ゴーグル
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ゴーグルは、スポーツや加工作業等において目を保護するため顔面に装着する道具である。
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[編集] 水泳用
水の屈折率が空気とは大きく異なるため、水中で鮮明な視界を得るためには目の前面に空気の層が必要になる。また、プール水(殺菌の為の塩素が微量投入されている)・海水による刺激から目を保護するためにも有効である。かつて公共のプールなどでは「水中めがね」(ダイビング用のマスクの事 詳細は後述)として使用禁止していたこともあったようだが、現在では下記のようにガラス製品ではなく、消毒剤から目を保護し、プール水を媒介として感染する眼病の予防効果もあり、競泳競技規則でも使用が許されており、現に使用者も多いことから禁止しているプールは少ないと思われる。
水泳競技で使用するゴーグルは、片眼を覆うポリカーボネートなどの樹脂製アイカップを左右連結し、頭部に回すゴム製のベルトをつけた2眼タイプである。アイカップは無色透明または着色やミラー加工されており、カップの縁(目の周囲の皮膚に接するところ)にクッション材を貼り付けた物と、それを省略しアイカップをできるだけ小さくした物など、バリエーションは多い。眼鏡使用者のためレンズ加工されたものもある。
競泳競技では、屋外プールでは濃色のもの、単調な練習に集中するため視界の狭いもの、競技会ではライバルのペースをつかむため視界の広いもの、水の抵抗を最小にするため、アイカップが小さいものなど、いろいろな理由や選手の好みで選択している。ゴーグルを着用して飛び込み(競泳のスタート)を行うには、入水時の頭の角度などちょっとしたコツが必要であり、多くの選手が競技生活のごく初期に身につけるが、一流選手でも時々失敗することがあるようである。
シンクロナイズドスイミング競技、飛び込み競技、水球競技では競技会中はゴーグルを着用している姿を見ることはないが、練習中は自分の姿勢を確認したり、チーム、デュエットでは他の選手との姿勢、間隔、同調性を確認するため、また、基礎トレーニングとして単純に泳ぐ(陸上種目のランニングに相当する)時に使用する。日本泳法競技でも泳型を見せる競技であるため使用されないが、練習の際に使用する選手はいる。オープンウォーター競技では海水から目を保護するために必要である。
プラスチックレンズはキズが付きやすく、長期間使用すると細かいキズの多発により透明度が低下することが欠点であり買い直しが必要である。水泳競技は競技中に身につけるものが少ない(水着、キャップ、ゴーグル)ため、ゴーグルにこだわりや思い入れのある選手は少なくない。
自然の水域における水泳(海水浴)でも目の保護のためにゴーグルは有効である。
ダイビング(潜水)に使用するものは「マスク」と呼ばれ「ゴーグル」ではないが「水中めがね」として混同されることもある。ゴーグルでは鼻を覆っていないため「マスククリア」「マスクブロー」ができず、潜水の用途には使用できないが、一般のプールにおける潜水(潜行)では水深1~2m程度のため問題はない。
[編集] スキー用
- スキー用のゴーグルは、ダイビング用のマスクと類似した形態である。雪の照り返しから目を保護するためにUVカット機能のついたサングラス仕様になっている。
- また、風が目に入りこむことや、曇りによる視界の悪化を防ぐために通気システムに関していくらかの工夫が凝らせれている。
- レンズは柔軟性が高く、多少の衝撃ではまず割れることはない。
- スノーボード用ゴーグルとの差別化はほとんどないが、後頭部に装着するためのアタッチメントがついているか否かで分けられる。
[編集] 軍用
