田園調布
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田園調布(でんえんちょうふ)は、東京都大田区にある住居表示上の町名であり、玉川田園調布(たまがわでんえんちょうふ)は、東京都世田谷区にある住居表示上の町名である。後述する田園都市会社が分譲を行なった時、分譲地が現在の大田区と世田谷区にまたがり、世田谷区の部分が玉川田園調布となった。
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[編集] 概要
阪神間モダニズムと呼ばれる時代の小林一三の宅地開発を範として、イギリスの田園都市構想を参考に近代に開発された近郊住宅地がその始まりである。高度成長期の頃より、兵庫県芦屋市、神戸市東灘区御影と並ぶ高級住宅街として併称されるようになった。特に駅西側に広がる、扇状に整備された区画一体は、銀杏の並木と相まって「高級住宅地」としての趣を備えており、国土交通省の都市景観100選にも受賞している。 ただし、バブル期に地価の高騰により相続税の支払いが困難になり、土地を切り売りせざるを得なくなった例が多く見られ、当初の計画通りの町並みが残されているわけではない。現在は相続税制が緩和された効果もあり、以前よりは保全しやすくなっているが、なお、相続税が原因の細分化が生じるケースもある。
田園調布の町名には、大田区の田園調布一丁目~五丁目・田園調布本町・田園調布南、世田谷区の玉川田園調布一丁目,二丁目がある。現在、高級住宅街のイメージで語られる際の「田園調布」とは、駅西側に広がる扇状の街路付近大田区田園調布三丁目を中心とした一帯を指すが、かつては田園調布一丁目から二丁目にかけての国分寺崖線に面した部分、及び田園調布四丁目から五丁目にかけての多摩川に面した国分寺崖線の辺りに大邸宅が集中していた。現在多摩川駅周辺の斜面に点在するマンション群はその名残である。
田園調布は、田園調布駅周辺の田園都市会社が分譲を行なった地域と、この分譲に合わせて周辺の地主が土地区画整理組合を結成して宅地造成した地域の二つからなる。前者は現在の二丁目の一部(田園調布駅の東側)、三丁目、四丁目の一部と玉川田園調布であり、残りの南、本町、一丁目、二丁目の一部、四丁目の一部、五丁目が土地区画整理組合によって宅地開発が行なわれた部分である。前者の大田区の部分の町内会が財団法人田園調布会となっている。
大田区田園調布は昭和30年代初頭に住居表示変更が行なわれ、一丁目から五丁目だったのが一丁目から七丁目に変更された。さらに1970年に地番改正が行なわれ、中原街道から北側の田園調布三丁目から七丁目を一丁目から五丁目に、中原街道と東海道新幹線と品鶴線(現横須賀線)に挟まれる田園調布二丁目を田園調布本町、線路の南側の田園調布一丁目を田園調布南とした。
田園調布には、北から田園調布駅、多摩川駅、沼部駅の3駅がある。
[編集] 有名人
開発当初は日本の都市に新たに出現した中堅層向けの住宅地であったが、良好な住宅環境であったことから次第に評価が高まった。現在も長嶋茂雄、石原慎太郎など著名人や芸能人が多く住んでおり、政治家、芸能人、スポーツ選手以外にも、日本を代表する企業のオーナーや社長の邸宅が立ち並んでいる。1980年代には星セント・ルイスのギャグのネタ(「弁がたつ、腕がたつ、田園調布に家が建つ」)にもなった。かつては鹿内春雄・頼近美津子夫妻や横井英樹、中内功、高峰三枝子の家もあった。横井英樹邸跡は鈴木その子が購入したが、基礎工事途中で亡くなったため、更地に戻され後敷地分割され、現在は5~6棟の中級分譲住宅が建てられている。
[編集] 地名
多摩川沿いでは奈良時代頃に布を調(税としての特産物)として納めており、これに由来する調布という地名が散見される。
現在の田園調布本町、田園調布南の地域は古い文献には荏原郡沼部郷とみえる。江戸期には上沼部・下沼部の2村が並立した。明治時代の市町村制により鵜の木・峯・上沼部・下沼部の4村が合併し、調布村となった(1889年)。1928年には町制を施行した。当時、東京府内には、北多摩郡調布町(現調布市)及び西多摩郡調布村(現青梅市)が存在したが、荏原郡調布村は町制施行にあたり、既存の調布町との町名の重複を避けるため、東を冠し東調布町とした。
住宅地としての起源は1923年に田園都市会社が「田園都市多摩川台」として分譲を始めたことによる。目黒蒲田電鉄の調布駅が開設され、1926年に田園調布駅と改称した。田園調布の名称、開発当初ははこの田園都市会社が分譲した地域(現在の大田区田園調布二丁目の一部・三丁目、四丁目の一部、世田谷区玉川田園調布一丁目・二丁目にあたる地域)を指したが、その後町名は隣接する下沼部一帯を併せて「田園調布」になった。
警察署や消防署は、「東調布警察署」「東調布消防署」を名乗ったが、1987年12月に警察署が、1994年11月1日に消防署がそれぞれ「田園調布-」と改称した。
会社(事業体)では東調布信用金庫があったが、統合により芝信用金庫が継承している(2005年現在)。
[編集] 町のイメージ・環境保持
地元自治会として「財団法人田園調布会」がある。この会は、環境保護に厳格であり、住宅の新改築に際しては厳しい制限を求めており、かつて鈴木その子や折口雅博らの住宅改築に際に、クレームをつけている。
福島県西白河郡大信村(現 白河市)では、村が造成した宅地に「田園調布」という名前をつけようとしたが、大田区の田園調布会に相談したところ難色を示されたため、字を変えて「田園町府」とした。この村には他に「赤坂」という宅地や「青山墓地」という村営墓地など、東京の地名・施設名と同じものがあった。
[編集] 著名な住人
- 石川達三 - 作家
- 石坂洋次郎 - 作家
- 石原慎太郎 - 作家、東京都知事
- 五木ひろし - 歌手
- 犬丸一郎 - 帝国ホテル社長
- 猪熊弦一郎 - 洋画家
- 牛尾治朗 - ウシオ電機会長、元経済同友会代表幹事
- 桶谷繁雄 - 冶金学者
- 折口雅博 - グッドウィル・グループ会長
- 小林よしのり - 漫画家
- 小山実稚恵 - ピアニスト
- 真田せつこ - 俳優
- 曽野綾子 - 作家
- 高峰三枝子 - 俳優
- 鳥羽博道 - ドトールコーヒー会長
- 中井貴一 - 俳優
- 長嶋茂雄 - プロ野球・読売ジャイアンツ終身名誉監督
- 野村克也 - プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルス監督
- 野村沙知代 - タレント
- はかま満緒 - 放送作家
- 鳩山由紀夫 - 政治家
- 松浦勝人 - エイベックス・グループ・ホールディングス社長
- 三浦朱門 - 作家
- 森下篤史 - テンポスバスターズ社長