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狙撃銃 - Wikipedia

狙撃銃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

M40A3
M40A3

狙撃銃(そげきじゅう)は、狙撃用の小銃である。一般に高倍率のスコープを取り付けて遠距離射撃を容易にした物を差す。

目次

[編集] 概要

狙撃銃とは遠距離を狙い撃つための小銃である。小銃のうち遠距離の照準をつけやすくするためにスコープなどの照準装置を備える物を特に狙撃銃と呼ぶ事が多い。頬当てやバイポット(ニ脚)などで射撃姿勢を保ち易くしている物も多い。高い精度専用に設計されたものと、アサルトライフルなど、本来狙撃用ではない小銃から精度の優れたものを選抜した上で改造されるものがある。

[編集] 歴史

狙撃銃を発明したのはレオナルド・ダ・ヴィンチであるといわれている[要出典]。彼は教皇軍の軍事総監督に就任していた頃、精度を高めた歩兵銃に小型の望遠鏡を取り付け、それを用いて城壁から敵兵を狙撃したという。

[編集] 種類

現代の狙撃兵や警察の狙撃手は専門化が進み精度の高い、実弾射撃競技ライフル(ただしオリンピック競技などのの射撃用ライフルとは別物)をベースとした狙撃銃を使用する傾向がある。一方、選抜射手(マークスマン)に用意されるマークスマンライフルなど、歩兵が運用する狙撃銃は既存のアサルトライフルバトルライフルをベースにアジャスタブルストックやバイポッドを装備した物が多い。これは専用の狙撃兵は単独、もしくはスポッターとの少数行動で1shot 1killを狙う精度重視なのに対し、選抜射手は部隊に同行しながら多数の相手をするという速射重視であるためである。

狙撃銃は一般に7.62mmや5.56mmクラスの小銃弾を使用し、概ね100~600m程度の射撃に適する。5km程度まで弾丸は届き、1-2kmくらいまでならば致命傷を与えることができるのだが、この距離だと、重力、風、湿度等、様々な要因に干渉されるので基本的に命中は期待出来ない。

また、対物ライフルも超長距離の弾道直進性をかわれて狙撃に用いられる。小銃弾より桁違いに重い弾丸重量のおかげで1,000メートルを超えるような狙撃でも風のような外部干渉要因に左右されにくく命中を期待できる。高貫通力、高威力でもあるため採用する軍や警察が増えている。一部にはハーグ陸戦条約の「不必要な苦痛を与える兵器」に該当するのではないかという見方があるが、条文に明記されているわけでもなく、解釈の問題に過ぎない。

[編集] 構造

一般の小銃に比べて部品の精度が非常に高く、弾道を安定させるために銃身は長く重く作られている。銃床(台座部分)と銃身は干渉しないようにフローティングバレル(浮き銃身、ぴったり嵌っているのではなく1~2mmの隙間がある)が採用され、銃床も従来は木製(ウォールナット材が多かった)だったのが、材質も気温や湿度の影響を考慮して熱膨張率の低い合成樹脂繊維強化プラスチック、金属基複合材料などを用いる傾向にある。

現在は銃身、機関部、銃床、スコープは目的に応じた各メーカー製品あるいは一部特注した仕様の製品を組み合わせ、ウェポンシステム化したものが主流になりつつあり、狙撃システムと呼ばれる製品が増えている。

M40A3の排莢とスコープ
M40A3の排莢とスコープ

[編集] 弾薬

狙撃銃には、通常の軍用実包(military ball / M80やM193など)より加工精度が高く実包ごとの公差も少ない市販の標的競技弾(マッチ弾 / match bullet)や、標的競技弾に準じた精度と狙撃に適した弾頭形状と重量・初速などを持つ狙撃専用弾(M118やM855など)が使用される。

M40A3のスコープ映像とレティクル
M40A3のスコープ映像とレティクル

[編集] 給弾方式

給弾については、小銃と同じくボルトアクション方式オートマチック方式があり、これで狙撃銃を大別できる。

[編集]  ボルトアクション(手動装填)方式

ボルトアクション方式は一発ずつ装填する手動式連発銃である。構造が簡単で信頼性があり、高い精度をだしやすい。また安価である。そのため幅広く使用されている。特に警察や競技用など精度を最重視する場合などでよく利用される。反面、連射する際の発射速度が遅いという欠点がある。戦場では最初の一発のみで戦闘が終了する事は少ない。軍はもとより警察でもミュンヘンオリンピック事件で問題になった。ボルトアクション方式の問題は、手動装填のため連射速度が遅いという単純な点だけでなく、次弾を装填する際に(1)ボルトを操作するために引き金から手を離さなくてはならない(2)その際に目標と照準がずれてしまう、という狙撃目標が複数ある場合、あるいは初弾をはずした場合には致命的ともいえる動作を伴う点にある。

[編集]  オートマチック(自動装填)方式

オートマチック方式は弾丸が自動で装填されるため連射速度が速い。自動小銃をベースに開発される狙撃銃もこれにあたる。軍においては主流と言える方式である。警察でもミュンヘンオリンピック事件以後は導入例が増えた。欠点は構造が複雑であることと比較的高価である事。 また発射ガスを装填に利用するため弾薬選択の幅が狭まる。


