月経
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月経(げっけい)とは、成熟した人間の女性および高等霊長類のメスの子宮から周期的に起こる、生理的出血である。
正式な医学用語は「月経」であるが、日本では一般的に生理と呼ばれていることが多い。
また俗に「メンス」(英:menstruation のカタカナ表記の省略形)、「アンネ」(生理用品のメーカー名より)「お弁当箱」(ナプキンが梱包されている形から)、「つきのもの」「つきやく」「お月様」「月の使者」{月経の周期が月の公転周期(27.3日)や満ち欠け周期(29.3日)に近いことから}、「めぐり」「女の子の日」「女盛りの日」「アノ日」等といった隠語で言われることも多い。
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[編集] 概念
子宮壁の最内層は、子宮内膜と呼ばれる特徴的な粘膜層で、卵巣が分泌するホルモンの影響を特に強く受ける部位である。ヒトの女性では月経周期に伴って(哺乳類一般ではメスの性周期に伴って)周期的な変化をすることが知られる。排卵したが、その卵が授精しなかった場合、この子宮内膜が剥がれ落ち、血液とともに子宮口、膣を経由して体外に排出されるのが月経である。そのため妊娠すると、出産の数ヶ月後まで月経は停止する。
[編集] 月経周期
月経は、思春期に始まり(初潮)、個人差はあるが、閉経時期までの間におよそ28日周期で起こり、通常3~7日間続く(正常月経周期:25~38日)。
一般的に、月経と同時かその数日前から不快な症状を感じる女性が多い(月経前緊張症候群、生理痛)。
- 排卵性月経
- 無排卵性月経
[編集] 初潮
生まれて初めての月経を初潮 (しょちょう) または初経 (しょけい) と言う。古くは「初花 (はつはな) 」とも。日本では一般的に10~14歳 (小学4年生~中学2年生頃) で起きることが多いが、6才前後 (小学1年頃) で起こることもある。16歳以上で起こることもある。4歳でなったというケースもある。普通は10才未満は早発月経と言われ、低身長の原因になる恐れがあり、普通は医師による診断を受ける。16歳以上は遅発月経と言われ、無月経症の恐れがあり、これも医師による診断を受けたほうがよい。初潮がはじまっても半年間は排卵が不規則で妊娠はできない(できにくい)。
初潮を迎える前から、乳房・女性器・陰毛の発生・成長が始まっており、初潮の約1年前後は、子供の体型からいわゆる女性らしい体型へと急激に変化する時期でもある (乳房・女性器・陰毛だけでなく、皮下脂肪の増大、骨盤の広がりやヒップ、腰のくびれが目立つようになる。心理的には、個人差が大きいが、性的な関心が増す。これにも個人差はあるが、この時期は比較的男性より女性の方が早い)。戦後日本人の初潮年齢は若年化し、今の子は小学6年生までで47%初潮経験がある。しかし、10%は高校生になってからの遅発月経となる。
[編集] 閉経
閉経時期(更年期)を迎えると、女性の体はホルモン分泌が変わり、月経は不規則になり、やがて停止する。多くの場合、50歳前後で閉経する(日本人女性の平均閉経年齢は約50歳である)。それより早く45歳以前に閉経する場合を早発閉経、55歳以上の場合を晩発閉経と呼ぶ。動詞で「上がる」とも称する。
閉経をはさむ前後5年ほどの時期を「更年期」と呼ぶ。月経停止以外に、色々な自覚症状をおぼえる女性もいる(更年期症状)。
長期間にわたり喫煙を続けると閉経が早くなるという報告がある。
[編集] 処置
この時期には、出血を吸収するために、ナプキンやタンポンのような生理用品を使用し、生理用ショーツを着用したりする。ナプキンは綿を吸収体としたものがかつては主流であったが、現在は薄型のポリマーを使用したものが利便性から普及している。使用済みの生理用品は、トイレでは便器には流さず備え付けのサニタリーボックスに廃棄する。
繰り返し使えるものとしては布ナプキンがあり、ナプキンが普及する前は、ぬか袋なども使用されていた。また、月経血コントロールといって体操により筋肉を鍛え、経血を膣内に留め、任意にトイレで排出することもできる。[要出典]。 タンポンについては1970年代、毒素性ショック症候群(トキシックショック症候群)によりアメリカで死亡事故が相次いだ。
