"文学少女"シリーズ
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“文学少女”シリーズ | |
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ジャンル | ミステリ |
小説 | |
著者 | 野村美月 |
イラスト | 竹岡美穂 |
出版社 | エンターブレイン |
レーベル | ファミ通文庫 |
巻数 | 既刊7冊 |
その他 | 文庫未収録4作 |
漫画: “文学少女”と死にたがりの道化 | |
原作・原案など | 野村美月 |
作画 | 高坂りと |
出版社 | スクウェア・エニックス |
掲載誌 | ガンガンパワード |
発表期間 | 2008年8月号 - 連載中 |
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“文学少女”シリーズ[1](ぶんがくしょうじょシリーズ)は、ファミ通文庫から刊行されている野村美月のライトノベルのシリーズ作品である。イラストは竹岡美穂。
第1巻は2006年4月に発売され、現在7巻まで発売。『このライトノベルがすごい!2007』で8位、『同2008』では3位(他媒体への展開が行われていない作品では最高位となる)を受賞した。2007年、ライトノベルアワードでミステリー部門賞を受賞。
また、「ガンガンパワード」(スクウェア・エニックス)2008年8月号より高坂りとの作画による漫画版(表題は第1巻と同じ「“文学少女”と死にたがりの道化」)が連載開始される。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
目次 |
[編集] 概要
- このシリーズは、実在の文学小説が題材となっており、その小説をなぞるかのように物語が展開したり、登場人物がその小説に強い影響を受けたりしている。物語は基本的に井上心葉の一人称で進むが、その物語の合間には、登場人物の誰かの文章・心情などがその人物の一人称で語られる。
[編集] 題材一覧
巻 | タイトル | 主な題材となっている作品 |
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1 | “文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ) | 人間失格(太宰治) |
2 | “文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト) | 嵐が丘(エミリー・ブロンテ) |
3 | “文学少女”と繋がれた愚者(フール) | 友情(武者小路実篤) |
4 | “文学少女”と穢名の天使(アンジュ) | オペラ座の怪人(ガストン・ルルー) |
5 | “文学少女”と慟哭の巡礼者(パルミエーレ) | 銀河鉄道の夜(宮沢賢治) |
6 | “文学少女”と月花を孕(だ)く水妖(ウンディーネ) | 夜叉ヶ池,草迷宮,外科室(泉鏡花) |
7 | “文学少女”と神に臨む作家(ロマンシエ) 上 | 狭き門(ジッド) |
[編集] 登場人物
[編集] メインキャラクター
- 天野 遠子(あまの とおこ)
- 聖条学園文芸部の部長。井上心葉の先輩にあたる女性。自称”文学少女”であり、純文学の本や小説の原稿を文字通り紙ごと食べる美食家。この行為をみて井上心葉は妖怪と呼んだりする。(本人の話では父親も本や小説を食べるらしく、母親が物語を書いてくれていたようだ)普通の食材も食べることができるものの、本人にとってはただの味がしない無機物にすぎない。図書委員以上に図書室について詳しいなど、文学にも精通している。
- 長い二本の三つ編みに、色白の肌、セーラー服のその姿は古式ゆかしい文学少女そのものだが、性格は無邪気でお気楽で天然気味。物語めいた空想を巡らしたり、こうと決めたら人の意見も聞かず行動に移したりする。その一方で妙なところで勘が鋭く、ここぞというときにはとても細やかな心配りが出来る人でもある。
- 様々な物語を読む事と食べる事に熱心。心葉がどんなに滅茶苦茶な話を書いても、それを決して残さないなど、文学に対しては真摯。反面、頼まれてもいないのに人の事情に首を突っ込むようなおせっかい焼きな面もあり、事あるごとに「心葉君!これは事件よ!!」と、彼の冷めた態度にもかまわず彼を引っ張りまわす。「自分はあくまで「探偵」ではなく、ただの「文学少女」。ゆえに自分がするのは「推理」ではなく「妄想」、もとい「想像」」とは本人の弁。バストは推定Aカップ。本人もその事を気にしている。また恋愛にも興味があるようだが、ある有名な占い師に占ってもらった所、現在恋愛大殺界中らしい。
