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赤尾敏 - Wikipedia

赤尾敏

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

赤尾 敏(あかお びん 1899年1月15日 - 1990年2月6日)は、日本の政治家、元衆議院議員右翼活動家、元大日本愛国党総裁東京都銀座数寄屋橋辻説法による過激でユーモアをたたえたアジテーションで有名。通称“びん”。

目次

[編集] 略歴

1899年愛知県名古屋市東区生まれ。少年時代は病気がちで、旧制愛知第三中学(現在の愛知県立津島高等学校)に進学後、結核を患う。一時親元を離れ三宅島で作家武者小路実篤による新しき村運動に加わり、同運動賛同者の作家幸田露伴と知り合う。数年間農業をしながら療養生活を送ったが、この時身を寄せたのが三宅村神着地区の旧名主浅沼家で、後の日本社会党委員長浅沼稲次郎大日本愛国党参与浅沼美智雄(稲次郎の遠縁の親戚)らとの交流が始まった。

旧制愛知第三中学卒業後は左翼運動に参加し、大杉栄や後の日本共産党書記長徳田球一らと活動するも逮捕され、釈放後の1925年に転向。建国会の書記長に就任。以後右翼活動に加わる。1942年のいわゆる翼賛選挙では、大政翼賛会の推薦を受けられないいわゆる非推薦候補ながら東京6区から出馬し、3位で当選を果たす。当選後は鳩山一郎斎藤隆夫中野正剛笹川良一など他の非推薦議員と同様に翼賛政治会(翼政)に加入はしたが、1943年の第81通常議会では戦時刑事特別法改正案に抗議し委員を辞職(3月8日)、また続く第82臨時議会では東條英機首相の施政方針演説に対し野次を飛ばして議場退場処分(同年6月16日)、翼政を除名されるなど、右翼ながら筋を通した反体制派議員としての行動が目立った。なお、戦後国会内でのビラ撒きにより元国会議員待遇を剥奪されている(当選無効ではないので、国会議員であった事実が取り消されたわけではない。選挙報道などでは、その後も元議員として扱われている)。

第二次世界大戦後にGHQによって公職追放され、追放解除後の1951年大日本愛国党を結成し、総裁に就任。1952年の総選挙に出馬するが落選。以後、親米反共の立場からの右翼活動に関わる一方で、各種選挙に立候補し、参議院全国区では最高で12万票を獲得した。もっとも、選挙のたびに立候補したのは、選挙期間中も街頭での辻説法を行なえることが主な理由だったという。参議院不要論を唱え、参院選のたびに自分へも投票せず棄権するよう訴え続けた。

配下の党員であった山口二矢(事件当時は離党)が起こした浅沼稲次郎暗殺事件では取調べを受け、嶋中事件では殺人教唆で逮捕されている(証拠不十分で釈放)。沢木耕太郎『テロルの決算』によると、山口は浅沼の「アメリカ帝国主義は日両国人民の共同の敵」発言に殺意を抱いたという(このことは本人の「斬奸状」にも触れられている)。また、赤尾が個人的に交流のあった浅沼を「善人だから始末に悪い」と評したこともきっかけとなったのではないかとする。事件後赤尾は浅沼の妻享子や三木睦子と電話で連絡を取り合ったというエピソードもある。

銀座数寄屋橋での辻説法は当地の名物であった。街頭宣伝車を導入した右翼のはしりとも言われる。街宣車には日の丸旭日旗とともに星条旗を掲げ、徹底して親米をアピールし続けた。また右翼としては珍しく昭和天皇の戦争責任を認め、日米安保に肯定的であった。韓国にも好意的であり、「北朝鮮打倒のために日韓は協力すべき。領土問題がそれを阻むと言うなら、竹島など爆破して沈めてしまえ!」と主張した。天皇ですら国民のためにあると主張し、尊皇主義者からは嫌われている。

1990年2月6日午前9時26分、東京都立大塚病院で心不全のため逝去、享年91。

[編集] 人物

第二次世界大戦前の左翼活動から徹底して世の中の矛盾を糾弾し、狂信的とも見えるが筋の通った演説は、市井の零細企業経営者から与党政治家まで幅広い支持者を得た。窮乏の中でも参議院選挙への出馬を繰り返し、そのたびに落選するなど社会通念上、奇人とされる行動が多かった。

また、第二次世界大戦前の国会議員時代から、反共産主義、反ソ連の立場から対アメリカ、対イギリス開戦に反対し、反戦演説会を開くなどした親米右翼の典型でもあり、戦前右翼からは「売国奴」との風評もある。北方領土問題については「南樺太・全千島列島が日本固有の領土である」と主張した。そして一部、「ファシスト」との評もあるが、赤尾の思想は民族純粋主義ではない。

自ら「泡沫候補」と称し、マスコミによる「泡沫候補」の取り扱いに一貫して異を唱え続けた。抑々、「泡沫候補」という用語を編み出し世に広めたのは、赤尾本人であったとする見方もある。

没後「敵」であった公安警察の一部から「過激ではあったが至誠の人」という評価を得る反面、味方の「右翼」の一部からはあまり好意を持たれていない。この理由は「金にケチだった」、「自分一人が目立ちたがった」など彼を知る人間の発言も様々である。だが、煎じ詰めれば右翼運動というそのものについて個人単位のナショナリズムに根を下ろしている一面がある事は否定ができず、赤尾はまさにその一面を体現し続けた人物であったと言える。

ちなみに赤尾は最期まで部屋に釈迦牟尼尊イエス・キリストウラジミール・レーニンの大きな肖像画を飾っていたという。

[編集] 著書

  • 『一切を挙げて赤露の挑戦に備へよ』(皇道パンフレット)(建国会出版部、1935年)
  • 『日本の外交を何とするか』(建国会、1940年)
  • 『滅共反ソか反英米か』(建国会、1940年)
  • 『日米問題と日ソ関係』(建国会、1941年)
  • 『憂国のドン・キホーテ』(山手書房、1983年)

[編集] 参考文献

終生のロマンチスト…………赤尾敏 p61~p81  〔初出:「赤尾敏一代記」 『新潮45』1990年4月号〕

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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