スムーズに次弾を装填する為には弾を固定している薬室に間隙の余裕を持たせる必要があり、これによって弾道に誤差が生じて狙撃の精度を落とす恐れがあるため、高度な製造技術が求められる。 その例として、ミュンヘン事件を受け狙撃専用に開発されたH&KPSG-1は7000ドルもする。高価すぎてドイツ連邦軍は導入せず、代わりに同社製のPSG-1の軍用軽量廉価版であるMSG-90を制式にしている(ちなみにアメリカ海兵隊でも事実上の制式拳銃として運用されている)。

最近ではセミ・オートのスナイパーライフルの精度が向上した為米陸軍では7.62mmNATO弾を使用するスナイパーライフルを従来のM24SWSからナイツ社製のM110SASSに変更した。 とはいえさらなるロングレンジ用としては.338Lapuaを使用するM24A3が採用されることから、今後もボルトアクションは継続してミリタリーでも使われるだろう。

[編集] 光学照準

狙撃銃の上部にはスコープと呼ばれる光学照準(単眼鏡)がついており、その倍率は20世紀初頭の古いものでも2倍以上、新しいものでは10倍から50倍にも達する(ただし狙撃の用途や想定交戦距離により最適な倍率は異なるため、倍率が高ければ有利という訳ではない)。連射した場合銃身の放熱で映像が揺らぐのを防ぐため、銃身には陽炎ベルト (mirage belt) を装着することが多い。単眼鏡の中に現れる照準(レティクル / reticle)に目標を照らし合わせて狙撃を行うが、実際の弾道は直線ではなく、重力の影響を考慮するため遠距離では上向きの放物線を描くことになり、さらに手ぶれや、湿度、気圧、火薬の劣化などの複数の影響が加わるため、長距離で弾が当たる場所を正確に予測するのは難しい。このため、射手は高度な技術と経験を頼りに照準を垂直/水平微調整 (elevation/windage) して目標を狙う必要がある。最近では距離の測定にはレーザーを併用する場合もある。また狙撃手(スナイパー / sniper)に必要な風や目標、着弾点の情報を報告する観的手(観測手、スポッター / spotter)が狙撃を補助する場合もある。照準器も参照。

[編集] 代表的な軍・警察用狙撃銃

M24 SWS (スナイパーウェポンシステム)
M24 SWS (スナイパーウェポンシステム)
M24 SWSのコンポーネント内部
M24 SWSのコンポーネント内部

アメリカ

ソビエト連邦

ドイツ

  • Kar98k - 大戦中、特に精度の高いものを選抜。ボルトアクション方式。
  • G3SG/1 - H&K社。G3を改造。オートマチック方式。
  • MSG-90PSG-1 - H&K社。オートマチック方式。
  • WA2000 - ワルサー社。オートマチック方式。
  • R93、R93 Tactical - ブレイザー社。ボルトアクション方式。

イギリス

  • L96A1 - ボルトアクション方式。

日本

  • 九七式狙撃銃 - 旧日本軍三八式歩兵銃を改造。ボルトアクション方式。
  • 九九式狙撃銃 - 旧日本軍。九九式短小銃を改造。ボルトアクション方式。
  • 64式狙撃銃 - 64式小銃に照準器、チークパットを装備。オートマチック方式。

[編集] 狙撃銃としてのアサルトライフル

サービスライフル競技1,000ヤード種目 / 米軍海兵隊優勝チーム。これはC部門であるためスコープは使用せず、ピープサイトで照準している。
サービスライフル競技1,000ヤード種目 / 米軍海兵隊優勝チーム。これはC部門であるためスコープは使用せず、ピープサイトで照準している。
SPR Mk12 Mod 0 / M16をベースとする米軍の特殊目的ライフル(=狙撃銃)。
SPR Mk12 Mod 0 / M16をベースとする米軍の特殊目的ライフル(=狙撃銃)。
SAMR / M16をベースとする米海兵隊の分隊上級射手ライフル(=狙撃銃)。
SAMR / M16をベースとする米海兵隊の分隊上級射手ライフル(=狙撃銃)。
M16の狙撃銃としての能力

一般にオートマチックライフルは、薬室や機関の遊びを大きく取っているし、狙撃対象や環境に合わせて弾薬の薬量等を適宜調整する事が難しいため、ボルトアクションライフルに比べ命中精度や信頼性が劣る。しかし、M16は狙撃銃として十分な性能を持っているという事実も無視すべきではない。

M16を特徴付けるダイレクト・ガス・アクションによるボルト開閉機構は、信頼性の面で早くから他の機構に対して劣っていることが指摘されてきた。ベトナム戦争による悪評が兵士の整備不足による冤罪ではあったとしても、泥水に付けても作動するAK47アサルトライフルに対し、M16やM4が先のイラク戦争で、汚れたグリス類と砂漠地帯特有の細かい砂による汚れで作動不良を起こしたことはよく知られている。しかしこの特殊な機構が他のオートマチックアクションに比べて、 とりわけ射撃精度の点で優れているということに人々が関心を持ったのは、近年のオートマチックライフルによる射撃競技の発展を迎えてからである。

