かもめのジョナサン
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『かもめのジョナサン』(Jonathan Livingston Seagull)は、リチャード・バックの小説。および同作品を原作として1973年に制作された映画。
目次 |
[編集] 概説
三部構成。一般的に寓話として評価されている。ラッセル・マンソンによる実際のカモメの写真が随所に挿入されている。
1970年にアメリカで出版され、当時のアメリカのヒッピー文化とあいまって、口コミで序々に広がり、1972年6月以降に大ヒットした。1974年10月に映画が日本で公開された時点で、アメリカでは「風と共に去りぬ」を抜いて[1]1500万部、日本では1974年6月20日に新潮社より五木寛之の訳で出版され120万部のベストセラーとなっている[1]。
[編集] 映画化
1973年に、ホール・バートレット監督によって映画化された。原作同様に人間は登場せず、バードトレーナーの調教するカモメ達が登場キャラクターを演じる。ヘリコプター撮影による雄大な空撮映像に、シンガー・ソングライターのニール・ダイアモンドが劇中歌を付け加えており、原作とはまた一味違う詩情を持ったシネポエムとなっている。詳細は「かもめのジョナサン (映画)」を参照。
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
[編集] あらすじ
主人公のカモメ、ジョナサン・リヴィングストンは、他のカモメ達が餌をとるために飛ぶことに対して、飛ぶという行為自体に価値を見出してしまう。ジョナサンは食事をするのも忘れ、速く飛ぶ事だけのために危険な練習を重ねる。そしてその奇行ゆえに仲間から異端扱いされ、群れを追放されてしまう。それでも速く飛ぶ訓練をやめないジョナサンの前に二匹の光り輝くカモメが現れ、より高次の世界へと導かれる。「目覚めたカモメ達」の世界のなかでジョナサンはより高度な飛行術を身につけ、長老チャンから「瞬間移動」を伝授される。そしてある日、弟子を連れて下界に降り、カモメの人生は飛ぶことにあるという「思想」を広めようと試みるが、下界のカモメからは悪魔と恐れられて・・・。
[編集] 新教的解釈
物語後半からはジョナサンが通常のカモメの飛行能力を遥かに超えた能力を身につけ、それらはすでに飛行という次元を超えており、さらには水面に激突したカモメを生き返らせる場面も登場する。それらが原因で新興宗教の布教を彷彿する人も多い[2]。また、巻末で訳者の五木寛之自身が本作品の感想を書いているが、そこでも「私はこの物語が体質的に持っている一種独特の雰囲気がどうも肌に合わない」(108頁)と書いている。
ちなみに、刺殺されたオウム真理教の村井秀夫幹部も本書の愛読者だった。また神慈秀明会では、初代会長による本書の解説書を発行しており、その解説書は同教団青年部の布教活動における必携の書とされていた。
[編集] 社会的影響
[編集] 流行
アメリカのみならず、日本でもヒットしたこの作品は、シリアス/コミカルの両分野にわたって社会的な影響をもたらした。特にコミカルの分野で、このタイトルをもじった以下の様ななぞなぞが流行した。
- 問・カモメが百羽います。一羽はカモメのジョナサン、では残りは?
- 答・カモメのミナサン。
このなぞなぞの回答をタイトルとして、1975年5月、放送作家の奥山侊伸が「かもめのミナサン」というエッセイ集を立風書房から出版している。
[編集] この物語が登場する作品
- ぱすてる(小林俊彦) - ヒロイン・ゆうが主人公に「かもめのジョナサン」の話をする。
- 鳥人大系(手塚治虫)
- ブラック・ジャック(手塚治虫) -作中、ブラック・ジャック自身が「読んだ」と度々発言している。
- "文学少女"シリーズ(野村美月) Web上で公開された「"文学少女"の今日のおやつ」の第二回のテーマ
- 十四才(THE HIGH-LOWS) 「ジョナサン」という歌詞が何度も出てくる曲。
- ジョナサン(キリンジ) この小説がモチーフになっていると思われる。