落下傘降下を行う部隊などでは比較的古くから使われているが、特に歩兵装備の近代化を進める軍隊では、公式非公式を含めてゴーグルを使用する流れがあり、報道映像などで目にすることが出来る。外見はスキー用ゴーグルに似るが、戦闘中に飛び散る泥や砂のほか、爆風等から眼を保護する目的で使用するため、衝撃や破片の激突などに対して一定以上の耐久性を持っていることが必要条件となる。砂漠など、日差しの強い地域で行動することを前提とした軍隊では、これにサングラスとしての機能を果たすカラーレンズを装備した物を使用することもある。 強度はもちろん、軍隊で使用されているというイメージの面から、一般向けに販売されるモデルを後述のサバイバルゲーム用として購入するゲームプレイヤーもいる。
[編集] サバイバルゲーム用
サバイバルゲームで使用することを目的に開発されたもので、ASGKの規格に準拠したものは、運動エネルギー1.2JまでのBB弾の直撃に耐えられる。
ポリカーボネートなど透明で強度のある樹脂を用いたクリアシールドや、それに色をつけた物、目の細かい金網を張った網目(メッシュ)シールドなどがある。簡素な構造で安価な物から、頬や口元を保護するフェイスガードが連結されたもの、曇り防止用の小型電動換気扇を備えた高級品など多くの種類がある。
樹脂製は透明な素材が眼の前方を隙間無く覆うため、砂や水、砕けたBB弾の破片など細かな物も防御でき、視覚に与える影響も少ない。しかし硬い物との接触で傷がつきやすく、内部に湿気がこもると雲ってしまうほか、極端な低温下での使用や劣化によって強度が落ちてしまう場合がある。
金網製は湿気で雲ってしまう事が無く、金属製であるため傷つきや気温の変化などにも強い。しかし細かな飛散物が網目をすり抜ける危険性があり、眼前に金網がある為、視界がやや暗くなる。
ゴーグルとフェイスガードを一体化し、保護板が頭頂部や後頭部まで覆うヘルメット状の物もある。これらはアメリカのペイントボールゲーム用の防具を流用したもので、液体入りのボールを撃ちあう競技の為、メッシュタイプは無い。
[編集] オートバイ用
シールドのないヘルメット(半キャップやジェット型ヘルメット)を装着してオートバイに乗車する際に、眼を保護するために装着する。主に旧車を愛好するライダーが用いる。悪路を走行するモトクロス競技などでは、跳ねあがる小石や泥から身を守る為にゴーグルを装着する。
[編集] 各種作業用
- 各種保護メガネや防災面を使用すべき作業は、労働安全衛生規則に定められている。
- 主に工場や建築現場において、金属や木材などの材料を加工する際に発生する粉塵から眼球を保護するために使用される。このほか、釘や針金の飛散する恐れのある釘打機(空気圧で釘を打ち込む道具)を用いる作業や有害な化学物質を扱う現場でも使用されており、製鉄所では輻射熱の軽減のために着用されている。クリップで保護帽の鍔に固定して使う製品も存在する。
- 収納式のシールド面を装備した保護帽(ヘルメット)も存在する。開発当初(1960年代)は鉱山向けに細々と販売されるに過ぎなかったが、90年代半ばから次第に需要が増加していき、現在は半数近くの保護帽メーカーが発売している。保護帽の内装と帽体との間に専用の取付プレートが挟まれ、そこに上下スライド可能な面体が載せられる構造が採用されている。
- 遮光眼鏡は、溶接時に発生する強烈な光(アーク光)や、レーザー光線からの眼球保護のために用いられるが、特に溶接作業者は顔面保護も兼ね、手持ち面か自動溶接遮光面を使用している。この面は通常は透明であるが、アーク光を検知した際は1/10000秒の速さで遮光する機能を持っている。
- このほか、雑草の刈払や農薬の散布など、飛散物が広範囲にわたる作業でも使用され、粉塵が非常に多く発生する場面では顔面全体を覆うことのできる防災面が使用されるほか、防塵・防毒マスクや保護帽を併用することもある。防災面にも、保護帽に取り付けて使うタイプと、直接頭に被るタイプとが存在する。
[編集] その他
薄い透明なプラスチック製の花粉対策用のゴーグルが市販されている。形は飛散物防御用保護眼鏡に似ており、眼への花粉の侵入を防ぐために使用される。