マハヴィシュヌ・オーケストラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マハヴィシュヌ・オーケストラ(The Mahavishnu Orchestra)はジャズ・ロック、フュージョンのバンド。ジャズ、ロックを高度なアンサンブルで融合、インド音楽のエッセンスも加え、ヴァイオリンもリード楽器として取り入れた音楽性は1970年代当時のジャズ・ロック勢の中でも異彩を放っていた。
[編集] 第一次マハヴィシュヌ・オーケストラ
第一次マハヴィシュヌ・オーケストラは1970年にジョン・マクラフリンの主導の下で結成される。メンバーはジョン・マクラフリン(g)、ビリー・コブハム(ds)、リック・レアード(b)、ヤン・ハマー(key)、ジェリー・グッドマン(vl)。1971年にアルバム「内に秘めた炎(The Inner Mounting Flame)」でデビュー、2作目の「火の鳥(Birds of Fire)」が高評価を得て人気バンドとなった。
ジャズ・フュージョン、ジャズ・ロックの草分け的バンドである。マクラフリンとコブハムの二人はマイルズ・デイヴィスの下で音楽活動をしていたときに知り合い、新バンドを立ち上げる相談を始める。同時期にマクラフリンはヒンドゥー教の導師シュリ・チンモイに宗教的に師事して「マハヴィシュヌ」という名前を与えられていた。マハヴィシュヌ・オーケストラの名前はここに由来している。
マクラフリンは数々の斬新な音楽的アイデアを持っており、音の追求のためにマハヴィシュヌでは、それまでのジャズ・ロックで使われたことのない数々の楽器が導入されている。リード・バイオリニストとしてジェリー・グッドマンが加入したのはその最たる例だが、マクラフリンはマハヴィシュヌでの彼のトレードマークとなったダブルネックのエレキギター(ジミー・ペイジとほぼ同タイプのもの)へとギターを交換し、ヤン・ハマーもそれに対抗してモーグ・シンセサイザーを導入するなど、それぞれ手段を選ばずアグレッシブに自分の理想とする音を模索した。それによって生まれた彼らの音楽は他に前例のない独特なものである。ジミ・ヘンドリックスを思わせるディストーション・サウンドのギター、マクラフリンが興味を抱いているインド音楽やファンク、ジャズなどの即興演奏や、果てはクラシック音楽の和声法までもがその中に取り入れられており、またキング・クリムゾンやPFMなどと楽器編成が近かった事もありプログレッシブ・ロックの視点で語られる事も多い。初期の曲は完全なインストゥルメンタルのみであったが、後期にはリズム・アンド・ブルース、ゴスペル、賛美歌などに似た形式のボーカルも取り入れるようになる。
その後メンバー交代によってジャン=リュック・ポンティ(vl)やナラダ・マイケル・ウォルデン(ds)らが加入。1976年で一旦解散するが、1984年にマクラフリンはバンドを再結成し、2枚のアルバムを発表した。