- 朝食は「ぐりとぐら」などの絵本や童話であり、下宿先の家人も遠子が本を食べる姿を普通に目の当たりにしているという。
- 機械音痴で、絶望的なまでの運動音痴。両親とは暮らしておらず、櫻井流人の家で居候させてもらっている。
- 井上 心葉(いのうえ このは)
- 本作の主な語り手。聖条学園に通う高校二年生。中学三年生の時に生まれて初めて書いた小説を『井上ミウ』というペンネームで文芸雑誌に応募したところ大賞を受賞、14歳の謎の美少女覆面作家として売り出される。本は大ベストセラーとなり映画化やドラマ化もされ社会現象となるが、ある事件が起こり、ストレスから過呼吸を起して倒れ、一時、引きこもりとなる。この事件がもとで他人とのかかわりをできるだけ避ける消極的な性格になるが、天野遠子との出会いにより少しずつ快活な性格を取り戻しつつある。
- 現在は普通の男子高校生として生活しているものの、天野遠子の秘密を知ったことで文芸部に無理矢理引きずり込まれ、今では彼女のおやつ係。恒例の三題噺では時々わざと変な話を書いて、遠子に嫌がらせをしたりもしている。
- 琴吹 ななせ(ことぶき‐)
- 心葉の同級生。図書委員。心葉に想いを寄せているが、自分の本心を偽っている井上心葉に対して苛立ちを感じている。天野遠子を尊敬している。茶色の髪と抜群のプロポーションを持つ美人で、クラスの男子の間でも人気がある。極度のツンデレ。
- 姫倉 麻貴(ひめくら まき)
- 聖条学園理事長の孫。オーケストラ部の部長。ハーフであり、まわりからは『姫』と呼ばれるほどの美貌を持っている。本当は楽器を演奏するよりも筆を持って絵を描いていたいのだが、理事長の孫という理由でオケ部に入らされ、その交換条件として学校にアトリエを作らせ根城にしている。遠子に執着しており、裸婦画のモデルになるよう口説き続けている。本気なのかどうなのか、遠子の「きわどい」写真を数百枚持っていると言い放つなど半ば変質者的な言動も目立つ。一方、数多くのOBを持つオーケストラ部に所属するため、かなりの情報通。遠子たちも時折情報を求めて彼女のところへやってくる。
- 竹田 千愛(たけだ ちあ)
- 文芸部にラブレターの代筆を依頼した少女。聖条学園に通う一年生。図書委員。
- 櫻井 流人(さくらい りゅうと)
- 遠子の居候先の息子で、弟のような存在。現在高校一年生。『サロメ』のような愛憎溢れた激しい恋愛が好みだという、かなり変わった趣味をもつ。女性にもモテるため、3股4股は当たり前らしい。
- 芥川 一詩(あくたがわ かずし)
- 心葉のクラスメイト。弓道部員。背が高く、寡黙な性格。誠実な人間である事を自分に課している。
- 朝倉 美羽(あさくら みう)
- 心葉の過去の想い人。
[編集] サブキャラクター
- 森 紅楽々(もり くらら)
- 琴吹ななせの親友でクラスメイト。下の名前を呼ぶのはNGらしい。芥川一詩に1年の時から片思いをしている。
- 片岡 愁二(かたおか しゅうじ)
- 『死にたがりの道化』に登場。聖条学園の元弓道部員。
- 真鍋 茂(まなべ しげる)
- 『死にたがりの道化』に登場。10年前の弓道部キャプテン。片岡愁二と同級生。現在でも後輩の指導にきている。
- 城島 咲子(きじま さきこ)
- 『死にたがりの道化』に登場。片岡愁二の恋人。10年前に事故で亡くなった。
- 添田 康之(そえだ やすゆき)
- 『死にたがりの道化』に登場。10年前の弓道部員。片岡愁二と同級生。現在でも後輩の指導にきている。
- 添田 理保子(そえだ りほこ)
- 『死にたがりの道化』に登場。10年前の弓道部マネージャー。片岡愁二と同級生。現在でも後輩の指導にきている。
- 旧姓は瀬名で、現在は添田康之と結婚している。
- 斉藤 静(さいとう しずか)
- 『死にたがりの道化』に登場。竹田千愛の親友で彼女にあひるのマグカップをプレゼントしている。交通事故で亡くなった。
- 雨宮 蛍(あめみや ほたる)
- 『飢え渇く幽霊』に登場。彼女と付き合うと不幸な事が起こると言われている。よく保健室に運ばれており、その原因は何らかの理由による拒食症。
- 九條 夏夜乃(くじょう かやの)
- 『飢え渇く幽霊』に登場。雨宮蛍の母親。九條は旧姓。拒食症。蛍が幼いときに亡くなった。
- 黒崎 保(くろさき たもつ)
- 『飢え渇く幽霊』に登場。蛍の後見人。
- ハルミ
- 『飢え渇く幽霊』に登場。バーガー店店員。流人の彼女の一人。
- 更科 繭里(さらしな まゆり)
- 『繋がれた愚者』に登場。芥川の彼女を自称する。長い黒髪を持つ美人。
