エレクトリックピアノ
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エレクトリックピアノ(電気ピアノ)とは、通常のピアノと同様に鍵盤と機械的な打弦メカニズムを持ち、それによって叩いた発音体の振動を電気的に検出増幅して、その出力音声信号をアンプスピーカーを通して再生する鍵盤楽器である。普通のピアノと違い、使用する際には何らかの形で電力を必要とする。
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[編集] 混同されやすい楽器について
エレクトリックピアノは機械的な打弦メカニズムを持つ。そのため、音声信号そのものを電子回路によって生成する、電子ピアノ(デジタルピアノ)やシンセサイザー等は全く別の楽器である。電子ピアノやシンセサイザーでは、生成する音色の一つにエレクトリックピアノが選択できる場合があるが、これは、エレクトリックピアノの音色を電子的に再現するものである。(これらの楽器の比較は電子ピアノの項目を参照。)
また、オンド・マルトノの開発者モーリス・マルトノが1931年に来日した際、新聞に「電波ピヤノ」という紹介記事が書かれたが、これはオンド・マルトノのことであり、本稿に書かれているいずれの機構のエレクトリック・ピアノとも異なる。
[編集] 概要
第二次世界大戦後に、アメリカのハロルド・ローズが戦傷軍人が音楽演奏で暮らす事ができるように、廃棄された軍装品を利用して、製作したのを始めとする。これが「ローズ・ピアノ(Rhodes Piano)」の原型となった。当初は需要を開拓出来たとは言い難いが、やがてロックンロールなどの大音量で演奏される音楽が発展し、ピアノではドラムキットや管楽器、エレクトリックギターに音量では太刀打ち出来なくなり、ハモンドオルガンやエレクトリックピアノの需要が生まれてくる。ピアノとは似て非なる新しい音色を面白がって使うミュージシャンも出現し、エレクトリックピアノはハロルド・ローズの権利を買い取ったフェンダーやジュークボックスメーカーのウーリッツァーを始めとする様々なメーカーにより開発され、発展していくことになった。
日本では、家屋が狭い、床構造の強度が足りない、団地住まいで階段を運び上げられないなど、庶民の家庭では子女の教育にピアノを購入しようと思っても、住宅環境の制約から不可能な為に、オルガンで代用されたりしたが、打鍵の感覚などがピアノとは全く異なる。 家庭用の軽量な構造を持ったピアノということで、日本コロムビアは商標「エレピアン」を開発した。
日本のヤマハは、グランドピアノと同等の張弦構造を持つ、通称エレクトリック・グランドピアノ、CP-70、CP-80を開発した。既にソウル・ファンクミュージックなどで使用されていた、クラビネットにも似たアタックの独特の歪みが特徴で、アコースティック・グランドピアノよりも輝きのある音で、フュージョンやポピュラー全般に使用された。
1980年代に入るとPCM音源やFM音源の開発・実用化により、シンセサイザーの表現力が一挙に発展する。ヤマハが開発したFM音源方式シンセサイザーDX7に内蔵されたエレクトリックピアノ音色は、バラードなどによく使用され、独特のクリアな音色が重宝されている。大きく重い機械式エレクトリックピアノは、この波に呑み込まれて1980年代を以て新製品は殆ど開発されなくなってしまった。ローズ・ピアノもブランドをローランドへ売却。同社はデジタルピアノにローズのブランド名を付けた。サンプリング・テクノロジーや物理モデル音源の発展により、デジタルのエレクトリックピアノ音色は非常にリアルになったが、それでも機械式エレクトリックピアノを求める動きは大きい。2006年になり、ローズのブランド名で久々の機械式エレクトリックピアノ「ローズMk7」が発表になった。
[編集] 代表的なエレクトリックピアノ
- フェンダーローズ・ピアノ(ローズ・ピアノ)
- トーンジェネレータと呼ばれる片持ち梁状の金属片をハンマーで叩き、その振動で近傍のバーという一種の音叉のような共鳴体が共振することで、鋭い打撃音と長く伸びる減衰音から鳴る独特の音色を発音する。生の音は正弦波に近い特徴有る澄んだ、なおかつアタックの強い音を発生するが、ピアノに内蔵のトーンコントロールの調整や、アンプをオーバードライブ気味に歪ませた時の低音のうなるような力強い音は独特な印象を与える。1970年代以降独特の音が認知され、エレクトリックピアノを代表する楽器となる。
- ウーリッツァーピアノ
- リード(振動板)を叩く構造。ローズと比べてピアノに近いアクションを持ち、スピーカーを内蔵しているが、ローズより軽量。1960年代後半から1970年代中盤にかけて広く使われた。カーペンターズ、スモール・フェイセズ、スーパートランプ、ダニー・ハサウェイなどで有名な他、クイーンの「マイ・ベスト・フレンド」でも演奏されている。
- 電子発振式の為、正確には初期の電子ピアノの範疇に入るものだが、1960年代後半から1970年代前半にかけて、ロックやジャズで幅広く用いられた楽器。CRUMARなど、様々な電子オルガンメーカーが同様の楽器を生産した。
- ホーナー・ピアネット
- 吸盤で金属製のリードを吸い上げ、リードが反発力で離れて振動し、発音。ビートルズやゾンビーズ、ジェネシスなど、1960年代後半から1970年代前半には広く使われた。1970年代末にはクラビネットに組み込まれた。
- ホーナー・エレクトラピアノ
- アップライトピアノのようなボディに、ウーリッツァーに似たアクションとローズに似たリードを装備する。レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズが愛用した。非常に稀少なもの。大音量のロックバンドで演奏するには些か繊細に過ぎる音色であったため、ジョーンズはツアーにはローズ・ピアノを持ち出した。
- ホーナー・クラビネット
- ピアノの祖先であるクラヴィコードの機構を簡略化し、マグネティックピックアップを取り付けたもの。ギター的なプレイに向いており、ソウル、ファンク、ロックで幅広く使われた。
- コロムビア・エレピアン
- リード(振動板)を、通常のフェルトハンマーで叩く構造。元祖フェンダーローズにも似た音色を発する。後には「電子ピアノ」に移行した。現在同社は電子楽器製造からは撤退している。
- ヤマハCP-70、CP-80
- 実際に張弦構造を持ち、ハンマーで打弦した振動をエレクトリックギターと同様にマグネティックピックアップで検出する。ローズはヤマハDX7などに駆逐されたが、この楽器の音はシンセでは再現しにくい物だった為、1980年代後半までよく使われた。
[編集] シンセサイザーの有名なエレクトリックピアノ音色
- ヤマハDX7
- FM音源を搭載したシンセサイザー。他のエレクトリックピアノにはないきらびやかな響きを持つ音色が内蔵されている。この楽器の大きなセールスポイントとなり、広く使われた。
- PCM音源を搭載したシンセサイザー。アタックに特徴のある独特な音色で、TRINITYやX5Dにもその波形は移植された。
- ローランド JD-800
- PCM音源を搭載したシンセサイザー。金属的な音がする。プリセット53番の音色である。90年代中頃、小室哲哉が好んで利用した。TRFのBoy Meets Girlのイントロで聞かれるピアノの音である。後のローランドのシンセサイザーFantomシリーズだけでなく、ヤマハのEOS B2000など他社のシンセサイザーにもサンプリングされたものが入っている。