ビッチェズ・ブリュー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビッチェズ・ブリュー | ||
---|---|---|
マイルス・デイヴィス の アルバム | ||
リリース | 1970年4月 | |
録音 | 1969年8月19日-8月21日 ニューヨーク | |
ジャンル | ジャズ、フュージョン | |
時間 | 94:11 | |
レーベル | コロムビア・レコード | |
プロデュース | テオ・マセロ | |
専門評論家によるレビュー | ||
マイルス・デイヴィス 年表 | ||
イン・ア・サイレント・ウェイ (1969) |
ビッチェズ・ブリュー (1970) |
ライヴ・イヴル (1970) |
ビッチェズ・ブリュー(Bitches Brew)とは、ジャズ・トランペット奏者マイルス・デイヴィスが1970年に発表した2枚組のアルバム。前作『イン・ア・サイレント・ウェイ』に引き続き、エレクトリック・ジャズ路線を押し進めた内容で、ジャズのみならず音楽シーン全体に衝撃を与えた。マイルスのアルバムとしては初めて、本国アメリカでゴールド・ディスクに達した。その後も売れ続け、『カインド・オブ・ブルー』と並ぶマイルス最大のヒット作と言われている。
目次 |
[編集] 解説
ほぼ全編16ビートを基調としており、単にエレクトリック楽器を使ったというだけでなく、リズム面でもジャズ界に革命をもたらした作品。よく「ジャズとロックを融合した先駆的なアルバム」と言われるが、音楽的にはファンクからの影響も強い。ドラマー2人とパーカッション奏者2人を起用することで、多彩なリズムを積み重ねていった。マイルスが1970年代に制作・発表したアルバムはおおむね、本作の路線を継承している。
27分に及ぶ「ビッチェズ・ブリュー」を筆頭に、どの曲も10分を超える大作となっている。唯一「ジョン・マクラフリン」のみ5分未満だが、これは、「ビッチェズ・ブリュー」があまりに長いため、プロデューサーのテオ・マセロが一部を切り取り、単体の楽曲として独立させたもの。タイトル通り、ジョン・マクラフリンのギターが中心となっている。
メンバーは、前作『イン・ア・サイレント・ウェイ』にも参加した面々を中心に、マイルス・バンドの新ドラマーとなるジャック・ディジョネットや、リターン・トゥ・フォーエヴァーでも知られるレニー・ホワイト、後にジャコ・パストリアスと活動するドン・アライアス等も加えた、大編成となっている。後のフュージョン・シーンで活躍する名プレイヤー達が群雄割拠した作品とも言える。なお、本作はウェイン・ショーター在籍時としては最後のスタジオ・アルバムで、ウェインはその後、ジョー・ザヴィヌルと共にウェザー・リポートを結成。
[編集] ボーナス・トラック
CDでは、ウェイン・ショーター作曲の「フェイオ」が追加されているが、これは1970年1月に行われた、全く別のセッションで録音されたもの。メンバーも多少異なり、レニー・ホワイトやハーヴェイ・ブルックス等は不参加で、後にマハヴィシュヌ・オーケストラに参加するビリー・コブハム(ドラム)や、第一期リターン・トゥ・フォーエヴァーに参加するアイアート・モレイラ(パーカッション)が参加。
[編集] 収録曲
ディスク1
- ファラオズ・ダンス - Pharaoh's Dance(Joe Zawinul)
- ビッチェズ・ブリュー - Bitches Brew(Miles Davis)
ディスク2
- スパニッシュ・キー - Spanish Key(M. Davis)
- ジョン・マクラフリン - John McLaughlin(M. Davis)
- マイルス・ランズ・ザ・ヴードゥ・ダウン - Miles Runs The Voodoo Down(M. Davis)
- サンクチュアリ - Sanctuary(Wayne Shorter)
- フェイオ - Feio(W. Shorter)
[編集] 演奏メンバー
- マイルス・デイヴィス - トランペット
- ウェイン・ショーター - ソプラノ・サックス
- ベニー・モウピン - バスクラリネット
- ジョン・マクラフリン - エレクトリックギター
- ジョー・ザヴィヌル - エレクトリックピアノ(左チャンネル)
- チック・コリア - エレクトリックピアノ(右チャンネル)
- ラリー・ヤング - エレクトリックピアノ(on「ファラオズ・ダンス」「スパニッシュ・キー」)
- デイヴ・ホランド - エレクトリックベース
- ハーヴェイ・ブルックス - エレクトリックベース
- レニー・ホワイト - ドラム(左チャンネル)
- ジャック・ディジョネット - ドラム(右チャンネル)
- ドン・アライアス - ドラム(on「マイルス・ランズ・ザ・ヴードゥー・ダウン」)、コンガ
- ジム・ライリー - パーカッション
[編集] リリース後のライヴ活動
マイルスは、本作が発表されると、敢えてロック・ファンを視野に入れたライヴを行った。1970年6月後半には、チック・コリア、デイヴ・ホランド、ジャック・ディジョネット、アイアート・モレイラ、新たに加入したキース・ジャレット(オルガン)とスティーヴ・グロスマン(テナー・サックス)を従え、ロックの殿堂として知られる「フィルモア・イースト」に4日連続出演。本作からは「ビッチェズ・ブリュー」や「サンクチュアリ」が演奏された。この模様は、後に2枚組ライヴ・アルバム『マイルス・アット・フィルモア』として発売される。
更に同年8月29日には、サックス奏者がゲイリー・バーツに交替した布陣で、ワイト島音楽祭に出演。この年の同フェスティバルは、ジミ・ヘンドリックスやザ・フーの伝説的な演奏が有名で、また、EL&Pの実質的なデビュー・ライヴとしても知られる。マイルスは、『ビッチェズ・ブリュー』からの3曲も含むメドレーを演奏した。そのタイトルは「Call It Anything」。「どうとでも呼んでくれ」という意味で、マイルスらしいアイロニーと言える。この時の演奏は、オムニバスCD『ワイト島1970』に収録されたが、マイルス名義のアルバムには、現時点では未収録(フランス制作のコンピレーション・アルバム『ISLE OF WIGHT』に収録されたが、すぐに廃盤となりCD化もされていない)。しかし、DVD『マイルス・エレクトリック』で、映像も含めて入手可能となった。
[編集] 参考文献
- 地球音楽ライブラリー マイルス・デイヴィス(TOKYO FM出版、ISBN4-88745-074-5)