- 鹿又 笑(かのまた えみ)
- 『繋がれた愚者』に登場。芥川一詩の小学校時代のクラスメイト。同校の卒業前に転校した。
- 水戸 夕歌(みと ゆうか)
- 『穢名の天使』に登場。琴吹ななせの親友。大学付属の音楽高校に通っている。夢はオペラ歌手。
- 臣 志郎(おみ しろう)
- 『穢名の天使』に登場。高校1年生。図書委員。体が弱いらしく1学期は休んでいた。
- 毬谷 敬一(まりや けいいち)
- 『穢名の天使』に登場。井上心葉たちの学校の音楽教師。
- 鏡 粧子(かがみ しょうこ)
- 『穢名の天使』に登場。水戸夕歌の通う大学付属の音楽高校の教師。毬谷敬一とは大学時代の友人。
- 姫倉 ゆり(ひめくら-)
- 『月花を孕く水妖』に登場。80年前に姫倉の別荘に住んでいた。
- 敷島 秋良(しきしま あきら)
- 『月花を孕く水妖』に登場。学生。80年前に姫倉の別荘を訪ね、ゆりと恋仲になっていく。
- 魚谷 紗代(うおたに さよ)
- 『月花を孕く水妖』に登場。姫倉麻貴の別荘でメイドとして働いている。中学1年生。
- 櫻井 叶子(さくらい かなこ)
- 『神に臨む作家』に登場。櫻井流人の母親。作家。
- 天野 文陽(あまの ふみはる)
- 『神に臨む作家』に登場。天野遠子の父親。編集者をしていた。遠子と同じで本を食べる人間。
- 天野 結衣(あまの ゆい)
- 『神に臨む作家』に登場。天野遠子の母親。櫻井叶子とは高校時代からの友人。
- 須和 拓海(すわ たくみ)
- 『神に臨む作家』に登場。櫻井流人の父親。女性関係が派手な性格で櫻井叶子と出会ったときは19歳だった。
- 佐々木(ささき)
- 『神に臨む作家』に登場。薫風社の編集者。昔、井上ミウの担当編集をしていた。
[編集] 作品一覧
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出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
- “文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ) 2006年5月10日発行 ISBN 4757728069
- “文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト) 2006年9月11日発行 ISBN 4757729154
- “文学少女”と繋がれた愚者(フール) 2007年1月4日発行 ISBN 4757730845
- “文学少女”と穢名の天使(アンジュ) 2007年5月10日発行 ISBN 9784757735064
- “文学少女”と慟哭の巡礼者(パルミエーレ) 2007年9月11日発行 ISBN 9784757736856
- “文学少女”と月花を孕(だ)く水妖(ウンディーネ) 2008年1月4日発行 ISBN 9784757739185
- “文学少女”と神に臨む作家(ロマンシエ)上 2008年5月9日発行 ISBN 9784757741737
[編集] 文庫未収録作品
- “文学少女”の今日のおやつ (FB Online 2007.1号~2008.2号まで掲載)
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- 第1回「更級日記」(菅原孝標女『更級日記』)
- 第2回「かもめのジョナサン」(リチャード・バック『かもめのジョナサン』)
- 第3回「桜の森の満開の下」(坂口安吾『桜の森の満開の下』)
- 第4回「谷間」(アントン・チェーホフ『谷間』)
- 第5回「好色五人女」(井原西鶴『好色五人女』)
- 第6回「ムギと王さま」(エリナー・ファージョン『ムギと王さま』)
- 第7回 番外 ななせの恋日記
- 第8回 番外 続・ななせの恋日記
- 第9回 番外 続々・ななせの恋日記
- 第10回「ロリータ」(ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』)
- 第11回「飛ぶ教室」(エーリヒ・ケストナー『飛ぶ教室』)
- 第12回「銀の匙」(中勘助『銀の匙』)
- 最終回「万葉集」」(『万葉集』)
- “文学少女”の秘密の本棚 (FB Online 2008.3号より掲載)
-
- 第0回『森ちゃんのつぶやき』
- 第1回『“文学少女”と愛を叫ぶ詩人【ハイネ】』前後編(『ハイネ詩集』)
- “文学少女”と乙女に集う召喚獣(井上堅二『バカとテストと召喚獣』とのコラボ作品。FB Online 2007.7号に掲載)