎腫瘍
- 副腎腫瘍は他の病気を併発することもあり、副腎に腫瘍ができることでエストロゲン、テストステロンなどの性ホルモンが過剰分泌され、さまざまな症状が現れる。主な症状として、脱毛、メスの生殖器の腫大、去勢済みのオスの前立腺疾患(尿もれ等)、その他皮膚の乾燥や貧血、体重減少などもある。この場合の腫瘍は「良性」のものが多く、転移も起こりにくいといわれているが、「悪性腫瘍(癌(がん))」の場合もある。フェレットは比較的腫瘍のできやすい動物である。フェレットの半数以上が、(良性・悪性を問わず)何らかの腫瘍にかかるとも言われている。しかし、悪性の場合でも、腫瘍の種類もさまざまなので、早期発見で助かる命があることも事実である。
- 去勢・避妊
- 発情したメスは交尾をしないと排卵できないため、エストロゲンの過剰分泌の状態が続き、その結果命に関わることがあるので、繁殖予定の無いメスには避妊手術を施す必要がある。オスの場合は去勢しなくても問題は無いが、ペットとして飼育する場合、体臭がきつくなったり気性が荒くなったりして、尿でマーキングすることもある。現在市場に出回っている個体のほとんどは「去勢・避妊」されているものである。
- 臭腺
- 元来がイタチ科であるフェレットの肛門脇には臭腺があり、外敵に襲われた時や興奮した際などにスカンクのように非常に臭い液を飛ばす。「イタチの最後っ屁」とも呼ばれる自己防衛行動である。前述のしっかりと管理された大手メーカー・ファームにより繁殖されたものであれば、除去済み生体がショップで販売されているが、個人のブリーダーや繁殖元が不明のものだと、除去手術されていない場合もある。また、除去手術がされてあっても、きちんと抜糸されていないこともある。また、個人繁殖により生まれた子供全てにも当然のことながら、臭腺があるのでそれなりの覚悟を。
- ノミ・耳ダニ・その他
- ネコなどにも見られる「ノミ」だが、フェレットが頻繁に体をかゆがる場合は、寄生していることが考えられる。フェレット用のノミ取りシャンプーなどが手軽で便利である。赤黒い耳アカが多い場合は、耳ダニが発見される場合がある。耳の分泌物が多い個体によく発見されるが、比較的簡単に駆除できる。その他、個体によっては「ハウスダスト(埃)」に敏感なものもいる。
- 中毒を起こしたり、病気の原因となる食物
- チョコレート、タマネギなど。
- チョコレートの場合、原料のカカオ由来のアルカロイドであるテオブロミンの覚醒効果が原因で中毒を起こす。これは、テオブロミンを体内で代謝する能力が低いため、一旦フェレットがテオブロミンを含む食物を摂取すると、長時間にわたって高濃度のまま体内に留まるためである。チョコレートをうっかり1枚食べさせてしまい、死んでしまったという症例もある。近くに置かないように。
- タマネギなどのネギ類の場合、含有するアリルプロピルジスルフィドなどの硫化物がヘモグロビンを変性させることにより、赤血球を破壊し、溶血性貧血を発症させる。一般にタマネギ中毒と呼ばれるが、タマネギ以外にも長ネギ、ニンニク、ニラなどのネギ類の摂取によっても発症するので注意が必要である。アリルプロピルジスルフィドなどのネギ類に含まれるスルフィド類は水溶性であり、加熱しても分解されないため、直接原因となるネギ類を食べさせなくても、そのエキスを含む食品を摂取するだけで発症する可能性があるため注意を要する。
- また、緑茶、コーヒー、紅茶などに含まれるカフェインもテオブロミン同様の覚醒効果を持つため (カフェインとテオブロミンは類似した構造を持つ)、これらの飲料を飲ませることも避けるべきである。
- その他の人間が口にする食品や飲料などについても、フェレットにしてみれば塩分や糖分が過剰に含まれているため、このような物を日常から摂取していると、人間で言うところの生活習慣病に近い病気に罹りやすくなることが考えられる。このため、人間の食べ物や飲み物は原則としてフェレットには口にさせないようにするのが賢明である。
[編集] フェレットが登場する作品
[編集] (小説)
- フェレットの冒険1 新潮社 (2008/01) ISBN-10: 4105058037
- フェレットの冒険2 新潮社 (2008/01) ISBN-10: 4105058045
- いたずらフェレットは容疑者 [ペット探偵2] ランダムハウス講談社 (2007/8/2) ISBN-13: 978-4270101131
- 虚航船団 (筒井康隆、1984 年) - 文具船の乗員が攻撃を加える鼬の惑星の住人についての記述に「フェレット」の言及がある。なお、作中この惑星は「凶暴なイタチ十種」の住む流刑地として描かれているが、フェレットそのもの、あるいはその性質についての描写はほぼ皆無である。
[編集] (映画)
- 「ライラの冒険 黄金の羅針盤」
- 「キンダガーデン・コップ」
- 「ドクタードリトル」