たとえば、M16は標的射撃のサービスライフル(軍用ライフル)競技において、またAR-15は600ヤード以下の各種目において、大口径を抑え常勝しており、1,000ヤード以上も AR-10がAR-15を抑えるのみである[要出典]。競技の際にはAR-15の各部をチューンナップし、薬量や品質を考慮した競技弾を使用しているが、競技用AR-15では通常でも、200ヤードで1インチ以内の命中精度をクリアする。

また、5.56ミリ弾は口径が小さく弾頭も軽量で、高速であるものの横風の影響を受け易く命中率が大口径のライフルに劣ると言われていたが、実際にはその偏差は600ヤードまでは7.62ミリ弾と互角で、900ヤードでもその差は20%以内と実証されている[要出典]。その為、移動物がターゲットの場合は、高速の5.56ミリ弾の方が都合が良い時もある。 しかしこれらはあくまで軍や警察などの話で、より手の行き届いたカスタムや選定を行える民間の精密射撃競技においては5.56ミリ弾というのはあまり人気がない。 PMCのブラック・ウォーター社もM16系のスナイパーライフルを使用している。 しかし弾速や精度はともかく、ストッピングパワー不足というのは湾岸戦争時代から言われている通りである。 とはいえ設計思想が異なる弾薬なので正確に比較できているわけではない。

またアメリカではSWAT用装備として、市街地における犯罪者に対する狙撃(軍隊での運用に比べ近距離)用としてスコープ付きで運用している警察も多い。

M16をベースとした狙撃銃

アメリカ軍は特殊部隊用として、M16を軽狙撃/精密射撃任務用にカスタマイズしたSPR Mk12などの特殊目的ライフル(Special Purpose Rifle)や、分隊上級射手用のSAMR(Squad Advanced Marksman Rifle) を開発している。軽狙撃(light sniper)とは、バレットM82など50口径クラスによるものは重狙撃(heavy sniper)とするためにこのように呼ばれる。これらの銃には、通常弾薬であるM855の弾頭重量を77グレイン(4.98g)に増量するなどして、実戦での命中精度向上させたMk262の使用を前提とするが、この弾薬は900ヤードでどんな種類のものかは分からないにしろ7.62ミリ弾を凌駕する精度を持っているという話もある。

※注:1ヤード= 0.9144m / 1インチ=2.54cm。900ヤードは約823m。

他のオートマチック狙撃銃

西ドイツ軍の制式アサルトライフルであったH&K G3は、7.62mmNATO弾という大口径弾を使用し、ローラーロッキング・ディレード・ブローバック方式という射撃精度の高い機構を採用していた事から、早い段階から様々なバリエーションの狙撃銃が作られてきた。軍・警察向けの本格的オートマチィック狙撃銃PSG-1や、その派生モデルであるG3SG/1MSG-90など、いずれも世界中の軍や警察で採用されている。また同アサルトライフルには5.56mm弾を使用するモデルもあり、こちらも同様に狙撃銃モデルが作られている。


1957年の採用以降、M16にその座を受け渡すまでアメリカ陸軍の制式アサルトライフルであったスプリングフィールドM14は、単発射撃において、その前身M1ガーランド同様に良好なグルーピングをみせていた。そのためアメリカ陸軍ではこの銃を精密射撃用にカスタマイズし、M21狙撃銃として制式採用している。強力な7.62mm弾を使用するこの銃は、最近の中東地域での戦闘においても、アサルトライフルの火力不足を補う銃として使用され続けている。


ソ連軍から現在のロシア軍も装備しているドラグノフ狙撃銃は、東西冷戦時代の東側を代表する狙撃銃である。旧ソ連の傑作アサルトライフルAK47を元に、AK47の使用する弾薬よりも火薬量の多い7.62mm×54R弾を使用するため薬室やガスチューブなどを設計し直して作られたこの銃は、高い信頼性を持ちながら600m以上の有効射程を持つという。他の狙撃銃に比べ数キロ軽く設計されているこの銃は、専門の訓練を受けた射撃手と共に各分隊に一丁ずつ配備されている。


伝統的に長距離射撃を重んじてきたスイス軍では、NATO基準の小口径弾を使用しつつ、精密射撃にも使用可能なアサルトライフルを望んでいた。その要望を満たしスイス軍に制式採用されたのがSIG SG550であり、高価ながら高い射撃精度と信頼性を持つ傑作アサルトライフルである。その狙撃銃モデルであるSIG SG550 Sniperは、5.56mmという小口径弾を使用しながらも、7.62mm弾を使用するPSG-1と同等以上のグルーピングを見せている。SIG SG550のカービンモデルであるSIG SG551にも狙撃銃モデルが存在し、SWATなどの警察特殊部隊で中距離狙撃用のライフルとして使用されている。

[編集] 関連項目

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