CQB
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CQB(クロース・クォーター・バトル、近接戦闘、英:Close Quarters Battle)は比較的に敵との間合いが短く、歩兵が主体となって行われる戦闘をいう。日本においては「閉所戦闘」と訳されることがあり半ば正式名称として用いられているが、これは誤訳で、上記の通り"Close"は「クロース」(=接近した)であり、「クローズ」(=閉じる)ではない。
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[編集] 概要
近接戦闘は小数の歩兵により、徒手格闘、短剣格闘、銃剣格闘、直接照準射撃を駆使し、敵に対して接近して行われる戦闘である。特に室内戦闘、市街戦において地形の特性から発生しやすい。広い視界と射界が得られ、ある程度距離を置いて敵を発見し、小銃、機関銃、火砲などを以て殲滅しようとする野戦、森林戦、砂漠戦、山岳戦などの戦闘と区別される。近接戦闘では、短機関銃、拳銃、手榴弾、スタングレネード、ナイフなどの装備を用いた、各種格闘技術が確立されている。人質救出、一部の軍隊の特殊部隊や警察のSWATが専門的に訓練教育されている。この基本的な概念は対テロ作戦、人質救出作戦における戦闘技術を研究開発したイギリス陸軍のSASが発祥とされている。
[編集] 装備
- 銃火器:市街戦や屋内戦闘、あるいは塹壕や密林での戦闘では全長が短く取り回しの良い武器が好まれる。旧来の銃剣突撃ではむしろ長い小銃を槍代わりするが狭い場所では不利である。第一次世界大戦の塹壕戦ではまず拳銃が使用され、ついで短機関銃が発明されこれに加わった。第二次世界大戦以降アサルトライフルが普及すると、これを短くしたカービン型がCQB用として使用されるようになる。
- バーチカルフォアグリップ:垂直(バーチカル)に取り付けられるグリップのこと。閉所における銃器の取り回しを向上させる。
- スタングレネード:爆裂時に強烈な音と光を出すことで、効果範囲内の対象の感覚を数秒間麻痺させることを目的とする手りゅう弾。対象の殺傷は意図されておらず、破片を飛散させる機能は持たないのが一般的だが、至近距離で炸裂した場合は負傷する。閃光弾はスタングレネードの一種。
- フラッシュライト:非常に強力なライト全般のこと。カメラのフラッシュ(ストロボ)とは異なる。このライトを直視した場合、視野に数秒間残像が残るため、照射した相手の肉眼視力を減衰させられる。先端部に打撃用の突起を持つ物や、連続的な点滅でより視覚に悪影響を与えられる機能を持つ物もある。発光源から直線開環境時の突入で採用されやすい。
- ゴーグル:飛散物や破片、各種外部擾乱からの保護を目的とした、眼部付近の装備一般。
- エルボーパッド、ニーパッド:肘(エルボー)と膝(ニー)に取り付ける防具一般。
- ヘルメット:頭部を保護する防具一般。
- 防弾服:爆発物や砲弾の破片、銃弾などから胴体を守るための服。
- 盾:重く、手がふさがる割りに拳銃弾か砲弾破片等を防ぐ程度であるため、治安維持用に用途が限られる。
[編集] 自衛隊でのCQB訓練
自衛隊は、もともと大規模な侵略行為に対しての対処をしてきた。しかし、冷戦崩壊や、アメリカ同時多発テロ事件などの世界情勢の変化によって、特に陸上自衛隊は大規模な侵略行為だけでなく、テロリストやゲリラが市街地などに侵入した際の対策を強化している。
自衛隊にとって衝撃的な事件が、2001年12月に発生した北朝鮮の工作船事件だった。自衛隊では「特殊部隊(工作員)が離島に上陸していたら」という危機感から、事実上の空白地帯だった九州南西部の防衛を担う西部方面普通科連隊が創設されたのをきっかけに、他の全国の陸上自衛隊の部隊でも対ゲリラ・特殊部隊(ゲリラ・コマンド=ゲリコマ)や対テロリスト対策のための試みが行われている。近年は各地の駐屯地祭などでも市街地での戦闘などが訓練展示として行われており、また、89式小銃型の電動エアガンを使用した近接戦闘訓練も配備数などの関係上からごく一部の部隊ではあるが、実施されている。
この他、陸上自衛隊だけではなく、航空自衛隊の基地防衛を任務とする基地警備隊も市街地戦闘を重視した訓練をおこなっている。基地防衛教導隊がその中心である。海上自衛隊や海上保安庁でも船舶の臨検などにおいて、こうした近接戦闘訓練をおこなっているとされる。
[編集] 市街地訓練場
近年、陸上自衛隊では市街地戦闘訓練の需要が高まっている。今まで各部隊では宿営地等にある廃屋(例:北九州、曽根訓練場では旧陸軍の毒ガス製造工場を使用していた)や、隊舎などの一部を使用してたり、また、ベニヤ板などで部屋などを想定したものを使用しているが、より専門的な訓練場の必要性が指摘されている。この点を改善すべく、各方面隊で1ヶ所ずつ市街地戦闘訓練を行う為の「市街地訓練場」と呼ばれる施設を整備している。
東部方面隊には富士駐屯地(富士学校)近傍の東富士演習場内に「市街地訓練場」が2006年3月に完成しており、訓練が実施されている。約3万平方メートル(縦約150メートル、横約200メートル)の市街地訓練場内には総工費約25億円をかけて官公庁舎・テレビ局・学校・銀行・テナントビル・ホテル・マンション・アパート・レストラン・スーパーを模した鉄筋コンクリート造りの施設計10棟と管理棟を合わせた計11棟が建ち、地下鉄などを想定した地下道とヘリポートも設けられており、本格的に都市が再現されている。建物の屋上や屋内には可動式のテレビカメラが設置されており、管理棟のモニターで1度に40カ所の訓練状況を確認できる。夜間の使用も可能なこの国内最大規模の市街地訓練場が出来た事で全国で唯一、中隊規模(約150人)での市街地戦闘訓練が行える様になった。
また、北部方面隊は北海道大演習場、東北方面隊は王城寺原演習場、中部方面隊はあいば野演習場、西部方面隊は霧島演習場に同様の市街地訓練場が整備される、これらは小規模なもので、建物は4~5棟の小隊規模を対象とした訓練場となっている。2007年5月の時点では北海道大演習場以外の4ヶ所が完成している。
[編集] 近接戦闘とそれに関する訓練
近接戦闘訓練に関しては、各普通科に”ウオッティー”と呼ばれる市街地・近接戦闘訓練隊と呼ばれる小編成が存在する。 名称は各普通科部隊で違う場合もあるが銃剣道訓練隊と同じ規模であり、編成隊は駐屯地の屋上や屋内を使用して市販のエアガンなどを個人で購入して訓練を行っている。
また、編成隊は連隊長の決で私物装備を購入する事ができ課業中装備品を買う事も許されている。 専用の訓練場が無い部隊などでは民間のサバイバルゲームフィールドで近接戦闘訓練を行ったり、民間の訓練用スタングレネードを購入して訓練を行っているところもある(日本製・音響のみも存在する)。一部の部隊では海外製スタングレネードを演習場で使用している様だが、統一されておらず毎回納入される製品が違う場合もある。
[編集] 関連項目
- http://www.cqb-team.com/ Website that describe CQB entry technique in details.
- 自衛隊格闘術
- クラヴ・マガ
- CQC
- 特殊部隊
- ハイジャック
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