- これは十分に消毒されなかったタンポンを長時間挿入していたことにより膣内で黄色ブドウ球菌が繁殖したものによる。現在でもタンポンの使用説明書に長時間の使用をしないように記述がある。
[編集] 月経異常
- 月経不順(=月経周期 menstual cycle の異常)
- 月経が始まった頃は、月経周期は安定せず、数ヶ月起こらなかったりすることもよくある。
- 無月経(amenorrhea)
- 原発性無月経
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- 18歳までに初潮を見ないこと。性分化異常や染色体異常に起因することが多い。15歳までに初潮を見ない場合、婦人科を受診することが望ましい。
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- 二次性無月経または続発性無月経
- 月経困難症(生理痛・月経痛)
- 月経前症候群・PMS(pre-menstrual syndrome)
- 多くの女性は月経前数日、様々な不快を感じる(個人差はある)。腰痛・腹痛・頭痛・むくみ・悪心・食欲不振・乳房の緊張など。また精神的に不安定になって、落ち込んだり怒りっぽくなったりすることも多い。黄体ホルモンの影響によると考えられる。
- 無排卵月経
- 月経発来異常
- 早発月経(premature mensuruation)
- 遅発月経(delayed menstruation)
- 月経量の異常
- 過少月経(hypomenorrhea)
- 過多月経(hypermenorrhea/menorrhagia)
- 月経持続期間の異常
- 過短月経(too short menstruation)
- 過長月経(too long menstruation)
- 経早/月経先期:月経周期が異常に短縮する
- 経遅/月経後期:月経周期が異常に長くなるもの
- 経乱:月経周期が不定期なもの
[編集] 社会的捉え方
- 生理休暇
- 日本の労働基準法では、生理日の就業がいちじるしく困難な女子は生理休暇が取得できることを定めており、勤務が困難かどうかについては、医師の診断のような厳格な証明は不要とされている(1948年5月5日 基発682号)。ただし、休暇の間の賃金については規定されておらず、使用者と労働者の間の契約(就業規則など)による。
- なお、生理休暇を法制化したのは日本が最初である。何故日本で最初に導入[1]されたかの理由としては、欧米では低用量ピルの使用により生理痛が緩和されたためという主張がある[要出所明記][2]。「女性に対する過保護であり、男女平等に反する」という批判に晒されながらも、今日では諸外国にこの制度が広まっている。しかし、男性差別・女尊男卑・ミソジニー(女性蔑視)を主張する人々や、労働効率を重視する財界などは廃止を主張している。
- 実際には、病欠・有給休暇と生理休暇の区別は厳格ではなく、生理を原因とする体調不良を単なる体調不良として休暇をとる女性社員が多いようである。
- タブー
- 日本では、月経は穢れであるとして、かつて月経中の女性は宮参りなどの神事に参加することができなかった(たとえば『落窪物語』巻二、『堤中納言物語』「花桜折る中将」)。現在もごく少数の社寺で女性の神事の参加を禁止している所がある。大相撲の土俵が女人禁制であるのも、相撲が元は神前で行うものだった名残である。→女人禁制を参照の事。
- 祝い事
- 日本では初潮を迎えた女性に対して赤飯を炊いて祝うことを習慣として行うところもある。ここから転じて、初潮を迎える事を俗語で「お赤飯」と言う事がある。
- 広告
- 生理用品のCMでは、経血は青色や緑色の着色水で表現される。透明では分かりにくいのはもちろん、赤だと生々しいからである。
[編集] 脚注
- ^ 古代律令制の休暇には女官のために淋假が設けられていたので、女性公務員にとってはその復活に過ぎない。
- ^ ピルが世界ではじめて発売されたのは1960年のことであり、日本が生理休暇を法律で規定した後である。ゆえに、この主張は欧米での導入が遅れた理由の説明にはなるかもしれないが、「日本で最初に導入された」理由になりえないと思われる。生理休暇の導入経緯については、田口亜紗『生理休暇の誕生』(青弓社)などを参照。
[編集] 外部リンク
- はじめてからだナビ (ユニ・チャーム)
- 月経周期 (メルクマニュアル 家庭版)